聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
イズヴァルトの時代の数百年後の人物、ギルバート=カツランダルクのエピソードとなります。
イズヴァルトのクノーヘ入りと、『氷雪の栄光』を手にいれる旅については、諸説ある。
あるサーガではもっと前、王国暦で言えば356年頃だったり、他の説ではもっと後の363年頃と語られている。
後の説のほうが世間一般的には有名で、「死んだはず」のマイヤ=カツランダルクと一緒に旅をしていたそうだ。そこで彼女は、自分そっくりにつくった『おしりのあないじいじ人形』にひどく憤慨して、それの製作者を詰め寄ったという。
が、エチウに残されていた『聖王のサーガ』のほうが、信ぴょう性はきわめて高い。ムーツに残るオーガの伝承でも、イズヴァルトは『ローラ』という女軍師を連れて旅していたそうである。
私、ギルバート=カツランダルクもまた、『聖王のサーガ』が事実に近いと信じている。オーガ達の歴史書も集めて検証したし、私の実家に残されていた書物をあらかた読んだ。マレーネ=キョウゴクマイヤーの手記もだ。
しかしだ。女軍師ローラ。このぽっと出の女にどうしてイズヴァルトは懸想し、妻にまでしたのかについては、『聖王のサーガ』の原著を読んでいても理解に苦しむ。
だが、私は様々な二次資料を読んで、それがどうしてなのかがわかっている。彼女はぽっと出ではない。もっと前から出ていた。それも、幼年期のサーガの頃からだ。
……私がラジオドラマ用の設定稿としてまとめたこの編を読んだ者は、そろそろローラ=ラダトゥム=セアックが何者なのか、わかってきたはずだ。
けれどもこの原稿……ラジオドラマでは、最後までイーガの網元の娘だった、軍師志望の女として描きとおしてほしい。
彼女がその人生で一番大きく輝き、その名を遺したという、ある戦いの終局までは。
つまるところ、『聖王編』の最後である。このサーガは聖騎士イズヴァルトが、『ゆうしゃ』として名を世界に轟かせるまでを伝えたものだからだ。
そして、『聖王』という存在。
あの時代のパラッツォ教の当主だったコーザ=ストーンマウントのことを言うのでない。
そのコーザが、パラッツォ教団の真の後継者に目したある女こそ、『聖王』だったのだ。
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「はへ?」
ギルバートはベッドの上で目を覚ました。まだ寝ぼけ眼で視界がぼんやりとしている。
横には押しかけ女房のサキュバスのモアナが、すやすやと寝息を立てていた。昨晩、黒い肌の彼女に4発も精をくれてやったのを思い出し、腰をさすった。もう50を過ぎたのに、この男の下半身は、元気そのものだった。
(『聖王編』のラジオドラマか。もう10年近く前の仕事の夢だったな。)
監修としてシナリオライターの為に、『放浪編』の大まかな概要を書いた。ちょっとした小説仕立てにしてだ。
あの当時の最新のイズヴァルト研究を盛り込んだ。どういうルートで渡ったのかは知らないが、それのコピーがナントブルグ大学のアネモネ=リットフェンテルトにも伝わっていた。彼女はベタ褒めしていたらしい。
しかしラジオドラマは結局、ギルバートの設定稿を受け入れず、古い『学説』をもとに製作されてしまった。
ラストはよくわからんホーデンエーネンの庶流の姫たちと婚姻し、50人の子を作って幸せに暮らした、などという嘘っぱちの伝承歌を元にしていた。
あれに厳重抗議にして放送業界から嫌われた。学説を巡って生まれが良い同僚たちと大げんかをし、トリシア大学を追い出された頃に携わった仕事だ。あれから数年は海外の大学の臨時講師として食いつないだ。一番貧乏な時代だった。
(イズヴァルトのサーガのラジオドラマの仕事は、あれきり来なくなったけどな。それにしても、あの頃を思い出すと腹が立つ。)
寝床から抜け出して風呂場に入り、全身に冷たい水をかけた。そうしないと目が覚めないし、股間についたモアナの愛液を洗い落としたかったのもあった。
風呂場を出るとモアナが立って待っていた。
「今日はトリシア大学の講義の日でしょ? ワタシもついていくわ」
「ありがとう。好意に甘えさせてもらうよ」
モアナは大学で、ギルバートの秘書として出入りを認められていた。資料集めがとてもうまい。後、男子学生からの人気があった。巨乳で頼めばすぐに股を開いてくれるというのもあったが、気立てが良いからだ。
自宅を出てトリシア大学に入る。研究室には若手助手のリッケルト=ベートーベンが待っていた。モアナのボーイフレンドでもある。
