※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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記録:聖戦の勇者 終 『マイヤの曽孫』

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 その後はオルタンスと生まれた息子を伴いながら、オクタヴィア姐さんたちの援けを受けながらも、イズヴァルトと俺はサイゴークを中心に旅を続けた。

 けれどもマレーネ姫が言う、ゴール族の殺人鬼はいくら探しても見つからなかった。

 旅の最中、俺はオルタンスとの間にもう1人の子を授かり、それなりに旅も充実していたが、イズヴァルトは仇を討てぬという悲しみに暮れ、疲れ果てていた。

 

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「もう、かたき討ちの旅はやめたほうがいいでちよ?」

 

 フグ養殖場の事務所で、触手姫がイズヴァルトに言う。

 

 彼の顔はすっかり何かに取り憑かれていた。マイヤは前世に生き戻ったと聞いて喜んでいたけれど、殺した相手は討ち果たしたい。

 

 しかし、サイゴークで、チンゼーで、シマナミスタンを巡ってわかったことは、市井に紛れ込んだゴール族ほど厄介なのは無い。しっぽをなかなか出さないのだ。

 

 何なら1人ずつ見つけて殺してやろうか、そんな物騒なことも言い出していた。イズヴァルトはそれだけ、焦燥しきっていた。

 

「ではござるが……」

「そうだよ、とーちゃん。しばらくはシマーヅとこことカイロネイアを行ったり来たりして、静養に努めようよ?」

 

 エレナが諭す。すっかり大人びた、というには少々幼い感じもする。戸籍上の年齢は23ぐらいになるが、神界での生活と時の流れのせいで、15歳ぐらいに見える、というぐらいか。

 

 しかし背は170以上あり、胸も尻もよく肉をつけている。身長は150ぐらいの小柄だが、おっぱいはそこそこボリュームあるオリガとは対称的だ。いや、この場合何が対称かというと、背丈である。

 

「……拙者はどこへ向かえばよいのでござろう」

「普通にオーミゲニアの盟主として、ナーガハーマでちんちんをしこしこしていればいいんじゃないでち?」

「ではござるが……もうホーデンエーネンとは戦争が起こっていないでござるよ?」

 

 ホーデンエーネンだが、ナントブルグは文治政治にシフトしてから外征を一切しなくなった。代わりに領主間のちょっとした衝突がよく起こるようになっていた。

 

 イズヴァルトの実家のシギサンシュタウフェンも、アスカウと盟約を組んで、軍事同盟を結んだという。

 

 何せ東の領主達が、豊かな鉱山を狙っての攻撃を開始してきたのだ。

 

 防戦も何度か起こった。イズヴァルトの父が「何のために買ったんだ?」と思わせる兵器が役に立った。イズヴァルトの父も滅法強い武人だ。攻めて来たはるか東の小領主の首を、一騎打ちでとったという。

 

 その話を本人からの手紙で読んだミツクニュモスは、オーミゲニアよりもホーデンエーネンをどうにかしたほうがいいのでは、とイズヴァルトに言った。

 

「気晴らしにホーデンエーネンの悪い領主達をおしりぺんぺんしていく、ってのはどうだい? そっちのほうがイズヴァルトさんは得意だろうし、そうしないか?」

「うーん。ではござるが……」 

 

 イズヴァルトの目の前に触手が現れた。ケーキを置いた皿とフォークを持っていた。

 

 それを取って「いいこ、いいこ」と撫でてやった後、頭の疲れをとる甘味をひょいひょいと口に運び出した。

 

「ううむ。そう致そうか。ジューンショーン様が気の毒でござるし、トリーネ様もどうなっているのか、気がかりでござる……」

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 触手姫が手を貸してくれた。転移魔法でシマナミスタンを横断し、その北部海岸沿いにある島を領する、アワージラントに入った。

 

 アワージラントはサヌキスタン王国の北にある。おおよそ300年の歴史を持つ国だ。

 

 かつてはホーデンエーネンの飛び地であり、時の国王の弟が治めていたが、その人物はシマナミスタン制圧を声高に叫ぶ本国に嫌気がさし、独立した。

 

 いくつもの島しょを領地とし、キンキ大陸との中継交易で財を得ていた。海産資源もそこそこあった。この辺は魚が多いことでも有名である。

 

 しかし島の1つ1つがかなり狭い。人口は過密し過ぎてどの町も汚い。

 

