※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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第百回 下

 精鋭たちが討ち取られ、総大将が戦死した為にクボーニコフ軍は瓦解。混成軍は大きく後退せねばならなかった。

 

 背後にあった山に陣を敷き、相手の出方を伺った。フワッセンから追っ手は来なかった。

 

 翌朝、シマモトッセンは斥候魔道士にフワッセン城の周囲を探らせた。帰って来た彼等は大変気持ち悪いものを見てしまったと総大将に報告した。

 

「戦場となった土塁の前に、オーガの戦士の生首と衣服を剥ぎ取られた胴体が串刺しになって並べられておりました!」

 

 おおよそ500近くのオーガの戦士の遺体である。女戦士も容赦なく首を斬られ、血まみれの裸身を野にさらされた。

 

 殺意満々で迎え撃つようだ。クボーニコフ軍への挑発と見た。しかし援軍は、すっかり戦意を喪失して動揺していた。

 

 頼みの綱が情けないことになっているのを、ホーデンエーネン軍の総大将・ゲラルド=シマモトッセンは好機と見た。

 

 クボーニコフ軍はまだ、1万4000近く残っている。オーガの戦士も300名以上はいる。この男は凡将ではなかった。弱卒ばかりとはいえ、数では圧倒的なパラッツォ教団との戦いをいくつも潜り抜けた歴戦の武将であった。

 

「よし。大まわりとなるが、タッカテオッキに橋をかけてフワッセン城を避け、ナーガハーマへ直行する」

 

 途中の敵方の砦は全部無視か追撃をいなすだけで、目的地への到着だけを目指す。そうと決めたこの男は、動くのは早かった。

 

 工作兵に無理強いし、3日のうちに急ごしらえの橋をかけさせると、タッカテオッキの向こう岸に渡りフワッセン城を回避した。

 

 途中で300名近くの脱落者を出したが、クボーニコフ軍と共にナーガハーマへとたどり着いた。出発してから5日後のことだった。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 フワッセン城での戦いは、クボーニコフの『負け戦』として各地に広まっていた。北海の向こう、エチウ諸島のカナザワース島にもだ。

 

 司祭騎士副騎士団長のエレクトラ=ガモーコヴィッツもまた、その知らせを総本山にある自分の書斎で、通信魔道士代わりの『経典の巫女』からの報告で聞かされた。会戦から翌々日のことだ。

 

「ほう。そうですかい?」

「トールキン殿とクリスタ=オブラーヤがいれば、そう簡単に抜けないでしょう。1500ぽっちが籠った城でも、様々な攻城兵器をもった1万の兵を跳ね返すはずです」

 

 フワッセン城に籠ったのは2000人近くだった。有名な古戦場であり、関門の1つとなるあの城が戦場になると、誰かが見立てたのに違いない。エレクトラはそうつぶやいた。

 

「きっと、籠城職人のミレイユ=キョーライさんも紛れ込んでいたのでしょうなあ。城をぐるりと囲む土塁と空堀なんざ、あの人のお家芸みたいなもんですからねぇ?」

 

 しかしクボーニコフはふがいない、とエレクトラは愚痴った。去年の秋から冬にかけてのワターリ王国との戦いで敗北し、意気を挫かれたのだろう。

 

 まさかあのイナンナが、ワターリ王家のご先祖様だったとは。あのエルフには『森の蝮』と呼ばれた凄腕暗殺者の過去以外にも、様々な伝説があった。しかし真偽は不明。謎多き女だった。

 

「しかし、こうもホーデンエーネンが弱くなっているとは、思ってもおりませんでした」

 

 経典の巫女が笑う。ホーデンエーネン軍は北方諸侯との数々の戦いで、敗北を繰り返していた。その無様な姿からは、かつての軍事強国の見る陰が無い。

 

「ジューンショーン王は文弱で戦争の継続は否定的。跡継ぎのジョーケイン王子は叔父と同意見、と聞き及んでおります。案外早くに終わりそうですね?」

「北方諸侯が戦っているのは、近衛騎士団だからでしょうよ。南天騎士団や聖騎士団が出張って来たらこうはなりませんぜ? 3番目に強いっていう、王家直属軍ってのもあるでしょう」

