聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
ヘラ達に紙とペンをもらったエレクトラは、ピピン王子と『屍人形』からいろいろ話を聞きながら、3日のうちにそれを書き終えた。
彼女が書いたのは、『前世の世界』に行った後の計画書だ。あの世界のどこどこを、どのようにして滅ぼして回るかを順序立てて記している。
「最初にアメリカを叩いて、それから北極を通ってロシアをことごとく焼き討ちすること。アメリカとロシアを滅ぼせば、後はじっくりとヨーロッパを攻めればいい」
要約すればそういうことだが、ロシアをどうして危険視するのかとヘラは尋ねた。
「……アメリカがやられたら必ず天下取りに動くからですよ。ソビエト、いや、ロシアはあたしが前世で死んでからの数十年間、アメリカと覇権争いをしてましたからねぇ」
それはなんとなくだが『ナヒーダ』も覚えていた。それを『屍人形』から共有してもらった記憶で肉付けする。
なるほど、とヘラは思った。そしてソビエトがイスラム圏にどれだけ介入し、要らぬ戦火を巻いたのかと考えて憤った。
「そうだね。ロシアは叩き潰さなくちゃならないかもしれないね?」
「そうでさぁ。両方を『削る』必要があるんですよ」
「じゃあ、中国は放っておいていいの?」
作戦計画書には、中国を攻めるという記載は無かった。エレクトラはそれについてこう説明した。
ロシアが叩かれれば今度は中国が動くだろうが、あの国は伝統的に、国内に重い患いがあるからそう簡単に天下取りゲームに出ないだろう。
「それと中国はロシアとべったり。2つで1つという考え方で動いているようです。しかしそのやり方の根底には、相いに疑い合っているから信じられる相手かどうか試すために、盟約を結んでいるというわけでさぁ」
「……潜在的には敵同士、ってこと?」
「はい。その通り」
中国とロシアは地続きだ。そうなると互いに、もし何かあったときに圧力や侵攻を加えられるかと恐れを抱く。
ロシアが隣接する国をどう思っているか。その最たる事例が満洲帝国、つまりは大日本帝国との関係だ。
ノモンハンで最高潮に達した紛争はその恐れによるものだった。スターリンは日本が攻めて来ることを何よりも恐れていた。
「それは今のロシアも抱いていることでしょう。何せ資源豊かな東シベリアが中国と隣接している。弱った所に攻められて、あそこを抑えられたらたまったもんじゃないでしょうね」
「そうなると……」
「ウイグルの『同胞さん』たちに向ける力が弱くなる、ということですよ」
中国はシベリアへの侵攻にかかりきりになる。その間に独立運動などの機運が高まれば御の字だ。
ヘラが行おうとすることが行われた場合の世界の動きについて、エレクトラはその予想を語り続けた。
ただ、その気宇壮大な話を横で聞いていて眉をひそめる者が1人いた。
エレクトラやマイヤ、それとヘラの前世の未来を生きてきたピピン王子だ。
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ピピン王子は疲れた身体を壁につけ、ヘラと話し終えたエレクトラに尋ねた。
「あんなこと、本当に受けるつもりなんですか?」
彼は藁でつくった寝台に腰掛けていた。下半身は素っ裸だ。サキュバス達の愛液にまみれてぬるぬるしたペニスをだらんと伸ばしている。横で話を聞いている最中も、淫魔達にせがまれたからだ。
「ヘラちゃんがやろうとしていること……エレクトラさんが手助けしようとしていることは、それこそ、何億人もの人たちを殺す大虐殺になりますよ? あの世界をめちゃくちゃにするつもりなりますよ?」
「……そんなこと、ナヒーダちゃんが現人神様としてあの世界に君臨すりゃいいだけのことですよ」
エレクトラはそう答えた。ひどくすさんだ目だ。あの世界大戦で彼女はイヤというほど知っていた。
畢竟、世の中は力こそが全てだ。
あれだけ強大だった大日本帝国や第三帝国も、ソビエトとアメリカというもっと巨大な力に呑まれてしまったではないか。
エレクトラはこう考えていた。事を終えた後、ヘラをあの世界を統べる『王』に君臨させる。果たしてどれだけ彼女の力が通用するかわからないが、半魔族となった今ならできないことは無いだろう。