 特に王国一番の港町であり、王都でもあるスモートパトナムは環境が劣悪きわまりなかった。

 

 ナントブルグの大きさぐらいの島に、おおよそ15万以上の人々がひしめき合う。

 

 道はどこもかしこもうんこしょうべんをする子供達だらけ。大人だって女でもその場でスカートをめくってぶりぶりぶり。

 

 うんこのにおいが立ち込める汚穢都市では、常に疫病が蔓延していた。

 

 美少女もお尻を出してぶりぶりするのを嫌と言うほど拝められるというシマナミスタンの都市の中でも、ひときわ汚い街がスモートパトナムの町だった。

 

 イズヴァルトたちはうんこを踏み抜かぬよう気を付けて道を歩きながら、そこを治める国王に会った。

 

 その王の名前は、バイロン=クマーノクト=ホーデンエーネン。

 

 クマーノクトは初代の王が自称した家の名だ。当時の王国の主力海軍だった、クマーノクト海軍からとったそうである。

 

「……というわけで、お力添えいただきたいでござる」

「いや、私に言われてもな……」

 

 バイロンは気乗りしないという様子だった。はっきり言ってクマーノクト家が使者を送っても、ナントブルグの本家はつっぱねるか、1か月ぐらいとどめ置いてから手紙だけ受け取るという態度が常だった。

 

「私に頼るよりも、ヨーシデンに入ってザーチャ殿とディーク殿を訪れた方が良いのでは?」

「ではござるが……あんまりカツランダルク家を巻き込みたくないのでござるよ」

 

 キンキ大陸にほど近いこの街で、イズヴァルトは知らなかった話をいくつも聞いた。

 

 もう1つのカツランダルクのご本家であり王の妃、レーア=カツランダルクの権勢が著しい。

 

 彼女を盛り立てるソーロー家とスカルファッカー家もまた、王国第一の貴族家として皆に崇められていた。

 

 そして彼等が敵視するのが、他でもないアスカウとヨーシデンのカツランダルク家である。

 

「そこをなんとか!」

「うーむ……」

 

 そこに奇矯な格好をした少年が現れた。前半分は普通の服だが、後ろ半分が素っ裸だった。後ろを紐でくくりつけていたのだ。

 

「おとうちゃん、そこはイズヴァルトはんの頼みをきいたらどうでっしゃろか?」

 

 そう彼は言った。バリバリの北東部シマナミスタン訛りである。

 

「しかしシグルド、ホーデンエーネン本家は意地悪だぞ?」

「ええと、小姓どのでござるか?」

 

 バイロンもシマナミスタン訛りになった。

 

「ちゃう。わしの倅や。かわいいかしこい末っ子やで」

「そうでござったか……後ろが素っ裸というのもおかしなことでござる」

「家計が苦しゅうなっとるのに、おとうちゃんは王家の尊厳だからとお仕着せを着せてくるんや。だからぼく、こうしてせめてもの抵抗をしておるやで?」

 

 そう言って彼は股に手をかけた。割礼を施した立派なちんちんが見えた。なかなかに良い小刀だ。

 

「というわけやから、イズヴァルトはん、こうゆうのはどないでっしゃろ?」

 

 賢いというか、さかしいというのが似合っていそうなシグルドは、こういう段取りを提案した。

 

 ヨーシデンには今、『香道』の大家であるチュバッカ=ソーローが住んでいる。

 

 彼女は世に嫌気がさし、すっかりナントブルグには来なくなっているが、彼女の名前は夫よりも遥かに凄い。

 

 今も王家や大貴族の姫たちが、自慢の『香の物(うんこ)』を入れた漆塗りの箱を持って教えを乞いにいくぐらいだ。

 

 ヨーシデンのトリシア大学では既に、『香道』に関する特別な教室も開かれている。

 

 キンタマにくる艶気を漂わせるドブスの本人と、割かし整った美人で生まれたが、色気が母親の10分の1以下という彼女の娘達が指導しているそうだ。

 

「チュバッカどのが……ううむ。マイヤより、かなりの奇人と聞いていたでござるが……」

「とんでもなくちんぽをおっ立たせるブスババアの代表格やで。そんでなあ、チュバッカはんに仲介を頼むんや」

「……そういうことか!」

 

 ミツクニュモスは力強く相槌をうった。これは調略の常道だとも言った。

 

 名が高い文化人を介して根回しをする。この方法がすっぽりと抜けていた。

 

