聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
さて。海洋公を襲撃し、隠れ家の少女達を奪還した海賊団を追う事になったイズヴァルトとマイヤは、エレクトラ達が島に到着した前日に軍港から出港した。
本来であれば昨日の夕刻に船を出す予定であったが、行き帰りおおよそ6日の船旅となる予定であったので、水や食料を運ぶのに手間取ったからだ。
出港したのは軍船3隻。うち一隻は亡き海洋公が乗る指揮用の艦である。河用の軍艦みたく小型で、船体を真っ赤に塗った大変に目立つ代物だ。
甲板は黒漆が施されて滑りやすい。武装もほんのちょっとで、左右の側元に数台の機械弩が取りつけられているだけだった。
「……目の毒でござる。かようなもので海洋公どのはいくさに臨まれたりしたのでござろうか?」
「戦闘には用いません。もっぱら、提督閣下が海賊衆のところに訪れたり、ご実家のオバーマゲルクに里帰りに戻られる時にお乗りになられてました」
合戦に使った事は一度も無いと武者は言った。外は派手だが中は豪華である。大公の寝室には大きなベッドが置かれていたし、風呂があれば専用の台所まであった。
提督の執務室に入ったイズヴァルトは、貴族の館の来賓室みたいな内装が施されたのを見て苦々しく思った。質実剛健を旨とするホーデンエーネンの気風に合っていなかったからである。
「まるでお値段が張る高級宿屋みたいでござるな。あの壁にかけられているのが提督の肖像画でござろうか」
壁に掛けられていた初老の男の容貌は美しく、若い頃は美男子として名を馳せただろうと思われた。体格も凄く良い。服の上からでも逆三角形の体型が伺えた。
しかし鎧が華美なのがいただけない。提督がまとっていたのは銀色の胸当てに蔦や鳥の紋様が刻まれているものであった。
「しかし派手好きでも頭の中はまさに武将、というお方でござろう。どれどれ、本を読んでみるかな」
イズヴァルトは本棚に並べられているうちの1冊を手に取った。外装は天下国家の事を説く類の題名が記されていたが、中身は小説だった。
「……私は憂国の騎士として今、この現状を大いに嘆いております」
「まあ。わたくしも同じですわ。ローエングリン様!」
「奥方もそうだったのですね。では、2人して今から語り合いませんか。この蝶や鳥が集う美しい庭を、2人の忠義心厚い男女の熱意をもって、救国の士達を集めるのろし台としようではございませぬか……ううむでござる」
その台詞の後に、登場人物2人の濃厚なセックスシーンの場面に入る。読み進めてもいろんなところで天下国家を語らいながら、緻密な描写を含んだ性交ばかりが描かれる。ただの官能小説だった。
イズヴァルトはそっと書を閉じた。他の書物もいかめしい題名だが好色文学の類であった。船はまだ2日ほど航海するという話を聞いていたから、イズヴァルトはマイヤに本を貸してもらおうと隣の部屋に向かおうとした。
そこにマイヤとカイルが2人してやって来た。彼がいたのは重要参考人として海兵たちに同行を求められたからである。
「イズヴァルト! このお部屋、私たちで使って欲しいと言われたんだけど、そうする?」
「かようにごてごてしたところは目の毒でござる。しかし、ありがたくさように致すことにしよう」
それよりも書を1冊貸してほしいとイズヴァルトはせがんだ。本棚にある十数冊を見てマイヤは尋ねると、全て三文文士による官能小説ばかりだとイズヴァルトは答えた。
「騎士と貴婦人との不倫だの凌辱だのそんなものばっかり。読んでいてあたまがくさっちゃいそうでござる。兵法か詩文を貸していただきたい」
「ふむふむ……題名は軍学や政治の本に見えるけど。どれどれ……うわっ! トーリが好きそうなのばっかり!」
そこへカイルがやって来て書をめくり始めた。一通りめくるとまた別の書物を手に取る。
