聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
マレーネは決めると動くのは早かった。
半月後にイーガを出てスオニアのキッカワンテスへ行ってしまった。
しかもお腹の子を含む、子どもたち全員を引き連れてだ。
オットーはまだあるじへの執着があり、引き止めたかったがマルティン王がそれを止めた。
「マレーネがきみに頼んだことを務めて欲しいんだ」
そう言われても実のところ、何をすればよいのかわからなかった。マレーネが出て3日経っても、なかなかよい考えが思い浮かばなかったのだ。
なにせ、イズヴァルトはまるっきり口が少なくなっていた。彼が何を考え、どうしたいのかがよくわからなかった。
ミツクニュモスや子どもたちに呼びかけられたり、オクタヴィアらと性交をするときは、「ああ」とか「うん」とか答えるが、自分から話しかけることは無くなっていた。生ける屍みたいに静かだった。
それでいて口を開けば「探さねば」の一言ばかり。
マイヤがいた頃は彼女のうんちのお世話やお尻拭きを巡って、「私がやる!」「いいや拙者が!」と声を荒らげ、いがみ合うという接点は持っていたが、彼女がいないときはお互いにだまりこくっていた。
(どこから話を持ちかければいいのだ、私は?)
屋敷の庭でエレナと縄を持ち合って回し、カミラの娘たちとエルフたちとの子供らがその中で跳ぶのを虚ろな目で見ているイズヴァルトを見てオットーは考えた。
(そうだ。私がエレナの代わりに縄を持ってやろう。それからだろうな。)
エレナと水色の髪の女の子たちと、かわいいエルフの子どもたちにはちょっとしたトラウマがある。『めすちんぽ』を珍しがられ、ペロペロやコキコキを受けたことがあったからだ。
それでもと思いながらオットーは近づいた。子どもたちは彼女の姿を見るなり、縄跳びをやめてオットーに抱きついた。
「『でかくり』のねーちゃん!」
「おらたちのあなにずっぽしでっかいのをいれてずらー!」
「わたしもわたしもー!!」
子どもたちはオットーの股間や尻をしきりに触り、彼女を「あひゅ♡」と悶えさせた。
このままでは快楽負けしてしまう。ちびっこのおまんこや尻穴にデカクリを突っ込む悪行にまた手を染めてしまう。
オットーは気を取り直した。尻穴をぎゅっと締めて踏ん張って、イズヴァルトに呼びかけた。それから前もって考えていなかったことをついつい言ってしまう。
「気分転換に遠出をしてみないか? 2人きりでだ」
すぐにオットーは我に返り、自分は何を言ってしまったのだと思ってしまった。
子どもたちが「ずるーい!」だの「わたしもつれてけー!」とねだるが、イズヴァルトは子どもたちを呼び寄せて抱きかかえると、彼女にこう言った。
「今日はこのまま、この子らと遊びたいでござるよ。明日だったら構わぬでござるよ」
□ □ □ □ □
早朝。イズヴァルトとオットーはアノーヅの海岸に来ていた。沖合にいくつも漁船が浮かび、海岸では何一つ身につけていない子どもたちが遊んでいた。
海岸の波打ち際だが子供たちは水泳だけでなく、朝の用事も済ませている最中だった。
男児も女児も小さな尻から茶色いものをのぞかせては落としていた。
海岸はこの近辺の漁村の子どもたちの遊び場であり、トイレでもあった。同じように尻を出す大人もいた。
「あれを見ると思い出すでござるな、マイヤのことを⋯⋯」
彼女もよく、海や川のそばではぶりぶりとひねっていた。あの子どもたちのようにしっかりとした形のうんちではなく、びちゃびちゃとした軟便ばかりだったが。
「お腹がすっきりするとすぐに拙者のちんちんをねだってきたでござるよ。あの子らを見ると思い出してしまうでござる⋯⋯」
「あれを見せに来たんじゃない。それと、ルチアちゃんやエレナちゃんはこの海岸でよくぶりぶりとやっている。たまには娘たちの『ケツのしつけ』もしたらどうだ?」
彼女たちの世話もしているオットーが笑う。エレナはまた回虫を飼い出した。肛門から白い旋条虫をニュルッと出し、妹たちを笑わせているそうだ。
「⋯⋯生理が始まったというのに、まだそんなはしたない真似をしているのでござるか、エレナは?」
「知らなかったのか。父親失格だな」
オットーは笑いがこらえきれず、ぷっと笑った。
イズヴァルトのことではない。エレナのお尻の穴からにょきっと回虫が出てきたのを思い出してだ。
「あまりマイヤのことばかり思うな。子どもたちにもちゃんと目をかけてやれ」
「⋯⋯で、ござるな」
しかし海岸を散策するのが目的ではなかった。しばらくして海岸の誰もいないところに、変わった形の船が乗り上がった。船底が平べったくて船尾に風魔法で動くプロペラがついていた。
「これはなんでござる?」
「マイア=テクニカの船舶部門が作った、『ほばー船』だ。まだ研究段階で外国には輸出していないが、アノーヅにあるこれは問題なく動く」
これに乗ってアノーヅの北、イーガ王国の東の玄関口であるスズカルに向かう。おおよそ200キロ先にあるが、1時間ぐらいで行けるとオットーは言った。
