聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・前半まとめ 作:CHACOとJAGUAR
正尭と深雪の近親相姦が行われた後のことである。
高坂家にほど近い路上に、ワゴン車が止まっていた。
ハンドルを握ったままの大柄な身体の運転手は、ミラー越しに後部座席にいる金髪の美しく若い女の姿を見つめた。何かを知った様子だったからだ。
「姫様。どうなされましたか?」
「どうやら、我々が出る必要はなさそうね」
昼間見かけたあの少女に、退魔の術を施された。しかも安易な魔族化を防ぐきわめて強力なものだという。
「さようでございましたか。その術を用いる者が先に見つけたとは。まさか、『姫竜様』のご友人の……?」
「違うわ。あの人はそこまでに至っていない。吸精の法を用いて魔の者になりつつあるけれど。それに、あの術を使えるほど強くもないし才も無いわ」
つまりは別の者がそうしたのだ、と女は言った。少し外の空気を吸ってくると言ってドアから車外に出ると、高坂家のほうへ歩いて行った。
高坂家はこのあたりで一番大きな家である。屋敷だ。瓦屋根の木造の住宅だ。建てられてから60年近くになっている。
女は目を閉じた。頭の中で映像が流れていた。発育の良いかわいい女の子がうつろな目で、机の中に隠していた瓶を取り出し、その中にある錠剤を1つ口の中に入れた。
飲み込んでも目の光は変わらなかった。あの錠剤にある魔の力が効かなくなっているようだ。とはいえ身体的変化は変わらない。性愛を求めて身体が疼くだけである。
(あの薬には淫魔の体液が含まれているとわかった。出所はつかめていないが。でも魔界のお母さまに早いところ伝えなければ。この世界がおかしくなってしまう。)
あの薬は性的能力を極度に活性化させ、発情させる力があることがわかった。男が飲めば性器が大きくなって、女の場合は排卵もさかんに促す。子づくりの薬としてなら有用だろう。
しかも頭脳をはっきりとさせ、記憶力や計算力を高める力もあった。そっちは魔法によるものだが。淫魔の体液にはそのような効果もあった。魔力抵抗の少ない世界の住人では、その効果が極端に出てくる。
だが、そのような薬をサキュバスが作って広めることは、この世界に対する『介入』と見なされている。『恋愛』によってセックスをして、その体液で相手の体に変化をもたらすのは、ある程度は許されているが。
とはいえ、あの薬には魔族化する可能性があった。その場合に人間が変化する先は、やはり淫魔だろう。魔の者を無暗に増やすのは混乱を招くことになる。避けなければならない。
(しかし、この女の子に巣くった術式を封じたのは……。)
彼女は屋敷に目を向けなおした。さっきは凄い魔力を感じた。それも魔族のものだ。
(あの感じは、われらがサキュバス族の天敵の……。)
古の術式や封印魔法に詳しい、ハーフリングの一族のものに似ていると彼女はつぶやいた。
この高坂という家には魔族を祖とする者がいるのだろうか。そう呟いていた引き返そうとしていた時にだ。
「もしかして、アリーテ様ではございませんか?」
背後から呼ばれたので振り向いた。暗がりから、長身の美しい女と、小柄でかわいらしい日本人の女が現れた。
しかし長身のほうは化けた姿だ。本当の姿はぬいぐるみみたいにふわふわとした体つきでかわいい。コツメカワウソの獣人のポリメコフィアンナだ。この日本の魔族を統括している。
「ポリメコフィアンナ、お久しぶりですね。そちらの方は?」
「『姫竜様』のご協力者といった感じですよ。まあ、捕らえた悪い魔族を、ちんぽを気持ちよくして拷問する取調官、といったところですがね」
「やだなあ、ポリメコフィアンナさん、もうちょっと良い言い方をしてくれないかな?」
失笑した小柄な女は、大洲栞子だ。まるであどけない陽気な中学生みたいな笑い方をする彼女は、黒く大きな瞳をアリーテに向ける。思わず見入ってしまう力があった。
「貴方が、私の『前世』とトーリのご先祖の娘さん?」
「……そうでしたね。あなたは違う世界で、かつてはこう呼ばれていたと聞き及んでおります……マイヤ=カツランダルク」
ですが、今は私とは全く関係ない。アリーテはそう言ってポリメコフィアンナに尋ねた。
「この家の少女にかけられた魔法を封じたのは、どこのどなた?」
「……初耳ですね。そのようなことは存じておりませんよ、アリーテ姫様」
「……ポリメコフィアンナさん、姫様というけれど、この人、魔界のお姫様なの?」
ポリメコフィアンナはうなずいた。魔界の王家の姫。しかも王位継承権者だ。魔王ヤータとその叔母でもある淫魔の長トリミミノとの娘でもある。
「陛下の513番目のお子様。第513位王位継承権を持つアリーテ姫様でございますよ」
「えーと、コショーショーちゃんは443番目だったよね? 変身をやめるとちっちゃいサキュバスのあかちゃんの姿になるのかな?」