「どれも読んだことがありますね」
「カイルさんもこういうのが好きなの?」
「いいえ。あの隠れ家で朗読させられていたんですよ。海洋公様に。僕と女の子達が男役女役と語り手に分かれて読み上げるんです。朗読劇というものですかね」
それからカイルは自分はもっぱら女の役ばかりを任せられたと嘆いた。海賊の娘達はなかなかに漢らしい声色の持ち主ばかりであったから、物語の中で女人の身体を攻める竿役の台詞が上手かったのだ。
気になったのでやってみせて、とマイヤはカイルに頼んだ。カイルは『城攻めの極意』という題名のそれの一文を読み上げ始めた。不感性の人妻が城攻めの達人だと称する流浪の軍略家に浮気するという話だ。
「ああっ! お殿様! こ、これが搦め手攻めというものなのですね! あ、あついわ! わたしのお尻の奥がじんじんする!」
肛門性交の場面であった。カイルは女役と男役を熱演した。美少女に見えるカイルが淫らな物語を演じるのを見聞きしてイズヴァルトは勃起し、思わず精液混じりの先走り汁をびゅっとこぼしてしまった。
マイヤもまた、ぼーっとした顔でカイルの朗読に聞き入っていた。少しばかりよだれを垂らしながら、「もうだめ。あーっ! ああーっ!」と叫ぶカイルを見て途端に恐怖を覚える。
「もうやめ! イズヴァルトが盛っちゃうから!」
「あ、え? あああ。はい……」
「……素晴らしい朗読だったでござる。しかし海洋公は毎晩こんなことを?」
そうですね、とカイルは書のページをめくりながらうなずいた。海洋公は決まって勃起し、女の子のうちの一人にフェラチオをさせたり股穴と交わらせたり頼んだと。
「朗読の間ずっとです。時には手が空いている女の子が2人3人と海洋公様のちんちんを舐めてあげたり、足の指でつんつんとしておりました」
「乱れてるなあ。クリスティーナさんはどうだったのかな?」
「クリスちゃんですか。あの子、こういう演技はへたくそですよ。僕の演技の迫力を増そうと濡れ場の時にちんちんをしごいたり、しゃぶってくれたりしてくれましたけどね。朗読の時はいつもそうしてくれました」
なるほどね、とマイヤは未だに女装のままのカイルの美貌を見てうなずいた。倒錯の気を起こしたイズヴァルトの身体から、すけべえをしたい気配を感じ取ると「にひ♥」と笑って目で伺う。
「……あやうく邪念に取り憑かれるところだったでござる」
「ちっ」
「マイヤが拙者とベートーベンとの友諠の深め合いをちょくちょくのぞき見していたのを存じているでござるよ
? おのこだけの友情の誓いの儀式をああいういやらしい目で見ないで頂きたいでござる」
「ちぇっ! だったら私も混ぜてくれればよかったのに!」
ぷんすかと怒るマイヤにイズヴァルトは戸惑った。当の尻穴での友諠を深めていたベートーベンがただ一人、生涯の女にしたいと言ってたのがマイヤだったからである。
あわてふためくイズヴァルトを見て、マイヤは飛び込んで抱き着くと、「ねえねえ?」と甘えて寝室を指さした。あそこで機嫌を取って欲しい。カイルがいる前でイズヴァルトは悩んだ。
「ん? なんだろう、このページは……」
別の書、『付け城戦術』という題名の官能小説を開いていたカイルが声をあげた。イズヴァルトとマイヤが近づいて尋ねた。
「このページから……ずーっと、魔法で書かれている隠し文字が書かれているみたいなんです!」
「隠し文字? どの様な?」
カイルは印を切った。行間にうっすらと、連なった青い文字が輝いて見えた。それを見てマイヤはエチウ諸島の言語だと教えると、読み上げてみせた。
「教主殿より以下の依頼がある。国王陛下を説き伏せて教団の布教をホーデンエーネン南部にも赦すようにして欲しい……これは?」
その続きもマイヤは読み上げた。
