聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
コショーショーがこの世界を楽しむ為の、もう1つの『おもちゃ』。
それは、パラッツォ教団の教主・コーザの養女である、ヘラのことである。
コショーショーはイナリーレンに、ヘラの動向を探らせていた。それから時が満ちたら、自分の元に連れて来るようにともである。
「あんまり進んでいませんね」
イナリーレンはきっぱりと答えた。コショーショーのこめかみに青筋がたった。
「ねえ、ちゃんと仕事してるの?」
「もちろんですとも。しかしヘラ自身を動かすのは、今のところ難しいでしょう」
ヘラはまだまだ『善人』だ。イナリーレンはそう評する。
「多くの人の血で手を汚したようですが、まだ心は汚れていない様子。パラッツォの教えにとらわれ、教主コーザに心服しているので、コショーショー様の『おもちゃ』になるのは先の話、といった様子です」
「ふーん。心を操る魔法を使うというのでもだめ?」
「コショーショー様が、トーリ=カツランダルクに比肩するお力の持ち主であれば、可能でしょう」
要は無理だということだ。へたな心理魔法だと、強固な理性やしぶとい精神力で跳ね返されてしまう。コショーショーも人の心を操る魔法が得意だが、コーザやトーリには、程遠かった。
「じゃあ漬けておけ、ってこと? 3年も5年も待ってられないわ。この1~2年でワタシを面白がらせる珍獣に仕立て上げたいの」
「2年以内には仕上がるでしょう。あのヘラというのは、なかなか香ばしいことをしているようですから」
イナリーレンは知りえた話をコショーショーの耳元で、小さな声で語った。
魔界のハーフリングの姫の顔に笑みが浮かぶ。爽やかではない、ねっとりとした邪悪な笑みだ。可愛らしい顔貌の奥には、人の不幸を愉しみとする悪魔が潜んでいた。
「それ、誰から聞いたの?」
「ヘラに裏で手を貸している人物です。その者ですが、策謀を弄するのが大好きな悪党でして……一度会ってみたらいかがでしょう?」
「ふうん。居所はつかめるのかしら?」
「容易ですよ。このキンキ大陸で『
『
コショーショーは聞いたことがあった。
とある世界の魔法術式で、その世界の小さな地域の者が編み出したものだ。
それを魔界の主だった者や、魔道の研究家の多くが知っていた。己の魔力のみで発現するのが、魔族の魔法と類似していたからだ。
「『
「それを神聖術式、とその者は称しているようです」
「随分と御大層な名前で呼んでるんだね? 本当のこと教えてやろうかしら?」
「理解できないかと思います。ところでその人物の名前ですが」
カヅノ=セイジ。
オーミゲニアをよくうろついている、とイナリーレンは言った。
□ □ □ □ □
カヅノ=セイジはすぐに見つけられた。
オバーマゲルクの郊外をうろついていたのだ。イナリーレンによってコンゴウアミダラデンに連れて来られた彼を見て、コショーショーはぎょっとなった。
「イナリーレン、どうしてそいつ、アナタにひっついているの?」
「ご本人から聞いていただけませんか?」
旅装に身をまとったカヅノは、イナリーレンの尻尾をしきりに触っていた。
「ふわふわとしているからだ。それといいにおいがする。その理由じゃ不満か?」
「まあ、わかるけど……」
普段は何かを悟った様な、超然とした表情のイナリーレンが、むっとしていた。
ゼンゼとフェルンは、彼の両肩に止まっていた。カヅノは両方に頬ずりをして、彼女らを困らせていた。
「イナリーレンだけでなくゼンゼとフェルンまで。アナタ……相当なモフモフ好きだね?」
「まあな。前世は柴犬を飼っていた。もふもふとして可愛いものが俺は好きだ。もちろん、女もそれ以上に大好きだが……ククク」
悪党っぽい声で笑ってみせるが、顔が緩み切っていてだらしが無かった。彫りは浅いが美男子なのに、何か勿体ないとコショーショーは思ってしまった。
ソファに座ったままのコショーショーは脚を組み替えた。
「ふうん……アナタも転生者?」
「まあな。とある世界で生きていた。俺と『同志』達はその記憶をしっかりと覚えているのだ。神聖術式もな?」
『同志』というのは、パラッツォ教の『枢機卿』のことだとカヅノは言った。自分達には大きな目的があるとも。
「俺達の前世の世界を救ったという救世主が、この世界の今の時代にいるという話を聞いて、この世界に生まれ変わって来たのだ。炎の剣と氷の杖を持つ人物。俺達は『墓守』と呼ばれる娘からそう聞いた」
その前世の救世主を自分達が死んだ時点の前世の世界に招き入れ、世を救ってもらうのが目的である。
「救世主? ふうん。例えば、メシアという呼ばれ方をしていたり?」
「……何故知っている?」
「ふーん。やっぱりそうなんだ? うふふ。アナタはあの世界の住人だったのね?」
コショーショーが言葉を並べ立てた。
イエス=キリスト。
仏陀。
マホメット。
ローマ。
アメリカ。
それから、スマホとニンテンドーとネトゲ廃人。
「……俺の世界の旧時代……大破壊前の人物や国や文化ではないか!」
「ふふ♡ そーなんだ? アナタ、そーとー未来から来たようね?」
コショーショーもあの世界のことを良く知っていたが、『大破壊前』という言葉でくくられる事件は聞いたことは無かった。
(第二次世界大戦以降に、破滅的な戦争なんてあの世界にあったかしら? ここに立ち寄る前に行ったけど、いつものように面白いものが沢山ある、きらびやかな世界だったと思うけど?)
