※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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第九回

 尋ねてもその娘はなかなかにしゃべろうとしない。武者達が3階には誰もいなかったと聞いたイズヴァルトは、ようやくマイヤとコンラッド達を呼び寄せた。

 

「コンラッドどの。海賊団のご令嬢が1人、ここにおられる……」

「カイルじゃないか!」

 

 コンラッドはふとつちょの身体でよくもまあ、みたいな速さで怯えて顔を伏せている少女に近寄って、「おお、よしよしよし!」と頭を撫でてやった。

 

「ぐすっ……」

「こわかっただろう。もう安心だよ。カイル、お前だけも無事で良かったよ」

「……カイルどの、でござるか?」

 

 どうにも男の名前の様だとイズヴァルトは思った。コンラッドに声をかけると、少女は初めて声を発した。どう聞いても娘の声帯ではなく、少年、いや、もう少し歳を重ねた若者のものだった。

 

「うえっ。ぐすっ。こ、こわかった……」

「こわかった? 何がだね?」

「今朝、沢山の人たちがこの家に上がり込んで、女の子と赤ちゃん達をみんな連れ去ってしまったんです……」

「しかしここには護衛もいたはずだけど、どうしたんだい?」

「ヘラルドさん達も連れ去られちゃいました……」

 

 その声ははっきりとイズヴァルトの耳に届いた。まさしく男の声だった。マイヤがむすーっと頬を膨らませながら、自分よりも美しい少女の様な男をにらみつけていた。

 

「……どうしたのでござる? そなたが殿方と会うときは最初に、精液の濃さを嗅ぎつける様なしぐさを為すはずでござるが?」

「そんなことをしなくても嗅ぎ分けられるよ!」

 

 人を犬みたく思わないでくれと返し、マイヤは鼻息を鳴らした。

 

「で。そなたの見立てはいかがでござる?」

「うん、そこそこどころか、かなりいい線いっていると思うよ……なんだけど……」

 

 男の子なのに自分より美人でかわいいのがむかつく。マイヤはそう言ってそっぽを向いてしまった。イズヴァルトはカイルという女装した少年に尋ねてみた。

 

 事情が飲み込めないカイルは口をぽかんとあけるばかり。そのあどけない顔立ちにイズヴァルトは思わず時めいてしまう。埒があかないと思ったコンラッドが、手短かに話をまとめてくれた。

 

「つまり、あなたがホーデンエーネンで最強の少年騎士と言われている、イズヴァルトさんですか!」

「最強は言い過ぎでござる。ところでカイルどの、貴殿は一体何者でござる?」

 

 問われてカイルは、長いまつ毛を動かしながら答えた。カイル=グリーヴァス。イーガ魔法王国の見習い魔道士で、一応だが貴族の身分である。妾腹で家の中では一段低い立場にあるが。

 

「魔道士でござるか……しかしホーデンエーネンには良き学問所や魔道士の噂を聞いておらぬでござるよ?」

「そ、そういう為に来たんじゃないんです、僕……」

「では、どういう目的で?」

 

 カイルはずばりと言ってのけた。素人童貞を卒業する為にだと。しかもニンゲンの娘との。なぜホーデンエーネンなんかでと呆れながらイズヴァルトが問うと、カイルは長い髪をかきわけながら答えた。

 

「実は僕、祖母がカントニア南部のツックイーというところに住む白色エルフなんです。ほらほら、耳が若干長くてとんがっているのがわかるでしょう?」

「うむ。髪で隠れていたが確かにそうでござる。しかしエルフという種族の奥方は、拙者の侍女みたくとてもとても『やりまん』と聞き及んでいるでござるが……」

 

 うおっほん、と空咳をする声が後ろから聞こえた。マイヤがイズヴァルトをじっと睨んでいた。軽く頭を下げてカイルに目を向けると、彼は祖母の故郷での日々を語り始めた。

 

「魔法の修行ということで、10歳から18歳までミランダおばあちゃんのところで過ごしていたのですが……」

「ちょっと待つでござる! カイルどのは一体おいくつでござるか?」

「今年で23になります。あはは、それでも見習いなんて笑っちゃいますよね?」

 