「……北部諸侯による信者への弾圧を止めていただかなければ、いくさを起こすしか他はない。誰が率先して信徒への弾圧を為そうとしているかはわかっていると教主は言っている。いかがすべきか。マハラ教団と関係の深い××公と××将軍。エチウ諸侯の元姫君達とその夫殿をどうにかしなければならぬ」
これは何でござろうか。イズヴァルトは首を傾げた。マイヤは次のページをめくった。そこにはムーツやシマナミスタンの暗殺組織の名と交渉の取り方が記されてあった。
「カルカド殿がご友人がたのつてを頼って調べた所、ムーツのナンブロシアにいるゴブリンが一番確実に働いてくれるらしい。もう少し値をはずめばオーガの剣士もついてくる」
これは一体。イズヴァルトとカイルが目を見張った。暗殺についての計画をたてていたのだ、とマイヤは告げた。
「つまり、海洋公様とカルカド様は裏でつながっていた、という事かしら?」
「上手くいくとは思えぬでござるよ。海洋公殿が目の敵にしていたどこのお家も、腕自慢の武者や魔道士を雇っているでござる」
この本に書かれていた事はとりあえず秘そう。イズヴァルトはマイヤとカイルに言い含めた。
□ □ □ □ □
出港から2日目。寝室にてイズヴァルトは、色っぽく悶えるカイルを見て己のペニスを怒らせていた。目の前でメイド服を着たカイルが、スカートの中でマイヤにしゃぶられているのを見物していたからだ。
「はうっ。うううう……」
カイルはしなをつくり顔をゆがませていた。身じろぎの仕方がいちいち艶めかしい。マイヤはちゅぱっ、ちゅぱっと彼の施術済みのズル剥けペニスを頬張っていた。
「ううっ。きんたまの中にまで響く様なおしゃぶりです……」
気持ち良さげに悶えるカイルがため息をつく。スカートの上からマイヤがどの様に口と首を動かしているのかがわかった。唇とその周りをきゅっと引き締め、じっくりと口しごきを為す技を使っていた。
スカートの前が膨らんでいた。カイルのペニスは大きい。しかも割礼を受けて亀頭が常にむき出しだ。聞けばツックイーの里と深く交流する、カイロネイア山地の女エルフの医者に手術を受けたという。
「ああっ。マイヤさん……とても気持ちいいですよ……」
夢見るような視線を天井にぶら下がった照明に向けて身じろぎする姿に、イズヴァルトは欲情を覚えていた。いかんでござる、と自分の額を小突いた。
「はあああ……ああああ!」
カイルは腰をぐい、と後ろへ引くと、前へ突きつけた。そのままマイヤの頭があるところを抑えてぐいぐいぐいと腰を動かす。
「ぶえっ! うぐえっ!」
マイヤの悲鳴があがった。イズヴァルトが椅子から立ち上がり「どうしたでござる!」と問いかけると、カイルは気持ちよく果てたのをとろけるような笑みでもって示しながら答えた。
「いっちゃいました……」
唖然とするイズヴァルト。そこに彼のスカートの中からマイヤが顔を出した。口を精液まみれにして、目に涙を浮かべながらイズヴァルトに抱き着いた。
「ふえええん! 舌かんじゃったよー!」
マイヤは可愛い舌を出して切れたところを見せた。血がにじんでいた。イズヴァルトはそれをついばんでちゅうちゅうと吸ってやると、カイルをにらみつけた。
「『口まんこの術』はマイヤが苦手とするところでござる。できるだけよしていただきたい!」
「ご、ごめんなさい。マイヤさんの唇とお口の中、とっても気持ちが良かったから……」
「あれはどうしても苦手だからって言ったのに―っ!」
マイヤはそのままイズヴァルトに抱き着き、胸に顔を埋めてぐずぐずと泣いた。おおよしよし、と愛する侍女の頭を撫でながら、イズヴァルトはしょげるカイルに注意する。
「クリスティーナどのであれば進んでそういうことをなさるでござろうが、マイヤは攻めのおしゃぶり専門でござる」
「は、はあ……」
