※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

681 / 767
記録:聖戦の勇者 ③ 『闘技場』

 スズカルはイーガ東部最大の港湾とパラッツォ教徒街以外に、もう1つの目玉があった。

 

 街の北部にある、円形の闘技場がそれだ。

 

 国内や海外からの武芸者が集まり、賞金目当てに腕を競い合う。

 

 武器は練習用の刃をまるめた鉄剣や槍だが、魔法を使うのも許されるルールつきの、制限時間15分の真剣勝負だ。イーガ国内では魔道騎士団のОBがよく出場し、海外からは亜人や彼らに仕込まれた魔法戦士が出場していた。

 

 その日も闘技場では試合が催されていた。

 

 イズヴァルトがオットーと共に最初に見たのは、イーガ出身の流浪の魔法剣士とウマヤーノから来た金色エルフの戦士の戦いだ。

 

 大抵は亜人のほうが勝つのだが、この勝負はイーガの魔法剣士が圧倒していた。

 

 エルフが氷魔法で小さな氷柱の雨を繰り出すと、魔法戦士のほうは風魔法でそれを吹き飛ばす。

 

 相手の得意技を封じたら剣の打ち合いだ。膂力こそエルフのほうが上だったが、技量は魔法剣士が勝っていた。相手の猛攻をいなたり受け流したりして、返しで背や腹にしっかりと打ち付けていた。

 

「おおおおっ!」

 

 魔法剣士の腕前に観客たちが歓声をあげる。男の声よりも女の声のほうが目立っていた。入場客の半分以上が女だった。

 

 客席に入った時、どうしてこんなに奥方が多いのだろうかとイズヴァルトが疑問に思った。

 

「知らないのか? イーガの女は強い男が好きなのだよ」

 

 それはわかる。イズヴァルトも「子種ちょーだい」とイーガの貴婦人たちに盛んに迫られたりするからだ。

 

 しかしこの試合が始まり、ニンゲンの剣士の華麗な打ち込みが決まると、女たちが先に大声をあげた。

 

 試合を有利に進めている魔法剣士は割と細身だ。あの金色エルフよりも「エルフ男らしい」体型に見えるのだが。

 

「脳みそきんにくのごっつい闘士が好み、とは聞いていたでござるが、案外そうでも無いのでござるな?」

「ふふ……だからイーガ女は強い男が好きだと言っているだろう! 見ろ、あの剣士、あのエルフの素早い突きを紙一重のところでかわしているぞ! とんでもない手練だぞ!」

 

 オットーの鼻の穴が広がっていた。魔法剣士の身のこなしと剣技に夢中になっていた。

 

 イズヴァルトは彼女から、性的に興奮したサキュバスが放つような匂いを嗅いでいた。

 

 においだけでなく、彼女の股も異変が起こっていた。『クリちんぽ』に血が集まり、硬直していたのだ。ゆったりとしたズボンを履いていたのであまり目立たなかったが。

 

 クリトリスだけでなく女陰も変化が起こっていた。膣口が半開きになり、濡れだしていた。短髪で美青年みたく見えるオットーだが、やはり女だというわけだ。

 

 興奮するオットーの瞳に魔法剣士の凄技が映る。彼女は他の女性客と同じように席から立ち上がると、イズヴァルトの肩を叩いて呼びかけた。

 

「ほ、ほ、ほら見てみろ! あの魔法剣士はとんでもない天才だぞ!」

「……わかっているでござるよ。あの御仁、おおかた魔道騎士団の第三軍出身か、サイゴークのイーズモーかイナーヴァニアあたりで修行してきたのでござろう?」

 

 カントニアで修行したならば、最初の魔法合戦で相手を叩きのめすはず。爆炎弓箭か紫電砲を一発お見舞いして、敵の戦意を削ぐのだ。

 

「あのエルフどのは……ヌマタラシュクあたりの、だめなほうでござるな」

 

 こき使われている下っ端か、あるいは非戦闘員か。闘技場に立ったのは金が入り用だったのか、観光のついでの思い出づくりだろう。戦士だったらあの魔法剣士に本気を出させるはず。

