聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
サンフランシスコに置かれた合衆国臨時政府の大統領は、ロシアから届けられた電文を読み、大いに憤っていた。
「あいつらは何を考えている! ちゃんと脳味噌がついているのか!」
標的が南極に入ってから、という取り決めだったのに。
「オーストラリアの領海内だぞ! この期に及んでどさくさに紛れて西側諸国への攻撃をしているのではないだろうな!」
それだったらまだタチはいい。もう一度電文を読んでみると。独裁者を喪ったナチスよりもひどいと言われている、今のロシアの現状がわかる気がした。
電文には調子よくこう書かれている。
我が国は既に数十発の核ミサイルを発射した。クレムリンの仇はとった。貴国の判断はあまりにも遅過ぎる。かつての冷戦の宿敵は、どうにも決断が遅いのではないかと見受けられる。ロシア万歳。
「何が仇だ! 攻撃する相手が間違っているだろうが! あいつらは常任理事国と国連から抜ける気かッ!」
ロシアはすっかり逸っていた。大統領の急死後に代理で統制する者がどこにもいないのだろう。いや、そういうものを作って来なかったに違いない。
ドイツのヒットラーやソビエトのスターリンと比べ、あの大統領は後継者を育てる頭がまわっていなかったということか。いいや、その後継者はモスクワと共に焼かれて死んだのだろう。
オーストラリアからの急報が来て、タスマニア島に数発の核弾頭が撃ち込まれたらしい。周辺海域をあわせれば10発はいくだろう。
なんてことをしてくれたのだ、と大声をあげ、大統領は頭を抱えた。秘書官がやって来て、閣僚からオーストラリアに撃ち込まれた核ミサイルのことで緊急会議を開きたいと行ってきているらしい。
「向こうの首席とちゃんと話がついているのか。それを確認したいそうです」
「そうか……まずは言っておく。ロシアの早とちりだ。私は事前に一切聞いていない」
「……本当ですか?」
「そうだ。そもそも向こうには明確な代表者というものがいない。各地の軍団が各々勝手に通達をしているようだ」
それを聞いた秘書官がつばを飲み込んでいた。信じられない、という顔をしていた。
とはいえこれは仕方がないのかもしれないだろう。あちらにはいまだ、まとめ役が立っていない。軍部のあまり頭のデキがよろしくない中級幹部が各々勝手にやっている。あの核ミサイルだってそうだ。
(……まて。)
不安がよぎる。となるとロシアは強力なリーダーがいなくなったことで、いずれ分裂するかもしれない。そうなればもしかしたら、中国が軍事的に動き出すだろう。
(まずいぞ。合衆国軍は今、それに介入できる戦力は残っていない。)
軍事力では中国を抑え込み切れないだろう。だが、権威でもってすればいい。それを維持する方法はある。賢明であることを見せしめれば良いのだ。
彼は秘書官に言った。臨時国防総省とつないでくれ。そしてつながった相手にこう言った。
「作戦は中止だ。我が国は核ミサイルを撃たない」
秘書官は目を見開いた。かたき討ちを取りやめることでもある。これは大統領の政治生命に関わることだ。
ただ、それを犠牲にしてまで南極で核を使わないとなれば、彼を支持した環境保護団体への面子が保たれるし、内心では地球を最も汚す兵器にいい顔をしない合衆国民の心象もよくなる。
ただ、復讐者には命を付け狙われる可能性はあるが。
「核を使用したロシアには今後、徹底して断固抗議を始める。それと合衆国の余力のぶん、政治的に介入しよう。特に東シベリアだ。中国の出方が気になるからな」
なるほど、と秘書官は思った。大統領は核戦力を温存する気だ。ロシアに長距離弾道弾をありったけ撃たせて、少しでも戦力を削ぐ気なのだ。
□ □ □ □ □
南極に入ってからも景気よく核攻撃は続いていた。ロシア軍はありったけの大陸弾道ミサイルを放っていたのだ。
流石に遠くにある原子力潜水艦が持つのは発射されなかったが、おおよそ100近くの大陸弾道ミサイルから放たれた核爆弾は、氷で閉ざされた土地で幾十もの嫌な嵐と不気味なきのこ雲を起こした。
しかしどれもヘラには届かなかった。彼女があまりにも速く飛んでいたからだ。ロシアもアメリカも、転移を行おうとする極点でやるべきだったが彼等はそれを知らない。
果たしてヘラはそこにたどり着いた。異界に旅立つ為の扉を開く場所の上空にいた。
凄まじい風が吹いていた。髪とマントをなびかせながら来た方角に目を向ければ、はるか遠くにきのこ雲こそ見えるが、ざっと数百キロ離れているだろう。
(もう、爆発は起こらないかな?
