※この作品はR-18です。

貧乳武闘家娘のNTR闘技場   作:自宅の戦闘員

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飛ばしても大丈夫な過去

 

 僕、ラトレ・ゾネマは、魔王と勇者の戦いが御伽噺になるくらい平和な時代に生まれた。

 魔王が消え去っても野良の魔物はいる。でも村の周辺に生息するのは弱い種族ばかり。魔物が出た日は肉が食えると喜ばれるくらいだ。

 僕は村にある商店の次男坊で、どちらかと言えば大人しい子供だった。

 商店はいずれ兄であるヒズム兄さんが継ぐだろう。

 僕はそれを手伝いながら村で暮らすのか、都会に出て働き口を見つけてもいいかも。

 まだ将来に対してもぼんやりとしか考えておらず、日々を穏やかに過ごしていた。

 

「ラトレっ! 遊びにいこーっ!」

 

 そういう僕の手を引いてくれたのが、隣に住んでいたリーファちゃんだ。

 ピンク色の髪の少し釣り目の可愛らしい女の子。「強気でちょっと生意気」なんていう子もいるけれど、活発でどんどん前に進むリーファちゃんに僕は憧れと好意を抱いていた。

 

「なんだ、ラトレいじめられてんのか? 困ってたら俺に言えよ!」

「やめろよリーファ、ラトレくんかわいそうだろー」

「やっかましーわ!? めっちゃ仲良しに決まってんでしょ、あたしたちぃ!?」

 

 まあ、周りにはリーファちゃんに僕が振り回されているように見えてたっぽいけど。

 小さな村だから、同年代は皆幼馴染のようなもの。わりと周囲の男の子は、リーファちゃんよりも気弱な僕に優しかった。

 

「まったく、あいつらは……。ら、ラトレ。いやじゃない、よね?」

「も、勿論だよ。僕、リーファちゃんが大好き、だよ」

「そ、そうだよねっ。知ってたけど!」

 

 一瞬弱気が滲んだけれど、安堵の息を吐く。

 リーファちゃんの無邪気な笑顔に見惚れてしまう。

 村の中で遊ぶところは少ない。木の棒を拾って勇者ごっことか、一日中駆けまわったり、片隅に割く花を愛でる程度。それでも二人なら楽しかった。なお当然のように勇者役はリーファちゃんだし花を愛でるのは僕です。

 でも最近のお気に入りは、村の端に住んでいるタイン爺ちゃんの家を訪ねることだ。 

 

「ねえねえ、タイン爺ちゃんのとこに行こうよ」

「うん。リーファちゃん、ほんとに好きだね」

「だってカッコいいじゃない! なぎ倒して蹴って蹴って蹴りまくって」

 

 リーファちゃんは興奮から思い切りはしゃいでいる。

 タイン爺ちゃんは若い頃は拳聖とまで謳われた武闘家らしい。迷宮都市の闘技場での戦いや、蹴りの一発で魔物を倒した話。

 僕たちは、特にリーファちゃんはタイン爺ちゃんの武勇伝を、キラキラした目で聞いていた。

 

「おぉ、リーファにラトレ。また来たのか」

「うんっ、爺ちゃん、またお話聞かせて! それでぇ、稽古つけて!」

「またお前は……はいはい、しゃーないのぉ」

 

 そう言いながらも嬉しそうだ。

 爺ちゃんの方は家族もいないし、素直に慕ってくれるリーファちゃんを断り切れない。

 

「あたしね、風麗拳を身に着けて、いつか村を守りつつ魔物のお肉を一杯狩るの! オルク熊の鍋がウチの村の名物になるくらい!」

「ほっほっ、そのくらいの方が、儂の技も喜ぶのかもしれんのぉ」

 

 けっこうアレな使い方だけど、それをこそタイン爺ちゃんは喜んでいた。

 のんびりとした師弟の修練を見るのが、僕は大好きだった。

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 魔王が討伐された後の時代にも、強さの求められる職業はある。

 聖王国の衛兵や魔術師団。猟人と呼ばれる魔物の駆除業者に傭兵団。

 あとは、迷宮探索者だろう。

 魔王が倒れてもダンジョンは生きている。そこから資源や魔物の素材、隠された宝物を持ち帰るのが一般的な仕事だ。

 この中で、リーファちゃんが目指しているのは猟人。

 村を出て華々しい活躍をするのではなく、魔物を狩り村を守って生きていくために彼女は風麗拳を学んだ。

 

「そんなに強いんだから、もっといろいろ道あると思うんだけどなぁ」

「なに? ラトレはあたしに村から出てってほしいの?」

「そ、そうじゃないよ! リーファちゃんと、いっしょに居られて、その、嬉しいです」

「あたしもー。というか、たぶん向いてないのよね。腕を振るう機会は会ったら嬉しいけど、それ以外の時はこの村でのーんびり過ごして、好きな人と結婚して。時たま旅行に出かけて美味しいモノ食べる、みたいな暮らしの方がいいもん」

 

 彼女は実力に反して功名心が少ないし、お金持ちになって贅沢したい、みたいなのもなかった。

 ただこの村で緩やかに過ごしたい、それが望みだった。

 

「す、好きな人……」

「そ。好きな人」

 

 じーっと僕を見つめるリーファちゃん。

 お互いに言葉にはできなかった。

でも自惚れでなければ、そういう意味なのだろう。

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 緩やかに過ぎる日々。けれど簡単に崩れ去る。

 十五歳の成人の儀を終えてしばらく、村に特殊な熱病が流行った。

 皮膚に湿疹や黒い斑点が現れ、高熱と嘔吐でまともに食事もできなくなる。

 病は非常に早いスピードで蔓延した。

 まず、男衆が倒れた。大人の男性だけではない、老人も子供も、とにかく村中の男が動けなくなった。

 女性にも蔓延したが、子供や老婆から病にかかり、村で動けるのは一部の若い女性だけになってしまった。

 そして、死者までも出た。

 嘔吐が続いたため栄養がとれず、特に体力のない老人や子供から亡くなっていった。

 