 信じられぬ、といった風情でイズヴァルトはカイルをまじまじと見る。背は160ぐらいで高めだが、10代前半の少女に見えた。その事を尋ねるとカイルは、男エルフでまともな部類は、女みたいな顔になるのだと告げた。

 

「そのツックイーの森で、僕はおばあちゃんやおばあちゃんのお友達からしこたま魔法を学んでいたのですが……」

 

 魔法だけでない。武術もであった。エルフの弓術や剣術、乗馬。魔法戦士としての修行もこなした。ついでだが彼女達は絵画や造形にも天賦の才があったので、カイルは絵もよく学んだという。

 

「それはそれは随分立派なことでござるな!」

「ただ……ツックイーではおちんちんのほうも厳しい修行を受けましたけど……」

 

 カイルが赤面してうつむくと、側にいたコンラッドがおもむろに彼のスカートをめくってみせた。イズヴァルトとマイヤは、「げっ!」と叫んでしまうえぐいものを見てしまった。

 

 カイルのペニスはその体つきと10歳近く年下の美少女みたく見える風貌にそぐわぬ、女泣かせの極太の肉槍そのものであった。しかも包皮が向けていて赤黒い亀頭が丸出し。幹に割礼痕があった。

 

「こ、コンラッドさん。やだあっ!」

 

 カイルが振り払い、しなをつくって脚を閉じた。その仕草を見てイズヴァルトは、これでは奥方に好まれぬでござるなと思った。しかし下手な女人よりも様になっているから質が悪かった。

 

 コンラッドはにやにやと笑って「僕と君の仲じゃないか?」と彼の尻を撫でた。両刀使いの富豪のドラ息子は、カイルとも男色を楽しむ仲だったのだ。

 

「そ、それを言わないでくださいよ……」

「と、まあカイル君のおちんちんがこんなにおぞましく変貌するほどツックイーのエルフ達に貪られたっていうお話ですよ。そうそう。ちっちゃい頃のマイヤさんみたいなエルフの女の子が、夜な夜なハメハメしにやって来るんだったよね?」

 

 カイルは顔を伏せながらうなずいた。ツックイーの森のエルフはあんよが上手と励まされるよちよち歩きの童女から、ちんちん好きの女達ばかりであった。カイルは朝昼晩と休み無く貪られたという。

 

「ある意味……素晴らしい毎日だったんじゃないかな?」

 

 マイヤがにひ、と笑って問いかけると、それがよろしくないことだとカイルは答えた。

 

「あそこで過ごしていたら、もう普通の女の子を見てもちんちんが起たなくなってしまったんですよ」

「そう? なんか男の子っていうのはむらむらが起こると、おばあさんとでもしたくなるものじゃないの?」

「人それぞれですよ。おかげで色ごと関係で失敗できなくなりましたけれど……でもそれだと普通のニンゲンの女の子と付き合うことができなくなっちゃうのに気づいて……」

 

 カイルは語る。ここに来るまでにニンゲンの女と寝たことが無かった。妾腹だが一応貴族だし父親から土地を与えられる約束も受けている。跡継ぎをさっさとこさえろと命じられてもいる。

 

 しかしなかなかにニンゲンの女に食指が動かなかった。それもそのはず、おっぱいこそちっぱいだが、エルフは誰もが美人ばかりだったからだ。

 

 このままでは良くないと思って旅に出る事にした。このホーデンエーネンへの旅はニンゲン童貞を捨てる為のものだった。運が良ければお嫁さんを連れ帰れるはずだとも。

 

「でもわざわざホーデンエーネンに来て、さような事をでござるか?」

「あのう。イーガ人の僕がホーデンエーネン人の女の子と親しくなっちゃいけないんですか? およめさんにしちゃいけないんですか?」

「いやいや……その様に美麗であれば、奥方が引く手あまたであったと思ったでござるから……」

 

 目で尋ねるイズヴァルトに、カイルは強く否定した。ご存じないのですか。イーガの女性は筋肉むきむきの偉丈夫が大好きなのですよ。イーガ人はホーデンエーネン人と違い、武芸を嫌い魔法や風流に偏りがちだからへなへな男かでぶっちょばかりだった。

 

