※この作品はR-18です。

貧乳武闘家娘のNTR闘技場   作:自宅の戦闘員

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リスタート

 

 

『私は【原初の神秘】の一つ』

『祈りを現世利益に還元する、魔法の原型となった古い奇跡』

『私を御するのは魔力でも技術でもない』

『欲するならば唱えなさい』

 

“神様、どうか、お願いを叶えてください”

 

『その祈りが届く限り……

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 この大陸は魔王の脅威に晒されていた。

 ……という語りが定番だったのは、もう三百年以上も前のことだ。

 

 聖王国ハプニバーグンは、かつて魔王を討ち果たした勇者が興したという。

 幾多の時代を経てなお、勇者の血脈は途絶えることなく王家に受け継がれていた。

 そういった経緯からか、聖王国の騎士団や宮廷魔術師は他国と比べても飛び抜けて優秀だ。

 今も魔物や魔族の存在は確認されているが、一度として国に爪跡を残せたことはない。

 特に、聖王国は魔術に関しては国を挙げて研究を進めており。軍事・生活を問わず多くの魔道具が開発されていた。

 

 さて、王国の領土は広大なため、王の直轄地とは別に、五大貴族がそれぞれ治める領地がある。

 

 聖王国南西部、その中心たる【迷宮都市ウォルプタス】。

 五大貴族、トラニア家の若き当主。マティウス・レテ・トラニア侯爵が治める都市である。

 

 ウォルプタスは迷宮都市の名の通り地下にダンジョンを有するが、他にも有名な特色がいくつもある。

 1つは、都市の四分の一を占める大歓楽街。

 1つは、腕自慢が集まる闘技場。

 そして1つは、マティビーフと呼ばれる、高級牛肉である。

 

「そう、領主であるトラニア侯爵は食道楽で有名なのよ! 彼が直轄の牧場で育て上げたウォルプ牛……その中でも最上級ランクのお肉は“マティビーフ”と呼ばれ、聖王国の食通がこぞって求める逸品! 臭みがなく柔らかく、蕩ける甘い脂と赤身の深い旨味……。聖王サマに“下手な外交よりもマティビーフを使者に出す方が早い”とまで言わしめた美味ってわけ!」

「リーファちゃんリーファちゃん、往来での演説やめよ?」

 

 僕たちは、迷宮都市ウォルプタスの市場に来ていた。

 名前とは裏腹にこの年は農耕と畜産が盛んで、各地の商人がウォルプタス産の野菜や果物を求めて押し掛ける。

 また食品関係の屋台がけっこうな数あり、食欲をそそるいい匂いが漂っていた。

 

「うぅん、でもね? やっぱりウォルプタスと言ったら期待しちゃうわけで」

「まあ僕も一度くらいは……って思っちゃうかな」

「でっしょ? それでね、最上級ランクのお肉は貴族くらいしか手が伸びないけど、ランク低めのウォルプ牛なら市場の屋台にも流通してるらしいよ! ってことでラトレ、今日のお昼は屋台巡り!」

 

 ぐっと胸を張って言い切る。

 ピンク色の長い髪をたなびかせるリーファちゃんは、美少女だけに目立ってしまっている。

 僕たちはお互い、十五歳の成人の儀を受けたばかり。彼女もまだ幼さの残る顔立ちをしていて、小柄で細身で胸も平坦。だけどリーファちゃんは十分すぎるくらい可愛らしい。

 彼女が纏っているのは、東方の古都に伝わる民族服をアレンジしたという極端に短い赤色のミニドレスだ。

 確か、知り合いの商人が「チャイナドレス……?」とか言っていたっけ。

 肩と腕を大胆に露出させるノースリーブ仕立て。布地は肌にぴったりと張り付いて、カラダのラインを強調している。

 裾が短いのにスリットが深いせいで、少し動くだけで下着が丸見えになりそうなくらい危うい。

 

「おじさん! ウォルプ牛の串焼き二つ、ラトレの……こっちの男の子のヤツはよく焼いてあげてね!」

 

 リーファちゃんは屋台の主に元気よく注文する。

 彼女の明るくて強気な性格だ、人によっては「生意気な小娘」とか言うけれど、僕はリーファちゃんが優しいことをちゃんと知っている。

 だって、僕は赤い半生肉が苦手。そういうところ、彼女はいつも気を回してくれるのだ。

 

