聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
この崖をのぼりたい。
そう念じた時にイズヴァルトの足元が浮いた。
見れば大きな氷の板がイズヴァルトの足元にあり、その下には巨大な水のかたまりが生まれていた。
「なんと!」
驚いたのもつかの間、それは上へと突き上がる激しい水流となった。氷の板に乗っていたイズヴァルトは、またたく間に崖の上まで飛ばされ、氷の板ごと着地した。
割れた氷板から降りると、雪にまみれた魔獣たちの屍が転がる緩やかな坂であった。イズヴァルトがローラらをかばいながら、獣達と戦った場所であった。
そして晴れ渡った五合目の中腹では、いくつかの洞穴の入口があるのが伺えた。魔物たちはそこから出てきたのだ。
もう吹雪いていない。風もまったく起こっていなかった。
イズヴァルトは目をつぶり、感覚を研ぎ澄ました。そして見い出した。ローラ達の息遣いと、彼女たちが入っていった、洞穴の入口をだ。
「ローラどの、ヴァネロペどの!」
イズヴァルトは駆け出した。もはや身体に痛いところは無く、疲れも感じていなかった。
その洞穴は真っ暗闇であったが、彼が持つ銀の指揮棒は輝きを増し、青い光であたりをくまなく照らしていた。
洞穴の中は外よりもはるかに暖かかった。それゆえ、魔物のひどいにおいも嗅ぎ取れた。
その最たるもの、発情し臭くなったオスのにおいと獣の精液のにおいを頼りに、イズヴァルトは洞穴の中を進んだ。
果たして、ローラとヴァネロペをさらった、魔物たちのいる広い空間へと出た。
青い光に照らされた彼女たちは服を全て破かれ、全身を魔物のよだれと精液にまみれながら、なおも発情し続ける牡の魔獣たちによって犯され続けていた。
サキュバスであるヴァネロペは、その蹂躙に歓びを感じ、目を輝かせていたが、ローラはすっかり目の光を失っていた。血がこびりついた女陰を、のしかかった羽毛が生えたワニの様な魔獣の、おぞましい太さのペニスに貫かれていた。
「……なんてことを!」
ローラの無残な姿を見た、イズヴァルトは全身から殺気を放っていた。そして彼が握る指揮棒は、彼が握っている手から上の部分に、水晶のような透き通り、冷え冷えとした冷気を放つ刀身を具現していた。
青い光に照らされ、『氷青の剣』とでも名付けたいそれを構え、イズヴァルトは魔物たちに斬り掛かった。魔獣たちもイズヴァルトに気づき、一番近くにいたものが走り出し、大きな顎を広げて飛び込んできた。
「ちぇいっ!!」
渾身の力を込め、イズヴァルトはその魔物を斬った。あまりにも鋭いその刃は、魔物の頭と顔を縦一文字に、骨ごと斬り伏せてしまった。
あまりにも鋭い切れ味。しかし氷水晶の様な刀身にも衝撃がかかったようだ。刀身はたちまち割れてしまった。
しかし、イズヴァルトが念じなくても、指揮棒から凍てつく煙が漂い、新たな刃が作られていた。先程よりも1メートルほど長く、そして幅広だった。
「……これは、魔法の武具でござったか!」
それで襲いかかったもう1体を、横腹から両断する。精液のカスをつけていきり立っていた魔物のペニスが、断末魔をあげる代わりに精を吹き出した。
またも透明な刀身が砕けたが、不思議な棒はたちまち新たな刃を作ってくれた。つまりは無限に生まれる、使い捨ての刃である。
最高の切れ味と最低の強度を持つ、『凍てつく硝子の剣』でもってイズヴァルトは次々と魔獣たちを屠った。あたりには獣らの血と臓物と、発情したままだったがゆえに放ってしまった、末期の精液のにおいが充満した。
魔獣たちの体液と返り血にまみれながら、イズヴァルトは殺戮の機械となって次々と牡獣達を駆逐した。