「おはようございます。先生、モアナさん」
色黒で大柄。2メートル近くあってギルバートの頭1つぶん背が高い。亜人族で最も頑強な肉体を持つと言われる、ナハリジャーヤ=エルフの血を引いているからだ。
「おはよう。リッケルト君。他の若い子はまだ来ていないようだね?」
「『てれぽん』で連絡来ませんでした? 今半期の論文作成とストレス解消の色街巡りでへとへとらしいですよ」
リッケルトは既に論文を書き終え、提出し終わっている。教授たちの評価はあんまり、といったところらしい。しかし仕事の早さで期待はかけられていた。
「そうかい。君、午後は空いている? 3時ぐらいは?」
「大丈夫ですよ。これから1カ月は暇をしますからね。どこに行かれるんです?」
「はは、内緒だよ」
それよりも。リッケルトが本棚から今日の授業で使う資料を選んで引っ張り出すモアナの尻を、ちらちら見ているのが気になった。
ギルバートも祖先にサキュバスがいる。男の性衝動の加減について鋭敏なほうだった。リッケルトはけっこう溜まっているようだ。手淫か女を抱いたのは3日以上前ってところだろう。
頑強な身体を持つナハリジャーヤ=エルフの子孫は、そんな短い禁欲期間でも、常人の二週間分のそれに匹敵する。相当な精神力が無いとまず、耐えられない。
「ちょっと、モアナ君」
「どうしたの、せんせい?」
「リッケルト君の相手をしてあげてくれ。さっきから目がギラギラしていて痛々しいんだ」
モアナがちらとリッケルトを見る。彼は恥ずかしそうにうつむいてしまった。
しかし彼の性欲が凄まじいことになっているのを、サキュバスである彼女が感づいていないわけが無かった。
「じゃあリッケルトさん、講義があるから短くなっちゃうけど、すっきりさせてあげるわ」
モアナは彼に近づき、後ろから抱き着いた。手を伸ばして彼の股間を触り始める。
「あのう、先生がいる前でこういうことするのは……」
「構わないよ。若い者の性交を拝んでみたくなってね。そのままここで、続けていいよ?」
遠慮なく、と言ってモアナが彼の股間のボタンを外した。真っ黒で大きなペニスが勢いよく飛び出して来た。20センチを超える、ずる剥けペニスだ。
「わーお♡ 元気ね♡」
「す、すみません。面目ないです……」
「ワタシも準備は整ってるわ。昨晩、思い切りせんせいのちんぽを挿れてたからね♡ おさすりはここまでにして、はめていい?」
リッケルトはズボンのベルトを外し、下まで降ろした。浅黒くて大きな尻が顕わになると、モアナはスカートをたくして彼にまたがった。するりと入って性交がはじまった。
「い、いつもより、おっきい♡」
リッケルトが夢中になって腰をスライドさせる。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
モアナもヒートアップだ。とっくに絶頂を覚えたが、彼が果てるまで声をあげるつもりだ。
リッケルトは奥手であったが腰遣いはうまかった。力強くグラインドさせ、モアナを悦ばせた。
そうして低い呻き声をあげて果てた。しかし頑強な身体を持つ若者と、1回2回の膣内射精では満足しないサキュバスはは、性交を続けた。
リッケルトの嬉しそうな息遣いと、モアナの嬌声と聞きながら、ギルバートは今日の講義で使うノートを書き始めた。今日のはホーデンエーネンの最後の王についての講義である。その時代は彼の得意分野だった。
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午後3時。
ギルバートはモアナとリッケルトと連れ立って、ヨーシデン市の南東の丘にある、公立の図書館にやって来た。
ヨーシデンの初代大公であり、『おしゃぶり姫』であったマイヤ=カツランダルクの蔵書を収めた図書施設が、この公立図書館の元々だ。ちなみに公立とはいうが、『ヨーシデン大公国立』という意味合いだ。
「『おしゃぶり姫』の書庫ですか。ここに来るのは久しぶりですね?」
リッケルトが尋ねる。ギルバートは先週もここに来ていた。
門から入口までの間は広場のようになっていたが、まわりの土とは違う四角く窪んだ箇所がいくつもあった。大きな何かを置いた跡だった。
「エルフ達がつくった、『おしゃぶり姫』と『くそひねり姫』の銅像を飾っていたんだ」
「それは初耳ですね?」
「連邦評議会の決議が決まって撤去されたの。15年前によ」
それらの銅像は、ヨーシデンの大公美術館の西棟に移されて展示されている。ギルバートがあの一角にある銅像たちだよ、とリッケルトに教えた。
