聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
コーザは言っていた通り、翌朝に戻ってきた。いつもまとっている純白の衣ではなく、旅の司祭がまとう様な、地味な色合いの厚手の旅装だった。
しかしそれも教主仕様だ。ヘラが抱き着いてきて法悦をねだると、彼は裾を開けて太くたくましい脚と50センチ近くになる『聖根』を出した。
巨大な亀頭が常時露出している、割礼痕がある太い物を見てヘラは目を輝かせ、下履きを脱ぐと教主に抱き上げてもらった。
「おおきぃ♥ おおきぃよう♥ 教主さま、だいすきぃ♥」
ヘラは一度こすれるたびに絶頂を与える『聖根』を貪る。しかし無我夢中の彼女は見えていなかった。教主の腰の後ろに、ただならぬ気配を漂わせる細身の剣がそれだ。
「教主様。エチウまで戻って来られたのですか?」
同席して剣を見ていたカヅノが尋ねた。念話魔法でだ。
「ええ。カヅノさんが見ているものを取りに戻りました」
コーザが持って来たのは魔剣だ。
ヒッジランドの伝説的な戦姫であり、サイゴークの覇王・ツネーヒ=アルグレイブの妻だったエリザベス=アルグレイブの愛用の剣。
その子孫であるヴィクトリアが死にゆくときにイズヴァルトに託し、彼とマイヤがヴィクトリアの故郷・ウラスコーに行き納めた魔剣の中の大業物であった。
『姫竜の牙』もとい『魔蜂の突針』。
魔竜が持つ『本家本物』を、ドワーフ達につくらせて自身の強大な魔力を封じ込めた、いわくつきの『レプリカ』だった。
「そういえば、教主様もそれを自在に扱えましたな?」
「引き出せるのは半分ほどです。私には徳というものが無いらしい」
しかし何の半分かと問われたら、ヘラと比べたらの話だ。それから教主はもう1人、これを使いこなせる人物がいるとイズヴァルトとエレクトラから聞いた。
「この剣にイズヴァルトさんはいたく執着しているご様子。これを見せればきっと私の願いをかなえてくれることでしょう」
「きっとそうなりましょう。挑発を仕掛けるには絶好の道具です」
「皆さんがこの砦を出て北へ向かう時、私はイズヴァルトさんのもとへ向かいますから、首尾のほどよろしくお願いいたします」
そう告げた後、コーザはアクメが続き疲れ果て、ぐったりとしているヘラの膣奥に『聖液』を放ちこんだ。
うっとりとする彼女をカヅノに任せた後、彼は沐浴を行い、身をきれいにする。
精のにおいが漂った身体で、戦いに臨むのは良くないことだからだ。
コーザはこれから戦おうとする相手に敬意を抱いていた。イズヴァルトもまた、彼の生涯にとって恐るべき相手の1人でもあったからである。
□ □ □ □ □
ヨコヤマヴァールの北側の城壁に立っていたイズヴァルトは、北街道に出てエチウへ戻ろうとするパラッツォ教軍の行列をじっと伺っていた。
(これで本当に、戦いは終わったでござる……。)
徹底的にホーデンエーネン軍を痛めつけようとした野戦で教主コーザの邪魔が入り、中途半端な勝利に終わった事に不満を持っていたが、国王の代理である聖騎士団がついてくれたことでそれも帳消しだ。
彼は義手義足をつけて隣に立つマイヤを抱き寄せ、はにかんで恥ずかしがる彼女にささやいた。
「拙者はこれで、名実ともに『ゆうしゃ』になれたのでござるな?」
「何を言っているのかな? イズヴァルトはとっくの昔から『ゆうしゃ』だよ?」
10歳で数十人の盗賊を壊滅させ、あの恐ろしく強いヤギウセッシウサイと戦って唸らせた。
サート銀山の坑内で、腰遣いも腕っぷしもとんでもなく強いトールキンと戦い、サイゴークやエチウでは傷つきながらも難敵たちを打ち破った。
「この戦いは総仕上げみたいなもんだよ?」
「まあ、そんなものでござるな」
「ねえ、イズヴァルト。これからはいろんなところに出かけようよ。旅をしながら暮らそうね?」
