聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
山頂。
ヤギウセッシウサイによる『氷雪の栄光』のレクチャーが終わった後だった。
「やったね、イズヴァルト! やっとここまで来れたんだよ!!」
ヴァネロペに抱きすくめられていた『軍師殿』が、イズヴァルトの懐に飛び込んだ。魔獣達に膣をぶち壊されるまで犯された割には、随分と元気だった。
それもそのはず、あろうことか彼女は接種した魔獣達の精液で、より頑丈な身体となってしまったのだ。
身体の治癒力が高まり、運動能力がますます良くなった。四肢がなくてもぴょんぴょんと飛び跳ねられるのだ。
「イズヴァルト! 山を降りてムーツを出たら、まずはヘラちゃんに会いに行こうよ! また一緒に旅をしようって一緒に説き伏せよう。ね?」
「ははは。それがそなたの計画でござったな」
氷の剣を持つ勇者と炎の剣を携える勇者。その2人が肩を並べ、世界の安寧を守っていく。それがこの妻が描いていたグランドデザインだった。
「となればここは海路でナンブロシアをまわり、エチウ諸島に出る旅筋でござるな」
「そうしたいけど、とりあえずヴァネロペちゃんに頼んで『ぽーたる』を作ってもらおうよ? あのうざいドミトリーは、ちょっと挨拶するだけでいいと思うよ?」
ただ、それはイズヴァルトに任せることにしよう、とローラは言った。ヤギウセッシウサイが横から口を挟んだ。
「では、俺とツダサンチョー様は、コンゴウアミダラデンに戻って魔竜様に報告することにしよう」
「あれ? セッシウサイさんはこのまま一緒についてきてくれて、わたしたちのこと、助けてくれないの?」
「ぶひっ! うーむ、ううううーむ」
彼はローラの顔から目を逸らした。とても愛くるしい顔である。かわいいだるま女だ。
しかし彼女のご先祖は、魔界のやんごとなき系譜に連なるお方であった。この娘と同じく、いつもお尻を出してうんちをもりもりとひねっている。魔界で最高位のサキュバスであるのにだ。
「……申し訳ない」
「せっかく仲良くなったのに。ふえええん。ふえええん」
ローラは涙をにじませて泣くが、もちろん嘘泣きである。イズヴァルトとサキュバスらは苦笑した。
しかし欺かれるのに馴れていないヤギウセッシウサイは、本気の涙だと思ってしまった。
「泣くな泣くな……いやその、俺も君がどうしてもというのなら、魔竜様に頼んでみるが……」
「え、ほんとに?」
「おい、ヤギウセッシウサイ、騙されるなよ?」
ツダサンチョーが、大層呆れた様子で助言した。
「ボクの子孫でもあるんだよ、こいつはね。人をダマすのは十八番のはずさ。特に男にはその手を使ってくるよ?」
ローラはじとっとした目つきになった。ツダサンチョーを睨みすえて舌打ちした。
「……ちっ。だからオマエのことがきらいなんだよー! あっちいけー!」
「やれやれ。『ゆうしゃ』の試験がおわったらこれかい?」
「だいたいさー、私の片方のご先祖様にひどいことしたじゃん? 反省してよね?」
そんな古いことはもう忘れたよ、とツダサンチョーは鼻で笑った。
「キミ、サキュバスの一族よりもボクの血が濃いと思うよ? 少なくともナントブルグの王家のおねえちゃんたちは、キミみたいなねだり方はしなかったからね」
「やだなあ。でも、トーリみたいに理解に苦しむ性癖コレクションをやるような一族の血が流れているのも、ちょっとなあ」
「だよね。じゃあこれからはボクの子孫のほうを名乗るといいさ。ホーデンエーネン王家やヘラのウキトゥス大魔導家のほうが、あっちの家の名前よりもだいぶ名が知られているよ。今のこの世界ではね?」
ついでに。
約束していた『マイア=テクニカ』の社債をそろそろ譲渡しろ。
あと、魔族返りを果たして再び子どもが産めるようになったら、イズヴァルトのみならずボクの子も1人か2人産んでもらうよ、とツダサンチョーは迫った。
「えー? おかねのみならず、子どもを産めというの?」
「おいおい。ボクは魔界の大貴族だよ? むしろカキタレとなってボクの子を産んだほうが、のちのち都合の良いこともあるものさ。キミが産んだイズヴァルト君の子とボクとの間の子で結婚させれば、それこそ最強の魔族が生まれると思うよ?」
「近親姦で子孫を殖やすのって、それこそホーデンエーネン家の最初の頃にやったことだよね?」
子どものことについては、『軍師殿』はきっぱりと断った。やだよーう、と幼子っぽく言い返し、イズヴァルトにしがみついて、彼のヒゲに頬ずりをして甘えた。
「で、ござる。ただ、ツダサンチョーどの。拙者の娘のうち1人とはいかがでござろう。もちろん、娘の生涯の伴侶として、50年60年この世界に定住していただくことは?」
「ふん。それこそ嫌だよ。あたりの確率が渋いカジノしかないこの世界に50年もいるなんて怖気づいちゃうよ。まあキミの娘たちとえっちをしまくる生活ってのは、魅力的だね。どの子もボインに育ちそうだけからね。けど、1人のおまんこばかりに突っ込んでるなんて飽きちゃうよ。だったら全員よこせよ?」
イズヴァルトも申し出を引っ込めた。このホーデンエーネンのご先祖は、あまりにも欲深く性格が悪い。けれどもここまで付き合ってくれたことには感謝していた。