「どうしても自分から動きたいのであれば、おまんこかうんちのあなにしていただきたいでござるよ!」
「ちょ、ちょっとイズヴァルト……」
文句を言おうとするマイヤのスカートをめくり、小さなお尻とその窄まりをカイルに見せると、イズヴァルトはおもむろに彼女の尻穴に右手の人差し指を突っ込んだ。
「うひ!」
ちょっと押しただけでふにっとした尻穴が指を引き込んだ。中ほどまで入るとひくひくと盛んに動いた。
「マイヤの急所はここでござる! おけつの穴をほじほじするだけでマイヤはおばかになってしまうでござるよ!」
「おぴょぴょっ!」
はあなるほど、とカイルはうなずく。イズヴァルトは窄まりの奥の柔らかく豊かな腸の末端をかきほぐした。
「おひっ! おひひひひひ!」
「本当は唾をつけたりぬるりとした液体をつけてからが良いでござるが、マイヤのこの中は結構ぬれぬれでござる! ゆえにすぐに入れてぐいぐいぐいと動かすのに何の支障はござらん! 痔になる可能性がござるが!」
「は、はい」
イズヴァルトはマイヤの泣き所について熱弁しながら、彼女をぐひぐへぐほほほとイキ啼かせた。つるりとした割れ目からどろどろと愛液が垂れ流され、彼女は更に尻をくねらせて悶え狂った。
「このお尻の穴は指だけでなくちんちんも大好きでござる。カイルどの。おしゃぶりだけでなくこちらもお試しなされでござる」
イズヴァルトは指を引っこ抜いた。人差し指は彼女の直腸液や大便カスでぬっちりと汚れていた。それを見てうえええ、とえづいたカイルに、イズヴァルトはこう言い含めた。
「いやがる『いまらちお』なるものをやってしまった罰にござる。さあ、マイヤどののお尻をたっぷりと可愛がるでござるよ?」
そう呼びかけて平手で彼女の尻をパシンと叩く。小さくもちゃんと肉がついており、叩いたところで肌がゆらんとたわんだ。カイルはごくりとつばを飲み込み、お尻を丸出しにしたマイヤの背後に立つ。
妙な声を放つだけの彼女の尻穴は、その周りをぬらぬらとした体液で光らせて、指よりも大きなものをこい願っていた。カイルはつばをごくりと飲み込み、己のスカートの前をたくしあげた。
マイヤと同い年ぐらいの美少女に見える可憐で華奢な体躯の割りに、育ち切りまがまがしいほどに太い幹と肉亀が迎えようとする蟻地獄に吸い込まれる。
「あううう!」
叫んだのはマイヤだった。カイルのペニスが半分ほどマイヤの直腸にねじ込まれると、イズヴァルトは「やさしく、やさしくでござる」とアドバイスをかける。
「こ、こうですかね?」
カイルはゆっくりと動かした。なるほど。これはお口以上に魔法がかかっている採精腔だと思いながら、自分から動いて覚える快楽に身をゆだねる。
「はひ……はひ……」
「さようでござる。そのゆっくりという感じでマイヤどののうんちあなの柔らかさと暖かさをちゃんと感じて楽しむのでござる」
「え、ええ……前の穴はどうなんでしょう?」
「ややきついでござる。その分お尻の穴はだいこんまで入るかと思われる」
「しょ、しょれはむりだょ!」
一度大根を試して尻が裂かれて死ぬ思いがしたとマイヤは告げた。いくら巨根好きの便穴でもそんな太い物を入れられなかった。でもカイルの『極太男の娘スティック』ならば十分入る。
マイヤは指を入れられた時以上に、喜びの体臭を身体全体から放っていた。彼女の年頃の少女との性交を厭う者でもちんちんがおっ立つ様なにおいだ。
イズヴァルトは勃起しながらも右手の指をチリ紙で拭き、マイヤの小さな耳元に息を吹きかけてささやいた。
「かわいいマイヤどの。さあさあ、拙者をいじらしくさせる気持ちよさげな吐息と声を放ち続けるでござるよ?」
「ふんふん、ふんぬー! (もうちょっと雰囲気というものに気を配ったらどうなの!)」
「……えらくご立腹でござるな?」