「あっちでもイズヴァルトさんは大人気なのですよ!」

「そ、そうなのでござるか!」

「イーガの女の子の多くにですよ! イズヴァルトさんが動いている映像水晶とか肖像画で自分のあそこをさすっているんです!」

「あれが……イーガにも出回っているのでござるか?」

「そうですよ! ご存じなかったんですね?」

 

 イズヴァルトが戦陣に出た時に隠し撮られた、皆の前でマイヤにペニスをしゃぶられている時の映像水晶はイーガのよこしまな店で売られているという。

 

 それだけでない。マイヤと一緒に水浴びをするところや、ついついむらむらが起こってちゅっちゅとしあう所もであった。人気者にプライベートというものは無かった。

 

「僕の姉や妹なんか、是非ともイズヴァルトさんと浮気して子供を産みたいとかほざいてましたから……」

 

 カイルの姉妹、それから友人達は揃ってイズヴァルトに抱かれたいと望んでいた。下女や出入りする女商人や魔道士もそうだという。

 

 彼女達はホーデンエーネンの好色な人妻や若い娘みたく、イズヴァルトの種で受精したいという娘もいるぐらいだ。イズヴァルトは深くため息をついた。イーガには絶対に行きたくないでござる。

 

「イズヴァルト、よかったね? イーガでいろんな女の子とおまんこができるね!」

「良くは無いでござる!」

 

 対してマイヤはどうなのだろう。カイルは姉や親戚の娘達の言ったことをそっけない様子で教えた。かわいいっちゃかわいいが、人前で平気でうんちぶりぶりをする恥知らずな女の子という評価。

 

「むきーっ! その言い方はなんなの!」

「あくまで僕の周りの意見ですから。僕も映像を見せてもらいましたけど、くさそうで嫌ですね」

「ふんぎぎぎ!」

「でもまあ、マイヤさんはとても可愛いと思いますよ。映像水晶の姿より魅力的です」

「うふふ……そう?」

「おっぱいもおっきいし……」

「カイルさんはおっぱい好きなんですね?」

「だったら、マイヤでニンゲン童貞を卒業するでござるか?」

 

 それには及ばない。もう既にニンゲン童貞自体は済ませたとカイルは答えた。彼は無一文で空腹で道端に倒れていたところを、海洋公に拾われた。

 

 彼はとてもかわいい男の子であったから、助平な海洋公に『男の娘メイド』にされた。三食と月の小遣いを得られる代わりに身体の関係も強要された。

 

 海洋公は彼のアナルを舐め、恥ずかしそうにおしりをくねらせるのを顔面で味わいながら、手コキされるのが大好きだった。男色については一応だが、カイルは拒絶していなかった。性に奔放なエルフの村で暮らしていれば、免疫もつくだろう。

 

 家主不在の時は、専ら女の子達の性の相手を務めた。猛獣のごとく性に飢えている女の子たちの膣やクリトリスを存分に楽しませたのだ。

 

 海洋公に囲われた娘達は家から出るのを禁じられていたから、とにかく性欲に狂ってしまい激しく求めて来た。ただし、カイルが相手をするのは、妊娠中の女の子のみだ。

 

 カイルが語り、イズヴァルト達が腕を組んで「ううむ……」と唸っているところに、コンラッドがカイルを激褒めした。魔道士よりも別の商売、例えば両刀使いの男娼のほうが向いているなどと。

 

「なにしろ美人だしデカチンですからね! きっとお客さんはひっきり無しですよ。ほらっ、もういちど見せてあげて!」

「嫌ですよ!」

 

 カイルはスカートの前をめくろうとしたコンラッドの手をひっぱたいた。またもえげつないものを見せられずにイズヴァルトは安堵した。美少女の様な青年にいびつな代物がついているのを見たくなかったからである。

 

「けど、やっぱりなんだか満足いかないんですよね。この1年間、毎日毎日ぜえぜえ息切れするほど彼女達のお世話をしていたのですが……」

 

 ニンゲン童貞こそ卒業し終えたけれども、今度は妊婦ではない素人の女の子も抱きたいとカイルは言い始めた。

 