旅暮らしといっても2人きりではない。仲間を連れての放浪だ。それと世界各地にある、イズヴァルトの領地も回らなくてはならない。
イズヴァルトは根無し草の騎士ではない。ムーツ大陸とシマナミスタン大陸以外で、あちらこちらに領地を得ていた。
チンゼー大陸ではヒューガスタンとスミジア、シマーヅにそこそこの領地を貰っていて、サイゴークでは各国に最低1つ2つ、小さな町のあるじに任じられている。戦争で功をあげて手に入れたのだ。
本当にあちらこちらにあって細切れではあるが、まとめれて数えればホーデンエーネンの大領主に匹敵するほど持っている。江戸時代の大名で言えば100万石以上。かなりの大領主である。
とはいえ問題が噴出していて、安定した統治はままならかなった。
どこもかつての部下や信頼できる知り合いを代官にしているが、当人にとって不慣れな仕事ばかりで運営がうまくいかず、民からの直訴や隣国の領主からの詰問状が、国の主の元へよく届くのだ。
マイヤが旅をしながらやろうとしていたのは、そういったイズヴァルトの行政のほうの部下の再教育であった。
あと、その土地に名産らしいものがあれば、儲けの種をつくってやりたい。彼女は贅沢とちんちんを貪るだけでは満足できない性格だった。
(イズヴァルト。私の人生の後半、貴方にぜんぶあげるよ。)
マイヤはそう思ってイズヴァルトの胸に頬を寄せる。
しかし夢想は突然かき消された。
「……?」
彼女の吸精魔としての特質が、誰よりも早くそれを察知していた。
風。
それが運ぶのは、すがすがしくはあったが、同時に淫らさが漂う強い香気だった。
マイヤは下腹のあたりに強い蠢動を覚えた。それと性欲。女陰からじわりと垂れ、太腿を伝った。
そのにおいが、どこから放たれているのか本能でわかっていた。振り向きながらイズヴァルト達に呼びかける。
「イズヴァルト! うしろ!」
教主コーザが立っていた。いや、宙に浮かんでいた。
後背に細身の剣をさげている。決戦の時の『交渉』には持っていなかった代物だ。
マイヤは魔の者に近くなっていたから、それが強大な魔力を込めているのと、いつかどこかで見て手にしていたと思った。
(あれは……姫竜の牙?)
コーザが
「やあどうも。忘れ物を取りに来ました。司祭騎士団長……」
そう口を開いた途端、彼の頭上に白い光の塊が炸裂した。うっすらと紫かかったそれは、オクタヴィアが仕掛けた『紫電砲』だった。
「そうはさせねえずらよっ!」
パオレッタとマリアが印を切る。コーザのまわりでくるくると動く風の刃がいくつも生じた。遅れてトールキンとクリスタが臨戦態勢に入った。
しかし不意打ちの、魔族でもただではすまされない魔法だったが、コーザには届かなかった。
光が失せ、コーザの足の下にあつた屋根が砕け、炎があがりだすと、まとっているものも一切無傷の、パラッツォ教の教主が微笑む姿があった。
「早とちりはいけません。その続きをちゃんと聞いててくださいね」
教主は悠然と進んで城壁の石畳につくと、イズヴァルトとマイヤの両方の顔を見て来訪の理由を告げた。
勝負。自分が勝てばイズヴァルトとマイヤをエチウに連れて行く。教団の発展の為に尽くしてもらうつもりだ。
「負ければこの剣……『姫竜の牙』をお返しいたします」
それともう1つ、教主はこう付け加えた。
「できれば、水魔のブランカさんの愛人にしていただけませんでしょうか?」
動いたのはイズヴァルトだった。ぷるんぷるんでかわいいあの魔族をまた、コーザの『聖根』の奴隷にしたくない。
「冗談を申すな!」
トールキンとクリスタも併せてかかる。
それを見たコーザは『姫竜の牙』を鞘から少しだけ抜いた。彼の前方から強烈な向かい風が起こり、いともたやすく3人はなぎ倒された。
しかしイズヴァルトはマイヤを気にしてすぐに起き上がり彼女に目を向ける。立ったまま心配そうにこちらを見る姿があった。
(コーザは拙者ら3人だけを……?)