 

 魔法剣士が勝った。魔法剣士は誇らしげに剣を掲げ、観客の女たちから住所が書かれた投げ銭の包みが投げられた。

 

 オットーもはしゃいで「わー!」と言って手を叩いている。マイヤをたらい湯に入れながら、おまたくにくにを施している時の顔に近いなとイズヴァルトは思った。

 

「オットーどの。拙者はこんな試合よりも、沖合にいるイルカさんのジャンプを眺めていたいでござる」

 

 そう言って立ち去ろうとするとオットーに肩を掴まれた。顔を背けるイズヴァルトに、彼女は尋ねた。

 

「騎士なのに、こういう試合には興味が無いのか?」

「観るよりも出場するほうが楽しそうでござるが?」

 

 しかしその気は全く無い。今は剣を振るうよりもただただ、マイヤの今の居場所を探しあてたい。そうでなければ朽ちていたい。

 

「拙者はここでお暇いたそう。しばらくぶらぶらしているゆえ、貴殿はもう5試合ほど楽しまれよ」

「そうか……あのアドルフは若かった頃、変装してこの闘技場に出て、10の相手を倒したそうだ」

 

 イズヴァルトが振り返った。鬼の形相をしていた。

 

「……なら、拙者は20人抜きをしてみせよう」

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 この闘技場にはいろいろなシステムがあった。

 

 観客席からの飛び入り参加あり。5人抜き、10人抜きの試合を望む者は、相手が持っている賞金を横取りできる。

 

 大きく稼ぎたい者は必ず連戦コースを望んだ。オットーが言っていた故アドルフの10人抜きは、彼がまだ健康が良かった20歳頃に成したものである。イーガの魔王は魔法だけでなく剣法にも精通していた。

 

 オットーに挑発されて闘技場に立ったイズヴァルトは、得意の大剣ではなくショートソードを手に取った。但し左右の手、二刀流である。

 

 剣を持つといくらか気分が変わっていた。さて、どんな相手が来るのだろう。オットーの前では大言壮語してみせたが、ここで負けるような強敵が出てきたら面白い、とも思っていた。

 

 反対側から最初の相手が出てきた。短槍を持つシマナミスタンの戦士だ。若干背が低く、肩幅が広いからドワーフの血が混じっているのだろう。

 

 試合場に立ち、審判から「始めッ!」の声がかかると、イズヴァルトは猛然と突っ込んでいき、槍を振り下ろそうとする相手の懐にきつい一打を加えてやった。

 

「……なっ!!」

 

 腹を抱えて呻く相手にすかさず首筋での一打をあたえた。

 

 とてもきついのを5秒も経たぬうちに2回も。ふんばりが追いつかぬ相手はたちまち倒れて泡を吹いた。

 

 観客席がどよめく。オットーは初めてしっかりと見るイズヴァルトの早業を見て口をぽかんと空けていた。股がじんじんと疼いて濡れていた。

 

「勝者……」

 

 審判が名前を言おうとすると、イズヴァルトはそっとささやいた。

 

「……ふにゃちんザコザコざむらい!!」

 

 情けない名前である。しかし自分の名前を出すと、20人抜きに応じてくれる相手がいなくなると思ったからだ。

 

 大変ふざけた名前に対し、いつもはおひねりを投げる女たちは彼に寄越さなかった。

 

 試合は連続勝ち抜き制だ。次の相手もすぐに現れた。今度のはイズヴァルトと体格が同じの大剣使いだった。

 

 それも「アチョー!」といったふざけた掛け声で打ちのめし、続く3人、4人を鎧袖一触の勢いで叩きのめし、その後も似たような感じで2、3打で実力の差を思い知らしめ、アドルフが打ち立てた10人抜きを軽々と超えてしまった。

 

(こ、こんなすごいのかっ……!)

