「──よし。パン、やめろ」
「はっ」
パンの手の動きが、ぴたりと止んだ。
「あ・・・・・・、はーっ、はーっ・・・──ん・・・、はぁはぁ・・・・・・うぅ・・・」
スウは荒い息を吐き、今にもハォの顔面にぶちまけそうになっていた精を苦悶の表情を浮かべて引っ込めた。
「・・・ふぅ、ふぅ、・・・・・・ん・・・っ、」
(・・・よかった・・・、何とか我慢できた・・・)
ひとまず安堵し、汚さずに済んだハォの寝顔を見下ろした。苦しいスウのありさまを知る由もないハォは、すやすやと静かに眠り続けている。
パンの分厚い胸板に身を預けている事も忘れた様子で呆けるスウの視界を、リェの兇悪な笑みが遮った。
「おい、休んでいいとは誰も言ってねえぞ。さてさて、何でもするって言ったよなぁ?言ったよなぁぁあ??」まだ焦点の曖昧なスウの瞳を覗き込み、リェは念を押した。
「・・・ん・・・、二言はない」スウは大いに後悔しつつ、頷いた。他に選択の余地はなかった。
「よしよし。パン、ここに置け。みんな、そこからで見えるか?もっと近う寄れや。けけけけ!」
縛られたままのスウの躰がハォの隣に並べられ、傍観中の男たちが興味深げに輪を縮めてくる。
「ほら、さっさと始めな」困惑するスウに、リェが命じた。「早くやれよ」
「──な、何を」
相変らず、この男の意図は解らない。
「お、しらを切るか?何をって、ハォの
「な・・・??そ、そんなこと」
絶対に嫌だ。
確かに妖獣族には
だからといって、なぜそれをこの連中の前で見せ物にせねばならないのか。
「あれぇ?出来ねえってわけ?何でもするって自分から言ったくせによ。言っとくが俺は要求してねえからな、てめえが勝手に申し出たんだからな」渋るスウに、リェは畳みかける。「えっ何、もしかして恥ずかしい?へええ、やっぱり普段からそんなに恥ずかしい、見せられないほどの特殊な趣向に興じちゃってるとか?そりゃ面白そうだ、是非とも見てえわ」
「違う!殿下にそんな悪趣味は・・・っ、」勢いよく否定はしたものの、全く覚えが無い訳でもないだけに、スウはひどく赤面した。
「おやおや、どうした?え、うっそ。うわ、本当にそうなの?ふーん、へーえ?あっそう。いや、まあ性癖ってのは人それぞれだもんな」何を想像したものか、リェの顔面ににやにやと下品な笑みが広がった。取り巻き連中どもも、ひそひそと気まずい苦笑を交わし合う。
「だから、違うと言っている・・・!」
「あーはいはい、何がどう違うんだかね・・・いいから俺たちがいないと思ってお世話してやれよ。いつも通りの、その特殊な?やり方でいいからさ、ひひひひ。ほら遠慮するな」
「おぉ・・・美しい」
「程よく鍛えておいでだ」
「お年頃らしく少々未成熟であらせられる所が、また」「然り然り」
寝台の前で見物する男たちから、思わずといった様子で小さく感嘆の声が上がった。
また、失笑も湧いた。
「ハォ殿下は余程お疲れのご様子ですね、大切な御剣を棄て置かれて」
妖獣族の間で使われる〈棄野之剣(野に棄てられた剣)〉という隠語がある。所謂、疲れ魔羅の事である。疲労のあまり、昏々と眠りながらハォは股間のものをむっくりと勃起させていた。
「おかわいそうに。ほらウェイ殿、早うお慰めして。ほったらかしの抜き身を鞘にお納めして差し上げないと」
「ハォ殿下は気をお遣りになる時、どのようなお顔をなさるのでしょうなあ」
「いやあ、これは見ものですね」
男たちの悪意を含んだ好奇の視線が、まじまじと無遠慮に注がれた。
○
舐るような視線を満身に受け、口々に下劣な言葉を浴びせられ、スウの羞恥心がこれでもかと煽られる。
「あ、悪趣味な」大切なあるじをも愚弄され、屈辱と憤慨でスウの声は震えていた。
「いやなら別にいいぜ。それならそれで、こっちで好きにやるから──そうだ。ハォにお前とお揃いの恰好でもさせちゃおうかなあ、似合いそうだ」
リェは脅すようにゆっくりとした動作で、ハォの躰の上へ手をかざした。濁った繊維状の妖気が手元に湧き、縒り合わさって荒縄が形を現す。
「や、やめろ・・・!!・・・・・・わかった・・・、やる、から・・・」
「おう、早くしな」
ハォの首にかかろうとしていた縄が霧散する。
(ハォを護る為だ・・・、)
本末転倒な気もしたが、スウはあるじに覆いかぶさろうと身をにじらせた。