相手を狙って仕掛けることができる程、『姫竜の牙』に馴染んでいるという意味である。
しかしだ。
そう思った直後、コーザの右と左と後ろに何者かの姿が現れた。背後にブライアン、右腕と左腕には抜刀したウォルターとゲオルギー公子だ。サキュバス達の転移魔法を使ったのだ。
名うての剣士3人が襲い掛かる。肉薄する彼等を至近距離でかわすことは至難の業だ。
しかしコーザはブライアンの兜割りをすっと避け、ゲオルギーとウォルターの刃をかいくぐって彼等の右腕をつかみ、ひねった。二人は振りほどけなかった。
「くそ!」
「とんでもねえ馬鹿力だべ!」
しかし背後のブライアンは自由だ。今度は脚に払い切りをかけようする。
だがコーザは2人の右腕を掴みながら跳躍し、回転して姿勢を崩したブライアンの背中を蹴り飛ばした。
「かはっ!」
同時にコーザはウォルターとゲオルギーの腕を離す。倒れた2人は苦悶の表情を浮かべていた。ゲオルギーはともかく、ウォルターは右手首があらぬ方向に曲がっていた。
攻撃はまだ止んでいなかった。屋根の上に登った射手達が、コーザに向けて次々と矢を放つ。
撃て、と命じるのはホージュリア妃だ。射手達はエルフやゴブリンばかり。絶対に外さない。
パオレッタ達がバリアを張り、イズヴァルトと起き上がったトールキンとクリスタが再びコーザに撃ちかかる。
だが、コーザが深く深呼吸をし、大きく息を吐くと、誰もが腰を抜かしてへたり込んだ。同時に届くはずだった矢も途中でぐいと下がり、どれもコーザを穿たなかった。
コーザが放った不思議な力は、ヨコヤマヴァール全体に行きわたっていた。
パオレッタとマリアは下腹に強烈な疼きを覚え、股を石畳につけてこすりつけていた。
トールキンはキルトから勃起したペニスがさらけ出てしまっていて、勢いよく精を何度も何度も放っていた。
コーザが放ったのは、淫の力だ。
これを受けた者は生殖器に強い快を覚え、絶頂に至ってしまう。どんなに精神力が強い者でも戦意を失い、ただただその快感に浸り続けていたくなるのだ。
コーザ=ストーンマウントの魔力と技量は計り知れない。聖なる王であり淫魔の王でもある彼は、この力があるからこそ無敵なのだ。
彼は常々思っている。自分を圧倒できるのはこの世に1人しかいない。
コンゴウアミダラデンの魔竜がそれである。
ただ、かつてはもう3人いた。
父のコージュと母のクラリス。そして、その2人を遥かに超える才があった、トーリ=カツランダルクがそれだ。
だが……。
(おや?)
自分の術がまるで効かない者が、この場にたった1人いた。
その者はうずくまるイズヴァルト達を見て、ただただきょとんとしていた。
「あれ……? みんな、何が起こっているの?」
その者とは、マイヤ=カツランダルクだ。
彼女は子宮から膣の入り口までほんのりと快感を覚えていたが、激しさに参ってへたり込んではいなかった。
彼女に自分の淫気の力が、骨の髄まで届いていないようだ。
そう思ったコーザだが、彼女の顔をよく見て変化に気づく。
負傷のせいで斜め上に向いたまま動かなかった彼女の左目の瞳が、イズヴァルトのほうを向いていたのだ。
だが、もっと目に見える大きな変化があった。
白目と黒目が反転し、瞳の真ん中に、三本足の鳥の紋様が浮かび上がっていたのである。