聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
次の宿場町へと向かう馬車の中。マツエスコーと向かう2人の港湾役人らは、マハラ教の聖地を訪れた時の思い出を語りだした。今から20年程昔のことだ。
「君達もご存じの通り、マハラ教の神殿には巫女というものがいる。尼僧と呼ばれる存在もね」
「マハーヴァラ様の娘達、豊穣を司るの女神達であるアプサラーの百姉妹に、日々祈りを捧げているのが巫女。女神様ではなくマハーヴァラ様と奥様のヴァシリアナ様にお仕えするのが尼僧だ。この辺はもちろん知っているだろう」
マイヤはうなずいた。マハラ教はマハーヴァラとその妻ヴァリシアナを主神としている宗教だ。その子のアプサラーの百姉妹については、売れっ子のサキュバスみたく美人でむちむちで、多産だと教典で知った。
特に有名なのは、アプサラーの百女神たちの長女のガンガ。愛と豊穣とを振りまき、神話でも500人以上の子を産んだという。それは主に出回っている神話でだ。
別の言い伝えによると5000人以上の子を産んだとも。百姉妹で一番美人で男の生殖欲を暴走させる肢体の持ち主だという。彼女を描いた絵画や彫像は総じて生々しい程に艶めかしかった。
「その巫女だが、訪れた信者に身体を自由にさせたり、自分から奉仕してくれることは、遠いキンキ大陸でも知られているだろう」
「聞いたことがあります。ホーデンエーネンの神殿では貴族やお金持ちの家の男の子が、成人の儀の1つとしてそういう巫女達と寝床を共にするらしいです……」
サイゴークでは違う。望めば例え乞食でも巫女達と寝る事ができるのだと役人達は答えた。賽銭箱への投げ銭がいくらでもかまわない。信徒は一生に一度だけ巫女と寝る事が出来る。サイゴークでは。
「一日に30人も相手をするという話もある。過酷だと思うだろうがガンガ様に仕える身として全うな行いなのだよ」
「でも巫女達は愛の技巧を知り尽くしている者ばかりだ。サイゴークの男達はマハラの聖地で筆おろしをする事が多い。少年達は巫女と交わり、生まれ変わるのだよ」
巫女は8歳から40歳までと定められていた。その歳を過ぎたり、セックスに耐えきれない身体になると尼僧となる。
聖職者の娘や貴族の娘。あるいは信心深い信徒の娘が神殿に入り、巫女となった。『聖娼』と呼ばれる事もあったが、彼女達は信徒らに身体でアプサラーの百姉妹の教えを伝えた。避妊を許されていないため、多くの巫女が出産も繰り返したという。生殖と多産も義務付けられていた。
ちなみにだがサイゴーク各地のマハラ教の神殿にも、巫女という存在はいた。聖地からあまりにも遠いところの少年達は、そこで童貞を失うのだ。
「あんまり……なりたくない仕事ですね。神様に仕える身だとしても、そういうのはちょっと……」
おちんぽが大好きなマイヤにしては、珍しく弱気な感想を述べた。信心が足りないと笑いながら、2人の役人は20年前に相手をしてくれた巫女について語りだした。同じ巫女が相手をしてくれた。
「黒髪の娘さんだったな。確か、その時はまだ13歳と聞いていたよ」
「年相応の体つきだったけど、すぐに果ててしまうほどに素晴らしかったな……」
この2人の相手は巫女の中でも一番指名される人物でもあった。技巧と名器ぶり。その肌の素晴らしさは、スオニア国内では名が知られていた。大変に優れた魔法の才もあるとの噂もあった。
しかし貴族や王族からの『身受け』の話が来なかったのは、とある理由があったからだと語られていた。とある大貴族の娘だが、その家にとってふさわしくない姿だった為、赤ん坊の頃に神殿に送られたのだとか。
「巫女達の中では群を抜いて美しかった。訪れた信者だけでなく聖職者達にも毎晩可愛がられていると聞いた事があるよ」