 これまで自分達が考え着かなかったのは、マレーネだのオクタヴィアやイナンナといった、ある世界の著名人が勝手に手を貸していたからだ。

 

「まあ、最初からシマーヅ王に頼めばよかったけどな」

「でも、ここやイーガやったらいろんな話も聞けるし、考え方としてはあっているもんでっしゃろ?」

「ははは。こいつう!」

 

 ミツクニュモスはシグルド王子を小突いてやろうとしたが、相手が王子なのを思い出して慌てて止めた。

 

 そしてチュバッカを介しての連絡が始まった……というよりはすぐに終わった。

 

 1か月後、国王の密使と称する人物が、このアワージランドに訪れたのだ。

 

 ナガオカッツェの公弟、ヨーシアキレウスがその人物だった。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 国王からの直筆の書状を渡した後、飴玉をもごもごと舐めながらヨーシアキレウスが単刀直入に言う。

 

「アーノンレンシ姫をイズヴァルト様に預ける、と」

 

 アーノンレンシ。

 

 3年ほど前に失踪したジョーケイン王子と、姫を産んですぐ、城から抜け出して行方不明となっているトリーネ姫との間の娘だ。

 

 まだ3歳になったばかりの姫をイズヴァルトに託す。手紙にはそう書かれていた。

 

「……なにゆえでござるか?」

「とりあえず、添付の映像水晶を見ていただきたい」

 

 2,3個入っている映像水晶から映しだした。

 

 やせっぽちで頭も眉もつるっつるのぴーかぴか。

 

 しかし顔は確かにマイヤ、いや、どちらかというとトーリに似ていた。

 

 その姫だが、塔の窓からお尻をだして、ぶりゅりゅりゅと勢いよく大便を水堀に放ったり、素っ裸で馬に立って乗り、「はいよっ!」と掛け声をかけて全力疾走させたりと、やんちゃが過ぎるおこさまのようだった。

 

「こんなやせっぽちのがりがりで……どうしてこんなに元気なのでござろうか?」

「多分だが、身体の最後の余力だろう。だが、見てくれ。彼女の瞳の色は魔族のだ」

 

 確かに。姫の目は紅色だった。イーガで暮しているオットーとローザマイヤとおんなじだ。

 

 要は吸精魔の特性がかなり強い、ということだ。

 

 サキュバスなら食物が多少粗末でも、精液さえ取り込めば元気になる。

 

「これまでヨーシヒデクスの兄上が気の毒に思い、国王陛下と示し合わせてこっそりと精液を混ぜたミルクを飲ませていたそうだ」

 

 しかしそれが、アナキン=スカルファッカーにバレてしまったそうだ。

 

 これまで少しは外に出られたアーノンレンシだが、より監視の目が厳しくなった。

 

 そうなればいよいよ彼女は衰弱死してしまうだろう。

 

 だからイズヴァルトに助けろ、と国王は言って来たのだ。

 

「陛下の私兵は、どうなっているのでござるか?」

「そんなものはとっくに解体されている。今では臭いにおいをプンプン放つ、レーアの私兵となっているよ」

「と……なれば」

 

 早速声をかけなければ。触手姫が「でち!」と叫びながら姿を現した。

 

 ぷにぷにした可愛い身体の魔族を見て、ヨーシアキレウスは目を輝かせるが、彼女が助けに行くのかとイズヴァルトに尋ねると、そうではない、と彼は答えた。

 

「ブランカどのには今すぐカントニアに行って、拙者の助太刀を連れて来てもらうつもりでござる」

「もちろんでち!」

「集結するのはこのアワージランドで。そして拙者は手勢を率いてヨーシデンに向かう」

「……なるほど。ではナガオカッツェからも、亜人の護衛と今の武の要たる、ルートヴィッヒ=ベートーベンの隊を寄越そう」

 

 そして通るのは、ナガオカッツェ山脈の裏側だ。そこならナントブルグに通じる道にも行ける。

 

 そしてイズヴァルトは100人近くの協力者を集め、ヨーシデンに渡った。

 

 ホーデンエーネン王国暦373年の11月の終わり。

 

 イズヴァルトがマイヤの曽孫を出会い、彼女とカツランダルク家がひき起こす歴史の激動の真っただ中に放り込まれることになる。

 

 そしてこの曽孫が、彼の妻の前世ともきわめて縁が深いことを知る事にもなるのだ。

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