そう思うと彼女はよろめいた。それから胸元が気持ち悪くなって口から吐いた。放射線にやられたらしい。ゴールと魔族のハイブリッドの身体でも、ある程度ダメージを蒙ったのだ。
転移の前に彼女は胸に手を当てて念じた。自分がどれだけ損傷したのかを確かめる為にだ。全身に違和感を感じた。かなりの放射線を浴びているようだった。
しかしそれも今の彼女なら、自然回復と治癒魔法で元通りになる。胸にあてた手から淡い光が起こり、それが全身を包んでいく。
(ふう……。)
刹那、遥か下のほうから強い魔族の気配と殺気を感じた。右手の甲に額をつけ、索敵術式をかけ、彼女は左手で『獄炎の凱歌』を抜くと身構えた。
相手は動かない。ならば脅しをかけよう。話し合いという手もあるが、段取りというものがある。初手で実力の差を思い知らせれば事は有利に進む。先手必勝だ。
鋳物でできたような『獄炎の凱歌』のいびつな刀身に、青い焔がたった。それが強い風や冷気に邪魔されずにまっすぐ伸びる。1000メートルにも。
だが、彼女は初手を打てなかった。いきなり腕が胴体にひっついて、腹と脚全体にきわめて強い圧迫感があった。
(……!!)
縛られている感覚はもっと強くなり、首から上以外は縄で締められているようだった。ぐるぐる巻きにされたようだった。
この金縛りに覚えがあった。彼女も知っている神聖術式の1つだ。
「『
『
ヘラは感覚を研ぎ澄ます。1本や2本ならば抗えば抜け出せるだろう。感じ取ると驚いた。幾重にも仕掛けられているようだった。
1本1本は大して強くないのだが、その1本を束ねて自分に仕掛けたようだ。
相手は1人ではない。10、いや、20人は超える。
「どこの誰! アナタは神聖術式を知っているの!?」
返答の代わりに何かが飛んで来た。真っ黒い刀身の直径10センチ近くある大きな
それを見たヘラは首をひねって避けようとした。しかしそれはヘラの間近にくると急に大きくなった。
直径1メートルもの大きな刃は、彼女の首をばっさりと切り離してしまった。頭と血と金色の髪の毛が舞い、遥か下へと落ちて行った。
チャクラムは首を切り離すともとのサイズに縮んで、それから姿を消した。そして2メートルほどの背丈の、全身を銀色に輝かせる何者かが、断面から血を噴き出すヘラの屍の真上に現れた。
それは全身を甲冑に身を包んでいた。兜は目の部分だけが少しだけ開いており、中は伺えなかった。肩は鋭利な棘がいくつもついていた。
そしてその甲冑の者は、右手にちと脂に濡れたチャクラムを手にしていた。その者は左手に持っていたウェットティッシュできれいに拭き、それから兜の額につけた。取り付けの金具が無かったのにだ。
「とりあえずは殺ったみたいだ!」
彼は念じる。姿隠しと気配隠しの魔法を用いて潜伏する仲間達に呼びかけたのだ。標的の誅殺に成功した。
「……しかし用心しておけよ。なんたってアメリカを半分滅ぼした化け物だからな」
頭の中で、その割には嫌にあっさりとやれましたね、と返事が来ると、全身鎧のその者は、あいつを呼べ、と彼等に呼びかけた。
目当ての人物はすぐに来た。転移魔法でいきなり姿を現したのだ。厚いコートに身を包んだ、頭に水牛の様な頭を生やした女の魔族だった。褐色でメガネをかけ、長い白髪である。
「デルゾビゼド、こいつの検分をやってくれ」
「わかりました、クキヨシタカ様」
彼女は人体調査に長けている。魔族か否か。魔族でなければどこの世界の生命体かを調べる。ただしその方法は独特だ。
彼女はポケットから漆黒のナイフを取り出すと、右の掌で握り締め、引き抜いた。丸めた手から血が流れだした。それからヘラの首の断面に血まみれの掌をつける。
すると、首から上が無くなった身体からあふれ出ていた血が止まった。デルゾビゼドの掌の下では、切断面にあった血管と神経が伸び出して接合しあい、肉が盛り上がる。
だが、かさぶたが生じその中で皮膚が作られだすと、ヘラの身体は妙な動きを見せた。
デルゾビゼドがかざしていた手を縦にして握り拳を作ると、食道のあたりが上へ上へと伸び出し、蛇の頭と胴体の様に伸び出した。
いや、それだけでは無かった。先端が膨らんで丸まった棒状の突起物の根元が膨んで、皺だらけでぶわっとした肉嚢となった。皺だらけのキンタマみたいだ。
そして屹立する肉の柱の先端の膨らみは、本物のそれのように縦に割れた口が造られていた。ヘラの首の断面に、本物そっくりのちんぽが生えてしまった。
デルゾビゼドはサキュバスだ。ただ、この様な特殊な系統の技が使えるタイプの淫魔族である。
こうして誰かれ構わずちんぽときんたまを生やしてしまう。この特技を生かして彼女はこの世界のたくさんの人間達に『善行』を施した。
