貧乳武闘家娘のNTR闘技場 作:自宅の戦闘員
リーファちゃんが亡くなったと知った後も、僕は迷宮都市ウォルプタスに留まった。
理由は地下に広がるダンジョンだ。
この都市のダンジョンはまだ完全に攻略されていない。しかし説話において、ここは“願いをかなえる悪魔”が生み出した居城なのだという。
そんな眉唾物の与太話に縋るくらい、リーファちゃんを失った僕はひどい精神状態だった。
これまで闘いなんてやったことなかったのに体を鍛えて魔術の鍛錬をして、迷宮攻略に乗り出すくらいに。
僕の願いをかなえてくれるなら、魂食らい売り渡してやるつもりだった。
そうして、36歳の時。
ようやく僕は望んだものを手にした。
このダンジョンに封じられていたのは悪魔ではなく【原初の神秘】。
魔術がまだ形になる前の原型。
祈ることで奇跡を起こすという神の御心の具象化。
【原初の神秘】は確かに僕の願いを叶えてくれた。リーファちゃんを助ける機会を与えてくれたのだ。
ただ、問題はある。
僕の心は、リーファちゃんが大好きな少年のままだ。
大切な人を失って荒んでいた大人の僕はどんどん薄れていってる。
彼女が死んだというのも実体験ではなく、そんな未来もある、と言ったくらいに落ち着いてしまった。
なんだろう、36歳の僕がこの体に入っているのではなく、15歳の僕が抜けだらけの未来の記録を読んでいる、という感覚が近いかな。
それはいいことなんだけど、未来みたいに、ダンジョンを攻略できるような魔術は使えないしナイフ技も習得していない。
僕は、今の僕としてリーファちゃんを助けないといけない。
もう一つ懸念がある。
ここに戻ってくる前36歳だった。
そして現在は15歳。
奇跡の使用回数は、残り21回。いや、もう一度逆行に使ってしまったから残り20回だ。
この符合に意味がない、なんて楽観はできない。
20回、時間を巻き戻した時、僕がどうなるかは自分でも分からない。
だから、どうにか早い段階で、彼女を救うきっかけを掴まなきゃ。
※ ※ ※
銀のフクロウ亭に戻った後、リーファちゃんから【
トーナメント形式ではなく、ポイント制のランキング戦。
負けても何度でも戦えるが、初手で強者とぶつかる可能性もある。
それより気になるのは、「勝者は敗者を一日服従させることが出来る」というルールだ。
「それって、負けたらリーファちゃんが好きにされちゃうってことじゃないか」
「だね、修行の時お師匠ともよくやったよ。庭の草むしり全部やらされてさぁ」
リーファちゃんはのほほんとしているが、そんなもんじゃない。
牧歌的な田舎メンタルが悪い方向に働いてる。
「そうじゃなくて……その。えっちな、こととか求められたり」
「……あっ!?」
今さら気付いたようだ。
むしろ彼女の性格からしたら、すぐに思い当たったことが不思議なくらい。
よく考えたら、村では僕が一番親しい男で、リーファちゃんは村一番の武闘家。しかも拳聖タインの直弟子。
魔物を一蹴りでぶっ倒す、わりと腕白が過ぎるタイプなので、あんまり男の子人気がなかった。
村にいた頃は、自分がえっちな目で見られる可能性をほとんど考えていなかったんだと思う。
「そ、そっか……そういうのもある、わよね」
「うん、でも」
「どっちにしろ、出場は断れない訳だし。もう後は勝つしかない、ってね」
ぐっと握り拳を見せつける。
ネックなのはそこだ。根本的に、借金をどうにかしないとリーファちゃんは逃げられない。
契約魔術を交わしちゃったから試合に出ずに不戦敗は不可能、大会が終わるまで都市から出ることもできない。
もう一度、【原初の神秘】を使って巻き戻っても、この状況からしかスタートできない。