ようやくローラ達の近くまで来た時、生き残りの魔獣らは、男根をいきり立たせたまま、悲鳴をあげて逃げていった。残されたのはローラとヴァネロペだった。
サキュバスは気だるげに上体を起こし、イズヴァルトに近づいた。
「……ごにょ」
「ローラどのの治癒は任せるでござる。けれども拙者は、貴殿らに謝らねばならぬでござるよ……」
助けに来るのが遅かった。しかし虚ろな目をしていたローラは瞳に光を取り戻し、力無さげに微笑んだ。
「イズヴァルトさん……このぐらい、大丈夫ですから。四肢を失ったことに比べたら、なんでもありませんよ」
イズヴァルトは獣に汚されたローラの体を、ひしと抱いて泣いた。そして彼女はヴァネロペに、できる限りの治癒魔法をかけてもらった。
乱暴な獣の性器で無理やりに広げられ、子宮の仲間でひどく傷ついた腹の奥は、ある程度の傷を癒やすことができた。
「ごにょ……」
「しばらくは安静に。できれば麓の村で養生を、でござるか」
「こくり」
ローラは『先祖返り』というものが進んでいたが、サキュバスのような頑丈な身体になっている、とは言い切れなかった。ニンゲンの身体よりかはタフな程度だ。
売春をなりわいとする、ウマヤーノの市街地のハーフエルフの娘たちほどでもなかった。『あいのこ』として生まれたものでも、最も低品質と蔑まされた者たちよりもだ。
「では、そういたそう。一旦最終試験はお預けでござるよ」
「うんうん」
イズヴァルトはローラを抱き上げた。彼女は泣きそうだった。自分のせいで最終試験を中断することになってしまうとは。
「ううう……くやしゅうございます……」
「構わぬでござるよ。拙者はローラどのの身体が癒え、一緒にこの山で『氷雪の栄光』の探索ができるのを楽しみにしているでござるよ?」
「でも、でも……お願いですから、この悔しさをイズヴァルトのさんのおちんちんで……」
魔獣たちに心が死ぬまで輪姦されてもなお、ローラはイズヴァルトの情をねだっていた。
「でも、痛むのでござるな?」
「おちんちんミルクをおまんこにおちゅーしゃしていただければ、このぐらいの怪我は……」
やむをえまい。イズヴァルトがローラを寝かせ、ズボンの手をかけたその時だった。
「試験はそれまで!」
聞いたことがあるこどもの声が、入口のほうから聞こえた。果たしてその声の主は、燃え盛る松明を持って姿を見せた。
この試験の監督官である、魔界のハーフリングのツダサンチョーだった。
「ツダサンチョーどの、どうしてここに?」
「探しに来たんだよ。それとね」
ツダサンチョーの同行者らが、姿を現した。
厚手の防寒具に身をまとった女2人。サキュバスのエルザの2人の妹のアナとオーラフである。でかすぎる乳がご自慢のオーラフは、防寒具の上の留め具を外して、胸の谷間を見せつけていた。
彼女たちはとある人物の身体を支え、付き添っていた。マントとフードを被った巨体の男であった。
けれどもフードからは顔が丸見え。イノシシのような顔の男である。この男こそ、魔界のオークの剣豪・ヤギウセッシウサイであった。
「ヤギウセッシウサイ! 貴殿が最後の壁として、拙者に立ちはだかるか!」
イズヴァルトは指揮棒を身構えた。しかし、あの魔竜戦役で圧倒したヤギウセッシウサイは、随分とお疲れ気味の様子であった。
「ぶひいいいい……試合はまた今度にしてもらえぬだろうか?」
「……おろ? セッシウサイ、どうも覇気に欠けていると見受けられるが?」
首を傾げたイズヴァルトに、アナとオーラフが恥ずかしげに笑った。それで意味がわかった。このオークの剣豪は、このサキュバス達にさんざん搾り取られたのだ。
ツダサンチョーはローラのぷるぷるしさたっぷりのおっぱいを見て、にひひと笑いながら答えた。
