聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
イズヴァルトとの再会の翌々日。
フルカワグラードの行政庁の会議室にやって来たウォルターは、先に来ていたミツクニュモスとイナンナに挨拶した。
今日は2人に呼ばれて来たのだ。今後の旅についての話である。イズヴァルトと同行すると決めたから、ウォルターは色々と突っ込んだことを聞かなければならなかった。
「ここでのお話はお二人だけかい? ゲオルギー公子とホージュリア妃様とも話しあったほうがいいと思えるが?」
「あの2人はフルカワグラード周辺の偵察などで忙しいからね。イズヴァルトさんは……『ローラ』さんを慰めるの手一杯だからね」
『ローラ』は立ち直れないでいた。あんな話を聞かされた後だ。数日でどうかなる、という話ではなかった。
「最初はオラたちだけだが、あとでヴァネロペさんがやってくるズラよ」
「ヴァネロペ……ああ。アンタに手を貸してくれたサキュバスだったよな?」
「これからの旅はヴァネロペさんと、『氷雪の栄光』を探しているツダサンチョーさんが先導役になるズラよ」
『氷雪の栄光』、ムーツの英雄でワターリ王国の祖となった、オーガ王アテールイが持っていたという秘宝だ。
イズヴァルトが受けている、『ゆうしゃ』になるための試験の最終関門が、その伝説の武器を見つけ、使いこなせるようになる、ということなのだが、つい先日、ツダサンチョーから見つかったという報告があがっていた。
「そいつを手に入れ、力を引き出すようになれば、イズヴァルトさんは晴れて世界の英雄、みたいなもんになるわけか?」
「本来なら『ゆうしゃ』ってのは世界を滅ぼうそうとする悪者とか化け物をやっつけたら、名乗れるものらしいけどな」
ミツクニュモスはイナンナをちらちらと見ながら言った。彼女は少しばかり良い服を着ていた。ダテーゾフ大公の妾から借りたドレスだ。
彼女のいつもの格好は、森のエルフがよく着ている、色合いは地味めで動きやすさばかりを重視した服だ。デザインこそ優美であるが、色気が感じられない。
しかしこのドレスは、腰のくびれをはっきりと見せ、スカートや袖の縁に金色の刺繍で彩っていた。
それをまとっていたのは、今のイナンナはワターリ王国の『代理人』だからだ。エルフの中でも特に美人の彼女が着ると、まるで美の女神の様に思えた。
「でも、胸にボリュームがあったほうがいいと思うがな。豊胸手術はしないのかい?」
「たわけ。天然ものの乳には勝てねえズラよ。オラは弟子のクリスタとローラさんを見たら、んなもんつけても悲しく思えてしまうズラよ」
おっぱいのことはどうでもいい。これからの話をしよう、とイナンナは呼びかけた。
「ヴァネロペさんから提案があったズラ。先にクボーニコフをぶっ叩いてから、『氷雪の栄光』を手に入れる」
「……待てよ。ヨコテゾフに逃げたペヨトル=ダテーニンはどうする?」
「もちろん逃さねえズラ。最初にヨコテゾフを……」
ヴァネロペが作る『転移ポータル』を用いて奇襲。ペヨトルを捕縛後、すぐにクボーニコフに殴り込みだ。しかも王都であり王国最大の港湾都市・ツチサキニスクの近郊にだ。
「えらい大規模の作戦を立てたな?」
「ローラさんの発案ズラよ。今回は魔竜さまも見て見ぬフリを決め込むらしいズラ」
連れて行く軍勢も決めている。ホージュリア妃とゲオルギー公子が率いる計2000の騎兵と、ダテーゾフがつけてくれた3000だ。計5000。
「そこにおまんが連れて来た、サイゴークの衆をつけようと考えておるズラ」
「クボーニコフか……魔法が効かないオーガは面倒だな。こっちにはドワーフの戦士が数名いるけど、焼け石に水、という感じだな」
「そっちはイズヴァルトさんがなんとかするズラよ。あと、今度は強力な味方もつけておるズラ」
「……ほう。随分と心強そうな面持ちだな?」
「もちろんズラ」
イナンナが言う。その助っ人は今、ツダサンチョーと行動をともにしている。
魔界のオークの剣豪、ヤギウセッシウサイのことだ。
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「ぶひいいいい……」
