聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
翌日。
乗合馬車からウナーンの街へとたどり着いた。おおよそ1時間。マイヤは尻をさすりながらヒーイ大河を見てため息をついた。
「すっかり凍っているね……で、あの向こうがイナーヴァニアなの?」
「どうも違うらしいでござる。イナーヴァニアはあの向こう岸から100キロから150キロ先と聞いたでござるよ」
国境沿いというにはいささか広いが、ヒーイ河のイナーヴァニア沿いは去就がはっきりしていなかった。イーズモーとイナーヴァニアは同盟こそ組んでいたが、水面下では領地争いを頻繁に繰り返していたのである。
合戦ではなく貢物や脅しによる懐柔を用いて、両国はヒーイ河沿いの小領主たちを自陣営に組み込もうと激しくやりあっていた。イズヴァルトが訪れた頃は、向こう岸はイーズモー国の属領であった。
「両国は領主の土地には口入れせぬゆえ、あっちに着いたりこっちに従ったりとが楽にできるみたいでござる」
「ホーデンエーネンとは違うんだね。いや、あの国もそんなもんか」
「マイヤが語ってくれた『ちゅうおうしゅうけん』の時代となれば、そうではなくなるでござろう。いやしかし、領主が半ば、王様の代官みたいになる制度でござるか……」
王が阿呆だったり欲深になると、その悪政の被害が広がるでござろうな、とイズヴァルトは嘆いた。ついでだがイーズモー王国とイナーヴァニア王国は、国王の力はとても弱かった。
領主らはホーデンエーネンよりも独立性が強かった。善政で治安が行き届いている土地もあれば、野盗ばかりのぎすぎすした地方もある。
ウナーンもまたこの地を治める領主のものだ。とても穏やかで豊か。狼藉者はいなかった。その証拠に子供たちが雪かまくらを作って遊んだりしている。平和でなければならず者にぶち壊されたり、幼い娘ならその中で犯されているはずだった。
「イーズモーで屈指の豊かな土地とうたわれているでござるが、どうにものどかでござるな?」
「酒場や賭博場とかさ、旅人からおかねをふんだくるお店が多いところって、だいたい治安も悪いところだよ、イズヴァルト?」
「いい得て妙でござるな。さて、船着き場に向かうでござるよ」
この時期のヒーイ河は目的地のミョージバーグまで凍っている。川船の代わりに氷上船が行き来していた。夏場の川船での旅は4日近くかかると聞いたが、冬場はどうだろうか。
氷上船はかなり大きい。軍船ほどではないが突入用の中型船ぐらいにはなる。船尾にはカントニアのエルフの工房で作った風を起こす4枚の羽根を付け、時速15ノットで航行するという。
待合所の係員に時速を聞いたイズヴァルトは、ミョージバーグまでおおよそ2日かけると聞いたので1500キロ先にヒッジランドがあるのかと尋ねた。係員は苦笑いして答えた。
「そこまで進とイワッミーまで行っちゃいますけえ。それに1000キロ地点あたりでヒーイ河の上流じゃよ」
ヒーイ河を通行した距離でいうと、ウナーンから見れば北北西にあるミョージバーグは600キロほど先。氷上船は推進装置の整備をしながら、途中のいくつかの船着き場を経由して2日かけてミョージバーグに向かうのだという。
なるほど合点がいった。イズヴァルトとマイヤは13時となる船の出発時刻に間に合うよう、近くの料理屋で早めの昼飯をいただく事にした。例によって早朝に入浴を要する激しいセックスをして、腹をすかせていたからだ。
出されたのは冬の川魚料理。揚げているものが多かったがイズヴァルト達の味覚を程よく刺激した。河船の飯はまずい、とホーデンエーネンで思い知らされていたから、ここでおいしいものを腹に詰め込もうと頑張った。
「う、ううっぷ……」
「食べすぎちゃったね。イズヴァルト……」
暴食で膨らませたお腹をさすりながら、イズヴァルトとマイヤは氷上船に乗り込んだ。船は個室は無かった。暖房をきかせた共同の客室で、見ず知らずの者と共に寝るのだ。
とはいえ寝床は毛布や綿を敷いて柔らかくしてくれていた。ごろんと寝たイズヴァルトは、このぐらいならぐっすりと眠れるだろうと思った。とはいえいささか暖房の効きが強い様に思えてならなかった。
「あっついでござるな……」
「私はこのぐらいが丁度いいよ。イズヴァルトは真冬でも素っ裸で部屋の中をうろうろするからね?」
そういうマイヤも裸になると何故か寒さがへっちゃらになる体質だった。服を着るとなぜか寒がりになる。2人は地図を広げてこれから向かうヒッジランドの道のりについて、あれこれ語らい始めた。
