聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
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ホーデンエーネンを出た後、イズヴァルトがはじめに向かったのはイーガ王国だった。
まずはマイア=テクニカに向かい、マイヤがかねてから研究させていた新しい兵器の試作品を受け取るのだという。
雷管式銃、というのがそれだった。
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イーガ入りして2週間が経った。ようやく、母と息子の久しぶりの対面がかなった。
マイヤとイーガのマルティン王子との間に為した男児、フェアディナントとである。
ヴィルヘルム前王と並んでソファに座っていたフェアディナント王子は、実母のことをうざがっていそうな目つきで睨んでいた。
「あのう、フェアディナントちゃん……?」
「なんでしょうか、マイアお母様?」
マイアとは、イーガでのマイヤの標準的な言い方だ。
彼女の名前を文字に表すと、国によって読み方が変わったりする。
例えばカントニアではメイニャ、ムーツ大陸ではマーニャといった具合だ。エチウ諸島だとマーニャかマヤになるそうだ。
マイヤは右目に光を煌めかせてフェアディナントを見た。つややかな紅色の瞳である。
「長い間会えなくてごめんね。抱きしめてもいい?」
「嫌です」
11歳になる我が子の声はひどく冷たい。勉強家で頭脳明晰の評判どおり、知性あふれる顔立ちではあるが、どうにも冷たい感じがし過ぎていた。
マイヤは困り果てていた。およそ10年ぶりに再会したというのに、全く抱きついてくれない。母恋いしと抱きついてくれないのはなぜなのか?
マイヤは目をうるうるさせていると、それをフェアディナントは気が滅入ってしまった。母がどういう経緯であの身体になり、自分を産んだのを父親から聞かされていたからだ。
(ぼくのことはさっさと忘れてくれ。ぼくはぼくで楽しく幸せにやっているから。)
産みの母が恋しい、という感情は既に無い。彼にとって母親代わりの女性とその娘たちに、かわいいかわいいと慈しまれて育てられたからだ。祖父の側室たちとその娘たちである。
それに加えて実の父と新しい奥さんも、フェアディナントに優しかった。小さな弟たちもできていた。世の中には孤独な人も多いのに、自分はこんなにも恵まれている。恨むべきことなどあろうだろうか?
(あのう、フェアディナントどの……?)
念話術式。イズヴァルトの声だ。
この男に対してはフェアディナントは目を輝かした。彼の中では、かっこいいお兄さんだかおじさん的位置にあるからだ。早い話、スーパーヒーローである。
(はい! イズヴァルトさん!)
(おねがいでござる。めそめそと泣くふりでもしておかあさんに抱きついていただきたい……。)
(やですよ。こんな親としてダメ過ぎるやつなんかどうでもいいです。それよりもイズヴァルトさんにいいこいいこをしてもらったほうが、ぼくは100億倍うれしいですよ?)
(はあ……。)
イズヴァルトは少年の強情さに参った。形だけでも「おかあさまー!」と叫んで抱きついてくれればいいのに。それだけで収まるのだ。
まあしかしこの少年には、もう親離れしてもいいような雰囲気はあった。女の子にとかく好かれそうな甘い顔立ちと、とっくに女穴を体験しているような感じがしたからだ。
事実、フェアディナントはとっくに童貞を卒業していた。女の子といちゃいちゃしまくっては、たしなめてくる母親に「ババア、うぜえんだよ!」と返すぐらいに経験していた。経験人数はこの歳で20人ぐらいいる。
ただ、その相手の中に、彼にまとわりつく3人の小さな『曽祖父の娘』たちであることまでは、流石のイズヴァルトもわからなかった。
髪の毛が水色で、なんだかサキュバスみたいなにおいを放ってくるヴィルヘルム王の娘たち……トーリの側近だったサキュバスのカミラが産んだ子どもたちである。
「ヴィルヘルム様。そういえば姫様がたはいつもフェアディナントどのにべったりでござるか?」