「・・・これじゃ、動けない。術を解いてよ」
リェの卑猥な緊縛とユゥの〈麻痺〉の術に戒められ、のろのろと蛞蝓のように這うのがやっとだ。
「いやだね、解いてなんかやるもんか。何だ、気に入らんか?ならもっとお前好みに変えてやろう」
リェの手が、空中で糸を縒るような動きをした。「ほれ。この方が興奮するんだろ、え?」
スウの肌を締め付ける縄が細く変化し、躰の各所に更にきつく食い込んだ。同時に尻の中にぎっしりと呑み込んだ珠が肥大し、内側からも苛んでくる。
「──あ・・・?!・・・くぅ・・・、」
鋭い性感を覚え身をくねらせるスウの目の前に、あるじの静かな寝顔がある。
(──!ハォ・・・、もし今この瞬間に目を覚まして僕のこんな姿を見たらどう思うだろう)
何も知らずに眠っているからまだ良かったものの、この痴態をもしハォが目の当たりにしたら?
さっきリェが云ったように──さぞ失望し、この淫らな姿を軽蔑の眼で見据える事だろう。
この身を矢のように突き刺す、あるじの冷たいまなざし。──
「・・・・・・!──っ、」
ぞくりと身を竦ませるスウの内で、何かが加速する。屈辱を通り越した先の何か、届くべきでない領域に危うく踏み込みそうになる。
(──いや、何を想像してるんだ。しっかりしろ僕・・・!こんな悪趣味な辱めなんかに屈するもんか、従うふりをして機を待つんだ)
「さすがに動けねえか、じれってえな。パン、手伝ってやれよ」
「はっ。──さ、ウェイ殿。まずはどのように?やはり口吸いですかな」
「あぁっ触るな・・・!」
悶えるスウの躰がひょいと持ち上げられ、眠るハォの温かい肌にぴたりと重ねられた。膨張しきったハォの一物がスウの下腹に押さえつけられ、魚のようにぴくぴくと動いている。スウの一物も反応を返すが、双剣が寄り添うにはわずかに位置が合わなかった。するりとハォのふぐりを押しのけ、腿の間へと潜り込む。
(あぁ・・・、ハォの素股・・・)
つい腰を動かしたくなるが、こいつらに見せてやる義理は無い。ぐっと堪える。
「──ほれ恥ずかしがらずに」
歯痒いスウの思いなど知らぬパンが、スウの頭を鷲掴みにする。
「あ・・・、待っ、──んん・・・!」
頭を押さえつけられ、スウは無抵抗なあるじと強制的に唇を合わされた。
○
「ほらウェイ殿、もっと吸わねば」
「ちゃんと舌も動かしていますか?それではハォ殿下が気持ちよくなれませんよ」
「髪でお顔が見えません」
見物する男たちから野次が飛ぶ。
「これでいかがかな」
パンは、スウの髪をひとまとめにして握った。こうすれば顔も隠れないし、持ち手にもなって扱いやすい。
「ハォ殿下にもお手伝い願えますかな」より盛り上げるべく、空いたほうの手ではハォの手を取り、疑似的にスウの尻を撫でまわさせた。
「ウェイ殿は
パンはハォの指を使い、スウの弱い部分──尾骨の上の三角紋様を、ぞわぞわと刺激した。
「んんっ・・・!」スウがもじもじと腰をくねらせる。図らずもハォの腿に挟まれた一物が優しく扱かれ、思わずうっとりと目尻が下がる。
不意に与えられた多幸感に唾液の分泌量が増し、ハォの口中へと流れ込んだ。息を詰まらせないよう、ハォはそれを無意識に呑み下す。
(あ・・・、)
そこでスウの脳裏に閃くものがあった。
(このまま口吸いのふりをして、ハォの妖気を借りられないかな)
妖獣族は体内を満たす妖気が枯渇すると、力を失い衰弱する。休めば徐々に回復するが、必要に迫られれば妖気を口移しで分け合う事もできる。それは術の使い過ぎで妖気が底をついた場合などにしばしば行われる行為で、何らかの原因で妖気を封じられ、術を使えなくなった場合も、他人の妖気を呼び水に開放できる事がある。
また、自分よりも強い妖気を少量取り込めば平常時よりも力が増すという例もある。
強大な力を宿すハォの妖気をわずかにでも吸えば、ユゥの術を破る事ができるかもしれない。せめて姿を変えられるくらいの力を取り戻し、ケモノの形になれれば、縄が緩んで戒めから抜け出すことが叶う。
従僕の身で畏れ多くも王子の妖気を吸うなど試した事が無いので、実際どうなるかはわからない。もしかしたら自分と濃さの違う妖気が体に馴染まず、上手くいかないかもしれない。
だが試す価値はある。
(ハォ、ごめんね。緊急なんだ、ちょっと貸して・・・!)
