聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
イズヴァルトは、ヴァレリー公子の母親より本当の話を聞き出した。
ダテーゾフ大公・ペヨトル=ダテーニンが逃げたのは、東のコゴタスクの正反対。
西のモガミコフの様な隣国では無かった。もっと西の、ユーリポフ諸王国のうち1つ、ヨコテゾフ小王国。モガミコフの北西にあり、脊梁山脈の支脈によって阻まれていた。
「そんなところまで、どうやって!」
「大公殿下はもしもの時のために、サキュバスを2人お傍に置いていたのです」
下級の出来の悪い、まんこからやっすいお菓子のような匂いを漂わせる淫魔だったが、転移魔法が使えた。ヨコテゾフまでなら、魔力の供給無しに移動することが可能だった。
ヨコテゾフは、ユーリポフの諸王国の中ではかなり豊かで強い国だった。ざっと2万の兵を動かすことが可能だった。
しかし脊梁山脈及び、モガミコフに阻まれてダテーゾフ領内に兵を入れることは辛いだろう。
そう思ってイナンナに報告すると、彼女は顔をしかめて頭に手を置いた。
「脊梁山脈の間道を用いれば、クノーへから南下して、ダテーゾフ領に入れるかもしれねえズラよ……」
ムーツを東西に分断する脊梁山脈だが、難所ばかりがあるわけではなかった。比較的緩やかな山道がいくつかあり、中には万の軍勢を容易に通す道もあった。
「ヨコテゾフあたりで考えられるのは、クリコマコフ山道からクリハラコフへと向かう道ズラな。あそこなら騎馬で1万はつれえけど、5000ぐらいならいけるズラよ」
クリハラコフだが大公の次男が預かっていた。そこには4000の兵がいた。
となればどう出るか。イズヴァルトはローラに訊こうとした、が、いくさのことに関すると急に頭の回転が早くなる、ホージュリア妃が声を発した。
「今すぐ出立し、コゴタスクを落とすべきである!」
理由はこうだ。ダテーゾフの長子が籠もるコゴタスクを落とせば、周囲にある大公の次男三男が護る街に動揺が走ることだろう。なにせ、コゴタスクに大公が逃げ込んだ、と思っている者も少なからずいるからだ。
「イズヴァルト様、前は急げだ」
「ホージュリアどの。承知した。しかしヴァレリーどのはいかがする?」
「ここは背の君がよくやる、偽報を放ってみよう」
ホージュリア妃はテーブルの上に置いた地図を見て、ダテーゾフの近郊の軍団の配置を指差しながら言った。
「まずは、ヴァレリー公子を処した、と各地に嘘をばらまくのだ……本当にやってはいけませんよ。偽報だから」
「わ、わかっているでござるよ」
「ついでにこの都に残っている大公の寵姫も乱暴を重ねた挙げ句に潰し殺した、と嘘を重ねよう。噂を本当のように思わせるために、昨日の市街戦で出た犠牲者の遺体を使わせてもらう」
大公の館には、戦いの巻き添えになり、死亡した市民や子どもの死体を集めてあった。遺族に少ないながら見舞金を与えるためにである。
「顔がつぶれた子どもや女の遺体もあった。それを処刑場に持って行き、見せしめとしてとどめ置く。噂を聞いて街に忍び込んだ、大公側の間諜がきっと見るだろう」
そうすれば大公の長子らは、打って出ることもするだろう。もしかすると次男三男あたりは、積極的に動くかもしれない。大公の跡継ぎとなるためにだ。
「それは、人でなしの策でござる!」
イズヴァルトは憤ったが、イナンナはホージュリアの策を聞いて目を輝かせた。この女は『まんずりちゅーどく』にはなっていたが、それでも夫から戦争に使える術策をしっかりと学んでいたのだ。
「ホージュリアさん、おまんの策、取り入れてみるズラよ」
「承知した。では『おおばば様』は引き続き、ここでしっかりと報告を聞いていただきたい」