 

 だが、今回の戦争の主導は、意気ばかりでまるで戦術に無頓着な、『近衛騎士団』のみである。将軍は玉石入り混じっていたが。

 

 だが全体的に見れば押されがちで、ナントブルグでは悪い知らせばかりが届いているそうだ。

 

「こりゃあ、イズヴァルトさんが出る幕は無いようですねぇ……」

 

 エレクトラはため息をついた。実のところ、北方諸侯はパラッツォ教団の協力を陰で受けていた。それを主導していたのがエレクトラだった。

 

 ホーデンエーネンにばれないよう、武器弾薬や義勇兵をこっそりと派遣し、戦場を目当てにやって来る海外の傭兵を送る手筈を整えて来た。それでも北方諸侯らは苦戦し、追い込まれると見ていた。

 

 ちょうどその時に、うさんくさい女軍師と共に行動をしているという司祭騎士団長・イズヴァルトが北方諸侯の味方につけば、彼はきっと勝利をもたらし、ついには諸侯らをとりまとめる王に戴冠するだろう。

 

 王冠を戴いたイズヴァルトによる、広く大きく強い国。それが、オーミゲニアに生まれることを期待していた。再びパラッツォが戦うことになるかもしれぬ、ホーデンエーネンから守る壁になることを見越してだ。

 

 ホーデンエーネンは新王が立ったばかりで本調子ではないとはいえ、勢力を盛り返せば脅威となる。古来から好戦的な国だった。たかが1代2代文治派の王が治めただけで、その本性を容易に捨て去ることはできないだろう。

 

 その経典の巫女を下がらせ、戦争を長引かせる策を考える。国元のイーガに働きかけ、一時停戦を促そうかとつぶやいたところ、

 

「副司祭騎士団長様。ヴィクトリア様をお連れしました」

 

 経典の巫女のフラーナが、ヴィクトリアを抱いて入って来た。フラーナは教帝の側近のうち1人だ。

 

 フラーナの大きな胸に抱かれていたヴィクトリアは、母の姿を見ると飛び降りて駆け寄って来た。椅子から立ち上がったエレクトラが抱き上げると、頬をくっつけてきて甘えだした。まだ5歳である。

 

 エレクトラはフラーナのお腹を見る。

 

「フラーナ、だいぶお腹が大きくなりましたねぇ?」

 

 フラーナは教帝の寝所の世話もする。当然、その子を孕むこともあった。コーザの血を引く多淫な身体ゆえに、サキュバスの様に乱交を繰り返していたから、誰の子かは今のところわからなかったが。

 

「『法悦』を繰り返してもなかなか神の声が聞こえませぬ。精進するのみでございます……ところで、司祭騎士団長様からお便りはまだ来ておりませぬか?」

 

 フラーナは母に甘えるヴィクトリアを見てため息をついた。

 

「定期的に頂いておりますよ。ローラさんがかわいくてドスケベで困る、とおのろけばかりでしたねぇ。えへへへへっ」

「ヴィクトリア様がおかわいそうです。その女ばかりを構っていないでエレクトラ様にも……そのう、私にも……」

 

 フラーナは下腹に手を当ててうつむいた。他の『教典の巫女』はイズヴァルトと致した者がいたのに、自分はまだだったからだ。司祭騎士団長と『法悦』をし、子を産む事が巫女達の中で自慢となっていた。子供は全部、女の子だった。

 

「諦めなさいな。生涯の伴侶に出会っちまったら、もうエチウには目を向きゃしませんよ」

「でもせめてヴィクトリア様だけでも、お連れいただければ……」

「この子は大丈夫ですよ。教主様が目をかけてくれますし、可愛がってくれるお姉ちゃんがここにおりますからねぇ」

 

 父親不在のヴィクトリアのことを、コーザは何かと構ってくれた。お姉ちゃんとはヘラのことだ。子供を産んでから、子供達に親切になった。ヴィクトリアを特に可愛がっていた。