「でも変な名前だったなあ。2つあるんだ。セシリア=セーニャ。変な名前だろう? 彼女が自分のことで語ってくれたのはそれだけだったな……」
本当の名がセシリア。セーニャとはその家で産まれる二番目の娘に代々つけられる名前だと聞く。長女がヴェロニカで三女、四女がシルヴィアとマルチナ。五女だとエーマ。それ以降にも歴代からの名前をつけられる。
ただ、一人しか娘が産まれなかった場合は、後々に二番目の名前をセニカと変えられるしきたりがあった。そのセニカという名前だが、スオニアでは救国の女と同じ名であり、尊ばれた。
「どこの家から来たのかは聞いたことが無いが、名前が2つあるのはなかなかに無い。貴族だとしてもせいぜいが『2つ名』。成人後や当主となった時、業績や性格で親や後見役から名づけられたり、自称したりするのだが……」
「スオニアは古くからあるからね。しかしセシリア=セーニャという巫女は抜群の美人だった。幸薄そうな表情で物静かで大人しくて……そのくせ抱きすくめるととても活発になる。かわいかった……」
今は聖地に戻ってきた男どもから、その名前を聞いていない。どうしたんだろうねと役人2人は考え込んだ。マイヤはうつむいてだんまりとして手が震えているイズヴァルトを見て、2人に別の話をしましょうよと促した。
「どうしたのかい? お連れさんはとても具合が悪そうに見えるけど……」
「なんでもないです。ほら、スオニアって南の海に面しているし、チンゼー大陸からいろんな人や物が入り込んでくるから、マハラの聖地以外にも楽しいものがいっぱいあるんじゃないかって思っているんですよ! ほらほら……」
「そんなもの、スーエイニアやゲースティアにも入り込んでいるよ。スオニアはマハラの聖地以外は、ふるくさい、と言い切ってしまえるようなものばかりでつまらないところだからね……」
「マハラの聖地と暗黒卿を説き伏せてスオニアへの侵攻を押しとどめた、ハーフエルフのセニカ王女のゆかりの遺跡とかぐらいだよ、面白いのは……あ、どっちもキッカワンテスだったか」
2人はまたも、20年前にキッカワンテスで見たことや聞いたことを語り出す。マイヤはイズヴァルトの様子をちらほらと身ながら気が気で無かった。
この少年騎士は今にでも、この2人を斬り伏せて黙らせようとする殺気をみなぎらせていたのである。
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着いた宿場町の宿でイズヴァルトは、ため息をついて悲し気にうつむいていた。側にいたマイヤはわかっていた。2人が話したマハラの聖地の黒髪の巫女こそが、イズヴァルトにとって深い関係にある人物なのだと。
聖騎士イズヴァルトの母はスオニア人。それも王家の庶流・キッカワンテスに連なる娘であった。現当主のキャルベロナ=ヴェロニカ=キッカワンテスの姉、セシリア=セーニャ=キッカワンテスである。
長女なのに次女の名をつけられたのは、イズヴァルトの母がキッカワンテス家にとって忌まわしい産まれ方をしたからだ。この家の子は皆が銀色の髪を生やし、女であれば豊満な胸と尻をつける事になった。
しかしイズヴァルトの母は美人で、『3こすり半の名器』と知られていたが身体の起伏に乏しかった。それでも神殿の様々な高僧達に夜伽を求められ、過酷な巫女の職務を続けたという。
マイヤはイズヴァルトの母本人から、1から10まで聞いていた。セーニャという名前は思い出したくない。セシリアおかあさんと呼んでくださいね、と手紙でもいつも書かれていた。
「イズヴァルト……」
「母上はの辛い頃の話を聞きたくなかったでござる。何せ他の巫女とは違い、4歳の頃から相手をさせられたらしいでござるからな……」