「あいよっ。お嬢ちゃん可愛いからおまけしとくよ!」

「ありがとだけど、あたし量はあんまり食べられないから、ちっちゃいヤツの方が……」

「あんな演説しておいてか……!?」

 

 しおらしくなったリーファちゃんにおじさんがびっくりしている。

 実際彼女は美味しいものを食べるのが好きなだけで小食です。

 

「頑張って食べようとは思ってるんだけどね。“カラダを作るのは食べたもの”だし」

「食事も修行のうち、だったっけ?」

「そ。お師匠様の教え……でも、すぐお腹いっぱいになるのよね」

 

 ほふぅ、と溜息を吐く。

 雑談をしながら焼き上がりを待っている、市場の一角が騒がしいことに気付く。

 なんだ、と思って見れば、やけにガタイのいい男性二人組が闊歩している。少し肩が当たった程度で相手に凄んだり、見るからに荒っぽそうな印象だ。

 

「なにあれ?」とリーファちゃんが呟く。

「はぁ、またか。あいよ、串焼き。よく焼けたのと、小さいの。」

「わ、ありがと。んー、いい匂い! ウォルプ牛がお手頃価格で食べられるんだから、やっぱり本場は違うなー」

 

 僕もさっそく串焼きをいただく。すごい、低ランクのお肉って聞いたのに十分柔らかい。

 リーファちゃんもご満悦だ。

 

「おいしー。てかさ、“また”って、あのマッチョたち有名人なの?」

 

 リーファちゃんの問いにおじさんは首を横に振る。

 

「違う違う。この都市にゃ闘技場があるからな、荒くれ者がよく多く集まるんだよ。今の時期は特別な武闘大会があるんで余計に」

 

 おじさんは心底イヤそうに吐き捨てる。

 

「特別区の武闘大会……じゃあ、あの人たちも参加者かな」と僕が呟けばおじさんは笑った。

「まさか。闘技大会は、勝てば莫大な賞金と貴重な宝物が得られる。が、先代の領主さま直々に指名された選手か、闘技場の上位陣しか出場できねえって話だ。こんなところで管巻いてるヤカラは、それも知らねえ余所者くらいさ」

 

 闘技大会は特別な選手しか出られないということを知らず、大金が手に入ると勘違いしてこの都市まで来た、ということみたいだ。

 でも、二人組の男の横柄な態度はさらに激しくなっていく。

 

「ちょ、お客さんお金払ってもらわないと……」

「あぁん!? オレらが誰だか分かってんのか!?」

「大会の前にボコしてやったっていいんだぜぇ!」

 

 お金も払わず商品を持っていこうとする男たち。

 さすがに、あれは止めないと。

 そう思って僕が一歩を踏み出すより早く、ふわり風が流れた。

 

「あのさぁ、おっさんたち。市場で騒がないでもらえる? せっかくのお肉がゼンゼン楽しめなかったじゃない」

 

 隣にいたはずのリーファちゃんは一瞬で駆け出し、男たちの前に立つ。

 相手は鍛え上げられた体躯をしている。細身で小柄な彼女だと、自然と見上げる形になる。

 

「あぁ!? んだ、このメスガキはぁ!?」

「ガキじゃない。もう十五歳の成人の儀は終えてるし」

「そんな貧相なカラダでガキじゃねえは笑わせんぜ!」

「はぁ!? どこ見て言ってんのよ、この変態!?」

 

 スタイルをからかわれて、一瞬で沸騰する。

 逆に男たちは舌なめずりをして見下す。好色な視線だった。

 

「だが、ツラはいい。ガキは趣味じゃねえが、ちっと遊んでやるか」

 

 そう言って手を伸ばそうとするが、あまりに緩慢な動作。

 男は思考も動きも遅すぎた。

 

「【風麗拳】……風撃」

 

 常人の目では、かすれて見えるほどの高速の一手。

 避けるどころか防御も出来ず、リーファちゃんのハイキックが男の顎をかすめる。

 

「ふへ?」

 

 頭を揺らされた男は、そのまま酔っぱらったように倒れ込んだ。

 もう一人が驚いてリーファちゃんを見る。いや、見ようとしたが、多分見えていない。

 だって既に彼女は動いている。

 