 

 とはいえ、教帝の妃となったのに、ヘラはよくふらっといなくなる。じっとしていられない性格だからだろう。ナンブロシアの公子との間にできた子供は、教主に任せっきりだ。

 

 ヴィクトリアは娘と一緒にソファに座る。彼女の娘は股のところをいじり始めた。心地よさそうに鼻息を鳴らすと、スカートをめくって割れ目を指でこすり始めた。

 

「ヴィクトリア、そいつは手を洗ってからにしなさいな?」

 

 エレクトラはたしなめた。パラッツォ教徒と一緒にいるということは、性にあけっぴろげに育つ、という事であった。

 

「うーん。やだ」

「だめですよ、ヴィクトリア?」

「おまたいらいらするからいじりたいのー! うー!」

 

 ヴィクトリアは割れ目に指を突っ込んで、くちゅくちゅくちゅと音を立て出した。「うー♡」と唸って夢中になっている。こうなると止まらなかった。

 

 この童女だが、既に処女は喪っていた。3歳の時、ばかでかいのにちいさなまんこにも入ってしまう、教主の『聖根』に貫かれて『ねんね』を終わりにしてしまったのだ。

 

 『法悦』の最中、ヴィクトリアは「きゃはー♡」と喜び狂ったという。好き者の血であった。

 

 それから幼い男の子達と、毎日『法悦』を楽しんでいた。それと『おねえちゃん』となったヘラにも毎日かわいがられている。おまたをぺろぺろされて「ひうー♡」と喜んでいた。

 

 パラッツォ教に属する者は、下半身のことに関し、万事が寛容であることを強いられた。ヴィクトリアはそれに溶け込んでいた。

 

「あうー♡ おかあしゃま♡ きもちいいこととめちゃやだー♡」

 

 エレクトラは苦笑するしかなかった。やっぱり自分の子であると、あきらめた。この子の姉のエレナもそうだった。異腹妹のオリガとおまたをくっつけ、「うんしょ♡ うんしょ♡」と貝合わせに励んでいたのだ。

 

 娘の『ひとり法悦』を見守りながら、真向いに座るフラーナに尋ねた。

 

「そういや、教帝陛下は北方諸侯の旗揚げに、何か余計なことを言い出してやしませんかね?」

 

 オルランドゥは、ホーデンエーネンの次の国王と目されるジョーケイン王子の兄である。弟がいる母国に対して、何らかの援護を考えているかもしれなかった。

 

 オルランドゥの側近であり、半ば愛人でもあるフラーナなら、詳しいところまで知っているに違いない。そう思って訊いた。

 

「今のところは。ですが……」

「なんですかい?」

「陛下は枢機卿のクロサワ兄弟様に、ホーデンエーネンにあるマイア=テクニカの支店に、『プラーグのヨッセル』の量産型の製法を伝えろと命じたそうです」

「……なんですって?」

「いえ、ご安心ください。枢機卿様方が教えに行ったのは、精霊魔法による『二級品』。エルフ達の製法と同じものです。土木工事用の魔道具として、製法を伝えるだけですよ」

 

 『プラーグのヨッセル』。土や岩で造る、二足歩行の魔道人形である。ゴーレムともいう。エルフによるそれは『力持ちのやさしい友達』という名であった。

 

 その魔道人形はクボーニコフとの戦いで大いに活躍した。魔道具だが力任せに殴り、蹴るものだから、オーガにもいくらか効いた。

 

 エチゴニアで起こった決戦では、パラッツォ教側はそれを用いてクボーニコフ側を完膚無きまで打ちのめした。その話があるから、エレクトラはそれをただの土木工事の道具とは見えなかった。

 

「……本当に、土木工事にだけ使ってくれるとお思いなんでしょうかねえ?」

「今となっては信じるだけです。教帝陛下は善人ですから」

 

 しかし、エレクトラの悪い予感は後々、当たる事になる。

 

 ところで、教帝オルランドゥは何故、この様な決断に至ったのか? その理由とは?

 

 その続きについてはまた、次回にて。

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