「娼婦どのらはいかがでござるか?」

「えー! 無理です! あんな香水くさくておしろいくさいのは、僕の好みにあいません!」

「……結構わがままでござるな?」

「僕はすりきれていない女性と恋がしたいから、ホーデンエーネンに来たのですよ!」

 

 だったらマイヤを一晩中貸すから抱いてみたらどうだろう、とイズヴァルトが提案すると、当人は顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。

 

「イズヴァルト! 勝手に寝取らせの相談をしないで!」

「でもマイヤどの。男の娘とおまんこをするのそれはそれで新しい発見があるかもしれぬでござるよ?」

「私がカイルさんの赤ちゃんを孕んじゃったらどうするのよ! カイルさんも迷惑……だよね?」

 

 問いかけるマイヤはまじまじとカイルを眺めてしまった。とても美しい。思わずスカートの中が濡れ、乳首から出もしない母乳がにじみ出てきそうな感じがした。

 

「マイヤさんはとても魅力的だけど、でも、何かそそらないんですよね。うーん……」

 

 たぬきやあらいぐまみたいな動物的な可愛らしさ、と答えてマイヤを怒らせたカイルは、ちょくちょく尻を触って来るコンラッドの手を引っぱたく様になった。安心したからか、もともとの性格が出てきたのだ。

 

「しかし困ったことでござるな。貴殿は海賊らしき人達に娘さんがたがさらわれたのを見ただけで、どこへ行ったのかはわからぬご様子……」

「あ、いえ。うすうすですが、どこの誰がさらったぐらいは……」

 

 もじもじとしながら答えるカイルに、イズヴァルトは「なぬ!」と叫んで目を見張った。

 

「あれはたぶん……クリスティーナちゃんの声だったと思うのですが……」

 

 騒動の時に父親の部下らしい名前を叫んで、どうしてこんなところにと呼びかけていた。

 

 クリスティーナはマイヤと同い年。常に下唇が突き出て甘えん坊の気配があったが、ちんぽをしゃぶるのが大好きな献身的な娘だと語った。

 

 フェラチオでは軸ではなく亀頭全体を丹念になめまわす。妊娠6カ月目の身体を乱暴にゆさぶりながら、素股や臀部での愛撫を施すという元気いっぱいな、茶髪の可愛い女の子だと。

 

 横でそれを聞いていたコンラッドは、顎に手を当てて考え込んでいた。そこまで熱心だったかなあとつぶやくのが聞こえた。

 

 そのクリスティーナだが、この街の北にある沿岸部を根城とする海賊団の娘であった、海洋公がさらった娘達の中で一番大きな海賊団。とはいえ北西のタンゴバルド諸島の海賊団に比べれば規模は小さかった。

 

「もしかして、今回の襲撃犯はクリスティーナちゃんのおうちのかたが実行したということですか?」

「さようでござろうな。ふむ、モナファン海賊団という名でござるか……もともとはこの辺にあった海洋王国の末裔を称しているのでござるか?」

 

 コンラッドがうなずいた。自分もクリスティーナの桃みたいな割れ目をかきわけ、可愛いラヴィアやクリトリスを『ちょめちょめ』して「ひゃふふ!」と喘がせながら聞いた話だからだ。マイヤがぽん、と手を打った。

 

「イズヴァルト、このあたりの海賊さんたちはみーんなその王国の豪族が祖先なんだよ」

「初めて聞く話でござる……大陸の戦国時代の。なるほど……」

「きっと気位も高いと思うよ。海洋公がやっていた事に恨みを持っていたはずだろうから」

 

 納得した。イズヴァルトは不安そうに見つめるカイルと、その彼の尻を触ろうとしてまたも思い切りはたかれてにやにや笑うコンラッドを見て呼びかけた。 

 

「と、なると善は急げでござる!」

 

 イズヴァルトはすぐさま軍船を出発させる準備を水軍武者達にうながした。その海賊団のアジトに向かえば、必ずさらわれた女の子達がいるに違いない。海洋公を殺害した下手人も捕まえることができるはずだからだ。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

「ありがとうよ。これでクリスティーナもワシの所に戻って来た」

 

 革椅子に座っていた40がらみの太っちょでひげもじゃの男が、高笑いをした。グリーヴァス海賊団の頭領・カリグラ=モナファンである。

 