自分は不器用でござる、とマイヤの鼻息を更に荒くさせるような一言をつぶやきながら、イズヴァルトはカイルが気持ちよさげに腰を動かすのを見て笑った。
「いかがでござる?」
「く、クリスティーナちゃんに会ったらこれ、頼んでみます」
「……相手は海賊団の頭領のご令嬢でござる。無理かと思われるが如何か?」
カイルは急に動きを止めてうなだれた。そうだった、と悲しそうな声で。本人は相手の心に気づいていないみたいだが、自身もまんざらではないらしかった。
「しかしクリスティーナどのは無理でも、マイヤどのならいつでもお貸しするでござる。この件が解決するまではの話でござるが」
「そ、そうでしたね。ところで、イズヴァルトさんはしなくていいんですか?」
カイルがちらと彼の股間に目を向けて尋ねる。少年騎士はぶんぶんと首を横に振って「朝したばかりでござる!」と返して阻んだ。
「あにょねえ、かいりゅさん」
「あはは。しゃべり方が。ほんとうにバカになっちゃうのか」
「いじゅばるとはかいりゅしゃんのびぼうにめろめろになっちゃうのをいやがってりゅだけなんだにょ?」
「……ま、うすうすは感じてましてけど」
指摘されたイズヴァルトは恥ずかしそうにうつむいた。それからカイルがマイヤに気をやった。脱力したマイヤは肛門性交の余韻にふけながら、床に上半身を押し付けてお尻を突き出す格好となった。
カイルは尻から精液をぶぶぶと音を立てながらこぼれ出るのをじっくり眺めながら、剣の手入れにいそしむイズヴァルトに呼びかけた。
「ところでイズヴァルトさん。この一件が片付いたら、僕も旅に同行させていただけませんか?」
「なにゆえでござる?」
イズヴァルトは『姫竜の牙』の刀身から柄を外し、その溝に詰まった埃をこよりで取り除く。つい最近、小さなねじを見つけ、この柄と刀身が取り外し出来るのを発見したのだ。
「僕、魔道士としてはまだ見習いですが、皆さんのお役に立つ魔法をいくつか学んでおります」
例えば。温水を出して尻を清める魔法やその濡れた尻を乾かす温かく乾燥した風を吹かせる魔法。あるいは、水筒に絶えずお湯を足す魔法など。これから寒く風呂に入る事がなかなか無い旅においてはうってつけの魔法である。
「どれも別の方法で代用できるかと思われるでござるが……」
「ですが、これから向かうというイーズモーやヒッジランドは、ホーデンエーネンより寒くて雪深いと聞き及んでおります。寒がりで『飲精中毒者』のマイヤさんにとってはとても過酷なものに旅になるのでは?」
問われたマイヤは尻穴をきゅっきゅっとさせて、いい考えだとうなずいた。
「うん。きっとお外でもイズヴァルトのおちんちんミルクをがっぽりいただいたり、お尻の穴を可愛がって貰いたいからいいお話かもしれない」
「ヴィクトリアどのが化けて出てきそうでござる。拙者は叱られるでござるよ?」
「だいじょうぶだよ。わたしもまーぜてーって、おばけのヴィクトリアさんがねだってくるよ?」
「よろしくない事でござる」
イズヴァルトは『姫竜の牙』の手入れを終え、刀身に柄をはめてねじを回した。カイルは片刃の剣の刃に浮かぶ、波の様な紋様に目を注いだ。
「不思議な力を感じる剣ですね。これをヴィクトリアというかたはどこで手に入れたのでしょうか?」
「まだ話していなかったでござるな。ヴィクトリアどのは姫騎士エリザベスの末裔でござる。つまりはあの伝説の暗黒卿・ツネーヒ=アルグレイブの子孫でもござった」
そしてこの『姫竜の牙』と寝台の横に立てかけている大剣・『覇王の剣(ソード=オブ=ブロント)』がヴィクトリアの遺品。この二振りでこれまでどれだけ助けられたかをイズヴァルトは語った。
「なるほど。その様ないわくつきの剣をイズヴァルトさんはお持ちでいらっしゃいましたか。あれこれと恵まれているなあ……あ、言いすぎちゃいましたか?」