気安く言われてアリーテは気分を害した。大洲栞子に自分の本当の姿を見せてやろうと変身を解いた。
何一つ身に着けておらぬ、淫魔の姫の姿があった。それを見て栞子は思わず叫んだ。
「かわいい! ヴァネロペちゃんみたいだね!」
本当の姿のアリーテは、身長が140センチぐらいの少女サキュバスだった。頭にちっこい二本の角を生やし、背中にカラスの様な黒い羽根を生やしていた。顔立ちも人間でいえば12歳ぐらいの少女に見える。
ただ、胸がやけにばかでかかった。変身前よりもだ。ビーチボールが2つくっついているようにも見えた。あまりのもでっかいゆさゆさは、小さい身体で果たして支え切れるのだろうかと思う程だ。
「いたい……いたいのです……。だから元の姿は嫌なのです……」
「ねえねえ、抱き着いて、ぎゅーっとしてもいい? おっぱいさわってもいい?」
「いやなのです。おちんちんをつっこまれながらぎゅーっとされるのは大好きだけど、女の人にハグされてもうれしくないのです」
「栞子さん、魔界の姫様にそんな無礼なことを申し出てはいけませんよ……」
アリーテは乳房の付け根からくる痛みに耐えきれず、また人間の女の姿に戻った。すまし顔で「わかりましたか?」と栞子に言った。
「うん、わかったよ。おおきなおっぱいは何かと不便だからね! そこだけちっちゃく変身させることはできないの?」
「それは淫魔としてのポリシーに反する行いよ? 男をサカらせてナンボというのが、ワタシたちが大事に思っていることだから」
しかしおっぱいがデカ過ぎるのは逆に気持ち悪がらせてしまう。そのせいでアリーテは誘いを断られたことがたくさんあった。それと、『こども好き』の男は、奇乳を嫌う者が多い。
「というわけで、以後お見知りおきを、というわけだよね!」
「随分となれなれしい。アナタ、前世の気分が抜けきれないでいるの? 身体はとっくにこの世界の人間のものなのよ?」
ポリメコフィアンナが恐縮がちに頭をさげた。栞子はこういうやつなんです。40過ぎてもガキっぽくて心配するばかりでして、まあでも頭は良いのですが。
「まあいいわ。ポリメコフィアンナ、ワタシがここにいること、別に『姫竜様』に伝えなくてもいいわ」
「あのう、渡航証だけでも、拝見させていただければよいのですが?」
「ワタシはお母さまに直接命じられて、この世界に来ているだけなの。ここでちんぽこ漁りをして安住するつもりはないわ。いずれは魔界に帰り、淫魔族の次の長として皆を導いていかなければならないの」
そう言ってアリーテは去っていった。大洲栞子はポリメコフィアンナにささやいた。
「ほんとにぃ?」
「実のところ、アリーテ姫様はほかの王位継承権者様がたと比べて、あまり魔力が強くないご様子でして……神聖術式の本場たるこの世界で、ほかの競争者に大きく差をつける魔法の修行や研究でも続けているのでしょう」
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車に戻ったアリーテは、「出して」と運転手に伝えた。
それからポリメコフィアンナと、自分の母と因縁がある転生者に出会ったことを語った。
「なるほど、そうなりますと仲を深めていかないといけませんね?」
「その逆よですよ。できるだけ距離を置きたい。震災でしばらくこちらにおりましたけど、元の拠点の宮城に戻りましょう」
運転手はうなずいた。アリーテ姫が言うことはつまり、自分たちも宮城に移るというわけだ。
家に帰る間、アリーテはじっと腕を組んで考えていた。
(マイヤ=カツランダルクの魂が、こんな近くにいたなんて。)
これ以上、察知されてはならない。自分自身の野望の為にだ。
彼女にはこの世界の、この日本という国の男との間に1人の娘を為していた。
その名をことり、という。そして彼女は母の名にちなんだ苗字を名乗ってこの日本で暮らしていた。
その苗字だが、『鳥山』という。
そして彼女の野望は、その娘の眠れる力を引き出し上げ、己の代わりに次の魔界の王のレースに出し、勝利させる。
そして娘の後見となって魔界を動かすのだ。
(サキュバスが様々な世界のおちんぽたちを自由に挿れ喰いできる。そんな夢のようなしくみをわたしはつくりたいのです……。)
その娘のことりは、母のその壮大な望みをまだ知らないまま眠りについている。
おまけエピソード 了
続きは忠烈編となります。気が向いたらよろしくお願いいたします。
さあ、縦書きPDF化して要約の為にじゃんじゃかAIに読ませてくださいね。
ここすきも入れていただけると今後の勉強になるので助かります。
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続編:
忠烈編
https://h.syosetu.org/novel/363415/
戦旗編
https://h.syosetu.org/novel/325137/