聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
「何でお前がいる、イズヴァルト!」
「それはこっちが言いたいでござる。カヅノどの。なんではだかんぼうなのでござるか?」
イズヴァルトの目にはカヅノ=セイジのご自慢のものが映っていた。亀頭が一際大きくて、幹もなかでぶっとくなっている女殺しの『大刀』だ。
そして『軍師殿』はえへらえへらと笑っていた。そのちんぽから濃厚な精のエキスのにおいが漂っていたからだ。精虫がかなり多そうだと想像した。
「えへへへ♡ イズヴァルト、このかっこいい『にほんじん』はだれ?」
「日本人だと……? お嬢さん、どうしてその言葉を知っている?」
カヅノは『転生者』だ。『枢機卿』と呼ばれる11人がそうである。
『軍師殿』の未来の日本で前世を送ったと、イズヴァルトは聞いたことがある。サクラウチやクニキダといった、何かと話をしに来たがる者達が教えてくれた。
「拙者の妻も転生人でござるよ。貴殿も同じでござろううに。ところで、はだかんぼうなのはどういうことでござる?」
カヅノは、『軍師殿』に目を釘付けになりがちながらも答えた。
「あ、いや、ええとだな、この家の女達にパラッツォの教えを説いていたのだ」
「要はおまんこでござろう? 貴殿はあちらこちらで種を振りまいていると兄上殿から聞いたでござる」
「兄さんが……? に、にいさんも似たようなものだからな! 調査を頼まれている地域で、いろんな女に子を産ませているはずだ!」
『軍師殿』がイズヴァルトに訊く。オーガさんって本当にお盛んなんだね。
「日にたくさん放てるし、ちんこがでっかいからでござるよ」
「それ、イズヴァルトもじゃないかなあ?」
「そうでもござるが……ところで、水浴びしてすっきりしたいでござるか、カヅノどの?」
「そうだ。そこをどけ、イズヴァルト」
イズヴァルトは『氷雪の栄光』を手に持った。それからカヅノの身体に向ける。
「その棒はなんだ?」
「拙者が清めて進ぜよう。井戸の前に来てくだされ」
「どういうことだ?」
カヅノは言われた通りにした。『氷雪の栄光』の先端から、勢いよく散水が放たれる。しかし湯気が立っていた。温水だ。
それがカヅノの下腹を強く打ち付けた。温かくて気持ちいい。カヅノは思わずうっとりとなった。
「ほう、こいつはなんだ?」
「『氷雪の栄光』でござるよ。氷の剣を作り出せれば、こうしたお湯も出せるでござる。からっからの土地でもお水が出せるでござるよ?」
全身を湯で打たせてもらいながら、カヅノはこれについて尋ねた。オーガの王の秘宝。『覇王の剣』を超える魔道具だと。
(なるほど。これなら湯あみに難儀しない。オーガの王とやらは、きれい好きだったのだな。)
全身を洗ってもらい、カヅノは満足した。自分に風魔法をかけて乾かしだすと、イズヴァルトに呼びかけた。
「ヘラが会いたがっていたぞ。顔を見せてやれ。そこのお嬢さんにもな」
「一緒に旅をしたいってこと? もちろんだよ!」
「違う。パラッツォ教国で一緒に暮らしたいそうだ。ヘラは今や、教帝正妃さまだぞ? ちょっと待て」
身を乾かすとカヅノは家屋に入って服を着て、それからまたイズヴァルトのところに戻って来た。
「要はお前らには親代わりとしていて欲しいそうだ。しかしだな……」
閉じたばかりの扉が、少し開いているのに気が付いた。ロッテンマイヤーとその姪が顔をのぞかせていた。
ロッテンマイヤーは『軍師殿』を見て、喜びの声をあげた。
「こっちに戻って来たの!」