だから、ここから何かを変えないといけない。
僕は改めて考える。
リーファちゃんは自殺した。でも、それは大会があった時から三年以上経っている。
変な話だけど、大会の期間中に死ぬことはない。
そういう意味じゃ安全と言えるかもしれない。
だけど、【原初の神秘】が設定した以上、ここが彼女の運命の変わったタイミングなのは間違いないんだ。
大会出場後に、彼女は村に戻ってこなかった。
未来の僕が迷宮都市を訪ねても会えなかった。
失踪とかじゃない。だって霊園には、彼女の名前が刻まれた墓石があった。しかもエルナとは違う苗字で。
つまり、「武闘大会に出場したリーファちゃんは、そこで出会った男性と結婚。その後自殺をした」ということになる。
「う、く」
「ど、どうしたのラトレ!? ぽんぽん痛い!?」
リーファちゃんが誰かと結婚したっていう想像だけでダメージを食らって、その場で蹲ってしまった。
「だ、だいじょばないけど大丈夫、だよ……」
「ちょ、なんか今日変じゃない?」
確かに情緒不安定だ。
深呼吸して心を調える。
今のところ、闘技場で知り合った男のせいで不幸になる、というのが有力だ。
・僕は武闘大会で、リーファちゃんに近付く男を確認しないといけない。
・でも大会は富裕層向け。高家具の観覧料を払わないと闘技場には入れない。
つまり、とにもかくにもお金を稼がないといけない。
「リーファちゃん、僕とりあえず日雇いの仕事を探すよ。観覧料は……」
「あ、聞いてきた。30万リムだって」
「30万リム!?」
だいたい昼食が400~500リムで食べられる。
普通に二カ月分のお給金とかそのレベルだ。
「村を経つ時に村長に貰ったのが、12万リム……。これは宿代で消えるから、別途に用意しないと。な、なんとか、稼いで応援に行くから」
「無理しないでよね? ていうか、試合したら翌日は休みなのよね、あたし。その日なら仕事できるかも」
「試合のために少しでも休まないと」
こんなところでリーファちゃんの体力は消耗させられない。
【原初の神秘】に頼る手もある。が、これは祈りを叶えて奇跡を起こす。できる範囲というものがあり、それを僕も正確に把握していない。
たとえば、リーファちゃんを生き返らせては無理だった。同じく、救ってくれみたいな曖昧な祈りも。
お金がほしい……というのはイケる気はするが、ノーリスクは初回だけ。それ以後は歪みが生まれるという。観覧料のために使うのは躊躇ってしまう。
「どうにか、しないと」
気持ちだけが逸る。
まだ、明確な解決法は見つかっていなかった。
※ ※ ※
【
リーファは一人で闘技場にいた。
ラトレは、日雇い仕事を頑張っているが、開催までには30万リムを稼ぐことが出来なかった。
ただ、順調にお金は溜まっている。
大会は試合の間に休憩日を挟む都合上、開催期間が長い。
たぶんどこかのタイミングでラトレは応援に来れるだろう。
「なら、勝ってかっこいいところ見せないとね」
気合いが入る。
やっぱり、ラトレが近くにいると心の持ち様が違う。
大人しくて優しいように見えて、ノリが良くて楽しい。彼は商人見習いだし、将来は商売を手伝いながらボディーガードあたし、も悪くないなぁ。
そんなことを選手待機用の個室で考えていると、闘技場の係員らしきから呼び出された。
「リーファ・エルナ選手。本日の日程についてご説明します。まず、闘技場のランカーとは違い、招待選手の実力は観客にまだ知られておりません。そのためお披露目も兼ねて、本戦に先立ち前座試合を行っていただきます。この試合勝敗はポイントには関係ありません」
「おけー」
「前座試合の後は十分に休養を取っていただき、本戦を実施します。一日に二試合行うのは初日のみとなります」
