聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
目覚めるとイズヴァルトは、何一つ着ていないことに気が付いた。
彼は寝台の上で寝かされていた。50センチぐらいの高さの木製の物入れの上に、表面に藁を編みこんだ板状のマットが敷かれたものだ。
随分と良い匂いがする寝台だ、と思いながらあたりを見る。簡素な部屋で床は白いセメントの様なものが敷かれ、部屋の真ん中に椅子と火がついた囲炉裏があり、鍋がぐつぐつと湯気をたてていた。
(ここはどこでござろうか?)
気づいたか、という声が入口から聞こえて来た。
出て来たのは全裸の老人、死神のマハーヴァラだ。
「聞きたい! この部屋はどこのどなたの部屋でござるか! 拙者はどうなっていた!」
「儂の家じゃ。それと、お前さんはずっと眠っておった」
体感時間では一瞬だが、実際にはおおよそ3カ月近くもだ。
「何せ、お前さんの身体を細胞の段階まで木っ端みじんにしてしまったからのう。神界の力をもってしても、再生には手間取ったわい」
つまり、イズヴァルトの肉体は一度死んだのだ。
「……なんということでござるか」
「だが、それがお前さんの『成長』には必要なのじゃよ。神界の力で修復した肉体はより強くなる」
修復時に細胞が原子レベルまで神界の『ありがたいパワー』を吸い込み、身体を強化してくれるというのだ。
そうなると『はんぶんエルフ』より更に上の成長力を得るそうだ。
「但し、どんなに頑張っても神人ぐらいになれる程度じゃよ。半人半神の域にはたどり着けん」
「と、なるとどのぐらいか?」
「神の眷属といったところじゃ。半人半神はほぼ神、といったところじゃが、まあせいぜい、1つの星に幾人かおる、大陸神や海洋神と同程度、といったところじゃろう」
神人でも魔族並みの寿命を得られるが、半人半神になれば不老長寿が約束される。肉体が滅んだら時間がかかってしまうが元通り再生できるそうだ。
「ただ、それものう。選ばれた者だけにしかそうならぬが……例えば外で儂のかわいい子分たちと戯れておる、異界からの若造たちはそうはならん」
老いた姿の神は、イズヴァルトについて来いと言って部屋から出た。
ご丁寧にもサンダルが置いてあり、それに足をつっかけて家の外に出る。
少し歩いた先にある原っぱで、リュックたちの姿が見えた。牛や猪やカンガルーの様な生き物たちと、がっつきあって汗を流していた。
「リュックどのらは、何を為されておられるのでござろう?」
「修行じゃ。あの生き物たちは儂の居候じゃ。1万年前からのな」
元々はハチマンウーサの眷属兼ペットだったという。あの魔界の
「その1人というのが、エチウ地方のオーガ族最強の剣士、と呼ばれる若者じゃった」
その名前はアルム=リーゲル。どこかで聞いたことがあるとイズヴァルトはつぶやいた。
「拙者の、剣のお師匠さんのそのまたお師匠さん……いいや、違うでござる」
ホーデンエーネンの多くの騎士家や領主たちの祖の1人だ。今の王国で剣で国王に忠誠を誓い、功名をたてる者の多くの先祖は、アルムという名のオーガであったと彼は聞いている。
「そうじゃ。そのアルムこそがあの当時の最強の戦士じゃった」
「しかし、1万年前というのは。オーガ族であればとっくに寿命に至っているでござるよ」
マハーヴァラは大笑いして言った。エチウのオーガ族の寿命は、ムーツ大陸の同族の倍以上あった。3000年生きた者だっていた。
それとだ。この神界にいれば1万年などオーガの100年にも満たぬ。
「あの男は9500年もここにおった。その時はまだ400歳ぐらいじゃったかな。今の年齢で言えばあの男は、お前さんらニンゲンで言えば、今は80近くの老人というところじゃろう」
だが、そのアルムの姿をイズヴァルトは幼い頃に見ていた。剣の師匠との演武で長い片刃の剣を持ち、芸術品とも言える美しい身のこなしを見せてくれた。
「儂の記憶違いじゃったら申し訳無いが……確かアルムは、お前さんのご先祖でもあったのではないかね?」
「シギサンシュタウフェン家の、でござったよ」
キンキ大陸大戦国時代、イズヴァルトの家はホーデンエーネン国の戦争の歴史で名を残した猛者を、何人か輩出した家でもあった。
そのオーガの剣士アルムは、ハチマンウーサに認められて眷属となり、1万年前の戦いに参加した。
そしてここを出た後、魔界の王家の眷属となっていた彼は、魔族の王らの求めに応じ、様々な異界で戦ったそうだ。
「それほどまで、凄かったのでござるか……」
「そういうことじゃな。それと、『根源の世界の者』は、あまり喧嘩が強くないそうじゃ。マハーヴァラと儂のこの世界の神々の様にな。だからこそ、ハチマンウーサは彼奴を信頼しているのじゃ」
その人物だが、いまだこの世界には戻って来ていない。魔界に侵攻してきた輩と戦っているからだ。