しかしツダサンチョーは、カス野郎ではなかった。少しは、友情みたいなものがあった。
「……まあ、この先のことも『おまけ』で面倒みてやるよ。可愛い子孫の『軍師殿』がおまんこさせてくれるなら、っていう条件付きだけどね。それに高貴な魔族の精液があれば、『先祖返り』もいくらか早まるだろ?」
□ □ □ □ □
ヒラーイズミ山から降り、麓にあるオーガの村に戻った。ブライアンたちが入口で出迎えてくれた。この周辺の村々を巡っていた、マレーネとオットーも一緒にだ。
『軍師殿』は久しぶりに顔を見た、お腹の大きな義妹との再会を喜んだが、言いたいことが1つあった。
「マレーネちゃんさあ、クノーへのおもちゃ屋さんに並ぶようになった『おしりのあないじいじ人形』ってあれ、なんなの!?」
おっぱいの大きなオーガの女の子のぬいぐるみで、腕と脚を自由に取り外せる奇怪な代物だ。どれか1つ取れば、
「ぴええええん! わたしのうでをかえしてよー!」
と泣き、全部取ると「やだー! やだー!」とやかましく泣く。『軍師殿』そっくりな声でだ。
しかし四肢を取っ払ったら状態で、くまのぬいぐるみみたいにかわいいよとか、あかちゃんみたいでめんこいべえ、などと褒めてやると、
「え? そうかな? そうなのかなー?」
と尋ねてきて、もっと褒めてやると調子にのって、
「わたし、だるまのオーガあかちゃん。ばぶー!」
とおどけてくれる。
そのぬいぐるみでもっと珍奇なところは、おまんこと尻穴の部分がちゃんと作られて、それをさすったりほじくったりすると、
「はふー♡ おまんこをいじくられるの、だーいしゅき♡」
「しりあないじいじされるの、たまらないよー! もっともーっとほじくって♡」
と甘えだす。実際にこのぬいぐるみとセックスをしたい人用に、まんこのあたりに挿れる樹脂製の『ずりあな』も売っていた。
しかしそのぬいぐるみは『軍師殿』、いや、ホーデンエーネンのかつての、『うんちあなガン見せアイドル』にそっくりだった。
「ああいうおもちゃを作るのはやめようね? 私、行く先々でオーガのおんなのこたちに、あの人形にそっくりだべなあ、と言われちゃったよ!」
「うふふ。それはよろしいことではなくて? おねえちゃまのはしたない程の可愛さを、クノーへの皆様によく知ってもらって、マレーネは作者冥利に尽きますわ?」
「でもあれ、ジョセフィーヌさんのデザインじゃん!」
すると、村からぬいぐるみのデザイン者がやってきた。ゴーレムづくりの名人でもあったエルフのジョセフィーヌだ。
この女は『軍師殿』をとても好いていた。マレーネ並に変な愛情も持っていた。なので、奇怪な『おしりのあないじいじ人形』のデザインにも力を入れたのだ。
イズヴァルトの胸に抱いていた彼女を、ジョセフィーヌは抱き上げて頬ずりをした。まるで乳児をあやして可愛がるようなやり方である。
「やっぱり、『軍師殿』はいつみてもかわいいズラな?」
「そ、そう? えへへ」
「お前様の可愛らしさを、もっと世に広めたほうがええズラよ。世界一かわいいと思われるよう、積極的に売り込めばええズラな?」
要はもっとアイドル売りをしろというわけだ。しかし手足が無いのはやはり、引かれるものがあった。せいぜい、精霊人やオーガなど、懐の深い者たちぐらいにしか愛されないだろう。
再会の喜びはともかく、このクノーへ以外の政情について確認したかった『軍師殿』は、少女のようなヴァネロペと、好みの男のタイプのイズヴァルトに、雌の獣の様な視線を向けるオットーに訊いた。
「ねえねえオットー。ぼやっとしてないでおしえてー?」
「……済まなかった。君が知りたい情報はあらかた集めているよ。ミズサワスチのシゲニウス様と連絡を取って、ちゃんと仕入れている」
村にあるヤギウセッシウサイの借り屋敷に行って、オットーは資料を取り出して説明した。
「北キンキでは北部諸侯の独立の機運が高まりきって、いつ暴発するかわからない状態だ。ホーデンエーネンではジューンショーン王弟が代王の地位から王となった。イーガは依然安泰。その他の大陸だが……」
チンゼーとシマナミスタンは変化なし。サイゴークはイナーヴァニアで変化がおこりつつある。ヤマナウラス家が戻ってきたのだ。
「イズヴァルト、確か今のイナーヴァニアって、ナンジョラス家が王様の一家だったよね?」
「さようでござる。しかしヤマナウラス家はパラッツォ教にあまり良い感情を抱いておらぬようでござったが?」
『軍師殿』を抱っこしていたマレーネが答えた。兄の実母のエレクトラからもらった情報だ。
「教帝様のご意向らしいですわ。なんでも、イナーヴァニアの支配を盤石なものとする為らしいですの」
『教帝』。その聞き慣れぬ言葉に驚いたイズヴァルトと『軍師殿』は、互いに目を交わした。
「それ、だれ?」
「パラッツォの新たな王様のことですわよ、おねえちゃま?」
「そうだよ。パラッツォはいよいよ、しっかりとした『国家』を作り出すことにしたのだよ。『教帝』とは、教主コーザと並ぶその支配者……お飾りの王ではあるが、勇猛果敢な若い王だとも諸国では伝わっている。
そしてその『教帝』こそが、とオットーとマレーネはイズヴァルトの顔に目を向けた。
「イズヴァルトさまとトーリさまの御子息さまの、オルランドゥ=カーンダークさんですのよ?」