「ソレア。あんたのおかげだよ。海洋公の隠れ家と夜明けの通り道を教えてくれたから出来たことだ」

「ありがたい。恐悦至極ってやつですよ」

 

 カリグラの目の前にいたのはまさしく女暗殺者のエレクトラ当人だ。ソレアは偽名であった。しかし喜びも束の間、カリグラは右横にいてむっつりと頬を膨らませ、不機嫌そうにそっぽを向く、お腹が大きくなってしまった愛娘を見た。

 

「しかし、可愛いこいつは結局あの野郎のガキをこさえることになっちまった……まだ11歳なんだぞ! クリスティーナ、散々ひどいことをされておめえも辛かっただろう。な?」

 

 助けられたクリスティーナは、久方ぶりに会う父親にそっぽを向きっぱなしだった。立ち上がって優しく肩を叩く父親の手を払いのけた。

 

「パパ、余計なことをしたわね! クリスはとっても楽しかったわよ!」

「お、おい。クリスティーナ……」

「そりゃあ海洋公のじじいは気持ち悪かったよ? 最初は吐きそうだったけど、おまんこがどれだけ気持ちよくって楽しいことを散々教えてくれたもん!」

 

 クリスティーナは罵り始めた。姉達からこう聞いている。嫁いだ海賊の男どもは女の扱いかがなっちゃいない。前戯はおざなりだし、腰の振り方は乱暴。とにかく射精だけして自分だけ楽しむやり方ばかりだと。

 

「し、しかし女がイカないほうが男の子の赤ん坊を孕みやすいって聞いてるから……」

「そんなの迷信よ! 実を言うとね! クリスがさらわれる前になんべんか夜這いをかけられたけど、おまんこぺろぺろしてくれた奴はだれもいなかったもん!」

「そ、そうなのか……」

 

 カリグラはへたりこんだ。一番かわいがっている末娘が、さらわれる前に部下の誰かに傷ものにされていたとは。9人にいる娘の中で一番器量の良い末娘は、他の海賊団や漁村の長の、一番有望な少年に嫁がせたいと願っていたからだ。

 

「それにね。クリスは将来おむこさんにしたい男の人を見つけたの!」

「ええっ?」

「カイルさんっていうとっても美人の男のひと! パパ、お願いだからせめてカイルさんもさらってきて!」

「おいおいおい……どうしよう……」

 

 カリグラは助けを乞わんとエレクトラに目を向けた。海洋公の襲撃と娘達の奪還に手を貸してくれた、彼女とその相棒の手を借りたかったのだ。

 

「ソレア。相談に乗ってくれねえかな? 今度はあんた達の『仕事』とは関係のねえ話になるが、金なら出すよ? かわいいクリスティーナの『おむこさん』をさらってきてくれねか?」

「困りましたね。海洋公をやっちゃったから街の警備が厚くなっていると思うんですけどね……」

 

 エレクトラは戸惑うふりをした。相談に乗ってやれるし潜入して標的をさらう事だって自信がある。自分とエイオンと手伝いの数名の海賊がいれば出来る仕事だと思った。

 

 なかなか「はい」と答えてくれないエレクトラに、カリグラはこの場にいないエイオンに言及した。

 

「だいたい、いくら傷ものになったからって、ダチ公の娘達を返すまであのエルフの旦那の好きなようにさせているだろ?」

 

 エレクトラはやっとのことでうなずいた。この時エイオンは砦の一室で、迎えを待っている女の子達全員を汚い床に寝かせ、1人ずつ新たな子を授けようと腰を動かしていた。

 

 しかも砦にたどり着くまでの船での3日間の航海で、エイオンは船の中でクリスティーナを含む海賊の娘達全員を食い散らかしていた。おかげでエレクトラはぐっすりと眠ることができた。エイオンの雄たけびと少女達の喘ぎがうるさかったが。

 

 そのエイオンだがクリスティーナは激しく嫌っていた。腰さばきはただただ乱暴。痛いだけ。あんなのでヤリチン面されてむかっと来たので、二度と抱かれるつもりは無いと拒んだのだ。

 