マイヤは気の毒そうな顔になって、イズヴァルトの母から嫌な思い出話を聞かされた。乳児の頃から膣にハリガタを入れられて拡張を施され、2歳の時に少年僧のペニスで破瓜を迎えたらしいと。
3歳の頃にはその幼い秘所はすっかり、大人の大きなそれを迎え入れるぐらいにまでほぐれてしまった。信徒に触れ合うようになる前は、聖職者達がセシリアの相手をした。
「信徒の皆さまと触れ合えて嬉しかったけれど、お坊さん達に抱かれるのは嫌でならなかった、と常々嘆いていたでござる」
「私、それについては何も言えない……」
セシリア=セーニャは遠い祖先のエルフの童女の様に、素晴らしい身体と性格をしていた。セックスに抵抗感が無かった。それが僧侶達の淫欲を安易に向けさせてしまった。
司祭長達もまた、セシリアを抱いて眠ることを求めるようになった。俗世の煩わしさから解き放たれた者らの性愛はねちっこくておぞましい。中には折檻をしながら彼女にしゃぶらせる悪どい者もいたという。
巫女として信徒と神殿で交わるようになってからのセシリアだが、スオニアのマハラ教の僧侶や尼僧。巫女達が残した書簡でも書かれていた。このようなお褒めばかりである。
「まじすっげえ! あのこのおまんこうちらの3倍仕事するわ! 信徒に毎回3発出させるんだもん!」
「3発どころじゃない。5発いけるってさ! セシリアちゃんマジ淫魔! アタシも負けてらんね! ガンガ様みたく立派になるため、もっとあそこの締りを鍛えよっと!」
「ジュロムのやつがセシリアに夜伽させる件で、また戦神の祭祀場のロミオと殴り合いのけんかになった。セシリアはこの神殿の者らの共有財産でもあるのに。独占はいけないことだ。気持ちはわかるのだが……」
もちろん避妊は無い。セシリアはイズヴァルトを産む前に、誰の男の子かわからぬ赤ちゃんを3人産んだ。11歳と12歳と13歳の時にである。産まれた子はどれも黒髪の娘であった。
初潮が早く8歳の頃に始まったのだ。それとキッカワンテス家の女は代々出産に関して強靭だった。セシリアの母や祖母、その曾祖母やもっと昔の先祖らは、10歳の頃から10人以上もの子を産んだという。
なのに現当主のキャルベロナ=ヴェロニカ=キッカワンテスには、子が2人しかいなかった。その2番目の出産で子宮が壊れ、もう産めない身体だとスオニア国内では噂されていた。
「スオニアに行きたいって、絶対に言わないからね、私。父違いのお兄さんやお姉さんたちと逢ってみたい、とか絶対に言わないから」
「ありがたいでござる……うぐっ……」
イズヴァルトはマイヤに抱き着き、その胸に顔をうずめて泣き始めた。親の過酷だった過去は息子にとっても悲しい事である。
そのイズヴァルトはセシリアが16の時に産まれた子であった。その前年、参拝に来たシギサンシュタウフェンと恋に落ち、その旅の途中で授かった子。アプサラーの百姉妹の粋な計らいとも言えただろう。
イズヴァルトとマイヤは知らぬが、彼女達も母親と同じ道をたどった。とはいえ巫女として一生を奉仕するのではなく、見初めらえた他国の若い貴族に見受けされて妻となり、母としての穏やかな人生を送ったという。
イズヴァルトは母の辛い過去を思い出して悲しみ、マイヤに優しく慰められる夜を送った。大きな乳房に顔をうずめながら、恋人でもあり代わりの妹や母でもあるこの4歳年下の娘に、思う存分泣きながら精を注ぎ、悲しみを全て吐き出して安らかな寝息を立てる事が出来た。
しかしこの男が一生行きたくないと誓ったスオニアへ、しかもキッカワンテスの地に向かうのは歴史書にも書かれている事実である。
しかしそれはずっと先のこと。今はこの男の少年時代の話である。さて、これから向かうイーズモーの地で、2人はいかなる出来事に遭うのであろうか?
その続きについてはまた、次回にて。