「その通りでござるよ。拙者、前世の記憶はござらぬがきっととてつもなくひどい人生を送ったかもしれぬでござる。マイヤは前世の記憶を持ちながら産まれた転生人でござるよ」
「ほう! マイヤさんも海洋公の様に転生人でしたか!」
マイヤはちり紙で尻を拭きながら、あの人物と一緒にして欲しくないとふてくされた。カイルは苦笑して自分も転生人を1人存じていると答えた。マイヤは目を大きく開いた。
「誰なの? イーガ人? ツックイーのエルフさんの誰かな?」
「王太子アドルフ様のお妾様のうち1人です。もう別れたようですが。何度かお目にかかった事がございますが……とても美しい人だったなあ」
その人物は初代のイーガ国王の腹心だった、凄腕のゴブリンの魔法戦士を祖とするガモーコヴィッツ家の姫だったが、王子に見初められて妾となった。アドルフの3歳年上だ。
「ガモーコヴィッツ。ホーデンエーネンの高名な騎士を幾人も討ち取った武家でござるな。勇猛王とあだ名されたジュンコックが討たれたホラーガトゥーゲの戦いで武名を轟かせたのも、確か……」
200年前の話だが、勇猛王はガモーコヴィッツ家の当主によって討ち取られた。それ程の猛将達を排出する一家という名声がある。イズヴァルトはやっと思い出して手を打った。
「そういえばグリーヴァスという姓は……ガモーコヴィッツの分家筋でござったか?」
「ご存じでしたか。僕は妾腹ですがグリーヴァス家は分家であり寄騎です。とっくに兄が家督を継いだんですけどね」
「カイルさんはそんなところのお坊ちゃんだったんだね! なのに一人で旅をしていたってどいういうこと?」
「だから恥ずかしい理由で旅をしていたんですってば!」
それよりも話を戻そう。そのガモーコヴィッツ家から出た王子の妾だった人物について。過去形なのは離縁したからである。
「その人もまたイーガ魔法戦士団に名を連ねる人物……それこそ12の歳で入団して頭角を現ような天才少女だったのですが」
千年に一度の逸材と言われる程だった。しかし15の歳に右手に大けがを負い、武者勤めを辞めた。それからは宮仕えの魔道士となったが、その時に王太子に求愛された。
「その人はアドルフ様のたった一人の男児、マルティン様を産んですぐに国を出て行ってしまいました」
「奇特ね。妾とはいえ王子様の奥さんになっていたんでしょ?」
「退屈するのが大嫌いだったみたいです。もともと武人肌でしたからね。でも僕は彼女にいろいろと前世のことを聞かされましたよ」
戦争ど真ん中のろくでもない時代に産まれて、女間諜としてあっちこっちを旅してまわった。それからいろいろと知っていたせいで組織に殺されたと語ってくれたと。
「諜報員か。私の時代や国の人じゃないのかも」
「『とくむきかん』とかいうのに所属していたみたいですよ。『まんしゅう』や『ちゅうかみんこく』、『そびえときょうさんとう』などという変な言葉を使ってましたね」
「なぬう!」
驚いたマイヤは思わずカイルの肩をつかんで乱暴に揺らしてしまった。その聞きなれぬ土地や組織や国こそがマイヤの前世と深い関係があったからだ。
「それこそ私の前世の『にっぽん』の人だわ! 『にっちゅうせんそう』の頃の人だよきっと!」
「ああ。そういう名前みたいなのも言ってましたね」
「ねえねえ、その人はなんていうお名前なの?」
「え、えーと、エレクトラ。エレクトラ=ガモーコヴィッツです。もし王太子様との籍を抜いていなかったならキョウゴクマイヤーの尊い家の名も名乗れるはずですが……」
イズヴァルトとマイヤはその名前を刻み込んだ。しかしその人物こそが後々に2人に大きく関わるのは歴史書にも記されている事である。
しかし、これから向かう海賊の島にもまた同じ名前の女暗殺者が待ち構えているのだが、さて、その当人はカイルが語ったイーガの王太子の元側室だったのであろうか?
その続きについてはまた、次回にて。