意外とスケジュールには余裕があるようだ。
リーファは掌で拳を打つ。
さあ、大会の開始だ。
※ ※ ※
闘技場の中央には、巨大な円形の石舞台が据えられていた。
それを囲うような形で観客席があり、おそらくVIPルームであろう、試合を観覧しやすいように個室が設置されている。舞台以外も石床で敷き詰められており、土が露出した部分はない。砂埃が舞うこともなく、戦いの場だというのに妙に清潔だった。
「……もしかしてこの舞台、ナメキ石? うわー、超豪華」
ナメキ石は白色の石材で、熱をほとんど通さない。また磨くと独特の美しい光沢を発するため、高級建材として王宮や富裕層の屋敷に用いられる。
舞台の時点で金持ち仕様。観覧料を高くとるのも仕方ないのかもしれない。
VIPルームが招待された貴族、通常の席が富裕層、といったところか。高額なのにかなりの客が既に入っている。ただ、客は妙に男が多かった。
リーファが舞台に上がると、審判兼実況の男が声を張り上げる。
『さあ、ここで本日の特別披露戦! 本戦に先駆けまして、皆様には注目の招待選手をご覧いただきましょう!」
『リーファ・エルナ選手!』
『おや? これは意外! 武闘家とは思えぬほど華奢で可憐な美少女です!』
『ですが、侮るなかれ! リーファ選手の師は、聖王国の歴史に名を刻む拳聖タイン! 彼女はその直弟子にして、幻の流派・風麗拳の正統後継者なのです!』
その言葉に観客席がざわめく。
リーファにとっては優しいタイン爺ちゃんだが、都会の人間にとっては数々の武勇伝を持つ武闘家だ。明らかに観客の視線の色が変わった。
「ほう、拳で龍を穿つという拳聖タインの」
「あのような美しい少女が……」
「いや、これは愉しみですな」
「ほっそりとしていて、なんとも愛らしい」
ただ、武闘家としての実力よりリーファの容姿に関心を寄せる男性客の方が多い。
それが少し不満だ
「いいもん、試合でひっくり返してみせるわ」
変な形でやる気が出た。
続いて、リーファの対戦相手が入ってくる。
しかし一人ではない。数はどんどん増え。最終的には十人の男性が石舞台に立った。
体格は当然ながら彼女よりも良い。力自慢の荒くれ者といった感じだ。
「よう。また会ったな、小娘」
その中の二人が一歩前に出る。
「あの時の借り、返してやらぁ!」
「恥をかかせやがって!」
その二人を見て、リーファは一言。
「あのー……どちらさまで?」
なんか知り合い風に声をかけられたけど、全然知らない人だった。
「あぁ!? ふざけんな!? 市場でのこと、忘れたとは言わせねぇぞ!」
「えぇ、でも」
リーファは腕を組んで、数日前のことを思い出す。
市場、市場と言えば……。
「ウォルプ牛、美味しかったぁ……。屋台の串焼きであの柔らかさって、もうとんでもないよね。塩ふっただけなのに臭みも全然なくて」
「本気で舐めてやがんな!?」
そう言われても、思い出せたのはお肉の味だけだった。
低ランクでもあのレベル、マティビーフはどれだけ美味しいのだろう。
『試合前から両者ヒートアップしております! この輝かしい舞台で、その技を、そのカラダを魅せつけろ! では【
審判の叫びによって、試合が始まる。
まず三人の男たちが同時に駆け出し、リーファに遅いかかる。
その表情には余裕さえ見える。初戦は小娘といった侮りだ。
だが、遅すぎる。
「【風麗拳】、風撃」
風撃。
踏み込む瞬間に風の魔術で自信を加速させる、風麗拳の基礎の基礎。拳が顎を打ち抜き、翻りながら裏拳、最後に飛びあがって回し蹴り。
一瞬で三人の男が石舞台に沈んだ。
「うぉおぉぉぉ! パンツ見えたぁ!」
「白! しかも布地薄い!」
そういうの止めてもらっていい?