船が海の上を走り出すと、髪と髭が痛いほど風でなびいた。イーガのこのあたりの8月は、裸になりたいぐらい暑い。しかし強い向かい風のせいで寒いぐらいだった。
「とんでもなく速いでござるな! エルフどのらの船より速いでござる!」
「水の抵抗を受けないからだろう! なにせ、宙に浮いて飛んでいるようなものだからな!」
『ほばー船』の船底には浮遊術式を封じた『浮き板』を用いている。船が着水することは無かった。
オットーの言う通り、1時間と少しでスズカルの港町に着いた。おおよそ5万人いる港町だ。街の入口には『えくすぷれす』の駅もあった。
港近くの怪しげな気配を漂わせる商店街を歩きながら、まずは腹ごしらえをしようとオットーは提案した。
「君のような大喰らいが好きそうな店にしよう」
「どんな店でござる?」
あそこだ、とオットーは指さした。商店街を出た道の突き当りに豚のような太った男の脂ぎった足裏のような、とてもクサい匂いを放つ店があった。
「すごいにおいでござるな⋯⋯」
「マイア=テクニカの食料部門が運営している店だ」
『豚足亭』と看板に書かれていた。それから小さく、スズカル港支店と加えられている。この街には同じ店がもう3店あるそうだ。
「『とんこつらあめん』という麺料理を作って売っている。麺は細いが4杯までおかわり無料。スープが濃厚でおいしいと評判だ。麺が太くスープに魚醤を入れた『いえけい』というらあめんもあるそうだ」
「本当に、あそこにするのでござるか?」
「知らないのか? 『とんこつらあめん』はマイヤが発明したのだぞ?」
前世のものが食べたいと思ったマイヤは、鉄砲や『たぶれっとぱっど』を作っていた頃に、新しい麺料理も開発した。それが『とんこつらあめん』と『いえけい』である。
マイヤにゆかりがあるものなら是非とも食べたい。イズヴァルトはオットーの誘いを受けた。
外でも脂クサさがひどかったが、店の中に入るともっとクサい。店は割と混雑していて、港湾労働者や汚い身なりの商人ばかりだった。
「奥方に好かれる店ではござらぬな?」
「この店はそうだ。でも他の店では女性客もたくさんいる。なにせ店とスープのにおいが『そそる』そうだ」
くんくん、と嗅いでみてイズヴァルトはうなずいた。きつい体臭の兵士や戦士のにおいみたいだ。あちらは酸っぱくもあったが。
イーガの女は基本、たくましい男が好むところがある。性欲が強くて脂ぎっている男をだ。イーガ人はエルフの血が混じっているのが多いからか、割とすらりとした者ばかりである。ホーデンエーネンとは逆だった。
「何がいい? 私は『とんこつ』を薦める。家系はしょっぱくて食べにくい」
「では、『とんこつ』とやらをいただこう」
席につくと、オットーとイズヴァルトは同じものを注文した。しばらくして出てきたものは、深めのボウルにクサいにおいを放つ脂ぎったスープに入った、茹でた細めの小麦粉麺と香草が入った麺料理だった。
「においはきついがさて、どんなものでござろうか」
ずるっずるっとすすってみると、クサいにおいと違って思ったよりもあっさりとした味わいだったのに驚いた。麺と香草を平らげると、店員におかわりを頼んだ。
「なかなかいけるだろう?」
「……これの調理法をマイヤは編み出したのでござるか!」
「そうではあるが、マイヤが作って食べさせてくれた『試作品』は、とてもじゃないが食べられるものではなかったよ」
自分も麺のおかわりを頼んだオットーはボウルの底に残っていた麺や野菜をフォークですくう。
「最初に作ってくれたのは……しょっぱくてえぐみが強すぎた。麺もふにゃふにゃ。ざあめんみるくの飲み過ぎで味覚がぶっこわれているのかってつい怒鳴ったぐらい、酷いものだった……」
「マイヤは料理がだめだめでござるよ。10年経ってもあのままだったでござる」
そもそも家事が得意ではない。掃除などはずぼらの一言に尽きた。おしゃぶりと金儲けは得意だったが。
「はは。戻ってきたらせめて料理の腕だけは良くなってほしいな。どこかで自炊をしているかもしれないしな?」
「でも、義手と義足を置いたままでござったよ?」
「なに。あの女は困ったら頭を使うさ。手が無くてもやり方を編み出したり、鍛冶屋に専用の調理器具を造らせたりするだろう。もしかしたら魔法の才にも目覚めているかもしれないな」
オットーの分の麺のおかわりが届いた。皿にのったそれをボウルの中に放り込むと、イズヴァルトはこれを食べに来たのかと尋ねてきた。
「これだけのわけが無いだろう。君は女慣れしているからもっと想像できると思ったがな?」
「港で海鳥さんをぼーっと眺めるか、何も考えずに街歩きをしたいでござるよ」
「もう少し刺激的なものがある。少しは目に悪いものを見たほうがいい」
女の裸と局部は目にいいものだが、と心の中で付け加えて、オットーは麺を一息にすする。
ずずずっ、ずずずっと盛大に音を立てるものだから、動きやすい男装なのもあいまって、イズヴァルトはついつい彼女を「ちんちんがついているのでは?」と思えてしまう。
彼女はでかいクリトリスをぶら下げているが、キンタマはぶら下げていないのだが。