 愛娘の顔が少しばかり和らいだのを見て、カリグラはエレクトラにどの様な作戦でカイルという若者を捕らえるのか尋ねた。

 

「たぶんですが、カイルさんはこっちに来るでしょうねえ」

「どうしてだね?」

「クリスティーナさんがカリグラせんせえの部下のお名前をうっかり叫んだからですよ」

 

 驚いたのはクリスティーナの方だった。彼女は大きく膨らんだお腹をさすりながら叫んだ。

 

「そんなことクリスはしていない! 覚えがないわ!」

「し、しかしクリス。ソレアは確かに聞こえたと言っているがどうなんだ?」 

「わからない! 知らない! 本当よ!」

 

 頭を抱えてクリスティーナは走り去ってしまった。海賊大将はエレクトラに疑いの目を向けた。だったら聞いた本人達に聞けばいいじゃないですか、と彼女が提案すると、カリグラはクリスティーナが呼びかけた当人達を呼び寄せた。

 

 2人は大事そうに赤ん坊を抱えてやって来た。女の子達が産んだ海洋公の子である。彼等は「あぴゃあ」と笑う子供に顔をとろけさせて、おおよちよち、と呼びかけていた。

 

 子供達は海賊によく懐いていた。ついでにエレクトラにも。頭領は2人に近づいてあきゃきゃと笑う赤ん坊らの顔をみてほっこり笑顔を見せていた。

 

「お前たち、赤ちゃんたちは大丈夫かい?」

「ええ。みーんな元気でかわいいっすよ」

「俺ら、この子たちと離れたくないです……」

 

 何とかうちの海賊団で引き取れませんかねえ、と2人はねだるがそうもいかない。各海賊団はこの事実をもって、海洋公の本家であるオバーマゲルク公をゆする計画を立てていた。早い話、慰謝料寄越せである。

 

「わしの同業者にとってはいらん子同然……いやいや。わしは可愛いクリスが産むあかちゃんを楽しみにしておるが、他の頭目にとっちゃあ厄介者であることは変わりない。しかし、オバーマゲルク公の実弟のトマス公弟の実子であるってのは確かだ。おめえらみてえな下賤の海賊に里子を出すことなんざ、向こうの沽券に関わるだろうよ」

「ですけどぉ……」

「俺ら、初めて子供っていいなと思う様になったんでさあ……」

 

 きゃっきゃと笑う赤ん坊を大事そうに抱きながら、海賊達が涙目になって請願する。しかし頭領は赦さなかった。今大事なのはその話ではない。

 

「クリスちゃんが俺達の名を? はあ。確かに呼んでましたけど」

「あん時はいろいろと大変だったからよくは思い出せませんけど、確かにクリスちゃんが俺達に呼びかけるのが聞こえましたぜ」

 

 カリグラはソレアに目を向けてうなずいた。クリスティーナが否定するのはあの時頭が混乱していて覚えていなかったのだろいうという事で話がまとまった。

 

 疑いが晴れたエレクトラは、頭領に考え着いた作戦を述べた。自分達は娘達を救う為に隠れ家に突っ込んだが、海洋公に危害を加えたのは知らない。別の者がやったと言い張ればいい。

 

「待ち伏せした場所の痕跡はあっしと連れが全てもみ消しましたからね」

「でも疑われたらどうする?」

「方便はいくらでもありますよ。ちなみに、トマス海洋公がどこと仲良くしてカリグラさんや他の頭領さんがたにどんな無理難題を押し付けてたか、覚えてますよねえ?」

「ああ。その話か……」

 

 カリグラは腕を組んで天井を眺め見る。木板の屋根はところどころ隙間が空いており、雨の日はよく漏れた。

 

「パラッツォ教団がらみの密輸に手を貸すってのはなァ……」

 

 海洋公はホーデンエーネン王国でエチウのパラッツォ教と和平条約を結ぶべきだと論じる、親パラッツォ教団派のうちの1人であった。教典の写本を仕入れ、教えを理解しようともしていた。

 

 この時ホーデンエーネンとエチウとは北部沿岸での小さな貿易以外、主だった交流を絶っていた。しかしエチウはホーデンエーネンの物資の輸入を望んでいた。王国もまたエチウで沢山獲れる魚介類を仕入れたかった。