出発しておおよそ3時間が経った。イナーヴァニア側にある船着き場にたどり着いた船は、そこから入る客を乗せて出発した。
イズヴァルト達がいた船室に十数名の男女が入って来た。誰もがくたびれた顔をして服には土埃をつけていた。男達の顔が揃って日に焼けていたのは、農民や外で働く職人であるという証だった。
「ご一緒させていただきますよ。若旦那とお嬢さん」
イナーヴァニア人の老いた男がイズヴァルト達に呼びかける。少年騎士はどこまで行かれるかと尋ねた。
「明日の朝に着くイーズモー側の街に向かうのです……私たち全員がそっちにいる知り合いの世話になるつもりでしてね」
前歯を失った口を開いて老人が続ける。自分達はイナーヴァニア軍とパラッツォ教の戦闘から逃げて来た、中部地方の農民だと。
数で圧されるイナーヴァニア軍は、戦闘経験の無い自分達にも戦わせるよう無理強いをして来た。受け入れた者は鉄の武器や革鎧も持たされず、着の身着のままで先を尖らせた木の棒で突っ込まされるという。
「それはひどい話でござる……して、イーズモーにはなにゆえ?」
「イナーヴァニアは南部も危うくなってきましたからな。領主の中にはパラッツォ教に帰依する者も出てきておりますし……お名前は? イズヴァルトさん。ホーデンエーネンの……であれば、王様に直訴してイナーヴァニアへの援軍を送る様にいただければ、ありがたいことですが」
老人を取り巻いていた男達がイズヴァルトに目を向ける。この老人は他の農民に比べ、どうにも身振り手振りがていねいなところが見られた。
詳しく聞けば教団に占領された領主の隠居。つまりは先々代の領主。イーズモーの知り合いとは彼の親戚であった。
80を過ぎており剣を振るのも難しかった。イズヴァルトはホーデンエーネンに戻ったら、国王陛下にかけあってみると答えた。
「本当のことですか! であれば、是非ともそうしていただきたい!」
喜びつつ老隠居はこう嘆いた。そもそもがパラッツォ教団を弾圧した若い衆のせいだと。半ば打ち捨てられた流民達をせっかく豊かにさせてくれたのに、それに嫉妬した領主や騎士達が攻め込んだからだと。
「それにじゃ。同じマハーヴァラ様を信じているというのに、なにゆえ異教徒だの異端などとののしり、攻めなければならなかったのか。私にはわからぬことでございますよ……じじいゆえにこだわりが薄くなったから、そう思えてしまったのではないかと思うのじゃが……」
イズヴァルトは何も言えなかった。マハラ教が正しいとは思ってもいなかったが、かといってパラッツォ教団に肩入れする気も無かった。ただただ、いくさはむごいと思うぐらい。
とはいえ語らいの後は夕食。船員から配られたそれの質と量は、イズヴァルトとマイヤを大いに後悔させるものだった。
雑穀入りのスープはお椀2杯分あったし、添えられた魚料理はこれでもか、というぐらいに豊富な種類の魚の煮物。味が良く食べ飽きないと思える程だった。
「うう。うううう……」
「半分も食べきれないよ。こんなに豊かだったんだね。イーズモーって……」
□ □ □ □ □
夕食を終えて歯を磨き、しばらくしてである。胃袋が苦しいままのイズヴァルトとマイヤは、村人たちの横で眠り込んでしまった。船内の魔法暖房のせいもあるだろう。
イナーヴァニアから来た老人らも疲れていた。照明石に布をかぶせて部屋を薄暗くすると、皆がすやすやと眠り始めた。
人が多くなったせいで部屋は温かいというより暑くなっていた。それと体臭で息苦しい。村人は窓を少し開けて冷たい風を送り込んでいたが、冷気は壁側で眠るマイヤのところには届かなかった。
「ううーん……」
寝苦しいと思ったマイヤは上着を脱いで横になった。まだ寝苦しいと思ったのか、ねぼけながらタイツを脱ぎ放り投げる。それがいびきを立てて眠る村人の男の鼻にあたった。
「ふ。むう……女の子の足のにおい……む?」
男は丸まったタイツを手に取りマイヤに目を向けた。彼女は足を大きく広げてイズヴァルトに抱き着いて寝息を立てていた。
「あの子のか……」
したたかに勃起してしまった股間を見た後、手に持っていたそれを広げて裏返し、顔に当ててみた。様々なシミがついた汚い生地が鼻にあたっていた。彼女の陰部に当たっていたクロッチの部分である。
鼻をあててくんくん、と嗅ぐ。幼い娘の、新鮮な酪に似た性器臭と小便の匂いが混ざり合っていた。彼はしたたかに勃起し、起き上がって眠っているマイヤの方を改めて見た。
寝相の悪いマイヤはスカートをめくりあげ、白い尻とのびやかな脚をむき出しにしていたのが見えた。
(幼い女の子のお尻だが……辛抱たまらんな!)