その相手とは大抵、去勢手術を受けた後宮の役人。つまりは、宦官というやつだ。
「これでよし」
ここまでおよそ5分。デルゾビゼドはコートの下のボタンを1つ外す。白い太腿と紫色のミニスカートがのぞいていた。彼女はそのミニスカートに手をかけた。
きらめく氷風の中で白く太い腿の上、彼女の長い白髪と同じ色の、濃い茂みが顕わになる。
それから浮いて上がり脚を広げる。彼女の股は肛門までびっしりと剛毛に覆われていた。その密林の真ん中にあって湯気を放つ赤い裂け目が、屹立するそれに向けて降りて行った。
「おおっ……♡」
デルゾビゼドの膝がヘラの肩に乗った。彼女は腰を揺らし始める。男の生殖本能を刺激する呻きが始まった。
もっさりと茂った股の上で、うっすらと淫紋が浮かび上がった。ハートを気色悪く複雑な形にした、オーソドックスな淫紋だった。
ヘラの首の上に生まれた陰茎は、白い剛毛を装った膣に絡めとられながら、起伏ある膣の中を滑って陰嚢を動かす。
その袋の中には精巣と泌尿器がついていた。前立腺もだ。サキュバスの膣から心地よい刺激を受け、作り出された液体がせりあがってきた。
すると陰茎のようなものの硬度が増した。とはいえこれは海綿体が詰まっているわけではない。筋肉だ。
「おっ♡ そろそろ出しそう♡」
固唾を飲んで待っていたクキヨシタカがうなずいた。とはいえ、鎧の魔族は身体の中身が人間形態の魔族とは違うから、つばを飲み込むという動作はしないのだがモノの例えである。
サキュバスは射精しかけているちんぽの動きと感触について至極敏感だ。デルゾビゼドの下腹の淫紋が強く輝きだした。
「く、くる♡」
ヘラの首の上につくられた牡器官が激しく脈を打った。射精と同時に絶頂したデルゾビゼドの淫紋が点滅する。彼女とヘラの結合部から真珠色のねばっこい液体があふれ出し、きんたまにも伝わっていた。
「あー♡ つくりたてのせーえきが、いっぱい♡ いっぱい♡」
ちなみにだがサキュバス達は、淫紋をいろんな色で光らせることも可能だ。それを『ゲーミング淫紋』と彼女達は呼んでいた。
デルゾビゼドの腰が止まった。ヘラの『ちんぽ』は大量のザーメンを放ったのに、しっかりと屹立したままだった。彼女は小刻みに腰を動かす。本能が余韻からまた絶頂に至ろうと望んだからだ。
「まだかったい♡ もっとしたい♡」
「任務の最中だろうが。サンプルを取ったらさっさと抜けよ」
クキヨシタカが急かすと彼女は舌打ちした。
「仕方ないですね。結構いいおちんぽだったけど」
彼女は股からちんぽを引っこ抜いた。しかしこれでセット完了である。身体構造と成分を
子宮に吸い込まれたヘラの『精液』は、卵子に出会う事無く、股と肛門周囲でびっしりと生えた恥毛みたく内部を覆う繊毛たちに絡めとられ、吸い取られた。
しばらくすると彼女の瞳は光を放ち、かけていたメガネのレンズにスクリーンのようなものを投射した。その中で細かい魔界の文字が出力された。記されていたのは分析の状況である。
分析が終わると、デルゾビゼドは口をもごもごと動かし、それからすぼめた。
「ぺっ!」
デルゾビゼドの口から丸めたレシートみたいなものが吐き出された。痰や口の中の食べカスをもとに作り出したものだ。
サキュバスはこういう風変りな技を使う事もできるのだ。無駄な動きが多くて不便だと言われたらそれまでだが。
そのレシートはふわふわと飛び、クキヨシタカの手に渡った。瞳から投射光がなくなると、彼女は紅い瞳を鎧の魔族に向けた。
「……ちゃんと出てましたか?」
「まあな。しかし分析していたお前が、出た結果がわからないというのは、なんとも不便なもんだな?」
「まだまだ修行が足らないからですよ。魔界に戻ったらママとお姉ちゃんに鍛え直してもらわなくちゃ」
それで何と記されているのかとデルゾビゼドが問うと、クキヨシタカは手で兜を叩きながら答えた。
「ゴールってのはなんだ?」
デルゾビゼドは腕を組み考え始めた。どこかで聞いたことがある種族名だ。こことは違う世界なのは確かだ。
「ええと……
「そっか。あとそいつ、身体の半分が魔族みたいだ。何かやらかすかもしれん。今すぐ離れろ」
「……え?」
デルゾビゼドは後ろを振り向いた。
『
(術式は封じているはずなのに……!!)
鎧の魔族が叫んだ。できるだけ遠くに行け。その声でデルゾビゼドはすぐに『跳ん』だ。戦いになればサキュバスはお荷物のそのものだからだ。
氷風はやみ、あたりは急に晴れ上がった。いや、暖かくなりだした。南極とは思えぬ気温である。
遥か下にある氷が溶け出し、水たまりを作り始めていた。クキヨシタカは声を張った。念話術式をあちこちに飛ばした。
「みんな、思念体を探せ! どこかに逃げたはずだッ!
声をあげた刹那、ヘラの身体は炎そのものに変わってかき消えていた。