観客席からではなく、対戦相手から歓声を受けるとは思っていなかった。
イラっと来たので速攻で追加二名を沈める。
『早い! 速い! 疾い! 目にも止まらぬスピードで、瞬く間に半数が脱落したぁ!』
実況に気分が良くなる。
しかし邪魔するように、十人の中でもひときわ大きい、筋肉質な巨漢が前に出た。
「確かに速え、的確に急所を突く。が、その細腕だ。パワーが足りねえと見た」
愚鈍そうな印象だが、よく見えている。
リーファはそれほど腕力がない。だから顎などの急所を狙って一撃で倒すようにしている。
巨漢は、顎をガードしながら距離を詰める。急所さえ守れば自分なら耐えきれるという自負、速度を殺せばリーファは何もできないという読みだろう。
だが、“腕力がない”と“パワーがない”は同義ではない。
「
基本は変わらない。地面を踏みしめる足、風を爆発させての加速。
そこからさらに、蹴り脚に魔力を纏わせて、風の塊を巨漢にぶつける。
「んがぁ!?」
「一応言っとくけっど、めっちゃ手加減してるからね? ほんとはちっちゃな嵐でズタズタにする蹴りなんだから」
一番の巨漢が、細くしなやかな脚の一撃で吹き飛んだ。
その時点で、男たちの誰が相手でも一蹴りで倒せるというのが証明された。
「け、蹴りが主体だ。足を受け止めちまえば……!」
「いや、風との併用だって。掴めるわけないじゃん」
自分を犠牲に蹴り脚を掴もうとする男もいたが、軸足を風で加速させ回転蹴りで倒す。
残り三人。せっかくの披露戦だ、少し派手な動きをするか
「ちょっとサービス!」
リーファは光速で間合いを零にして、男に飛び掛かる。
太股で相手の頭部を挟み込んで、そのまま体を捻り、相手の脳天を地面に叩きつける。
風の魔術で勢いを付けた、変形のフランケンシュタイナーとも呼べる技だ。
「天つ堕とし!」
もっとも勢いは弱める。それでも十分なダメージであり、男は抵抗もできないまま石畳に倒れ込んだ。
「な、なんてサービスだ……! 太腿で挟まれ、下着の匂いを嗅げる体勢で倒してもらえるなんて……まさに幸せ投げ……!」
「サービスはそういう意味じゃない!? 観客の皆さんが楽しめるよう派手な技をってこと!」
残ったのは、市場で知り合ったとかいう嘘をついていた二人。
実力はさほどではない。風撃、二人の間に割り込んでの同時蹴りで一気に片付ける。
結局十人の男がいても、一度もリーファに触れることは出来ず、試合は終了した。
『勝者、リーファ選手! 素晴らしい! ただの一度の攻撃も食らわず、風のように美しく舞う。これが風麗拳正当後継者! これがリーファ・エルナ! 皆様盛大な拍手を!』
ここに、リーファの実力は証明され、観客から歓声が上がる。
「や、どーもどーも」
彼女はそれに返すが、自身に向けられる好色な視線には気付けなかった。
※ ※ ※
待機用の個室に戻りリーファは一息を付く。
と言っても汗1つかいていない。少し水を飲んで寛ぐ程度だ。
すると再度闘技場の係員がやってきた。
「リーファ選手おめでとうございます。観客は大層な盛り上がりです」
「そ? ならよかった。次は、本戦なんだよね?」
「はい。戦う相手は、前座の試合とはわけが違います。彼もまた、招待選手。披露戦で十人の男を容易く蹴散らした男ですから」
もしかしたら、自分と同じく借金で無理矢理参加させられた人だろうか。
少しだけ同情の気持ちがわいてくる。
「本日の対戦相手は、ヌロデ・タッカ。自ら開発した特製の香油を全身に塗り付けて、黒のパンツ1つで密着して戦う、【オイル・サブミッション】の使い手。人呼んで“ぬるぬる愛撫”のヌロデです」
同情の気持ちは嵐刃蹴でズタズタにして吹き飛ばした。
どう考えてもただの変態だった。
・残り使用回数:20/21