 風麗拳は、風の魔術と体術を組み合わせた拳法。

 拳聖と謳われたタイン・ドゥーヘの使う、幻の流派だ。

<風撃>は風麗拳の基本も基本。その要訣は蹴り自体ではなく、踏み込む足。地面を蹴る瞬間に圧縮した風の魔術を開放し、瞬間的に他を置き去りにするほどの速度を生み出す。

 

「あが、っ……!?」

「見えなかったでしょ、ざーこ」

 

 荒くれ者程度にその動きは捉えられない。

 仕組みを知っている僕でも目で追い切れない疾風の蹴りによって、二人組はいとも容易く倒された。

 散々迷惑をかけられた市場の人たちが爆発するように歓声を上げる。

 結局僕が彼女の元に辿り着く前に勝敗はついていた。

 

「うぉ!? な、なにがあった!?」

「なんか嬢ちゃんが一瞬消えて、気付いたら蹴り倒してた!」

「すげーぞ!」

 

 リーファちゃんは「や、どーもどーも」と周りに応えている。

 だけど観客の中には若干好色な男性の視線が混じっている。

 だって、彼女はあんな短いドレスなのに蹴りが主体の戦闘スタイル。けっこうな頻度で下着が見えており、しかも本人があんまり気にしていないからちょっとモヤッとする。

 

「り、リーファちゃん!?」

「あ、ラトレ。終わったよー」

「終わったよ、じゃなくて危ないよ!」

「なーに? あたしがこんなのに負けると思ってるの?」

「で、でも、搦め手ありなら、リーファちゃんを拘束できるかもしれないよ? マジックアイテムとか」

「ぐっ……た、確かに。うん、外見で油断するのは、ダメよね。ごめん、ラトレ。心配かけちゃって」

 

 素直にリーファちゃんは謝る。

 だからこそ、僕も頭を下げる

 

「僕こそごめん、先に動くべきだったのに」

「なに言ってんの。あたしの方が腕っぷし強いでしょ?」

「だとしても、守りたいじゃないか」

「……こ、こーいつぅ」

「ほっぺグリグリやめへ、ひーはちゃん」

 

 一頻りじゃれついた後、お金を払って僕たちは屋台を後にしようとする。

 リーファちゃんは帰り際、おじさんに軽く声をかけた。

 

「あ、おじさん、ごちそうさまでした。美味しかったよー」

「お、おぉ。お嬢ちゃん、強ぇな?」

 

 動揺したままのおじさんに対して、リーファちゃんはにやりと挑発的な表情を見せる。

 

「当っ然。だって、あたしも武闘大会……【華燎宴武(かりょうえんぶ)】に招待された選手だもん」

 

 その言葉に、今度こそ呆気にとられたようだった。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 僕たちは屋台で色々な食べ物を買いつつ、宿屋に向かう。

 銀のフクロウ亭。迷宮都市ウォルプタスに滞在する間の、僕たちの拠点だ。

 もちろんリーファちゃんとは別々の部屋をとっている。

 

「限られた人だけが参加できる武闘大会かぁ。ちょっとワクワクするわね」

 

 リーファちゃんはご機嫌で通りを歩く。

 お金もそうだけど、腕試しができるというのも楽しみの一つなんだろう。

 

 風麗拳は、拳聖タインの扱う幻の流派。

 風の魔術と体術を合わせた高速の拳法。

 リーファちゃんはその直弟子であり、風麗拳の正当後継者だ。

 ……や、ぶっちゃけると、拳聖っていうかウチの村に住んでるタイン爺ちゃんなんだけど。

 

 爺ちゃん、どうも昔は有名な武闘家だったらしい。

 でも縁に恵まれず、ご家族やお子さんはいない。風麗拳もタイン爺ちゃんがモテなかったという理由で失伝の危機だった。

 で、爺ちゃんの武勇伝を知り「強い凄いカッコイイ」というシンプル過ぎる理由で弟子志望だったリーファちゃんを受け入れただけ。特に壮大なストーリーとかはありません。

 迷宮都市の武闘大会に招待されたのもタイン爺ちゃん繋がりだ。

 

「【華燎宴武(かりょうえんぶ)】に参加するだけで、負けても借金チャラ! 勝ったら賞金! ……美味しい話過ぎて、なんか裏がありそうで怖いけど」

 