「ははは……とにかくフェアディナントにはよく懐くのだよ?」
「ほう。さようでござるか」
イズヴァルトは可愛らしいお姫様がたに手招きする。女の子たちはわーい、と叫んで飛び込んできた。ほとんど体当たりみたいなものだ。
「いずゔぁるとさまー!」
「あとでフェアディナントあにうえさまといっしょにあそぼーよー!」
女の子たちはイズヴァルトに甘えだす。しかしやたらと股間をさすったりしてくるので、やはりサキュバスの子かとイズヴァルトは笑った。
しかしこの3人だが、マイヤには全く見向きもしなかった。
「ねえねえみんな?」
マイヤが呼びかけると3人はぷい、とそっぽを向き、イズヴァルトとフェアディナントの手をとってどこかへ連れて行ってしまった。
息子に嫌がられ、姉の側近の娘たちに無視され、その場に残されたマイヤは「うええん」とぐずりだした。義理の祖父がソファから立ち上がり、彼女をそっと抱きしめてやった。
「悲しむことは無い。フェアディナントも姫たちも、お前を気遣っているのだろう」
「気遣ってって……?」
「自分の人生をのびのびと生きてくれ、と願っているのだよ?」
自分の人生。読書とイズヴァルトのキンタマの中を絞り尽くす以外のライフワークみたいなものをまだ、彼女は持っていた。
マイア=テクニカにちょっかいを出す、というのがその1つである。
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マイヤは前王と一緒にマイア=テクニカの本工房へ向かった。
この国営企業は彼女のもう1つの『偉業』だ。
大量生産をするためにベルトコンベアーや交代制勤務といったシステムを導入し、卸売市場とのリアルタイムな通信網を敷いたり、禁書図書館にあったかつての転生者達の書籍をめくっては『アローチャート』だの『ダイアグラム』だの『クリティカルパス』などといったものを導入した、いわば、マイヤが産んで育てた子供である。
この女は子供を産めばうんこも産み、この企業や未来のホーデンエーネンの学業と経済の中心都市など、社会を発展させるものも産んだ。
その偉業は英雄イズヴァルトに拮抗、いや、彼以上にはるか未来でも褒め称えられる傑物であった。
ならば彼女はこれ以上、何を産めばいいのか?
あとは、せいぜいうんこで良いだろう。
後の世の人たちそう言わせるほど、彼女の『マイア=テクニカ』は革命そのものだった。資金と運営に、イーガ王国からの厚い援助があったけれども。
そのマイア=テクニカの本工房だが、大規模な工場みたいに広かった。
吹き抜けがある1階では便利な魔道具が造られており、それ以外は試作室や仕事用の資料室ばかりである。
あと、マイヤの仮眠所兼『おしゃぶり部屋』もあった。そこでお仕事をしてくれる職人や事務員達に彼女自ら、『ちゅぱちゅぱどっぴゅん♡』を施してやっていたのである。
今では、徹夜明けの職員や職人をまんこでいたわるサキュバスが待機している。パイズリやフェラチオばかりだったマイヤとは違い、下の穴でもご慰労を施してくれる。
「けど他の仕事も任されているらしいずら」
そのサキュバスのうち1人の肩に手を回し、指先ででかい乳をつんつんとするカイロネイア=エルフの女がにひひと笑う。
オクタヴィアだ。他のエルフともどもイーガに来てから、ここで新型魔道具のバイト研究員として雇われていた。
「普段は事務のお仕事をしておりまして……でも大抵の作業がトータルで3時間で終わっちゃいますんで、それ以外は暇なんですよ」
マイア=テクニカは10時間勤務だ。うち4時間が休憩時間みたいなもんではあるが。
「残り7時間は飯とうんこしょんべん以外はおまんこばっかりらしいずら。そだっけ?」
「まあ、そんなものですね」
サキュバスはうふふと笑い、頭1つ背が高いオクタヴィアに身を委ねた。ただならぬ様子にマイヤはははあ、と思った。
エルフの『まんこいじり術』にハマったようだ。イーガに来てから2週間近く、ずっとマイア=テクニカで働いていたオクタヴィアらは、この会社のサキュバスに『おねえたま♡』と呼ばせるようになったらしい。