「ヤギウセッシウサイとの試合なんて、最終試験にはプログラムされていないよ。イズヴァルトくん、キミは合格したんだよ?」
その握っているものに、持ち主にふさわしいと認められたのさ、とハーフリングは笑った。
「その棒きれこそキミが探していた、『氷雪の栄光』そのものなんだよ」
「魔剣、ではござらぬのか?」
ヤギウセッシウサイが代わりに答えた。
「だがな、今は亡きアテールイに代わって、君が持つべきだと俺は思っているよ」
しばらくしたら頂上に向かうぞ、とオークの剣豪は呆然とするイズヴァルトに伝えた。
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洞穴の中は温泉場があった。イズヴァルトはローラをちゅっちゅしながら甘やかしながら癒やし、2日をかけた。ヤギウセッシウサイが指定したからだ。
彼もまたヒラーイズミに来てから、アナとオーラフの2人を相手にし過ぎて、湯治でもして気持ちだけでもすっきりとしたかった。
だが、湯に入ろうとするたびにヴァネロペが一緒に入ってきた。セッシウサイは「ぶひいいい」といななきながら、強く注意した。
「絶対に身体を引っ付かせてくるな。俺からありったけ精をもらおうなどと、思うな?」
「こくり」
だが、約束は必ず裏切られた。一緒に湯に入ると、ヴァネロペは尻尾を伸ばし、ヤギウセッシウサイのくねくねとした長いペニスをその先端の穴で吸い込んだ。
「ぶひいいっ!」
ヴァネロペの尻尾は吸精穴があった。これを伸ばして陰茎を咥え、しごいて精を搾り取ることができた。
しかも彼女のヴァギナの様な逸品であり、これでちんぽを咥えた彼女自身も性感を得れたのだ。
「……♡♡」
「ぶひっ! ぶひっ! ぶひいいいいっ!!」
「……♡♡♡」
「ぶひーっ! ぶひっ! ぶひっ! ぶひいいいいーっ!!」
セッシウサイは裏切られた。果たして約束の2日後、アナとオーラフとヴァネロペに担がれながら、イズヴァルトが心配そうに見守る中で山頂へと登った。
とはいえ、オークの剣豪は只者ではなかった。
この日はイズヴァルトに、『氷雪の栄光』の本当のちからを試してもらう為に山頂へ来たのだ。
足場の狭い、ごつごつとした天然のきざはしの上に立つと、セッシウサイは姿勢を正し、指揮棒を手にするイズヴァルトに呼びかけた。
「イズヴァルト! 君の持つ『
他の大陸に伝わる、精霊神たちの力を込めた武具よりも優れている。高らかな声でセッシウサイは言い切った。
「それを握りしめ、様々な形を念じるのだ!」
この指揮棒の本質を、セッシウサイは語る。
「凝固と凝結! つまり水を用いるのであれば、空気中や大地の水分を集め、氷の剣や槍を為す! まずは槍を頭の中で思い描け!」
イズヴァルトは槍を構えるように指揮棒を持った。たちまち凍てつく冷気が漂いだした。
えいやっ、と掛け声をあげて突く真似をすると、指揮棒は氷の柄と穂を持つ、4メートルほどの氷の槍となった。
「こうでござるか!」
「その通りだ! 槌にも斧にも変えられる!」
イズヴァルトはまた念じる。氷の槍は霧消し、指揮棒の先端には、氷の斧の刃が顕現した。
「先端の両方に刃を持つ、槍や剣も作り出せるぞ!」
イズヴァルトは横一文字に指揮棒を構えた。両端から瞬時に氷の剣が伸びあがった。
「今度や弓矢だ! その棒を弓と見立て、矢をつがえていると想像するのだ!」
これこそが、アテールイが一番好んだ型だとセッシウサイは言った。
イズヴァルトは指揮棒の中央を掴み、屋をつがえた真似をしてみる。即座、白く冷たい煙とともに氷の弦と矢が現れた。