仲間たちとイズヴァルトがぐっすりと眠っているのを確かめると、音を立てずにマイヤの後ろに忍び込む。めくれあがって見えた尻は白桃色で形がよく、指で触るとしっとりとした肌触りで柔らかかった。
(触っても気づかない……ぐっすり眠っているな)
男は尻の肉で閉ざされた菊門を見てそれをさわさわと触れると、彼女の尻が震えてすぼまりを奥へと向かわせる。
「ふう。ううん……」
気づかれたかと思ったが、マイヤはぐっすりと眠っていた。
「いじゅヴぁると……私はねたいのぉ……」
幼い少女は甘えた寝言を、ぐっすりと眠る少年に呼びかける。もっといじくると彼女は小さな喘ぎ声を出しはじめた。
「こんなところで、やだよう……あははは……」
尻穴をヒクヒクとさせ、大陰唇の谷からとろりとした蜜をこぼしていた。注意深く寝言を聞いてみると、どうやら街中でいちゃいちゃしている夢を見ている様だった。
(ちくしょう。こいつら……)
この男は40過ぎ。15の時に大工の弟子入りをしてから、ずっと嫁を得る事がかなわず独り身だった。ただひたすら仕事に打ち込んできた職人だ。醜男で女も娼婦しか知らない。
この娘はいやに感度が良い。多分飽きる程沢山セックスをしてきたのだろうと男は嫉妬した。ぐっすりと眠る少年の顔を見る。
(こんな可愛い女の子とこれまでたくさん、存分に身体を重ね合わさったのだろうな!)
嫉妬が敵意となった。心は奪えないがせめて身体だけは盗んでやる。彼は自分のズボンを脱ぐと、恥垢がところどころに付着した硬い勃起をあらわにした。決して見劣りのするものではなかった。
深く眠るマイヤの身体をイズヴァルトから離すと、そっと脚を持ち上げた。欲情から解放されたいと震え苦しむ勃起を滴る蜜壺にあてがい、押し込んだ。
「う……あっ……」
性交の刺激を受け始めても、マイヤはイズヴァルトとの甘い夢の中だった。貞操を奪っても心までは奪えない。しかし彼は久方ぶりの性交に喜びを覚えていた。
(す、すごい吸いつきだ……たまらんな……)
これまで抱いた娼婦でも味わえなかった具合。彼は握りしめたタイツの、マイヤの秘所がずっとあたっていたつなぎ目を嗅ぎながら小刻みに腰を振り続けた。
(は、早くに漏れそうだ……)
マイヤの膣の中で彼のペニスは1度目の放出を放った。竿の付け根から亀頭の先までの歓喜が、長く続く放精だった。しかしまだマイヤは眠ったまま。気持ちの良いセックスの夢を見ながら寝言ばかりを言う。
「いじゅばると、もっとして……みんなのまえであかちゃんをつくろうよ……」
この子は露出狂か。随分とヘンタイなのだなと思いながら2度目の放精に向けてまた腰を動かした。精液を吸って感激を覚えた膣壁は、彼のペニスをもっと舐めとろうと収縮して絡みついてきた。
感触と締り、ぬめりがぐっと良くなったそれにたじたじになりながら、彼はゆっくりと腰を動かす。2度目も思いがけない早さで訪れた。精巣はやっとほぐれて柔らかくなり、ペニスに集まっていた敵意も落ち着きつつあった。
(けど、もう1回だけ。この子のあそこ、抜きたくなくなるほどに素晴らしい……)
きっかり3度目で彼は強姦を終えた。ペニスもわだかまりもすっきりとなっていた。性の悦楽に悶えて発汗しつつもまだ夢の中のマイヤにタイツを履かせ、彼は自分が寝ていた場所に戻って行った。
横になりながら久しぶりの交合と膣内射精に心が満足だ。強姦という後ろめたさがあったが、この男にとって一生の思い出に残る記憶となった。
この男は、イナーヴァニアからの避難民として独り身の冷たい一生を終える事は無かった。この10年後には移住先のイーズモーで名うての大工であり建築家と賞賛される未来が待っていた。
