聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
同じ頃。魔界の王ヤータはその世界の神々からの連絡を受け、侍従が持って来たその書類にサインした。
その書類は『討伐証』と呼ばれるものだ。必ず討ち果たせと部下に命じる命令書でもある。
彼がこれにサインするのは滅多に無かった。そもそもがあまり血を好まぬ性分だったし、とある世界……援けを求めて来た神々がいる世界の天使長だった母の影響も受け、できるだけ『不殺』を心掛けていたのだ。
(まさか、お母さまの『地元』でその様なことが起きていたとはな。)
玉座の隣に立って、息子がサインをする様子をうかがっていた魔王の母は、とても悲しそうな目をしていた。
母といっても若い女のようである。薄い褐色の肌で茶色がかった黒髪。乳房も尻も豊満な美女だ。しかしそこには厭らしいという雰囲気は全く無い。むしろ楚々としている。神々しくもある。
そして背中に生えた6つの大きな翼……右背から生えているのは白く、左背のは漆黒である。堕天した神の遣いの特徴だ。彼女は生まれた世界で、ルシファーと呼ばれていた。
「ヤータ、私の地元の世界がいろいろと問題を起こしてばかりで、本当に申し訳なく思っております。あの世界の神々は、一向に直そうとしない……」
殖えるのと滅びるのを成り行き任せにして、全ての生き物たちが今も苦しんでいると彼女は嘆いた。
「仕方が無いのですよ母上。あの世界は『闘争』を重んじる仕組みで造られたそうですから。しかし、今回のはあの世界の者がしたことではないようです」
認められていない『扉』を使って、違う世界からやって来た何者かがあんなことを起こした。
およそ100憶以上の魂が飛び立ったそうだ。人間だけでなく動物や虫の魂を含めてだ。神々たちのところに来て次の転生はどうなっているのだと騒ぎ立て、あちらの世界の神々は、慌ただしいらしい。
「しかしたった数日で……何者なのでしょうね?」
「わかりません。『逆天術式』を用いた『扉』では、どこの誰が
サインした『討伐状』を侍従に渡すと、ヤータは尋ねた。
「あちらの世界は誰が守っている?」
「姫竜様が『昔の知り合い』に、ちょくちょく会いに行っているようすですが……」
姫竜とはヤータの妹、サイカノマゴイチのことだ。2人は同じ母親から生まれた。もう1人、姿を見せなくなった弟がいる。
「妹は勘定に入れないでくれ。あれは戦士でない。統治者だ」
「と、なりましたら……」
真っ黒な豚の獣人、いや、オークの『くろぶた族』のその侍従は、なるべく魔王の母から目をそらしながら答えた。さもないと勃起してしまうからだ。『くろぶた族』はとんでもない性欲の持ち主なのだ。
「鎧の魔族のクキヨシタカです。ヤギウセッシウサイ殿に免許皆伝を受けておりますゆえ、決して遅れは取らないかと……」
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『討伐状』はすぐに、遠く離れた異界に伝わる。
その日のうちにクキヨシタカは受け取った。部下を張らせて『襲撃者』が南極へ向かっていることも聞いている。
クキヨシタカは鎧の魔族。ランクとしては中位の魔族だ。そして武術に関して言えば、この世界に滞在する魔族の中では最強である。
いつもは拠点としていた南アフリカのヨハネスブルグで、黒人の人間に姿を変えて暮らしていた。
人間の姿の彼は筋肉ムキムキで、下は短パン、上はタンクトップといった格好である。
そして非番の時はいつも、治安が一際悪いヨハネスブルグで、強盗相手に鉄拳を振るっていた。
その日の昼の散歩の途中、銃を持った覆面の強盗団が飲食店に押しかけているのに出くわした。
それを見かけるなり、彼は飛び込んで太い腕をぶん回し、
「うおらああっ! わるいごはどごだぁ!」
と叫びながら、彼によく似た屈強そうな体つきの悪党どもらに襲い掛かった。
ここで重要なのは、力の加減を徹底せねばならないということだ。この世界の住民だが、随分とヤワなつくりで全力の一撃で肉体が四散する程弱かった。
その点で言えばクキヨシタカは問題なかった。ヤギウセッシウサイより免許皆伝を受けた彼は、骨は折ってしまうが殺さない程度の力加減を存じていた。
悪党どもはいとも簡単に叩きのめされていく。全員片づけ終わったところで警察がやって来た。彼等は満面の笑みを浮かべるクキヨシタカを見てため息をついた。
「はァ……またアンタかよ?」
この街の揉め事では、クキヨシタカは常連だ。もちろん、暴力事件を解決してしまう方のである。
「おっせえぞ! また俺が片づけちゃったからオマエラは暴れられなくなったな。残念だったな!」
「……喧嘩をやりたくてこの商売をやってるわけじゃないですよ」
「まあでも、クキヨシタカさんが『本当の姿』を見せないぶん、俺らは安心できるんですけどもね?」
警官らはクキヨシタカの正体を知っていた。本当の姿の、『鎧の魔族』となった時は文字通り、彼のまわりで血の雨が降った。
いつだったか、ネルソン大統領を嫌う黒人のマフィアグループが大統領邸に乗り込んだ時、クキヨシタカが駆けつけて本当の姿となり、彼等を殲滅してしまったのだ。