トーキョーという街で、父である魔王が所望した、最新版のゲーム機器のPS3と、大作RPGの13作目を買って、部下に送り届けさせたのだが。
一緒についていったサキュバス達が、iPhoneという道具を見て、「きゃー♡」と叫んではしゃいぐ様もその目で見てもいた。
魔界の者の頭では考えられない、美しくすっきりしたフォルムが魅力的だったのだ。
「お前は、一体何者なのだ? ただの魔族の小娘とは思えん」
「しつれーねー。ねえイナリーレン。ワタシのこと、事前にちゃんと説明した?」
イナリーレンの返事は「いいえ」。カヅノは狐の獣人の尻尾とシマエナガ型の魔族の愛らしさに呆けきってしまって、説明をちゃんと聞いてくれそうに無かったからである。
「そう……ワタシの名前はコショーショーよ。このコンゴウアミダラデンの臨時のあるじでもあるの」
「……ほう、お前が魔竜の後釜、というわけか?」
コンゴウアミダラデンの主が交代制だということを、よく存じている様だ。
「後釜っていうわけじゃないわ。あくまで代理よ? 3年だけ居座る様な形だから、ずっといるわけじゃないわ?」
「そうなのか。こんな小娘に仕事を押し付けるとは、魔界も随分といい加減なものなのだな?」
「ワタシ、これでも魔王の娘なんですけど? パパにはしっかりと役目を務める様にって、常日頃からお小言を頂いているんだから。それに、ワタシのこと、もうちょっと敬ってくれたっていいじゃない?」
「フン……文句を言うなら、可愛いいが過ぎて威厳が保てぬお前自身の容姿に言えばいいさ」
コショーショーは褒められて、ちょっとうれしくなってしまった。意味無く脚をまた組み替えてしまった。
コショーショーは自分の髪の色と同じ色のワンピースを着ていた。スカートの丈はとても短い。太もものところまでしか無い。
それと、底の厚いサンダル履きで、つま先とかかとが見えていた。カヅノ=セイジは彼女の足をしっかりと見て、なかなかに良い形をしていると思った。
「かなりの美脚だな? 舐めまくりたいぐらいだ」
「言い方が下品過ぎるわ。ハーフリングの趣味もあるの、アナタ?」
「まあな。大好物だ。胸が大きい女ももちろんだがな? それとだが……下着の色は黒だな?」
脚を組み替えた時に見えたものを、彼は見逃さなかった。
コショーショーはぷっ、と笑ってしまった。相当なスケベだ。御し易そうだ。
「ふーん。聖職者のくせに煩悩まみれなのね? 聖性とかいう小賢しい理屈で、はしたないとか行ってくるかと」
「パラッツォ教はそういうもんだ。この世界のマハラもメジェイドもな。で、用件はなんだ?」
「うん。アナタが抱えている『おもちゃ』、ワタシにも貸してくれないかな?」
「おもちゃだと?」
「教主の義理の娘よ。血に飢えた種族の子だ聞いたの。育てるとなかなかに面白そうだからね?」
「何をたくらんでいる?」
コショーショーは立ち上がった。それからサンダルを小気味よく鳴らし、カヅノの近くに立った。
「この世界をもっと楽しくしたいのよ。だってこのままじゃ、大淫婦クラリスの息子が、この世界を救っちゃうじゃない?」
「大淫婦……ああ、あいつのことか! ははは! コーザが救世主か! 馬鹿を言え!」
カヅノ=セイジは吐き捨てた。あの男にはそんなことができない。せいぜいが、エチウとその周辺の王になれるだけの器だと吐き捨てた。
「それとな、俺はあの男を、救世主と認めるつもりは無い!」
「ふうん? 手足となっているのに?」
「そうだ! ヤツは『獄炎の凱歌』を扱えられ……いや、確か使えたな。あの男、炎の魔剣で暖房や厨房に火を入れたりしてたな。それと、蒸し風呂にもだ!」
但し、人を傷つける為の道具として扱うのは、イヤそうな顔をしていた。ヘラが持っていた『姫竜の牙』もだ。炎の剣の力を併せて温風を起こし、ヘラの髪を乾かすドライヤー代わりに扱っていた。
「……ふーん。それじゃあ、アナタの元の世界を救えなさそうね?」
「ヤツは魔法も体術も恐ろしく強いが、基本、戦いは好まん。それでも、あの心理掌握の魔法の力は凄まじい。あれでもあの世界を正すことができるはずだ。だが、俺達がその件を申し出た時には固く拒んだ……」
理由はこうだった。