スウは、深々と吸い付いた。ハォの体内から妖気を吸い上げようと必死に探る。妖気を渡す意思が相手にあれば別だが、いかんせん眠ってしまっているので、
「おっ、急に本腰を入れだしましたね」
「そのように涎を零されて、余程ハォ殿下のお口が美味しいのでしょうなあ」
突然スウがその気になったものと勘違いをした男たちが、口々に囃し立てる。
「おや、ウェイ殿もご気分が乗って来られましたか。それは重畳」
パンも、ここぞとばかりにスウの頭をぐりぐりと押し、ハォの手を使って尻を撫でまわす。
(やめろ、気が散る・・・!──あ・・・!)
細縄がきつく食い込んだ尻の割れ目を、ハォの指がなぞる。そのまま縄を伝って菊座の辺りで止まった。
「──んんッ・・・!!・・・ふゥンッ、・・・」
菊座に呑み込まれた珠の列の末端が
(よし、あとちょっとで届く・・・!)
〇
「ちょっと待て、怪しいな。一旦やめ」
リェの号令で、スウの一縷の望みは脆くも崩れ去った。髪を引っ張られ、密着していた唇が引き離される。
「てめえ、今ハォから妖気を吸い取ろうとしたろ。危ない危ない・・・まさか下僕の分際を弁えず主人の妖気の盗み食いを謀るとはな。油断も隙もねえ奴だ・・・麻痺と緊縛だけじゃ足りんようだな、えぇおい?」
寝台の上に再び膝立ち状態に起こされたスウの前髪を、リェはきつく掴んだ。
「意地汚いことを」
「まさか、そのような」
「何と厚かましい。見損ないましたぞ」
傍観者連中からも非難の声が上がる。
「こりゃあ、妖気も吸い取って更に弱らせなきゃダメだな。丁度いい、俺もさっきお前のために罠をいっぱい創って妖気を消費したからな。お前ので埋め合わせるか・・・もっとも、あれらは見せかけだけで実際には触れても作動しないものだったんだがな。気付かなかったろぉ?ひひっ」
リェの手が、スウの顎に掛かる。
「嘘だ、紋様の色がちっとも薄れていないくせに・・・!」
スウは捕らえられた際、張られた罠が既に消えていたのを確かに見た。リェは術を解き、罠の創造に使った妖気をほぼ全て回収していたのだ。
「んー?何の事かねえ」
「い、厭だ・・・!やめ・・・、んんん!!」
力ない抵抗の甲斐もなく、憎い憎い仇敵が唇を合わせてくる。
不潔な感触に全身が総毛立つ。首を振って逃れようにも、下顎をがっちりと押さえられている。胴はパンに背後からきつく抱きすくめられている。
平常時ならば妖気を無理に吸われたとしても、渡す意思さえこちらに無ければ吸い取られる事はない。だが、今は〈麻痺〉の術にかけられているせいで抵抗できない。
妖気を好き放題に吸い取られながら、スウはリェが物のついでのように明かした事実を反芻していた。
(・・・悔しい)
──言われてみればあの時、リェがほんの短時間であれだけの量の罠を仕掛けられた事に違和感を覚えてはいた。冷静に考えてさえいれば、ルェンの〈水羂呪〉にだって掛からずに済んだのだ。リェが今云った事が本当なら、
(まるで僕はあの時、安全な隠れ場所をすべて避け、自ら術に掛かりに行ったようなものじゃないか)
スウは己の思慮がいかに浅かったかを思い、ほぞを噛んだ。
その間にも、スウの妖気は無情に奪われてゆく。
「──────、・・・」
スウの体の各所に刻まれた三角紋様がみるみる薄れ、代わりにリェの氷柱紋様が濃さを増す。
急激に妖気を失い、スウは強いくるめきを覚えた。
〇
「あのぅ、恐れながら殿下。それがしも些か術を使いましたので妖気を補給いたしたく」
手持無沙汰に片手でスウの
「ん?──ああ、そうか」たらふく吸い終えたリェが、ねっとりとスウから唇を離す。
(おえっ、汚い・・・!)