 リーファちゃんもさすがに警戒はしている。

 けれど裏があったとして、断るという選択肢がない。

 僕たちの村は、流行り病で大人たちが倒れ壊滅状態だった。

 そこでタイン爺ちゃんの伝手を頼り、迷宮都市ウォルプタスの先代領主、デシデリウム・レテ・トラニアさまに頼った。

 彼は家柄でなく、自身の魔術の腕で爵位を得た「トラニア魔導爵」。

 特別な魔術薬で流行り病を瞬く間に治してくれた。

 ただ、それは高級な品で、僕たちでは一生かかっても払い切れないほどの金額だ。

 トラニア魔導爵は言った。

 

『儂は三年に一度、武闘大会を開いておる。そこに拳聖ダインの直弟子、風麗拳の継承者が花を添えてくれれば、たいそう盛り上がるだろう』

 

 別に勝ち負けは関係ない。

 イベントとして盛り上がればいい。

 だから参加すれば借金をチャラにしてやるという破格の条件だ。

 

「一番いい道ってのは間違いないんだけどさぁ」

「そう、なんだよね」

 

 変な話だけど。

 流行り病の時、借金のカタになったのは僕たちだ。

 支払いが出来なければ、僕たちは労働奴隷として売られる。

 だから、【華燎宴武】がどのようなものでも、そっちの方がマシなのは間違いないのだ。

 

「ま、目論見が何かなんて関係ない。腕試しついでに、賞金もかっさらってやるわ!」

 

 そうしてリーファちゃんはグッと握り拳を作った。

 

 

 ──────

 

 

 

 そう、リーファちゃんは。

 主催者である貴族の男性、デシデリウム・レテ・トラニア魔導爵、彼の招待を受けて。

 迷宮都市ウォルプタスの特別区で開催される武闘大会【華燎宴武】に参加する。

 

 

 

 そうして───リーファちゃんは死ぬ。

 

 

 

 鍛え上げた拳で、自らの頭蓋を砕く、凄惨な自殺だったそうだ。

 その最期を僕は直接見ていない、あくまで伝聞だ。

 

 だって、最初の時、僕は”迷宮都市に行けなかった”。

 

 僕も流行り病にかかっていた。

 村でまともに動けたのはリーファちゃんと、一部の女性だけ。

 だから止められず、意気揚々と都会に旅立つリーファちゃんを見送ることさえできなかった。

 彼女の訃報を知ったのは三年以上経ってからだ。

 僕は遅れて迷宮都市に向かったが、会えたのは彼女のお墓のみ。

 

 あれだけ元気で明るかったリーファちゃんが、物言わぬ墓石になったってしまった。

 

 だから、僕は……ざ、ざざ……ざざ、ざ、ざざ…… 

 

 ああ、だめだ。

 この記憶は持ち越■ない。

 このタイ■ングでは思い出せない。

 

 【原初の神秘】を手にしても、僕に出来たのは彼女の運命が変わった日……【華燎宴武】当日に、「その場に僕もいた」という風に事■を捻じ曲げて戻■ことだけ。

 ■憶の全ても引き継げず、どう■たって記憶の抜けが生まれる。

 さらにノーリスクなのは一回目のみ。

 以後の■間逆行は、なにかを歪めていく。

 

 

 

 ──────

 

 

 

「おーい、ラトレ? どしたのー?」

 

 リーファちゃんの声に意識が覚醒する。

 あれ、今何を考えていたんだっけ?

 

「ご、ごめん。ちょっとぼーっと、してたみたい」

「長旅だったもんね。早く宿屋で休も? おんぶしてあげよっか?」

「は、恥ずかしいよ流石に……」

 

 じゃれ合うように、僕たちは銀のフクロウ亭への道を辿る。

 何故か分からないけど、胸には嫌な不安があった。 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

『私は【原初の神秘】の一つ』

『祈りを現世利益に還元する、魔法の原型となった古い奇跡……その具象化』

『私を御するのは魔力でも技術でもない』

『欲するならば唱えよ』

 

“神様、どうか、お願いを叶えてください”

 

『その祈りが届く限り、私は奇跡を起こしましょう』

 

『病を癒すことも』

『失われたものを取り戻すことも』

『時を遡ることさえも』

 

『ただし奇跡は本来、良き行い、積んだ徳を以って叶えるモノ』

『あなたの徳は最初に使い切った』

『そこから先を望むのならば、歪みは増えてゆくと心得なさい』

 

『そして奇跡を誰にも漏らしてはいけません』

『周知された奇跡は、我も我もと求められ、いつか単なる与太に堕ちるのです』

 

 

・残り使用回数:20/21

 

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