「ラトレ、大丈夫!?」

「あぅ、あ……だぃじょお、ぶ……」

 

 村で一番元気だったのは、若く体力もあるリーファちゃんだった。

 彼女は懸命に村人の看病を続けるが、一向に良くはならない。

 そんな中で、他の老人よりも丈夫だったタイン爺ちゃんが、一通の手紙を送った。

 

 宛先は、迷宮都市ウォルプタス。

 デシデリウム・レテ・トラニア魔導爵。

 血筋でなく魔術の腕によって爵位を賜った、非常に優秀な魔術師である。

 

 僕は病床に臥せっていたので、ここからはリーファちゃんから聞いた話だ。

 タイン爺ちゃんが若かりし頃に縁を紡いだ相手らしい。

 貴族であり、優秀な魔術研究科であるという彼を頼ったそうだ。

 

「あまり、頼りたくない相手では、あるが、なぁ……。だが魔術薬を大量に用意できる人間を、他に知らん」

 

 ただ、仲がいいというワケではないみたいだ。

 それでもトラニア魔導爵はすぐに動き、大量の快癒の魔術薬を揃えて村に届けてくれた。

 しかも本人が村に人員を連れてきて、看護を命じた。薬と手厚い看護によって、僕たちの村は救われたのだ。

 

「あ、ありがとう、ございます……ええと、トラニア魔導爵さま!」

「ほぉ? 見目麗しい娘だ。なるほど、キミがタイン老の弟子、というわけか」

「は、はい! リーファ・エルナ、です!」

 

 リーファちゃんも緊張しながらも感謝を伝えたが、タイン爺ちゃんは「下がっていなさい」と遠ざけようとする。

 お礼は言ったけど、デシデリウムさまは五十歳前後の、ニヤニヤと好色そうな笑みを浮かべる中年男性だったらしい。

 

「これはタイン老、ご無事で何よりだ」

「いや、この度は、助かった……おかげで生き永らえた」

「なんの。何せタイン老は、ともすれば儂の父親になっていた御方。助けを求められたならば動くとも」

 

 不快そうにタイン爺ちゃんは顔を歪める。

 リーファちゃんが聞いた話によれば、デシデリウムさまのお父上の妻は、もともと爺ちゃんの恋人だったらしい。

 拳聖は貴族に恋人を奪われ、その後に家族を作ることもなく村で隠居していた。それを嘲笑うデシデリウムさまへの感謝は吹っ飛び、もう嫌悪しかないと彼女は言っていた。

 

 それでも村はデシデリウム・レテ・トラニア魔導爵によって救われた。

 とはいえ病気が治っても、すぐに体力が戻るわけではない。男連中は働けないままだ。

 

「さて、高価な魔術薬に看護した使用人。莫大な金がかかっていることは、理解してもらえるかな?」

 

 彼の要求した金額は、とてもではないが払える値段ではなかった。

 

「それは困るなぁ。では、対価として、労働奴隷でも選ぼうか。当家で働き、給金を返済に充てる、という形だ」

「奴隷などとっ!」

「ん? タイン老は、それ以外に返済できるアテでも? それともこの村は、最初から踏み倒すつもりで儂を頼ったのか? おお、おお、なんと恐ろしい。であれば、聖王国の法にのっとって、村民に連座でバツを与えられるよう働きかけねば」

 

 金の代わりに、人で返済してもいい。

 現在動けるのは若い女性のみ。労働奴隷と言いながらも、それ以外の用途が求められるのは容易に想像がついた。

 

「待て、待ってくれ。それは……」

「む。タイン老の願いなら聞き入れねばならんな。……そうだ! 実は近々、儂の領地で闘技大会を開く。拳聖タインの弟子が出場となれば、大層盛り上がるだろう」

「なにを、考えている……!?」

「まあ、断るのなら、そのまま労働奴隷として、返済まで当家で働いく旨で【契約】をするとしようか」

 

 選択肢にもなっていない。

 リーファちゃんが闘技大会に出場する。

 それを断れば、リーファを含む若い女性を労働奴隷にする。

 あまりにも理不尽だが、デシデリウムさまを頼らなければ、村は全滅していた。

 つまり初手からの詰み。

 そんな状況でリーファちゃんが口にする言葉なんて決まっている。

 

「いいわよ、その武闘大会? に出てあげる。だから、他の人には手を出すな、タイン爺ちゃんを馬鹿にするな!」

 

 それを止めることは出来なかった。

 そもそも、彼女の旅立ちを僕は知らない。

 病が治り、動けるようになった時には既に彼女はいなかった。

 その後、何度か迷宮都市ウォルプタスを訪ねたが、彼女の行方を追うことは出来ず。

 

 けれど数年の後、村に訃報が届いた。

 リーファ・エルナの自殺。

 僕は、墓石になってようやく、リーファちゃんに再会することが出来た。

 

 ……墓石に刻まれた彼女の性は、「エルナ」ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

【原初の神秘】の発動により修正します。

 ラトレ・ゾネマは“病気にならなかった”。ゆえに、“リーファ・エルナと共に迷宮都市ウォルプタスに赴いた”。

 以上のように事実を捻じ曲げて、リーファ・エルナの運命の瞬間に逆行できるよう固定します。

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