ふらりと寄った店頭で、魔界のオークであるヤギウセッシウサイは、豚の鳴き声のような様な悲鳴をあげていた。
いつもはフードをかぶって顔を見せぬが、ここでは外してイノシシのような首をさらしている。彼がよく遊びに来る、オーガの里だからだ。
この里は、ヒラーイズミ山に一番近い。5キロ行けば北の登山口だ。そこから先は、一部の魔法以外は使えなくなる、魔法抵抗がきわめて強めの『禁足地』である。
「ううむ。こんなものをおもちゃ屋で売るというのは……」
オークが見ていたのは、50センチほどの大きさの、オーガの女の子の布人形だった。人形というよりはぬいぐるみだ。
額についた二本のツノは、黒髪にかかっている。黒というより濃い青だ。後ろ髪は伸ばしていたが、お団子があった。顔つきはなんだか、たぬきのように見えなくもない。
人形は何も身に着けておらず、全裸だった。ご丁寧にも股と尻穴が再現されており、割れ目の奥には紅色の生地で肉襞が再現されていた。どちらの穴も深く作られていた。
胸のあたりが大きく膨らんでいた。可愛らしくコミカルなボインに仕立てあげていたが、触れるともちもちとした感触があった。
そして、奇妙なことにその人形の手足の関節に、不自然な区切りがあった。引っ張るとぱちん、と音を立てて外れた。スナップボタンがついていて、取り外し可能だったのだ。
「誰に向けて作ったのだ? オーガたちはこんなものまで作るようになったのか?」
「それちがうべ。おらたちの玩具工房でつくってねえですだ」
売り子の女オーガの声だ。人形に劣らぬ大きいものを胸につけており、薄手の『きもの』から、深々とした谷間をのぞかせていた。なのに顔は幼い。まだ嫁入り前の年頃だった。
「イーガからの輸入品だべ。『マイア=テクニカ』の新商品だべよ」
「そうなのか?」
「そうそう。『しりあないじいじにんぎょう』っていう商品名だべ」
売り子は背を曲げた。乳房のあたりが大きく動くのでヤギウセッシウサイは目を逸らす。
このオーガの娘はまだ、嫁入り前の年頃で幼い顔立ちではあるのだが、短めの『きもの』からのぞく二の腕やふくらはぎは、もっちりとしていて艶めかしかった。
「これ、『マイア=テクニカ』の新製品だべ。でもなあ、ナエバニアの工房製らしいっぺよ。ほら、このまんこのびらびらんところに、そう書かれておるだろ?」
娘は書かれているところを示そうと、人形の股の付け根に指を入れた。機械音じみてはいたが、えらく可愛らしい声が聞こえてきた。
「ひゃふ! くすぐったいよー!」
耳を疑った。どこかで聞いたことがある声に似ていた。
『本物』のほうは愛らしくてたまらない容姿なのだが、その声を聞くたびに心の底から恐怖を覚え、全身に悪寒がはしった。苦手な部類の種族の血が入っていた。
「このお人形さんは、こうして触るたびにしゃべってくれるんだべ」
穴になったところに指を入れ、ガシガシガシ。
「そ、そこはだめー! こんなのいじめだよ!」
いじめているわけではない。試しているだけだ。
「おら、おまえさまのことが大好きだから、べっちょをこうしていじっているんだべ」
「すきなのはわかるけど、あんまりはげしくしないで?」
「やさしく、やさしくいじってあげるべ」
指の動かし方をゆっくりにすると、「きもちいいー!」と人形は喜んだ声を放つ。
「ああ、いいよう。じっくりくにくにだいしゅき。あなたのお指でかんじちゃってるよー!」
「こうしてやさしくやさしくさわってあげると、
「……どういう用途の人形だ?」
「用途って? かわいいお人形さんだべ? 用途もくそもあんのか? おらわからん」
この人形は『性愛教育』用の知育玩具であることを、この売り子は知らなかった。
彼女の父がニンゲンの里にある『マイア=テクニカ』の直売店で見つけた時、その愛くるしさに参って仕入れた。里の子どもたちや近隣の村の女の子たちに人気で、これでよくお人形遊びをするという。
「買った村の娘っ子らは、股の穴やケツの穴にツノを入れて可愛がるんだべ。特にケツアナがおもしろい返事をしてくれるだ」
売り子は額のツノを、人形の尻穴に差し込んだ。
「うひゅ〜う♡ おちりのあなはやめて〜♡ とってもよわいんだよ〜♡」