ホージュリアはローラをチラと見て、その場を去っていった。彼女の目が何を言いたいのか、イズヴァルトにはわかっていた。
しかしローラはホージュリアの真意に気づいてたのか、苦笑しながらイズヴァルト達に向けてこうぼやいた。
「あははは。陣立てや兵站のことならなんとかなりますが、謀略については今ひとつ頭が動かなくて無念でございますよ。あははは……」
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ホージュリアの読みは当たった。偽報と偽の死体はダテーゾフの公子達の憤激を買った。
いたいけな年頃の末弟と、お父上の妾達を処刑したとは非道である。許せない。
その前に、彼らの叔父を討ち取ったという実績が、討伐軍にはあった。
フルカワグラード近辺の諸城市にいた、ダテーゾフの公子5名は急ぎ、コゴタスクに向かった。父がヨコテゾフから戻って来る前に、勝負を決しようと思った。
だが、大公がヨコテゾフに逃げたと知っているのはごくわずか。公子とその副将だけであった。その他の者は、コゴタスクにいるものだと信じていた。
「公子さまらがコゴタスクに集まるのは、きっと大公殿下がいらっしゃるからだべ」
兵士たちはそう思っていた。しかしコゴタスクで事実を知った。大公様はここにはいなかった。よって兵士たちの士気はあまりあがらず、ただただ公子らと一部の武者らが、気炎をあげるのみだった。
とはいえ、計で15000程の兵が集まった。その中には100近いオーガの武者もいた。それと彼らにとって良き知らせも舞い込んできた。
ユリアゲツクにいるミョーゲチャコフへの侵攻軍のうち、3000近くの兵がフルカワグラードに向かっているという。
「しかもその中には、活躍を見せたサイゴークの傭兵団が、全て加わっているそうだ!」
その一団からの文を読んだ大公の長子が、弟たちの前で晴れきった笑みを浮かべた。次男が思い切り膝をうった。
「勝てる! サイゴーク仕込みの魔道戦術の腕前、存分に奮っていただこう!」
サイゴークの傭兵は全て、魔法戦士だった。公子らは勇気づけられた。気が逸り過ぎて、援軍への使いを送ると同時に出陣した。今から疾駆すれば、フルカワグラードにいる敵軍を挟み撃ちにできると思ったからだ。
ところが、である。
公子らの連合軍が10キロ程進んだあたりで合戦が起こった。ゲオルギー公子とホージュリア妃がコゴタスクに兵が集まっていると聞き、野営して待ち伏せしていたのだ。
時は夕闇。薄暗い中での戦いとなった。合計2000の騎兵は準備が出来ていない公子軍に切り込みをかけた。
中央を突破され、オーガ族の武者らが集められて守りに出たが、ミョーゲチャコフの弓騎馬の矢を受けるとバタバタと倒れていった。対オーガ用の毒矢であった。
オーガの武者らは、半分近くが泡を吹いて地べたでもがくようになると、残りは悲鳴をあげて逃げていってしまった。
公子らの間に空隙ができると、ゲオルギーは「死ねええぇッ!」と叫びながら突撃し、ホージュリア妃は鞍につけたまんずり用の突起でごしごしとやりながら、奇声をあげて後に続いた。
ゲオルギーは騎馬刀を振り回して次々と死体を作り、ホージュリアは薙刀を振り回して首を刈った。
その勢いは留まることが無かった。哀れ、この戦いに加わったダテーゾフ公子衆は、1人残らず戦場の露に成り果てた。
その最後の首が胴から離れた時、ゲオルギー公子はダテーゾフの将兵らに呼びかけた。
「大義は『おおばば様』につくおれらにあるっぺや! 降れえぇ! 降らんやつは、ひとり残らずぶっ殺す!」