スウはリェの味が残された口中の不快感に、思わず唾を吐き捨てたくなった。だが、そんな訳にもいかなかった。ここはあるじの寝台の上だ。
妖気の分け前を所望するパンだったが、スウの胴を締めつけている逞しい腕に刻まれた紋様はリェと同じくほとんど元の濃さから薄れてなどいない。〈大力〉の術は、補助的にしか使っていないのだ。そうと知りつつリェは、
「うんうん。そうだよなあ?わかるわかる。よしいいだろう、お前にもくれてやる」わざと意味ありげな抑揚をつけ、パンの無心を聞き入れてみせた。
それを聞くや、
「えっ。パン殿、ずるい!・・・殿下、俺の方がよほど術を使いました」
「殿下!俺だって、今も呪符を効かせるために妖気を消耗し続けております」
〈水羂呪〉でスウを捕らえたルェンと〈麻痺〉でその動きを鈍らせているユゥが、すかさず異議を唱えた。もちろん、二人とも紋様の濃さは概ね正常なままだ。ちっとも消耗していない。
「ならば我は此度、ハォ殿下にお召し上がりいただいた薬作りのお手伝いに貢献したのですが」「殿下、それがしだって・・・、えーと」残りの二名も慌てて便乗を試みる。
「わかったわかった、お前ら五人で分けろ。言っておくが、程々にな。吸い尽くすなよ?死なさんように少しは残せよな──忘れんなよ、この肉人形は待たせてある連中への大切な土産なんだからな。さすがに連中だって、ちっぽけな四つ足の死骸一匹で屍姦だなんて納得しねえぞ」
身動きとれぬスウは、寝台から硬い岩盤の床へ突き倒された。
「うう・・・、──うゥゥンっ・・・!」
体を打ち付けた痛みに呻き、また、そのはずみで肛内が淫具に刺激され、呻きは途中から喘ぎに転じた。敷物の上に転がされたその体躯は、縄でまとめられている事もあり、ひどく小さなものに見えた。
「まだだぞ、まだだぞ」
リェが押しとどめる間に、パンがいそいそと寝台を軋ませ床へ降りる。
「──よし」
リェの合図で男たちが寄ってたかって奪い合い、スウの妖気を味わった。図々しく舌を入れてくる者。なかなか番が回って来ず、しびれを切らして口以外の孔に吸い付く者。あげく、それに倣う者まで出てくる始末。
朦朧とする中、スウは揉みくちゃに貪られた。味も粘度も様々な唾液を休みなく口中に含まされ、総ての孔という孔を代わる代わる男たちの唇に塞がれ続けた。床に体をつけるいとまも無いほどだった。
嫌悪による呻きか性感による喘ぎか、スウはしばしの間、忙しく声を漏らし続ける羽目になった。
〇
「これだけ妖気を吸い尽くされてなお意識を保てるとは、やはりハォの気に入りとして絶えず傍に置かれるだけの事はあるな」
ふわふわと遠く聞こえるリェの声にとろんと顔を上げれば、スウはいつの間にか再びパンに抱えられ、ハォの寝台の上へと戻されていた。
体内の妖気はほとんど底をつくほど吸い尽くされており、さすがに頭が朦朧とする。こうなっては仮に拘束が解けたとて、妖気が回復するまでの間は行動不能だ。視界の曖昧な眼を周囲に巡らせれば、どの男もスウの妖気を吸った事で紋様が必要以上に赤々と濃くなっているようだった。
一方スウの方はといえば、相変らず手足は背に回されたままで当人からは見えないが、紋様が極端に薄れてしまっていた。激しく吸い付かれてほの紅く染まった唇や、同じくその他諸々につけられた吸い跡の方が、よほど赤みが強く見えるくらいだ。
「ぼーっとしてる暇はねえぞ、ウェイスウ。ほれ、お前の仕事が残ってるだろ」リェが何か言ったようだが、スウはすっかり放心し、ろくに耳に入っていないようだ。
左右に大きく開かれたハォの脚の間に、スウの躰がうつ伏せに配置された。
