※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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26 シマナミスタンの食鬼人たち

「ゴール族でいろんな魔法が使えるとは……信じられん!」

 

 家に招待されたこの大陸の『同族』たちは、ヘラが指先から火をともすのを見せると、大層驚いていた。

 

 彼等はこう語る。シマナミスタンの『食人鬼』は身体強化魔法こそ扱えるが、それ以外はまったくダメだ。

 

「どうしてかな?」

「俺達の種族のことを、あんまり知らん口ぶりだな。ゴール族というのは大抵、魔法がろくに使えんものばかりだぞ?」

「そりゃあヘラの様な変わり種もいる。ドワーフさんたちの土魔法や冶金魔法をいくらか使えたりとかね。でも、大体は血が、精霊人と混じったりしているんだがな」

 

 しかし火の魔法、空を飛ぶ魔法を使える者は皆無だった。彼等は伝説の域にあるゴールの『始祖』とその子らが、様々な魔法を駆使できたらしいとヘラに教えた。

 

「ふうん……そうなの?」

「もしかしたら嬢ちゃんは『選ばれし者』かもしれん。里に帰ったらこのこと、仲間達に知らせていいか?」

 

 ヘラは断った。それは困る申し出だ。知られると誰かが嗅ぎつけてくるかもしれない。

 

 彼等はとても残念がった。しかしとりあえずは、もっと話をしよう。

 

 彼女は自分のアジトに3人を招待した。彼等は留守役のセイン王の動く首なし死体に驚いたが、それが甲斐甲斐しく紅茶やお茶菓子を持ってきたり、ヘラが仕込んだ簡単な料理を提供してくれると、親切さが不気味さに勝った。

 

「ところで誰の屍だ? この地方のニンゲンではないだろう?」

「北の方のちょっとした有名人よ。この辺じゃあんまり聞かない名前だと思うよ?」

「そうか。生前はとても親切な男だったのだろうな……」

 

 しかしそんな善人も喰らうのがゴール族の業というものである。この大陸の彼等は、とっくに死刑囚しか食わなくなっていたが。

 

「それよりも、アナタたちがどうしてここを嗅ぎつけたのか教えてよ?」

 

 紅茶に砂糖を溶かした暖かい牛乳を入れながら、武装した来客たちに訊く。

 

「マシャキジャヤの殿様からの依頼だ。村に人さらいが出たので犯人を捕らえて欲しい」

「マシャキジャヤ……そこってどこ?」

「ほんとに知らないのか? このあたり……アシヅリラーヤも治めるシマントスタン7公のうちの1人だぞ?」

 

 シマントスタン地方には7つの公家がある。東のトサヴァールには10公家。

 

 シマナミスタンの南部にあるトサヴァール国は、これら17の公家が代表を出しあって、合議して統治しているのだ。

 

 中でもマシャキジャヤはひと目置かれている公家である。

 

 本拠地こそ山の奥の盆地にあるが、いくつもの良港を抑え、この海域の交通を牛耳っている。それからチンゼー大陸と行き来する海運会社も運営していた。

 

 いわば海運で富を得ている。それに土地はどこも、作物の実りが良い。

 

「我らはマシャキジャヤの殿様に、処刑人として雇われている」

「それと護衛にだ。俺達の仲間の何人かは、殿様のご先祖様に、姫君を下賜された者だっていたのだよ」

 

 マシャキジャヤ公はゴールに一定の信頼を置いている。だからこそ、この辺りでは人さらいはよした方がいい。いや。

 

「シマナミスタンで『人食い』は慎むべきだ。この大陸はゴール族を一番深く受け入れて、そして警戒もしている」

「このまま続けていると、我ら以外のゴールから襲撃を受けるだろう」

「せいぜいが『食児』……というのか、あれぐらいにとどめて置いたほうがいい。これは忠告だ」

 

 ヘラはその助言を受けることにした。『仔』でもなんとかなるだろう。時間はかかるが。

 

 そしてセイン王に風呂の用意を申し付けた後彼等に一晩ぐらい泊るように誘った。

 

 3人のゴールの男達の肉体は、ヘラを夜明けまで歓喜に包ませてくれた。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 その男達との『法悦』で新たに孕む事は無かったが、その後も彼女は順調に『仔』を産み落とし、それを食べて力をつけた。

 

 魔力はますます膨れ上がり、肌艶と弾力は良くなって、膣や口腔は吸精の魔物ぶりを増していった。

 

 そうして移住してから半年、彼女のところに来客が現れた。コショーショーの部下のイナリーレンだ。

 

「やあ。久しぶりに会ったね」

「随分とご無沙汰だったね? コショーショーさんはすっかり忘れているかと思ったよ。今日は泳ぎに来たの?」

「まあね」

 

 イナリーレンは緑と白の縞模様の水着をまとっていた。大きなビニール浮き輪を肩にかけていた。その弾力ある輪っかの上には、シマエナガの魔族、フェルンとゼンゼが止まっていた。

 

 シマエナガ型魔族の2人は、「ちゅぴ」と鳴いてヘラにお辞儀をした。よく見ると腰と胸のあたりに水着のようなものをつけていた。ゼンゼのは紅い花柄の、フェルンはきんきらきんのゴールドビキニだった。フェルンのは若干、胸の布面積が小さかった。