「でも、そんなことを許すなんて、僕にはできません!」
「けど、ヘラがいなけりゃきっと、世の中は戦乱の巷になるでしょうねぇ。そうなったらそれこそ、十億以上の人々が死ぬでしょう。そうならぬ為の策ですよ」
ただ、エレクトラはこうも考えていた。
アメリカでも西海岸だけは襲わせない。アメリカで『滅ぼす』のは東海岸だけだ。ウォール街とワシントンDCなど。かの国の経済や知性は、全てそちらに集中している。
「西海岸は……」
「ピピンさんならご存知でしょう。あちらには世界が何かあった時のために必要な、『技術力』があるそうですね?」
しばらくしてピピンはうなずいた。
彼もまた転生者だ。2007年までモンゴル出身の新人力士として日本で生きてきた。少しぐらいは経済についても学んでいる。
彼の前世の時代、西海岸こそがアメリカの技術の要だった。シリコンバレーや巨大IT企業は多くがカリフォルニア州にあった。
エレクトラは書物を読み、『屍人形』からもいくらか教えてもらい、その事実を学んでいた。
政治や金融が一時的に壊滅しても、技術力が残っていればなんとかなる。食料があればなおさらだ。
ついでだがヘラにまわらせるルートだが、穀倉地帯を含ませていない。
食料と技術、それがある程度残っていれば再び息を吹き返すだろう。ある一例がある。それが前世の日本だった。『藤本峰子』は焼け野原となった後の10年、自分の国が持つ復元力をその目で見届けた。
「ヘラは一旦、世界を破壊するでしょう……できりゃあの話ですが。でも、『ナヒーダちゃん』は破壊されたままの世界というのは求めちゃいない。あくまで数十年後の同胞を救う為にやろうとしていることだから、想定を超える災厄は望まないんですよ」
復興して、いくらか『現状』に戻った世界をヘラに与える。君臨させる。
これはこれである種のロマンがある、と笑ったエレクトラに、ピピンは冷たい視線を注ぎ続けた。
「できると、お思いですか? 貴方が側にいてもヘラちゃんが、そんな大きなことをやり遂げられるとでも?」
エレクトラはそっと左手を差し伸ばす。
「だから助けがいるんですよ。あの時代を生きてきた人が」
ピピンは戸惑った。自分にここまで話したのはそういうことだったのか。
彼も左手を伸ばし、太い手でエレクトラを掴んだ。
「貴方に求められたら、断ることなんて無理ですよ」
本心から言ったことだが、ピピンはこうも考えていた。
前世の世界に行けば、あちらの世界の妻や子供に会えるかも知れない。
彼もまた、無念を抱いて輪廻の道に向かった1つの魂だった。
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事件から25日が経った。
『仔』の出産が間近に迫ったヘラは、気分転換の為にアジトがある森の南にある町に来ていた。
男を漁りに来たというのもあったが、最初に向かったのは女物の装飾具の店だ。辺鄙なところにある街の店だから、それほど高いものは置いていなかった。
彼女は同年代の娘が身に着けるような、可愛らしい髪飾りや高くはないが彩りのよい玉石がついた腕輪などを眺める。
まずはきれいな髪留めとかわいい髪留めの両方が欲しい。あとペンダントだ。
(マイヤちゃんにつけてもらうの、どれがいいかな。)
かわいいものをと思って蝶や小鳥をかたどった髪留めに目を向ける。どれも『屍人形』に似合いそうだ。『屍』は愛くるしい顔立ちなのと、乳房と尻は大きいが歳よりずっと幼く見えるから、どれをつけても似合うだろう。
背後から声をかけられた。聞き覚えのある声だ。
「そういうものに興味がないと思っていたが、珍しいもんだな」
振り返る。カヅノ=セイジだ。聖職者の格好ではなく、暗い色合いの毛織りのマントをすっぽりとかぶった旅人の様な装いだった。
「久しぶりね。ズルイルとミーシアの2人に任せっきりだね?」
「あいつらにはお前の世話と捕虜2人の監視とで金を払っている。あと、森の中にもう3人潜ませているのはわかったか?」
「……まあね。3人ともソゴプールのエルフだよね?」
その3人とはつい1週間前にはじめて話をした。ズルイルたちと同じ様に、カヅノの『悪だくみ』の仲間なのだそうだ。
ちなみにセックスの相手をしてもらうようにもなっている。3人とも大層立派なモノをぶら下げており、包皮は切り取られて亀頭を露出させていた。ズルイルのようにだ。