「えへへへ。ちょっとだけね?」
「明日でいいから遊びに来て! いろいろ聞きたいことがあるの!」
話というより、おまんこのなめあいっこのお誘いである。『軍師殿』はかわいく笑ってうなずいた。
「……ここは何かと聞かれやすそうだ。この続きは、他のところで話すぞ」
「わかったでござる」
□ □ □ □ □
カヅノの転移魔法で森の中に入った。近くに小川が流れている。
トーリがこのあたりで、自分を含めた浮気相手とおまんこをしまくっていたとイズヴァルトがつぶやくと、カヅノは嫌そうに顔をゆがめた。
「場所を変えるか?」
「もっと奥だと、村の夫婦や若者が、仲良しこよしをしているでござるよ?」
「ならばここが一番か」
カヅノは話の続きをはじめる。イズヴァルトがパラッツォ教国に戻るのは、ヘラと教主は大歓迎するだろうが、1人だけ絶対嫌だと言っている男がいる。
「……それは、貴殿でござらぬか?」
「俺よりもっと嫌がっている奴だ! お前の隠し子だよ!」
教帝・オルランドゥ=カーンダーク。つまりはイズヴァルトとトーリとの間の子の、オルフレッドだ。
「オルフレッドくんが? どうして?」
「原因はアンタだよ、お嬢さん」
教帝陛下はすっかり恋をしてしまった。母と育ての父が死に、傷心していた時、年下にも見えるかわいい叔母に慰めてもらったからだ。
内容はパイズリフェラや、極上の尻穴でのアナルセックスである。『おしゃぶり姫』と呼ばれ、『尻女神の化身』と称されたその人物のである。
そのせいで心がすっかり壊れてしまった。叔母も下半身の理性に歯止めが利かない人物だったから、1度だけでなく20回も30回も施してしまった。
オルフレッドは『おしゃぶり』から始まる恋の後遺症に、今も苦しんでいた。実の父親と同じようにだ。
「一人でいるときはいつも、おばちゃんおばちゃんなどとぶつぶつ言っているらしい。マイマイとかいう変な愛称もつけてたな……」
「やだなあ。それ、わたしにつきまとっていた変なおじさんたちが使う仇名だよ?」
「教帝サマはそれだけ焦がれている、ってわけだ。お嬢さん?」
そしてオルフレッドは実父に激しく嫉妬していた。その叔母が自分のところに戻らず、ずっと実父に付き添っていると聞いたからだ。
イズヴァルト、許すまじ。
会ったら決闘を挑んでやるとまで息巻いていた。
「言いがかりでござる。逆恨みにもほどがあるでござるよ……」
「イズヴァルト、オルフレッドくんが飽きるまで、一緒にいた方がいいかな?」
「父親として、是非ともそうしていただきたいと思っているでござるが……」
「やめとけ。増々頭がパーになるだろう。お嬢さんのケツアナがどれほどのものか、噂には聞いている」
「カヅノさんも、試してみる?」
『軍師殿』が口をすぼめ、身体をくねらせながら何かをしゃぶる真似をすると、カヅノは頬を赤らめてそっぽを向いてしまった。
「俺はアンタみたいな愛くるしいお嬢さんとやる趣味はないよ」
「……初耳でござるな」
「俺は基本、年増や熟女が趣味だぞ、イズヴァルト!」
ロッテンマイヤーとその姉を愛人にするのは、そういう理由でだ。
特にロッテンマイヤーだ。あれはいい女だとカヅノは思った。子供達もかわいい。ロッテンマイヤーを抱きながら、今度来るときはポケットマネーで彼等にプレゼントをしようとも考えていた。
「お前もそのお嬢さんを大事にしろ! 教帝なんぞに抱かせるな! こんなかわいいのに、汚い仕事を押し付けるな!」