 

「海水浴のついでに君に会いに来た。コショーショー様に頼まれたものを持って来たよ」

 

 イナリーレンは大きな、ピンク色のキャリーケースをヘラに手渡した。鉄でできたそれは、ビニールのカバーに覆われていた。

 

 この世界ではまるで見たことが無いようなデザインであるが、どこか見覚えがあるなとヘラは思った。たぶん前世の記憶だろう。

 

「この中には何が入っているの?」

「マイヤ様の蔵書庫で探した本を書き写したものが入っているよ。君の前世の……死後のことが書かれている本ばかりだ」

 

 死後、といってもヘラは、西暦2007年ぐらいまでのことなら断片的にだが知っている。

 

 おいも型のでかちんぽでめいいっぱい愉しませてくれた、シマーヅのピピン王子が寝物語で教えてくれたのだ。

 

 『ハルヒダンス』や『マリオの続編』など、あんまり役に立たないことばかりだが、彼女もちらとやったことがある『ポケモン』の新作についても教えてくれたから、なかなか楽しい話を聞けた。

 

 イナリーレンが持って来た沢山の写本に書かれていたのは、前世のヘラが死んだ後、100年ぐらいの世界の情勢や文化のことについてだった。

 

 『アメリカ』は占領した『イラク』と『アフガニスタン』の統治に失敗して逃げる様に去った。

 

 中東では『アラブの春』という社会運動が起こり、数多くの社会変革が起こったが、その反動でとんでもない反動が起こった。

 

 あるいは、ISISという盗賊団の様な連中が勝手に国をつくり、狼藉や虐殺を繰り返した。

 

 それと『イラン』が巨大な激変に見舞われた。最初の大規模なデモから十数年後に、『原理主義者』は追放され、国のシステムはガラリと変わってしまったらしい。

 

 そして『ヨーロッパ』は、もっと大きな騒乱が起こった。イスラム教圏からの質の悪い移民を多く受け入れたせいで治安が悪くなった。

 

 各国の政府はその移民たちの、窃盗やレイプを容認するようなことをやらかしていた。デマも多かったが、証拠不十分だと必ず無罪放免になったようだ。リベラルという勢力の弁護士や政治家たちが、移民犯罪者を援けたのもある。

 

 しかもイスラムの、いや、その移民たちの元々の民族が認めていた児童婚や多妻制度が不安を煽った。

 

 子供がさらわれて無理やり妾にされ、幼い歳で毎年のように子供をポコポコと産まされるかもしれない。

 

 イスラムの、いや、移ってきた民は避妊を行わなかった。『信心深い啓典の徒』や『敬虔過ぎるクリスチャン』の様にだ。

 

 移民の人口は急増していった。その不安がいよいよ限界に達し、『ヨーロッパ』の各地でイスラムの移民の排斥運動が始まった。

 

 そして、2030年代、ついに器にたまっていた水があふれてしまった。各国のもともとの住民たちが、その移民たちを虐殺しはじめたのだ。

 

 最初はちらほら起こる揉め事の上での殺人事件だったが、段々と組織的な大量殺人へと変化していった。

 

 政府だが、虐殺したほうの言いなりになった。それまで移民の受け入れを進めて来た『リベラル思想家』が批難を受け弾圧された。その中には、私刑で殺害される者も出てしまい、論議の場に出なくなったのだ。

 

 そうして各地で移民らへの、組織的な屠殺が開始された。

 

 最初の標的は、年金を受け取って労働をせずに子供を次々と作る層だった。

 

 それから貧困層や、中間層や富裕層で歴史を盾にとって歪んだ団結を声高に叫ぶ者が対象となった。彼等に味方したリベラルの知識人層も、巻き込まれる形で相次いで殺害された。

 

 この混乱と血なまぐさい風を、中東やアフリカの政府や外交官はこぞって黙殺した。渡海して人様の土地に迷惑をかけていたタチが悪い同胞を見殺しすることに決めたのだ。

 

 かの国々も人口はとっくに、まかなえる数の限界に達していた。家族計画に無頓着にさせたまま、あまりにも命を大事にし過ぎたためにだ。

 

 ある意味無駄と思われる生命を保たせ、増やしてしまったのは『ヨーロッパ』からの援助であり、医術によるものだった。

 

 そうして憤った者達による『間引き』は順調にかつ、急速におこなわれた。ヨーロッパの各地で殺害した彼等を埋めた廃棄場が生まれた。

 

 この虐殺の対象に女……赤ん坊から子を産める歳の女は含まれなかった。彼女達は皆、男達の性欲の発散の相手であり、この頃から始まった新たな社会的人種、『隷民』を産む為の道具となった。

 

 そうして生まれた子供らは、女ならば子を産む奴隷や男ならば成人もせぬうちに命を落とすような、最悪の仕事に従事することとなってしまった。

 

 その虐殺され、虐げられた移民の中にはもちろん、『ナヒーダ』が生まれたイラクから来た者もいた。

 

(これが……これが。)

 

 前世の自分や18人の夫たちが、命を亡くしてまでやった『聖戦』の結果だったと言いたいのか?

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