「ズルイルとミーシアの2人もだけど、どこで拾ったの?」
「ホーデンエーネンのあるお偉いさんのところでくすぶってたのを教団に招いたんだよ。前のあるじはケノービ=ソーロー。わかるか?」
その名前なら少しだけ知っていた。マイヤから聞いた。カツランダルクの分家筋で、本家をとても毛嫌いしているそうだ。
マイヤは子供の頃、自分を邸に招いたケノービに『おしゃぶり』を施したが、ケチな額の小銭を投げて寄越したらしい。印象が凄い悪かったと言っていた。
「どうしてそいつから引き抜いたの? 余計なことするな、って言われなかった?」
「ソーローのご主人とは仲たがいしたからな。マイヤちゃんの娘の件でだ。ロゼ姫様といってな、それはそれは、マイヤちゃんのように可愛らしいお嬢さんだった……」
その姫が遺したトリーネ姫の面倒を見てくれるかと期待したが、別の本家筋のレーアという姫ばかりちやほやする。その態度が気に喰わないので仲たがいしたのだ。
「……どれが欲しい?」
「お金もってるよ?」
「『マイヤたん』のぶんも一緒に買ってやるよ。どうせ最初からそのつもりだったのだろう?」
どうせならもっと大きな街にある高い店でもいいのだが、とカヅノは前置きして、棚に並んでいたのをいくつか手に取って売り子に呼び掛けた。
店を出るとヘラはカヅノの腕にしがみついて、アジトに戻る前に『法悦』をしようと誘った。
「宿屋かがいいか?」
「外でいいよ。日帰りで戻るつもりだったから」
2人は街を出て、森の中へと入って行った。だいぶ奥まで進み、人の気配が無いのを察すると、近くにあった岩の上にカヅノは座った。
彼はマントの前をはだけ、皮のズボンの股間についた紐をほどいた。その間から勃起したペニスが現れた。一緒に出た陰嚢は、少し張っていた。
「おっきくなってる♥」
「溜まってたからな。1日置くとすぐにきんたまがこうになる。『甘露(アームリータ)』を飲んでいるわけではないんだが」
ヘラは羽織っていたコートの前を開ける。今日は暖かさそうな毛織りの服をまとっていた。お腹が大きく突き出て、そろそろ『食児』の為の出産が近いことをうかがわせていた。
「全部脱ぐか?」
「このままがいい。それと裸はあんまり見せたくない。おっぱいが削ぎ落されちゃったし」
「そうか。だったらそのままでいい」
ヘラはスカートをまくる。白い太腿と毛があまり生えていない割れ目が顕わになった。
そのままカヅノの腿にまたがり、屹立したものを自分の中に受け入れる。痺れを帯びた快感が伝わって来た。
「んっ……」
「挿れただけで蕩けた顔をするのだな? 魔族の身体になって、前よりも感じやすくなったのか?」
「そうみたい……でもアナタのおちんちんもおっきくなってるよ♥」
はて、とカヅノは思った。己の内性器をたっぷりと圧してくれるペニスだが、相も変わらぬ『女泣かせぶり』ではあるが、成長した覚えはまったく無い。
そもそも、教団が各地で主催する幼い男の子たち向けの『子供向けおちんぽトレーニング』の講習は受けた事がないし、自己鍛錬をしているわけではない。
ついでだが、『子供向けおちんぽトレーニング』はかなり効果的だ。外国でも名が知られていて、教則動画が入った映像水晶を教団は輸出してそこそこ儲けている。講師役の女が見事な豊乳の美人でもあるからだ。
(つまり、ヘラのまんこは魔族並みの感度になったというわけだな。)
エルフなどの精霊人も感度は高いが、魔族はそれをうわまわると聞いていた。特にサキュバスがそうである。
そして感度が良くなったヘラの内性器の感触と腰遣いは、前よりも吸いつきが増しているように思われた。射精をしたいと陰茎の根元が疼きだしてしまっている。
ただ、ヘラにつけたサキュバス達の話によれば、ヘラは元から淫魔みたいな身体だったらしい。薬か何かでそうなったみたいだ。
つまりは男の精液が栄養となり、魔力の供給源ともなる。亀頭を美味そうにしゃぶり込む女陰の感触を愉しみながらカヅノは思った。1発だけじゃなくて3発も4発も呑ませてやろう。
「いい膣だ……」
そうつぶやいてカヅノはヘラを抱きしめ、たっぷりと精を注ぎ込んでやった。彼女の身体は汗ばんでいた。
かつてはただ汗臭いだけだったが、今はほんのりと甘いにおいがあった。こうして抱きしめるのを続けたくなるにおいだ。