 

 そこで海洋公は各海賊団に命じ、教団が支配下に置くタンゴバルド諸島の大海賊団と手を組ませて密貿易の仕事をさせていた。各海賊団の頭領の娘達を拉致したのも、それを考えに入れての行いだったのだ。

 

「ナントブルグの大王様は教団との対決を考えているらしいし、いつまでも手を貸すことはできねえんだよなァ」

「タンゴバルドの海賊団の事ならご心配なく。ホーデンエーネンなら海軍を寄越してやっつけに向かうでしょうから。イナーヴァニアやイーズモーみたく、船を出すのに尻ごみするようなお国柄じゃあありませんからねぇ?」

 

 トマス海洋公はパラッツォ教団への強硬派の刺客にやられたんですよ。エレクトラがそうささやくと「そうだな」と言って頭領はうなずいた。

 

 策を授けた後にエレクトラは外へと出る。河口の街から北の沿岸部を沿って200キロほど行った先の小島に、モナファン海賊団の本拠があった。大陸の戦国時代まで存在していたモナファン=アジール朝と、ホーデンエーネン王国との最後の決戦場だった小島だ。

 

 島にたった1つだけある港まで歩き、海賊船が1隻も停泊していないのを目にする。その先、島から2キロメートル近く渡った先には、家屋の数がやや多い漁村があった。

 

 モナファという村だ。かの漁村こそが海賊達の住処だった。隣村もモナファン海賊団の領地。ホーデンエーネン王国によって、彼等は限定的ながらも自治が認められた

 

 この辺りは曇り空ばかりである。沈鬱な空を見上げてエレクトラは鼻歌をうたう。イーガ地方の『渡り船エルフの子守歌』という童謡であった。

 

「おうい! ここにいたべえか!」

 

 エイオンが駆け寄ってきた。えらくすっきりした面持ちだった。濃厚な精液のにおいと少女の汗のにおいを染みつかせていたが、潮風によってかき消されていた。

 

「お嬢ちゃま達のお相手は、もう終わりですかい?」

「一時中断ってところだべえ。まあしっかし、海賊の娘っこどもはカタシナシュフの女エルフみたくどすけべだべえな?」

 

 カタシナシュフはミナッカミニア山地西部のエルフの部族集団である。彼が所属するヌマタラシュクの敵対派閥だ。女ばかりで数も少ないがとにかく強い。派閥間の抗争が起こる必ず負けてしまう。

 

「このままじゃあおれはきんたまだけでなく身体の中まで絞りだすことになっちまうべえよ。だからきんたまを冷やす為の休憩だべえ」

「なるほどねぇ」

「そっちはどうだったべえ? カリグラのおやじをごまかせたべえか?」

 

 エレクトラはうなずいた。ここでの任務も成功だ。海洋公の抹殺ともう一つの目的も達成出来た。

 

「クリスティーナちゃんの声を模して念話魔法で呼びかけたわけですし、騙せないなんて言わせませんよ?」

 

 念話魔法の応用である。但し一度声を聴いた相手の声色を覚えれば、誰かの頭に呼びかける事も出来るのだ。

 

「しかも隣の部屋にいる奴らにも、声にも聞こえる様にという事だべえな?」

「そうでさあ。子供の頃に学んだお遊びついでの魔法なんですけどねぇ」

 

 エレクトラはこの魔法で兄や弟たちを騙した事もあると告げた。ただし、よほど魔法の才に優れた者でなければ扱えない技能だ。エレクトラは天才という部類にあった。

 

「で、カイルという娘っ子にもそれを聞かせりゃあ、海軍はこっちに向かうということだべえ」

「そういう訳でさぁ。ま、あっしは任務を果たしたし、エイオンせんせえはあの嬢ちゃんたちにしこたまおちんぽのミルクを飲ませてやった事が出来たから、後は北航路で逃げるだけですよ」

 

 エレクトラはくふ、と笑って海を見る。これを渡って目立たぬように大陸北部に入ればおしまい。しかし彼女の目論みは悲しくも外れてしまった。それは一体何故だったのか?

 

 その続きについてはまた、次回にて。

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