「……さっきから『軍師殿』のことを、お嬢さんお嬢さんと言っているのはどういうつもりでござるか? 妻はもう26歳のおばさんでござるし、孫がいるからおばあちゃんでござるよ?」
「イズヴァルト! そんな言い方ってないよ!」
『軍師殿』がイズヴァルトの頬にかみつくと、カヅノは目を怒らせて怒鳴りつけた。
「そうだぞ! こんなかわいい子をおばさん呼ばわりするのはバチが当たるぞ、イズヴァルト! 26歳なんて俺の前世の価値観では、まだまだ若い娘さんだ! おばあちゃんと言ってもガキを産むローテーションが早すぎるだけだろう、カツランダルク家は!」
可愛いと言われて『軍師殿』はえへへ、と笑った。それを目にしたカヅノは頬を緩ませてしまった。
イズヴァルトは彼の気持ちがわかってしまった。となれば少しは込み入った話をしたい。コリアンナから、この男がいろいろと関わっていたのを思い出す。
「コリアンナどのから、貴殿がロゼどのと親しかったと聞き及んでおるでござるよ」
その名を聞いた『軍師殿』の顔がひきつった。
「……とてもいい子だった。あんなに早くに死んでしまうとは」
ロゼはナントブルグ宮の地下にある、歴代の王族の墓所で眠りについている。
「明日か明後日にでも、母親と一緒に花をたむけたい。少し手を貸していただけぬか、枢機卿どの?」
「イズヴァルト! 嫌だよ!」
「貴殿が産んだ子は拙者の子でもあるでござるよ……『マイヤ』」
偽名の『ローザ』、『軍師殿』、そう呼ばせていたマイヤは目に涙を浮かべながらイズヴァルトの胸の中で暴れだした。
「会いたくないよ! あれは憎ましいアドルフの子だよ! 私が産んでも娘だとは認めていないッ!」
深い眠りについたまま産んだ子だ。あの子を宿す為に、イズヴァルトの子が死んだようなものだ。
「私は会いたくない! 何も言えないまま抗えないまま。犯されて産んだ子に顔を見せたくない! 」
イズヴァルトはマイヤの頬を叩いた。あまり強くは叩かなかったが、その音を聞いたカヅノは戸惑いを覚えた。
「だから常日頃言っておるでござろう。拙者は貴殿の怒りを背負うでござる」
マイヤは泣き出した。カヅノはイズヴァルトもマイヤも責められなかった。自分が入っていくのは難しい話だ。
「でもロゼちゃんをね、私は見捨たんだよ! あの子はきっと、今でも恨んでいるよ!」
「ならば、共にロゼどのの亡骸に罵られに行こう。カヅノどの。お願いいたす」
「コリアンナちゃんやこの村の者達に、俺が『枢機卿』だとはバラすなよ? それが条件だ」
イズヴァルトはうなずいた。その約束は絶対に守る。
それから翌日の朝、イズヴァルトとマイヤはカヅノと共に、ナントブルグの墓所に訪れた。マントとフードで顔を隠してだ。
王宮に行くと、ジューンショーン王がお忍びで案内してくれた。カヅノと国王はお互いの顔を知る間柄だった。
ロゼはガラスの棺に納められていた。遺体は防腐処理を施され、飾りこそ少なかったが上質の美しい衣を身にまとって、眠りについていた。
「とてもかわいい娘さんでござるよ、マイヤ?」
「……」
「言わなくてもよいでござる。拙者とて、アドルフが生まれ変わったら討ち果たす所存でござる。しかし、生まれた子には罪は無いでござるよ」
マイヤは黙ったままだ。それを見てカヅノが涙ぐむ。
ジューンショーンが供を呼んだ。1人の侍女がかわいい女の子を抱いてやって来た。ロゼの遺児のマレーネだ。ジューンショーン王が呼びかけた。
「マレーネちゃん。じいじとばあばに挨拶して?」
この乳児はホーデンエーネンの公式上、イズヴァルトとマイヤの孫娘とされた。ロゼは未だ、その親が2人となっていた。