総大将らを討たれ、頼みのオーガの戦隊を潰走させたゲオルギーらに、1万を超すダテーゾフ側は降参した。
しかしダテーゾフ側にはまだ、ユリアゲツクからの援軍が残っていた。
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コゴタスク攻めの軍にイズヴァルトは加わっていなかった。彼は城市の南の門の前に立っていた。エルフの衆は壊された門の真後ろに、イナンナとともに控えていた。
彼らがコゴタスクに向かわずフルカワグラードに残ったのは、斥候からダテーゾフの救援軍らしき姿を見たとの知らせを聞いたからである。
城市には、こちら側についたヴァレリー公子を護る将兵らが守備を担ってくれることになっていたが、先の戦いで
この時のイズヴァルトのいでたちは、彼が好んだ地味な鎖帷子ではなかった。ムーツ式の武者の格好だった。
朱塗りの小手とすね当てをつけ、赤い『どうまる』を上半身にくくりつけていた。背には『だいぶへんもの』の旗指し物をかけていた。
周囲に何本かの玉鋼の野太刀を刺しておき、手には、3メートル近くの長槍を携えていた。
兜であるが、ダテーゾフ大公が残していった宝物だ。飾り兜というもので、ムーツのオーガが作った像が前に取り付けられていた。
頭に2つ目玉のようなものがある、もこもことした赤い輪をつけた、青い目玉無しの魔物であった。しかし異界の土地神だという。『脈脈様』という名が言い伝えられていた。
「しかし、こんな『キモカワ』なものまで、オーガの皆様は好まれるのでございますなあ……」
イズヴァルトの頭を見上げ、そう呟いたのはローラだった。彼女はイズヴァルトに付き従っていたが、いつもの荷車に乗ってはいなかった。
身体をイズヴァルトの胴に針金編みの縛り布にくくりつけてもらい、背中と頭を彼と同じように赤く塗った女武者向けの具足と兜で包んでいた。
しかし聖騎士とは相向かうような格好でいた。鎧の下のほうは何も履いていなかった。それはイズヴァルトも同じであった。
「ううっ。ううっ……♥ さようでごじゃりゅな♥」
イズヴァルトはもぞもぞと腰を動かしていた。尻と脇こそよろっていたが、前は何も着けておらず、何もかもが丸出しであった。
そうして裸にされた勃起は、ローラの女の芯を貫いていた。さっきから精を放ち、ぼたぼたとこぼれていたが、サカるのを一向に止められなかった。
「イズヴァルトさま。あんまりし過ぎると戦えませぬぞ♡」
「こ、これしきのこと、大丈夫でごじゃりゅ♥ 拙者はローラどのと合体しながら戦いたいでごじゃりゅよ♥」
「ふふ。わたしもでございますよ♡ ああ……このまま一緒に討ち果たされても、それはそれで乙なものでございあまするな……♡」
死ぬ時は一緒、と耳元で囁かれ、イズヴァルトは夢見心地だった。またも陰茎が脈を打ち、搾精狂なローラの中に、熱くて濃い精液を撃ってしまった。
それでも腰が止まらない。なれど、ぞっこんの女の甘い匂いに欲情し、股間を動かして性感を高めることで、彼の五感は高まり、闘気は鋭さを増した。
ローラと肉でつながることで、この男は手早く本来の力を引き出せるようになっていた。
背を反らし、ローラが自分から腰を動かしやすくすると槍を持ち上げた。20キロもある重い長槍を振り回し、あたりの空気に悲鳴をあげさせた。
「うるさい! サカり過ぎずら!」
崩れた門の上にいたオクタヴィアが怒声を放った。しかし彼女はすぐに念話で呼びかけた。
「来る! もうそろそろずら!」
遠目の術で5000の兵団が迫ってくるのを、オクタヴィアは確かめていた。
パオレッタとマリアが長弓を握りしめ、矢をつがえた。イズヴァルトは相手の物見に見えるように、槍を高く掲げた。