88の歳まで生き、この3年後にめとった30歳年下の若妻との間に、8人の子を為す事になる。氷上船の中でマイヤを犯した時は、彼の人生でもどん底にあったが、冬の時代が終わる頃でもあった。
名はジェイムズ=ヒューレット。イズヴァルトの時代を代表するサイゴークの名大工として歴史に名を残す偉人。その彼の死後に発見された秘密の覚え書きには、この時の事を詳しく記されていた。
「ホーデンエーネンの碩学姫は、眠っていても素晴らしかった。すらりとした手足に大きな胸。あんな美少女におしゃぶりではなく、下の口に3度も飲ませることができたのは俺にとって一生の誉れでもある。人には言えない事だが」
後年、ジェイムズはイズヴァルトとマイヤとイーズモーで再会する事となる。この十数年後だ。その頃マイヤは少女から中年にさしかかっていた。可愛らしい美人ではあったが。
その時会った事もその書誌にこう書き残している。
「強姦して奪ったのは、貞操ではなく彼女の幸運だったのかもしれない。マイヤさんは美しくなった。可愛らしさもあの時と変わらなかった。けれど……」
あんなに惨い女になってしまったのか。最後にそう書かれていた。
□ □ □ □ □
それから1時間後、マイヤは不意に便意を覚えてゆっくりと起き上がった。股のあたりがなんだか濡れているのを感じると、無意識のうちにイズヴァルトと性交をしてしまったのかと驚いた。
薄暗がりの中、ズボンの中を勃起させながらすやすやと眠るイズヴァルトを睨んだ。みんなが眠っているのをいいことに抱くなんてひどい。
寝込みを襲われるのは初めてのことだった。それをマイヤは嬉しくも思っていた。むらむらが抑えきれないほどに好かれていると受け取れたからだ。
とはいえ尻からぷすぷすと鳴るおならと、直腸が詰まっている感覚が何もかもに勝っていた。この感覚はたっぷりと性交をした後の便意に似ている。そう思いながらも船内を歩く用のサンダルをつっかけて便所へと向かう。
氷上船の便所もまた、船尾にあり穴が開いているだけの簡素なものだった。冷え切っており余計に漏らしそうになる。マイヤは急ぎタイツを脱ぎ、スカートをめくって便穴に尻を向けた。
「ううっ、さむい! さむい!」
小声で叫びながら肛門から出て行ったものは、なんとも魚くさい下痢気味の大便だった。長く続くそれの排泄による快感を覚え、マイヤの股からとろりと何かがこぼれた。
「あふ……ううう……寒いのが無ければいいうんちなんだけど……」
幸いに尻を洗う水は温熱器具で温められていた。蛇口から出る湯をひしゃくに入れ、何度も何度も尻にかけた。
けれども股のぬるぬるはなかなかに収まらない。今度は湯を股にかけて洗い始めた。指でこそいで確かめる。確かに膣の中には精液が溢れていた。
「イズヴァルトめ……」
しかし、とマイヤは思った。どうにも質が違うように感じてならなかったからだ。イズヴァルトのは割合としつこくないが、においがとても濃い。しかし膣をほじくって指に付着したものを嗅いだのは、いささか古びた精子のそれに思えてならなかった。
「このにおい……なんか違うよ」
マイヤはドアのノブにかけていたタイツの、股間のあたりに鼻を近づけて嗅いでみた。自分の性器のにおいがぷんぷんと漂っていたかと思ったが、まるで違った。
精液のにおいだ。それもイズヴァルトのではない。だとすると他の男のものだ。船員かあの村人達か。マイヤは犯された悔しさよりも誰が自分を寝ているうちに抱いたのだろう。
(言ってくれたらいっぱいしゃぶったのに……お尻の穴にだって……)
残念でならなかった。喜ぶ顔を見ながらお口か尻穴で精液を飲みたかった。淫蕩かつ人思いな彼女にとって無念で仕方なく、涙をこぼしてしまった。
(イズヴァルト……どうしたらいい?)