マレーネは床に降ろされた。それから、イズヴァルト達を見上げてこう言った。
「おじいちゃん、おばあちゃん」
イズヴァルトはマイヤを床に降ろした。彼女は這いながら、孫を抱きしめた。
□ □ □ □ □
そして。
ホーデンエーネン王国暦361年1月の13日。
イズヴァルトはマイヤと共に上陸し、シマモトッセン大公率いる1万のホーデンエーネン軍をヤッスンドルフから撤退させた。たった1人でだ。
マイヤが乗っていた空飛ぶ荷車を地上へ降ろし、2人は市庁舎へと向かった。
しかしである。2人は街の気配が冷ややかに思えた。
「見るでござる、マイヤ」
「うん」
荷車からマイヤは顔をのぞかせ、自分達に目を向ける者達を見た。
どの顔も自分達をにらみつけている。
助けに来たのが遅い、と言わんばかりだ。
傷ついた街の守備兵や、衣服を破かれ片乳や腿を出した女達。
それから、市庁舎の入り口の階段から、イズヴァルト達に目を向ける街の守備隊長や街の要人らも、腕を組んで難しい顔をしていた。
「これが真実でござるよ、マイヤ。この期に及んでの『ゆうしゃ』の到来など、誰も嬉しがってくれぬでござる」
「わかっている。だから私は鬼になるんだよ。貴方が名を残す為にね」
市庁舎の前にたどり着くと、階段から降りて来た者達に目を向けた。
それからイズヴァルトは、周りを取り囲む昏い顔をした人々に、こう告げた。
「イズヴァルト=シギサンシュタウフェン、参上
マイヤは荷車から這い上がり、縁につかまって上半身を見せた。
戦いの時はホーデンエーネン軍を挑発する為に全裸となっていたが、今は鎖帷子に身を包み、頭には兜をかぶっている。
今は、戦いよりも大事な時なのだ。
「この者は拙者の妻にして軍師、ローラ=ラダトゥム=セアック! 誰かさんとそっくりでござるが、別人でござる!」
イズヴァルトとマイヤをじっと見つめていた人々がささやきだす。
「そんなわけないじゃないか。あれはマイヤ姫だろう」
「小さい頃の面影があるな。あんな可愛い子、見たら二度と忘れないよ」
けれどもイズヴァルトは、マイヤを本人だとは認めず、嘘を貫き通すことにした。
本当のことはまだ、諸外国のごく一部の者が知っていればいい。
死んだと思われているマイヤが自分のところに舞い戻って来たと、この大陸の人々に伝えるのはもっと後にしよう。
「これより、ナーガハーマに拠るホーデンエーネン軍を討つ! 貴殿らの手助けは一切無用! ローラと共に東の国々を流浪し、拙者は背中を預けるに足る、勇者たちに出会った! その者達と共に征く!」
その頃、ヤッスンドルフの沖合には十数隻の軍船があった。ヒッターチの旗を翻すそれらは、港に向かい進んでいた。
その中にはシゲニウスの代理となったホージュリア妃に、カントニアのエルフ達。
ミョーゲチャコフのゲオルギー公子を含む、ワターリ王家の檄には参じ、イズヴァルトが選びに選んだ猛者達が乗船していた。およそ3000ほどである。
ヴァネロペの転移ポータルであれば船を使わなくても良かったが、これは『宣伝』だ。
イズヴァルトは外の諸国に大いに支持されていることを、見せつける為である。
「貴殿らはもう、勝利の報を寝て待っていただきたい! この3カ月のうちに全て終わらせる! ホーデンエーネンのイキリ騎士達を蹴散らし、二度と立ち上がれぬよう叩きのめすことを約束致そう!」
やれるのだろうな、と人々が呼びかけると、イズヴァルトは『氷雪の栄光』を高く掲げた。
「義は、我らにあり!」
イズヴァルトとマイヤの、2人の最大の戦いが、これから始まろうとしていた。