骨を砕かれて泣きわめく悪党どもを警察に預けると、クキヨシタカは自宅に戻った。
家にはえらくお尻がでっぷりとした女、5人の子供達がいた。魔族の『現地妻』とその間の子供達である。魔族の中にはその世界の生命体と結婚し、子を為す者がいた。クキヨシタカもその1人だ。
彼が家に入って来るなり、子供達がキャーと叫んで父親に抱き着いた。クキヨシタカは自分の子供達にだけ慕われている訳ではない。
この辺りでは『鎧の魔族のおっちゃん』として子供達から人気である。鎧の魔族は子供目線で言えばかっこいい。魔界の許可を得て、本当の姿をよく見せるので本当の姿でよく近所をまわっていた。
「ただいま。また悪党をやっつけちまったよ!」
そう言ってクキヨシタカは右腕で力こぶを作ってみせた。そういうことをやると必ず、妻から夜のお誘いが来るからだ。
「ばかねえ。そういえば、国連からの招聘はまだなの? アメリカやヨーロッパでとんでもないことが起きているんでしょ?」
「いやあ、それがまだなんだ……」
ニューヨークにある国連総本部からはまったく連絡がつかない。一昨日、部下のサキュバスを飛ばせたのだが返事が帰ってこなかった。多分おちんぽ狂いを発症して、仕事をすっぽかしているのだろう。
それから、ウィーンとジュネーブの事務局も連絡がつかなくなった。
もう1つの事務局があるナイロビから連絡は来ているが、彼の出動を要請するかしないか、迷っているようだった。
「連絡がつかないというわけだ。俺から出て来てやろうかと思っているんだがな」
「あらそう。じゃあちょいと頭をすっきりさせてから決めた方がいいんじゃない?」
妻は彼に迫り、股間を触った。今すぐやりたいという意思表示だ。夫婦は子供達に言い聞かせると寝室に入った。
カーテンは開いて、外から丸見えだったがお構いなしにベッドに倒れ込んで、口づけをかわしながら互いの身体をまさぐり始めた。
妻はスカートをめくり、でっぷりと太った脚と腿を出して自分の下着に手をかけた。
「夕食の準備の前までしてもいい?」
「お前ってやつは好き者だな?」
妻が下着を脱ぐとクキヨシタカは短パンを脱いだ。でっかくてごついものがびろんと出た。
「おっきい……」
女房の手でそれがしごかれる。真っ黒で大きなそれがしっかりと硬くなった。鋼鉄ぐらい硬かった。
十分に勃起したものを妻の女陰に喰わせ、動き始めた。でっぷりと太った女の肉が波を打つ。
妻が上のボタンを開け、ブラジャーからでかい乳房を差し出すと、彼はその間に顔を埋め、ゆっくりと腰を振って味わった。
「ううん……あたし、もう1人子供が欲しいわ……」
クキヨシタカも同感だ。妻はまだ26だ。結婚してから10年、病気で寝込む時以外セックスをしない日は無かったから、5人も子ができた。
下半身が高まると、彼は力強く動き出した。スライドをさせながら妻の奥を突く。女の身体が汗ばみ、部屋ににおいが籠りだした。
彼もまた汗だくになり、口づけを交わしながら快楽を貪った。そうして高まりが限界に届いて精を妻の腹の中にぶちまけた時、窓ガラスを叩く音が聞こえた。
「……ちっ。誰だよ?」
見上げると彼の部下のサキュバスだった。この辺りに暮らしているので、縮れっ毛を短くまとめた黒人の女に化けている。本当は色白でピンク色の髪を長く伸ばしているのだが。
性交を中断されぶうたれる妻をよそに、彼は腕を伸ばして窓を開けた。
「ピョットパッケ。アメリカから戻ったのか?」
「大将、魔王様からの緊急の令状です」
ピョットパッケは銀の鎖でまとめられたスクロールをクキヨシタカに手渡した。
「誰から貰った?」
「ナイロビで、ポリメコフィアンナ姐さんに会いました」
「あいつのところまで行ってるのかよ!」
ポリメコフィアンナは、この世界での魔界の組織の最高責任者だ。国連との折衝役となっている。いや、国連の影の事務総長と呼べる地位にある。
魔界では、鎧の魔族と比べて格が落ちると言われているコツメカワウソの獣人だが、事務練達の者として尊敬を集めていた。戦闘はからきしだが文治では右に出る者はいない。
日本を拠点に生活しており、いつもは少し年増のニンゲンの女に化けている。彼女は京都や奈良の景色や仏閣が好きらしい。風雅を楽しみながら、この世界の強国たちに目を光らせていた。
「呑気におまんこしてらんないみたいですよ。マジでやべー大ごとになっているみたいです」
「だろうなあ。あいつんところに魔王様の書状が届いたとなると、こりゃあ本気でかからないといかんだろう!」
今すぐ出発したほうがいい、とピョットパッケが急かす。しかしクキヨシタカはもう少し待てと返した。
「ちょっと向こう行っててくれねえか。荒事の前だ。奥さんをたっぷりと可愛がりてぇ」
「あんまりのんびりとやらないでね? 終わったら呼んでちょうだい」
ピョットパッケが去ると彼は窓を閉めた。それから不安そうな目で見て来る妻に言った。
「ちょっと行って戻って来るだけだ。でも夕飯は食えねえから、子供達のこと頼んだぜ?」
夕方にはクキヨシタカは家を出た。彼の妻はしっかりと子種をもらい、6人目の子を授かることとなった。