「氷の矢は、一つ放てば空気中の水分と結合し、100本以上にも分かつ! 魔法に長けた者なら1000にも増える! 数多くの敵を相手にするならこの型を使うがいい!」
イズヴァルトは思い切り引き、天高く放った。矢は空で100も200にも分身し、数百メートルも飛び続け、崖の下に落ちていった。
「よし。これでよいだろう。イズヴァルト、『氷の覇王の剣』を作ってみろ」
「……承知した」
イズヴァルトは再び念じた。アナたちと見守っていたローラが、「おおっ!」と叫んで目を輝かせた。
在りし日の『覇王の剣《ソード=オブ=ブロント》』がそのままの形で、氷の大剣となって現れたのだ。
「もし黒騎士の剣のように形づけたければ、そうすれば良いのだ。もうアテールイの武器は君のものだ。イズヴァルト」
うむ、とイズヴァルトはうなずいた。
しかしこの指揮棒の秘めた力は、それだけではないとセッシウサイは言った。
「集め、固めるのは水だけではない。砂あるいは砂鉄。粒の細かい、さらさらとしたものなら集めて何かを形作るだろう」
そしてこれが持つ力を引き出すのを突き詰めて行けば、恐るべき硬度を持つ刃を作り出すことができるだろう。
「炭素の結晶と呼ばれているものだ。アテールイはそれで作った剣を用いた」
ローラが口を開く。何ができるのかを想像して彼女の目は、良からぬ光を放っていた。
「つまり、ダイヤ……魔法で作った金剛石ですね?」
「ああ、そうだ。その指揮棒より硬度は劣るが、ミスリルの装甲板も切り裂くほどだ」
とはいえ、あまり長い刀身にはならないそうだ。けれども一番の勝負どころでは役に立つだろう。
「す、凄まじい代物でござるな。この『氷雪の栄光』は?」
イズヴァルトはこの指揮棒は元々何だったのか、とセッシウサイに尋ねた。
「この山に眠っていた、とアテールイは語ってくれたが、それ以上のことはわからんよ」
セッシウサイはマントを広げた。腰の二振りを抜き放った。
魔界で最高と称される業物、『黒の忠節』と『白の叛逆』だ。氷の覇王の剣と、刃を合わせた。
「どんな材質か、ご存知でござるか?」
「この世界はおろか、魔界の様々な鉱物にも無い材質らしいが、ミスリルの様な退魔の力を持ち、金剛石より硬く、ありえないぐらいに高密度で、頑丈なのだそうだ」
イズヴァルトとセッシウサイが合い向かった。切り合う剣の舞い。
苛烈に、しかし優雅に。
久しぶりの重い剣を手にしたイズヴァルトの剣技には勢いがあった。
けれども何度か打ちあうと、刃が砕けてしまった。
「折れても、砕けてもまた念じれば良いのだ」
イズヴァルトは、今は手元に無い炎の剣の、もとの姿を思い出した。『氷雪の栄光』は、彼が望む刀身を作り出した。
「これでよいだろう。ふううう……」
ヤギウセッシウサイはへたりこんでしまった。やはり本調子では無かったのだ。
イズヴァルトはこのオークの剣豪に向け、深々と頭を下げた。
「ご教授、痛み入る。これを拙者は終生の友としようでござる」
「『氷雪の栄光』も、そう願っているだろう。さて、だ……」
ヤギウセッシウサイは、大きな右手をイズヴァルトに差し出した。
「おめでとう。これで君も『ゆうしゃ』の仲間入りだ」
「で、ござるか?」
「そういうことにしておけ。だが、くれぐれも魔竜様をそれで滅ぼそうとするな。我々魔族は、打ち倒すべき悪ではないのだ」
イズヴァルトはその手を握り返した。
時にホーデンエーネン王国暦360年の、1月もだいぶ過ぎた頃であった。
晴れてイズヴァルトは新たな武器を手に入れ、『ゆうしゃ』と名乗れる者となった。
そしてこの男と、軍師ローラの本当の大仕事が待ち受けているわけであるが、さて、それは一体何であったのだろうか?
その続きについてはまた、次回にて。