※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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記録:聖戦の勇者 ④ 『イヨネスコ姉妹』

 女達の怒号と罵声、イズヴァルトの武技に興奮して『クリちんぽ』をフル勃起させながら性欲でガン決まったオットーの視線が注がれる闘技場に、11番目のイズヴァルトの相手が現れた。

 

 2人の金色エルフ。どちらも背は高く180近くある。革鎧を身に着け、片方は長い鎖がついた流星槌(モーニングスター)を担ぎ、もう1人は大剣を背負っている。

 

 肩幅は広くて体格はたくましい。腕も脚も太く、筋骨隆々だ。

 

 だが、どちらも女である。見る者に威圧感を抱かせる体格なのに、顔は整っていて美しい。眉が太く少々いかめしい感じがしたが、女に鞭を打たれるのが大好きな男ならば、喜んでしまうことだろう。

 

 それと、鉄球を持つほうはもう片方よりつぶらな瞳をしており、澄んでいた。

 

「……でかいでござる」

 

 イズヴァルトは2人の背丈を見て言ったのではない。胸を見てつい口に出してしまった。胸筋がすごいがその上に乗っている乳房もボリューム感がすごかった。

 

「何を見ていらっしゃるの、あなた?」

 

 大剣を持っているほうが尋ねる。案外雅やかな声色だ。続いて鉄球を持ったもう1人が口を開く。けたたましい声でカントニアなまりがきつく、まるで聞き取れなかった。しかも聞いたことが無い言葉だ。

 

「……どこの言葉でござろう?」

「ご存じない? お姉様は今では数少ない、古代ミナッカミニア=エルフ語の話者なのよ?」

 

 もう1人がうんうん、とうなずいた。そして妹が名乗る。

 

「わたしの名はイリナ=イヨネスコ。お姉様の名はエヴァよ」

 

 イヨネスコ。どこかで聞いたことがあるような。そう思ったイズヴァルトだが、イリナはすぐに尋ねさせてくれなかった。姉が何と言ったのかを告げた。

 

「エヴァお姉様はこう言ってらっしゃる。まあ、おっぱいをじろじろ見ているなんてすけべきわまりないおとこだべえ。キンタマをきっちり潰してやるから今のうちに揉んで今生のお別れをしておけい。そういうことだから、今のうちに覚悟しときなさい?」

 

 なかなかに挑発的なことを言うようだ。イズヴァルトはエヴァをちらと見ると、彼女は困った様子だった。

 

 そもそも彼女はそんなことを言ったわけでは無かった。あんまりおっぱいを見ていると、おなごに嫌われちゃうよ、という程度のことを叫んだだけである。

 

「というわけで覚悟しなさい? はっきり言ってわたし達は強いわよ?」

 

 それからイリナが告げる。自分達はヌマタラシュク=エルフの最強戦士『七本槍』の第二位に序列していると。

 

「しちほんやり……さようでござったか!」

 

 イズヴァルトの身体が喜びを感じていた。よりにもよってこんなところで強敵と出会えるとは。

  

 しかし疑念が生まれてきた。それをイリナに問う。

 

「そういえばエイオン=アントネスクという嫌な感じのする者が第四位と聞いたことがござる。第三位はどなたでござろうか?」

「第三位は永久欠番よ! サガミニアの『森の蝮』と熾烈な戦いを繰り広げた、パスカルにのみ許されたのよ!」

 

(パスカル……もしやと思うが、まさか?)

 

 イズヴァルトはもっと尋ねてみた。パスカルは今どこにいてどうしている。イリナは「そんなことも知らないのか?」と言っているような、侮蔑の笑みを浮かべた。

 

「交易商をされているわ。サワータキャビク島を拠点として、あちこちに拠点を置く大金持ちよ。武勇ではダニェルとわたしたちには負けたけど、持っているお金には抜かれたわ」

 

 そういう金色エルフは1人しかいない。サワータキャビクのパスカルだ。

 

(なるほど。パスカルどのは『七本槍』でござったか。)

 

 しかも永久欠番となれば、相当な凄腕だったというわけだ。事実、クボーニコフの戦いでパスカルは心強い味方だった。サーガには描かれていない戦いで、何度も窮地を救ってくれた。

 

「では、貴殿ら2人で七本槍1人分、というわけでござるか?」

 

 イズヴァルトは小剣を構えた。もっとも、これは侮っていたわけではない。挑発して初手から本気を出させようとしただけだ。

 

 エヴァは叫びもわめきもせず、黙って彼を観察するような目を向けていたが、イリナは違った。

 

「なんですって! ニンゲン風情が!! エルフを見くびるなんて3000年早いわよッ!!!」

 

 イリナが先に動き出す。彼女の姿が一瞬消え、イズヴァルトの眼前に斬りつぶそうとする大剣の刃が、鋭どく風を斬る音と共に現れた。

 

(……申し分無し!)