構わずズボズボと始める。
「だ、だめだめ♡ このままつづけられるとしんじゃうよ〜♡ おねがいがあるの♡ おちりのあなをひろげるように、まわすようにぐにぐにしてねー♡」
売り子は人形の言われた通りにした。
オーガのツノはクリトリスと同格の性感帯なのだが、売り子はくすぐったくてとっても気持ちいいぐらいの気持ちでしか思っていないから、変にあえぐことは無かった。
「ひゃあん♡ だ、だ、だいしゅき〜♡♡」
人形は股の穴をいじくられた時よりも、声が喜んでいた。尻穴をいじくられるのが大好きだから、『おしりのあないじいじ人形』と名付けられているのだ、と売り子は言った。
「……なあ。これは本当に、ただの人形さんなのか?」
「そうだべ! でも、面白い仕掛けがあってな」
売り子は人形の右腕を引っ張った。ぱちんという音がして外れた。すると人形は「ぴえええええん!」と泣き出した。
「やだよう! わたしのおててをかえしてよー!」
ヤギウセッシウサイが気の毒そうにいなないた。人形はわめくが、オーガの売り子は左腕と両脚を外してしまった。
「ふえええええん! ひどいよー! ひどいよー! こんなむごいこと、ゆるされないよー!」
「そうだべか? おら、おめさまの事、赤ん坊みたいにめんこいと思うべよ?」
「……そう?」
「んだ。今のおめさま、とってもとってもめんこいべー!」
売り子が呼びかけると人形は途端に、機嫌の良い声を発するようになった。
「そうかなそうかな? いまのわたし、あかちゃんみたいにかわいいんだね。ばぶー!」
「そうだべさ。めんこいだるまあかちゃん、おっぱいのんでねんねしようね?」
「はーい。ばぶー。おかあさんのおっぱいがのみたいな。おとうさんがいたらおちんぽみるくをのませてよ。ばぶー!」
売り子は人形をとても可愛らしそうに慈しむが、ヤギウセッシウサイは心底気分が悪くなって、吐きそうだった。
「……誰だ。こんな恐ろしい玩具を考えたのは?」
「おそろしい? えれえめんこいでかぱい人形だべ?」
「顔といい喋り方といい、俺がよく知るお方にそっくりなのだ……そっちはツノが無かったが」
「モデルがいるんだべか? とってもめんこいお嬢さんなんだろうなあ」
いいや、とヤギウセッシウサイは返す。歳はもう20を過ぎている。しかも経産婦で孫さえいる。早くに子を為す一族の出である。
ただし、魔界のやんごとなき一族の末裔でもあった。
「ふーん。おらもこれによく似た娘っ子はみたことあるなあ。映像水晶でだけどなあ」
売り子の母が行商から買った、『かわいいもの映像』の水晶玉の中に何個か入っていたそうだ。
「このお人形さんをちっちゃくした、えらいめんこい子がなあ、おけつを丸出しにしてぶりぶりとひねっていたべさ」
他の水晶玉も同様のシーンが映っていた。中にはふっくらとした割れ目の奥の、とても幼い女性器が見えているのもあった。
売り子の母や姉達は、その娘が映った水晶玉を毎日繰り返して観たという。
「……」
「とーってもとーってもめんこい童っこだったべよ。それこそ全身なめまわしたくなるようだったべ……おめえさまも見たことあっか? おっかあに頼んで見せてもらうぺ?」
ヤギウセッシウサイは何も言わず、でんでん太鼓を4つ買って店を去った。この里まで来ていた3人の子どもたちと、お産の日が近づいている女の腹の子の為にだ。
(マイア=テクニカと言っていたな。あの人形を作った会社は。)
あのしゃべる人形だが、企画した人物は同じなのだろうか。
その女は話しかけると「てめえコノヤロー!」口調で返す、趣味の悪い人型のぬいぐるみを作った。血の気が濃いもの大好きなカントニアでは、たいそうな売れ行きだ。
そのぬいぐるみもまた、とある『おかた』の子供時代をモデルにしてデザインしていた。『おしりのあないじいじ人形』は、大人になった彼女をもとにしている。
(だとしたら、マレーネ=トードヴェル=キョウゴクマイヤーめ。聞き出して白状したら、ひっぱたいて叱りつけるしか無いな。)
出産間近の女とは、マレーネのことだ。彼女は従者のオットーとともに、この里にあるヤギウセッシウサイの借り家に住んでいた。