「……でしょうね。あんなスケベなものを外に飾っておくなんて」
「ここに飾られている頃は、遠くからあの銅像を眺めながら手淫をする子供達も見かけたよ」
銅像は、幼少女がしゃがんでうんちをひねったり、しゃがんで脚を開いた姿で女性器を広げ、クリトリスをいじるなど、猥褻きわまりない姿ばかりのものだった。
銅像のモデルたちがきわめてドスケベだっだ、ということでもある。排便や自慰といったことをあけっぴろげにする者達だった。
「しかしここから撤去されたというのは、風紀を乱していたからでしょうか?」
「それもあるが実際は違うよ。ナントブルグにあるホーデンエーネンの連邦議会はね、それだけカツランダルクの一族を忌み嫌っているのさ」
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ホーデンエーネン連邦議会。
ホーデンエーネン内の旧王家親族衆や各地方の頭領たち、すなわち、『大公』と呼ばれる者達の議会だ。
彼等は大公と自称しているがもう既に、その土地を治める王みたいなものである。しかし、この連邦議会の制度を定めた人物は、このように言って新たな王を戴くことをやめさせた。
「皆が集まって話し合う議会の場。それをこれからは『王』と見做すのじゃ。だからそのほうらは『大公』である。これより先は、話し合いの場を崇めて大事に国の今後を話し合うがよい」
そういう場にも中心人物が必要で、そこは最後の国王の孫2人が担った。しかし彼等は『大公』のままだった。
どちらかが王冠を頭にかぶることや、誰かが王に仕立て上げることを、連邦議会を創った人物は許さなかった。それと、叛く者もいなかった。
「それだけの人物だったというわけでしょうかね、『くそひねり姫』は?」
「そういうことだよ。セイン王の孫で、ただ一人英傑と呼ばれた姫だ。トーリの孫でもありマイヤのひ孫だった」
『くそひねり姫』とは、アーノンレンシ=ホーデンエーネンのことある。
苛烈な性格で、妄言みたいな助言はことごとく斥けた。女王にふさわしい人物だったが、自分はその器に無いと、差し出された王冠を押し返した。
『碩学姫』に並ぶ天才と呼ばれ、トリシア大学を12歳で卒業した才媛でもあった。まあ、あの当時のトリシア大学はだいぶゆるゆるなところがあったらしいが。
トーリに似て『傾国の』をつけられそうな美人であったが、むしろ彼女は、治めた領地や国を栄えさせた。ムーツ大陸のセンダニア平原を自分のうんこで肥えさせた天女、『ヨー=キヒ』の再来と謡われたような人物だ。
至るところで曾祖母のように「ふんぬぬぬ!」とイキリながらうんこをかまし、功があった者には「大儀!」と褒め、曾祖母ゆずりのおしゃぶりで必ず労った。
そして『イズヴァルトの伝承歌』の本当のヒロインこそ、彼女だと皆に目されていた。いや、ヒロインというよりも娘みたいなものである。
史料や亜人の話によると、イズヴァルトはその姫からしょっちゅう、ちんぽを吸われていたそうだが。
「伝承歌は後半の編が一番多く広まっている。これは君も覚えているよね、リッケルト君?」
「はい。子供の頃から聞かされてますよ。天下の英雄イズヴァルトに過ぎたるものが2つある。1つはオーガ王の指揮棒にもう1つは天下の女傑の『くそひねり姫』って、歌にもありましたからね」
モアナが意味ありげにくすりと笑う。彼女はその『くそひねり姫』を間近に見たことがあるからだ。しかしその話をリッケルトにしようと考えなかった。口述をギルバートが記録してくれているからである。
銅像の台座の跡を眺めながら、ギルバートはぼそりという。
「でも私はこのホーデンエーネンで、マイヤ=カツランダルクこそ、本当のヒロインだと皆に広めたかったんだよ」
諸外国ではそういう評価になりつつあるが、やはりイズヴァルトと共に、冒険や戦場を巡った勇敢なアーノンレンシ姫のほうが重く見られていた。
しかしマイヤがいたからこそ、イズヴァルトは世界の英雄と呼ばれる様な人物となった。
「彼女がもし長生きしていれば、五体満足だったら……アーノンレンシ姫は、荒波の中に飛び込む事も無かった。ただの女の子でいられたはずなんだ」
「……」
「さあ、目的の場所に行こう。この先だ」
公立図書館のある丘のてっぺんに、ギルバートが目指した場所があった。
そこには1つの墓があった。英雄・イズヴァルトが当時のヨーシデン公に頼んで建ててもらった墓である。
マイヤを差し置いてイズヴァルトの正式な妻となり、若くして流行り病で死んだとされる、ローラ=ラダトゥム=セアックの墓だった。