 

 10試合を見たオットーは、自分の目を疑いたくなった。ホーデンエーネン最強という評判は本当のようだ。いや、バケモノだ。

 

 そのせいで彼女の股はとんでもないことになっていた。

 

 勃起した『クリちんぽ』がズボンの中で暴れまくり、膣は洪水を起こしていた。

 

 イズヴァルトの強さを見て、すっかり『雌』になってしまっていた。

 

 彼女の子宮は今、激しい収縮を繰り返している。己の性感帯を同時に刺激されて達したエクスタシーのような感覚が、下腹に渦巻いている。

 

(これでは……まだ生理が来てないのに排卵してしまうではないか!!)

 

 ぶるんぶるんと動き回るクリトリスからの快感に苛まれながら、彼女は狂おしいぐらいにイズヴァルトを渇望した。財布にある貨幣をすべて、おひねりにして投げ入れたかった。

 

 しかし周りの女は違った。イズヴァルトのでたらめなくらいの強さが信じられなかった。

 

 平凡な男では到底見きれない早業を繰り出していたから、もっと動体視力が劣っている彼女たちは、イズヴァルトが何をやったのかがわからないのだ。

 

「なによあいつ!」

「どうして2回3回打ち合っただけでやっつけちゃうの?」

「きっと八百長よ! あいつ、裏で相手に金を渡して負けたふりをさせているんだわ!」

 

 ブーイングが飛び、試合場にゴミが投げられた。

 

 だいたい『ふにゃちんザコザコざむらい』というふざけた出場ネームで登録し、10人抜きをやってしまったことに女たちは腹を立てていた。

 

 彼が倒した相手達は、この闘技場によく出場していた。女の観客たちに顔を知られ、彼女らの『アイドル』でもあった。

 

 大概、こうした闘士達はファンの女に誘われる。たくましい身体と一晩に何度も放てる精力でベッドという闘技場で剛勇ぶりを示し、彼女らを夢中にさせた。

 

 そうしてファンの中には私生児を生んだ独り身の女や、托卵する人妻がいた。スズカルとその周辺ではそういう女が多くいた。

 

 腹を痛めてまで闘技場の『スター』たちと生きた絆を作った女らは、負けたお気に入りの男たちに同情し、アホみたいに勝ち進むイズヴァルトを激しく憎んだ。

 

「引っ込め、デカブツ!」

「アンタみたいなイカサマ師なんて死んじゃえばいいんだよ!」

「ちょっと見目がよいからってあたしのエルロイに勝ってんじゃねーよ!」

 

 女たちはヒステリックな声をあげ、闘技場に物を投げだす。やめろ、おりろ、しね、と連呼しだした。

 

 しかしイズヴァルトは彼女たちのことを気にしていなかった。次の相手は誰になるのかと考えているだけだ。

 

 ザコばかりと戦ってきたが、いよいよ身体が温まって来ている。

 

 長らくマイヤの行方を捜すことばかりしていて凍っていた心と体が、少しばかり氷解してきていたのだ。

 

「審判どの。はやく次の相手を呼ぶでござる」

「はあ。しばらくお待ちを……」

 

 審判は念話魔法で主催者達に問い合わせる。控えの席の様子についての話があった。選手たちは出たくないそうだ。

 

「どうやら次の相手が見つからないそうですよ?」

「さようでござるか。20人抜きは夢のまた夢でござったか……」

「どちらにしろ無理でしょうね。本当にとんでもなくお強いんですから」

 

 ここまでと思ったが審判からいきなり話があがった。

 

 ついさっき出場に登録して、一組だけ手を上げたのがいるという。

 

「ただ……2人1組となりますが、よろしいでしょうか?」

「構わぬ。どんな敵であろうと倒すのが騎士の本懐、でござる」

 

 審判は苦笑いした。勇ましいことを言う『ふにゃちんザコザコざむらい』を称えるというより、好戦的で調子に乗りやすい性格に呆れたからだ。

 

「それと、もう1つ言っておかなければならないことがあります」

「なんでござるか? 申していただきたい」

「それはですね……」

 

 審判は言った。

 

 相手はエルフだ。しかもかなりの強豪だという。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。