いいや、このことはイズヴァルトには言えない。これは和姦ではなく強姦である。双方の同意なき内に交わるのは、寛大な少年騎士でも流石に許せる事ではなかった。
(そっとしておこう。このことは隠し通してくことにするよ。)
幸いにこの時の彼女の体はまだ、子供を産む準備は出来ていなかった。排卵もまだ先の話だ。しかし彼女の運命は、この頃から大きな転機を迎えていたのかもしれない。
愛する少年騎士と同じく波乱万丈な人生を送る。大きな幸運と大きな不運で揺らぐ、大波にたゆたう様な生涯にだ。
□ □ □ □ □
長老とジェイムズ=ヒューレットら、イナーヴァニアからの避難民と別れた翌日。イズヴァルトとマイヤはヒッジランドの首都・ミョージバーグ近くの船着き場に降り立っていた。
この辺は雪が少なく砂のようにさらさらとしている。なのだが、その分空気の冷たさはイーズモーの比ではなく、彼女はイズヴァルトのコートの中にくるまってぶるぶるぶる、と震え続けていた。
「さ、さむいよーイズヴァルト!」
こらこら、前に入り込まれてしまっては歩けないでござるよ、と彼はコート上からマイヤの頭を撫でながら、「それにしても寒いところでござるな」と呟く。
少し息をしただけでも白い煙となるほど、ここの空気はひんやりとしている。マイヤはぶるぶるぶる、と震えつつ、イズヴァルトの身体にしがみついた。
「どこか宿を取りましょうよ! 頭がかゆくてどうしようもないの!」
「暖房が効きすぎていたでござるからな……ううむ。拙者の体も汗臭いでござるよ」
途中にあるミトーヤの船着き場で、風呂に入れば良かったのにとイズヴァルトは思った。ミトーヤは温泉地であり船は4時間も停泊してくれた。
だがイズヴァルトとマイヤは、途中で乗船して来た旅芸人らとの会話と演芸を楽しんでしまったせいで、その機会を失ってしまったのだ。
旅芸人らはギャバン一座と名乗った。ミトーヤから乗り次の船着き場で降りた彼等は、見事な芸を見せてくれた。
その一座の団長には、産まれたばかりの子供がいた。ジャンという名前の男の子。将来は芸を仕込んで素晴らしい芸人にさせようと父と母は意気込んでいた。
「でも、本当に団長どのの子かわからないって言ってたでござるな?」
「すっごいすけべそうな美人さんだったからね、奥さん。まあでもあんなに鷹揚なのはどういう事だろ?」
赤ん坊が別の種によるものだというのは、その団長の冗談であったことをイズヴァルトとマイヤは知らなかった。双方にとって離婚に間を置かずの再婚であり、疑わしいところがあったのは真実だったが。
とにかく汗臭くなってしまって風呂に入りたい。聞けばミョージバーグも温泉があり、共同浴場に事欠かないと聞いてもいた。
「イズヴァルト。とりあえず宿でも沐浴場でもいいからお風呂入ろうよ?」
「さようでござるな。では、その前にウラスコーの行き方について尋ねてみようでござる!」
「だからそれは、お風呂に入ってからでも……」
マイヤはだだをこねるがイズヴァルトは決めていた。まずは情報収集、それからお風呂と温かいお布団にするべきだと。まずはヒッジランドで一番の物知りを尋ねる事としたのだが、さて、その結果は如何に?
その続きについてはまた、次回にて。