 

 イズヴァルトは素早く右に避けた。そこに棒状の炎が飛んで来る。エヴァが放った炎魔法だ。

 

 揺らめく焔から感じられる魔力は、軽い氷魔法か風魔法ではじく程度しか籠っていない。イズヴァルトは魔法は使わず身を伏せて避けた。

 

 そこを構え直したイリナによる、大上段からの叩き斬りを仕掛けられるが、転がって土埃だけを起こさせる。ついでに右の小剣で彼女の大剣をかすってやった。これも挑発だ。

 

「図体の割にすばしっこい!」

 

 怒鳴るがイリナは追撃せずに大剣を引っ込めた。イズヴァルトは金属質の何かが勢いよく振り回される音と、それによってかき回される空気の流れを感じた。

 

(来る。)

 

 そう思ったイズヴァルトは前を向いた。

 

 エヴァがゆっくりと歩きながら、身体に巻き付けていた鎖をほどき、勢いよく鉄球を振り回していたのだ。

 

 いや、振り回す速度があまりにも速く、鉄球の輪郭が伺えなかった。観客たちはその恐ろしい音を聞いて怯えていた。

 

 イズヴァルトに向かってエヴァが何かを呼びかける。訛りがひどい古代エルフ語でしゃべるからき来とれなかったが、何を言いたいのかはなんとなくわかった。

 

(当たったら確実に死ぬ、でござるか。)

 

 そんな威力なら使わなければいいのに。とはいえ生きるか死ぬかの目に遭うからこその、血沸き肉躍る戦いができる。見世物興行目的の試合ではあるが。

 

 鉄球が飛んで来た。鎖の伸び方でイズヴァルトは何を狙っているのかを察していた。

 

 直線ではない。大きく迂回してイズヴァルトの背を狙ってくる。闘気や魔法で制御された動きだ。

 

 鎧を破り、肉を潰して骨を砕く勢いのそれがイズヴァルトの真後ろに来た時、彼は上体を曲げて直撃をかわした。

 

 重い音と共に土の塊が勢いよく飛び散った。鉄球が落ちた周囲が陥没して亀裂が奔った。とんでもない威力だ。

 

 イズヴァルトは立ち上がって鎖を掴み、エヴァをこちら側に引き寄せようとする。しかし相手もかなりの剛力で力を込めても引き寄せられない。

 

 イズヴァルトは手を離した。エヴァがバランスを崩す。攻めかかるのは今だと思い突っ込もうとしたが、魔力の気配を感じてすぐに左に飛んだ。

 

 さっき立っていたところを一筋の魔法の光が貫いていた。光源はイズヴァルトの頭上1メートル上というところだった。近距離からの熱光線魔法だ。

 

 ミナッカミニアエルフがよく使う殺しの術式の1つ、『氷融の灼光』だ。そもそもは雪を解かす為に使うが殺しにも応用ができる。イリナが印を切り放ったものだ。

 

「ただのニンゲンのくせに察しが良すぎるッ!」

 

 イリナがまたも印を切る。今度は前後左右の4本。イズヴァルトは伏せるが背後で何かが動く気配を感じた。

 

 エヴァの鎖が大きくたわみ、地を這うように渦を巻き始め、その先端にある鉄球がイズヴァルトに襲い掛かった。

 

(自在に動かせるというわけでござるな!)

 

 棘がついた鉄球が引き込まれるようにイズヴァルトの身体に飛び掛かる。またも魔力の気配。今度は真上と左右からだ。避ける暇が無かった。

 

(使いたくは無かったが!)

 

 印を切る。イリナが目を見開く。

 

「木偶の棒と思いきや、魔法戦士とは!」

 

 真上から放たれた光線は突如現れた氷塊にぶつかった。熱線は吸いこまれて消え、左右であらたに放たれたそれも防がれる。

 

 そして溶けかかった氷は鉄球とぶつかって砕けた。

 

「……!」

 

 鉄球が真逆に飛ぶ。エヴァは手に持っていた鎖を後ろに引いた。鎖はイズヴァルトが右手に持っていたショートソードに巻き付き、奪ってしまった。

 

 それを見たイリナがほくそ笑む。手に持った大剣を叩きつけようと走り出す。

 

 妹のその様子を見たエヴァが首を大きく横に振った。イズヴァルトが右手の指で切った印に見覚えがあったからだ。

 

 エヴァが叫んだ。同時にイズヴァルトの右腕から紫色の光が起こる。カイロネイア=エルフの得意魔法『紫電砲』だ。

 

 そいつは鎖が絡めとった小剣に当たった。激しい閃光が起こり、小剣は砕け鎖が引きちぎられた。

 

 いかづちはイリナの大剣にも力を及ぼしていた。まずいと思ったイリナはとっさに手を離したが、両手に強い痺れが起きていた。

 

 鎖を身体に巻き付けていたエヴァは感電したか、と思いきや、彼女は自分の目の前に防御壁を張っていた。鎖を通る電気にやられるのをとっさに防いでいた。

 

 イズヴァルトが鎖をつかみ、鉄球を振り回し始めた。エヴァがイリナに叫ぶ。

 

 これまでの相手はと別次元の強さだ。第一位のダニェルに匹敵するかもしれない。場合によっては負けを申し出てもいいぐらいだ注意を呼びかける。しかしイリナは聞き入れなかった。

 

 まだ痺れる腕で大剣を構える。かなりの精神力だとイズヴァルトは感服を覚えた。

 

「……貴方、何者! 本当の名を名乗りなさい!」

「言わなければならぬのでござるか?」

「そうよ!」

 

 イズヴァルトは名乗った。イリナは覚えておく、とだけ答えた。サガミニアのエルフ達のところによく寄食する、とんでもなく強いニンゲンの戦士がいるとは聞いてはいたが、イズヴァルトだとは知らなかった。

 

 イリナが動き出すと彼は鉄球を天高く放り投げた。呆気にとられ、何をするつもりかと考えたイリナの懐に飛び込み、小剣でその腕を殴って彼女の剣を奪った。

 

 確かな重さを感じながら、イズヴァルトは左手に小剣、右手に大剣を構える。

 

「拙者はこちらのほうがお似合いでござる」

 

 くそ、とつぶやいたイリナの後ろに鉄球が落ちた。鎖がじゃら、と音を立てた。イリナが握りしめ、掴んだのだ。

 

「貴殿もそちらのほうが得手ではござらぬか、『返り血染めの赤い沓』の片方、イリナ=イヨネスコどの?」

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