眷属たちと仲良く力比べをしているリュックたちを見て、死神はイズヴァルトに呼びかけた。
「さて、戦いを続けようかの?」
3カ月も経ったから、また再戦ができるだろう。
戦いだが、自分は素手だ。イズヴァルトには棒きれを渡した。氷雪の栄光は使わせないのが条件だ。
「儂から1本を取れ。それが勝利条件じゃ」
イズヴァルトは構えた。棒に闘気を込め、印を切って身体強化術式を施す。お前を必ず殺す、という意思表示の表れだ。
数えきれないほど多くの鋭い刃が一塊りになった様な気配を放つ、本物の戦闘装置と化したイズヴァルトを見てアエーシュマは目を輝かした。
「ほう。手ぬるいのは不服か?」
「随分と舐められたものでござる。が、『死神』相手では致し方なし。その条件でお引き受けいたそう」
そう言って、イズヴァルトは踏み込んだ。
□ □ □ □ □
(く、くやしいでござる……。)
今度は、一瞬ではなく、10分は保てた。
アエーシュマは喜びいっぱいの顔で戦ってくれた。戦士冥利に尽く10分だった。
しかし最後にはやられてしまった。痛覚の大爆発とともに意識を失い、目を覚ました。
「今度は1カ月じゃ。お前さん、治りが早くなっておるのう。神人の適性があるようじゃ」
そう言ってアエーシュマは起き上がったイズヴァルトに、茶と表面に『じゅうまんごく』と焼き印がついた、白くて柔らかいお菓子を差し出した。
そして、彼はその甘味に涙をこぼした。
うまい。うますぎる。風が語り掛けるような美味しさだ。
中には紫に近い黒色の何かが詰まっていた。ムーツ大陸で見たことがあり、マイヤがぱくぱくと食べていたのを思い出した。
「うむ。うむ。この甘くておいちーおまんじゅうには、何が入っているのでござろう?」
「あんこというものじゃ。小豆と砂糖を混ぜたものらしいのう。ついこの間、他の世界の死神がやってきて、旅土産で貰ったものじゃよ」
アエーシュマもまんじゅうを食べて茶を飲む。甘味とはまことに良いものであるのう。
甘味の後は、一旦戦いのことは忘れてリュックたちと剣の稽古だ。
この4か月間で彼等は見違えるほど成長した。全員の身のこなしと膂力は、イズヴァルトも感心してしまうほど強くなっていた。
それから死神のペットたちと触れ合いながら、雑談をし始めた。リュックは寝る前に必ず4回手淫をするのだが、最近は精液の量が倍になったとイズヴァルト達に語って笑わせた。
それからもう一度軽い稽古をし、牛や猪の背に乗って野原を駆け回って遊んだ後、食事をすることとなった。
アエーシュマは囲炉裏の上にあった鍋の雑炊をお椀にすくい、さじを持たせてイズヴァルトらに食べさせた。
雑炊は『おみそ』を溶かし、大根や鮭を入れた美味なものだった。
食材をどこから調達するのかが謎だったが、そんなことを思わせぬ程に夢中で食べた。
「飯が終わったら風呂に入れ。儂の家は温泉をひいておる」
家の東のはずれにある階段から降りた先にある風呂場は、大沐浴場のように広々としていた。崖の上にあり、そこから雄大な神界の景色が伺えた。
先にアエーシュマの眷属たちが入っていた。イズヴァルトが牛に話しかけると、相手はもー、とひと鳴きしたあとにニンゲンの言葉でしゃべりだした。
「ここはいいところでしょう。ずっとアエーシュマさまのところで御厄介になってみてはどうでしょうか?」
「そうもいかないでござるよ。拙者たちはマハーヴァラ様の軍を勝利に導く仕事があるのでござる」
「そうですか。もーう」
良い景色を見て、風呂で温まったらひと眠りだ。イズヴァルトは夢の中でマイヤと会った。早く自分を見つけておしゃぶりさせて。うんちのおせわをして、とねだっていた。
夢から覚め、目を開けると、アエーシュマに再戦を挑んだ。今度は趣向を変えたい。
「貴殿のように、拙者も拳法で戦いたいでござるよ」
「よろしい。そう致そうかのう」
外に出て、うっそうと茂った森の中に入った。
全裸のイズヴァルトと全裸のアエーシュマが爆ぜ合う。
剣術や槍術といった武器をもった武芸しか嗜んでいないと思われているイズヴァルトだが、格闘術も学んでいた。
拳突、手刀、回し蹴り、踵落とし、タックルなどを繰り出すが、そのどれもがキレが良かった。
しかし死神は素早いことこの上ない。ただただ、かわされるだけである。
「ほう……そちらの才もあるようじゃのう?」
「異界の『ゆうしゃ』どのらから学んだでござるよ!」
「ふうむ? ナハリジャーヤのエルフ達のほうが、いろいろと学べると思うておったが?」
イズヴァルトの猛撃をいなしながら、元の世界に戻ったら、まず彼女達の元を訪れて学べ、とマハーヴァラは言った。
余裕たっぷりに言った死神だが、イズヴァルトの猛撃をかわす間に、陰茎がしっかりと勃ちだしていた。血が集まると畏怖するほどの怒張である。
そのイズヴァルトもまた、股間を硬くさせていた。一度も当てられていないが、身体が喜んでいる。よい戦いだ。