「うふ♥ いっぱい出たね♥」
「そのまま続けて出していいか?」
「うん……ちょっと待って……離れていい?」
ヘラは苦しそうな顔をしてカヅノの身体を引き離した。スカートをたくし上げて下腹を丸出しにしたまま、近くでしゃがんで呻きだした。
「お、下りて来る……♥」
「何がだ、ヘラ?」
「あかちゃん……♥」
おおうっ、あうううっと悩ましい響きの声を漏らしながら、彼女はちょろちょろと黄色い小便をこぼし、尻からどろどろとした便を垂らしながら腹に力を込める。
「あぐっ♥ おっきいのがくる♥」
ヘラの女陰が広がり、入口をぽっかりと開けた。カヅノが放った精液がどろりと垂れ、それから頭のようなものが現れ出た。
「んんっ♥ あつい♥ おなかがとってもあつい♥」
柔軟に伸びた女裂からそれはするりと現れ、それから身体を外に出した。ヘラは膝をもう少しあげ、巨大なペニスで女陰を貫かれる以上の快感に苦しみながら、最後の踏ん張りをいれてそれをひねり出した。
「はう……すっごく気持ちがよかった……♥」
空を見上げたまま、尚も胎盤をひりだそうとするが、『仔』を手にすくいとったカヅノが声をかけた。
「おい、ヘラ。今出たお前の『食い物』、いつもと様子がおかしいぞ?」
「……なあに?」
膣口から胎盤をひりだしながらヘラはそれを見た。
ちゃんと手足があって顔もある。丸い塊ではなく人型の赤ん坊だった。
真っ黒な肌。ピピン王子の胤による赤子なのは確かだ。股には陰茎ではなく割れ目があった。その赤ん坊は小さな口からけほ、けほ、と咳ををしながら目を見開いた。それから母親に目を向けた。
「あかちゃん……わたしの、あかちゃん?」
食べる為の赤ん坊ではない。産み育てるべき自分の子供だ。
しかし驚いたことにその赤ん坊は口をひらき、しゃべりだした。
「おかあさん……」
生まれたばかりの子が意志を持ち、言葉をしゃべる。カヅノは驚くばかりだった。しかし、ニンゲンとして生まれていないのならば、こうなることもあるのも知っていた。
(まさか、魔族として生まれたのか?)
それなら在り得る。サキュバスの子は産まれた時からしゃべるし、胎内にある時でも母親に話しかけて来るそうだ。
「あかちゃん。しゃべれるの……?」
ヘラが抱きしめようとするが、赤ん坊はだめだと言った。呼吸が荒くなりだしていた。
「ごめん。この身体は脆いよ。毒がいっぱい入っているみたい」
もってあと数分の命だ。でも、と赤ん坊は言った。
「代わりの身体を探しに行ってくる。それまで待ってて」
「……どういうこと?」
「身体が死んでも心は、魂は生きていられるから」
そう言うと赤ん坊は血を吐きだし、それから息絶えた。生まれてからたった数分の命だった。
悲嘆に暮れるヘラは、魔法で地面に穴をあけて赤ん坊と胎盤を入れるカヅノに尋ねた。
「代わりの身体を探すって……どういうことなの?」
「言った通りなんだろう。サキュバスの奴らから聞いたことがある。ニンゲンとの間の子にはたまにあるそうだ。不完全な肉体だった場合、思念体が離れて代わりを探すらしい。魂が無い赤ん坊に取り付いて身体を乗っ取るそうだ」
しかし生まれたばかりの幼い魂だと、10年も20年もさまよい続けるらしい。ヘラは産んだ赤ん坊の魂に呼びかけた。声は返ってこなかった。
「ううっ……どうして……」
「なあに。またどこかで会うだろう。それよりも今日は風呂がある宿屋に泊って行かないか? エレクトラとピピンのことは、ズルイルたちが面倒を見てくれるだろう」
ヘラはうなずいた。それから汚れたままの股と尻を魔法で清めた後、カヅノが作った墓の前でひざまづき祈った。
あの赤子はきっと、新しい肉体を手に入れて自分に会いに来るだろう。別の身体となってもきっと、母親と慕ってくれるに違いない。
彼女は、この世界に戻る理由ができてしまった。カヅノもまたこれより20数年後に会うこととなる。
肉体から離れたその子は、よりにもよってオルランドゥの妾となっていた。10の歳で教帝の男児を産み、ヘラと再会した時には教帝との二番目の子のせいで腹を大きく膨らませていた。
ユーノという名前の少女が、ヘラが産んだ赤ん坊の魂の『憑依先』だった。それからユーノは、ヘラの姉のひ孫にあたる。赤ん坊の魂はよい憑依先をヘラの肉親から得たのだ。