「まずはこの世界をパラッツォの教えで、秩序あるものにしなくてはなりません」
大望を成し遂げた後なら教団を後継に譲り、自分がその世界に旅立とう。コーザはそう言ってくれた。
「だが、パラッツォの世界制覇は一向に進まん。1か月もあれば世界帝国を築ける実力を持つくせに、その力を用いようとしないからだ。ヤツは甘ちゃんだからな!」
「コーザってすっごく怖いのね?」
「それもあの、トーリ=カツランダルクが出て来るまでだがな! あのクソ女に負けたせいで、あの男はすっかりしぼんでしまった! それと、水魔のブランカとかいう魔族のガキも!」
「ブランカ? あ……え……?」
コショーショーの顔から、血の気が引いてしまった。その名を聞いたイナリーレンも、びくっとなった。
ブランカは魔界最強の種族と言われる、水魔族の最高位の一族のお姫様だ。触手と治癒ぐらいしか魔法は使わないが、その魔力は絶大だった。
コショーショーとイナリーレンは、水魔の触手魔法について身に覚えがあった。
あのぷるんとしてうねうねしたものに絡みつかれてまさぐられると、やみつきになっちゃう♡ 一度、身も心も奪われ、廃人になった経験を持っていた。
「ふーん。そう。そうなのね……」
「おい、なんか顔色が悪くなっているようだが?」
「気にしないで。そうそう。『おもちゃ』についてワタシにも遊ばせてもらえるかしら? ちゃんとお礼をするわ。何がいい?」
カヅノ=セイジはコショーショーをじっと見た。それから笑みをうかべた。
「履いているパンツを寄越せ。それでいい」
「は?」
「お前の可愛さに免じてそれで手を打ってやる、と言っているんだ」
「……そんなので、いいの? 別にパンツが隠しているものを舐めたり、挿れたりしてもいいのだけど?」
コショーショーは自分の
「ヤるのと鑑賞するのとは違うぞ? 俺は可愛いと思えるものには手を出さん」
「そ、そうなの……」
「ほら、パンツを脱いで、さっさと俺に寄越せ」
「わかったわ……」
コショーショーはサンダルを脱ぎ、スカートに手を入れ、前かがみになると履いていたものに手をかけた。
黒いショーツが細い脚を伝いだした。両側を紐で繋げた、生地面積が少なくて薄いものだった。
「随分とやらしい下着を履くんだな? ガキのくせに」
「だって魔族だもん! こういうエッチなのが大好きなんだから!」
「……そうなのか? イナリーレン?」
狐の獣人は、「知らない」と答えて自分のスカートを持ち上げた。尻尾をつけた尾ていの下は、何も身に着けていなかった。
「下着をつけるつけないはその人個人の趣味というものだよ。ちなみに私は身に着けない派だ」
「サキュバスどもと同じか。まあいい。ちっちゃくて可愛い尻は仕舞っておけ。俺はこのモフモフだけで十分だ」
コショーショーはなんだかバカにされた気分だった。顔を赤くしたまま、下着を脱ぐ姿がカヅノにとって悦ばしいものにうつった。
(そうそう。そういう恥じらいが無ければな。ククク……。)
脱ぎ終えると、コショーショーは自分の股のにおいが籠る、温かい布をカヅノに手渡した。彼は面白がって広げてみせ、内側の生地のにおいを嗅いだ。
「うむ。可愛いにおいだ。魔族の娘もカマンベールみたいなまんこのにおいをさせるのだな?」
「お菓子みたいなにおいがするのは、サキュバスだけよ!」
でもこれでは不安に思ってしまう。下着1枚だけで手を打つとは。「ほんとにいいの?」とスカートの前をはだけさせ、無毛のつるつるを見せてやると、カヅノ=セイジは目を怒らせて怒鳴った。
「そこまでは求めておらんぞ、小娘!」
「なによっ! パーックリ開くからちゃんと見なさい? ほらほら、舐めたくなってきたでしょ?」
「ガキが余計なことをするな! もっと自分を大事にしろ!」
「何を言ってんのかさっぱりわからないわ! 今さっき、ワタシにパンツ脱がせたくせに!」
パンツは別に身体の一部じゃないからいいのだ、とカヅノは謎理屈をぶってコショーショーを呆れさせた。
「……で、ヘラでどうやって遊びたい? 言ってみろ?」
「そうね……じゃあさ。イズヴァルトとかいうやつと、敵対させられないかしら?」
その提案にぎょっとなったのは、カヅノ=セイジではなくイナリーレンだった。