(エルフの里で住みたいと思わなきゃいいけど。サキュバスはおケツの奥までたっぷりと搾り取られちゃうからね。)
あと、彼女たちの過酷なアウトドア・スポーツのお誘いにも耐えなければならない。1日で7000メートル級の山々を全速力でトレイルランして踏破するようなイベントばかりが目白押しである。冬の雪山で。
恋をして幸せそうなサキュバスを心配しながら、本工房の3階にある研究室に入ると、マルティン王が数名の冶金魔道士達と共に待っていた。
魔道士達は皆、肩幅が広くて背が低い。皆、ドワーフとのあいのこ。かつてはイーガの魔道騎士団に所属していたこともある者たちばかりだ。
「おじいさま! マイヤせんせえ! おはようございます!」
マルティンはマイヤの3歳年下。ここ最近は『せんせえ』と呼ぶようになっている。マイア=テクニカが繁盛しすぎて、とんでもないことになっているからだ。
老ヴィルヘルムは甘いマスクに無精ひげは生えた孫を気遣った。
「昨夜もここで夜を徹しておったか? お后と子どもたちもかまってやれよ?」
「大丈夫ですよ! それはいつもやっていることですから!」
王はマイヤがイーガに来てくれて嬉しかったのだ。ちなみに到着した当初、マイヤは彼の寝室に閉じ込められて思い切り求愛された。おおよそ3日間、閉じ込められた。
マルティン王だがイズヴァルトのひとまわり小さいが、いい体格をしている。頑強な体つきで精力絶倫だった。
祖父のヴィルヘルムもまた同じだった。なにせ70近くでサキュバスの愛人に3人もの子を産ませた艶福家である。孫もその気があり、この歳で今の正妻以外にも侍女や妾との間に総勢、10人以上の子を為していた。
「マルティンくん、頼んだものはできたかな?」
「はい! ここにいるみんなが腕に
マルティンは元気よく、「持ってきて!」と研究員に呼びかけた。
ずんぐりむっくりした大鼻の男が、一抱えの箱を持ってきて中身を開ける。
入っていたのは銃。拳銃である。
短筒とか騎馬鉄砲とか言われていたものの一種とも言えたが、マイヤは書類に「護身用の懐刀みたいなものだよ」と但し書きしていた。
銃身の奥の弾込め装置は回転式。リボルバー式というやつだ。
やや青みがかった銀色に輝くそれは、ミスリル銀が主の特殊な合金でできていた。
「そして、マイヤせんせえが教えてくれた、書籍にあった設計図から、こういうのも作っておきましたよ」
箱の中にはもう1つ、小さな箱が入っていた。
その中に入っていたのは弾丸である。
しかし鉛をただ丸めた、弾込め式のものではない。
その弾には薬莢がついていた。雷管式の弾丸だった。
「ありがとう! これこそ私が再現したかった、『前世の銃』そのものだよ!」
マイヤはそれを手に取った。ずっしりとして重い。なにせイズヴァルト用に作ったものだからである。
弾も大きい。前世でいう44マグナム弾に似通っていた。マイヤはオクタヴィアに手渡すと、彼女は引き金に指をかけ、くるりと回してみせて彼女に恋しているサキュバスを喜ばせた。
この鉄砲だが、豪雨や吹雪の中でも使える。悪天候だと命中精度は落ちるが。
だが、基本的な破壊力に関しては現時点では鉄砲の中で最強と言っても差し支えないだろう。マイア=テクニカが売っている鉄砲の中では、である。ドワーフ達がナオエニアに作った徹甲弾銃には敵わないが。
「ねえねえ、試し撃ちしてみた?」
「もちろんです!」
昨晩、このオクタヴィアが試したという。彼女も「びっくりこいたずら!」と叫ぶぐらいの威力だった。的となったプレートアーマーにでかい風穴が空いたのだ。
「まあでも、魔法攻撃やエルフさんの弓矢や改造弩と比べたら、大した威力は無いでしょうけど。それでも、あのむきむきかっちょいいイズヴァルトさんに持たせたら、すごく様になると思いますよ!」
「うん! これ構えてずばーん、とやるイズヴァルト、見てみたいもん!」
「おいこら。イズヴァルトさんをおまんらのおもちゃみたいに言うんじゃねえずらよ?」
オクタヴィアにたしなめられたが、マイヤは聞く耳を持たなかった。とにかくうれしくて仕方がない。
マイヤはこの銃を、イズヴァルトへのプレゼントにと思って造らせたからだ。