「さ、ウェイ殿。もっとお口を開かれよ」
パンの手で髪をつかねられたスウの鼻先に、ハォの一物が依然として屹立している。紫紺色の下生えの中で待ちかねたようにぴこぴこと跳ねるそれを、生気をなくしたスウの瞳が漠然と映す。
「ウェイ殿、早う早う」
「早く処理して差し上げねば可哀想ですよ」
「ほら、あーんして。あーん」
にやにやと傍観する連中に促されるがまま、訳も分からずスウの口がぎこちなく開く。そして、目の前の熱い肉棒をぱくりと口中に収めた。
「妖気を奪ったらすっかり素直になられましたな、よしよし。代わりに御主人さまの胤でもお吸いなされ」
パンがスウの頭を押し込み、ハォの一物は根元までスウの口中に納まった。喉奥に触れた亀頭が、ぴくんと反応する。
「ほんと。恐れながら殿下、ルェンがウェイ殿を捕らえた時点で妖気を吸ってしまえば良かったのでは」
これならわざわざ〈麻痺〉を掛ける必要もなかったのに・・・と、ユゥが素朴な疑問を洩らす。
「ばか。お前たち吸いすぎだ、ここまでへろへろにする予定は無かったんだからな。見ろ、まるっきりうわの空になっちまったじゃねえかよ。つまんねえ」リェは、目の前でぼんやりと肉棒を頬張るスウの様子を退屈そうに眺めた。
「これではまるで、母親の乳を吸う無垢な子ぎつねのようではないか。ちっとも辱めている気がしねえ」
「ぶはは、本当だ!かわいい。あはははは!」
リェの例えが思いがけず笑いの経穴《つぼ》に入ったらしいユゥを、隣に立つルェンが慌てて肘で小突いた。
「おい、殿下の御前だぞ」
「・・・あ・・・ご無礼を致しました、殿下」はっと我に返ったユゥは右の剣指を左拳で握り込み、最敬礼の拱手をして縮こまった。
○
「殿下、お任せください。それがしがお手伝いいたしますゆえ」
パンは白銀の髪をまとめて握りなおし、スウの口でハォの一物を扱き始めた。「さあウェイ殿、このように。いま少し強くお吸いして・・・ほれ、しっかり喉の奥まで使ってご奉仕なされ」
上下する頭の動きに合わせ、握り締められた髪が尾のようにふさふさと揺れる。緩やかだったハォの寝息が徐々に乱れてゆくが、まだまだ達する様子はない。
「・・・さすがハォ殿下、なかなかどうして」
パンは、スウの口と喉をより激しく使って扱き上げる。
くちゅくちゅと水っぽい卑猥な音に交じり、たどたどしい呼吸音と小さな喘ぎがスウの鼻から辛うじて漏れた。つるりと張りつめた亀頭に容赦なく喉を責められ、えずく暇も与えられない。
「いい気味だぜ」眺めていたリェが鼻で嗤った。「おいパン。このままハォをイかせる事ができたら、このあとの〈多交多泄の会〉で一番槍を入れさせてやるぞ」
「おっ、まことにございますか!ウェイ殿、頑張ってハォ殿下に気持ちよくなって頂きましょうな!」
パンはスウという名の淫具を使って甲斐甲斐しくハォの宝剣を研いだ。片手をスウの顎に掛け、締め具合を微調整する。
唾液に濡れた紫紺色の下生えに顔を打ち付けるようにして、スウの頭は激しく上下を繰り返した。その湿った衝突音が微かに洞壁に反響するのを、スウは他人事のようにぼんやりと聴いた。
ハォの呼吸が、不意に忙しないものへと変わった。額に汗を浮かべ、薄く開いた唇から情けない声が漏れる。
「────、」やがてハォは枕の上で眉をひそめ、うなじを反らせた。
そして、スウの口いっぱいに精を放って果てた。
「おっと」たっぷりの白濁をこぼさないよう、パンは注意深くハォの一物を抜き取りざまスウの口を掌できつく塞ぐ。すっかりスウの唾液でぐちゃぐちゃに濡れた下生えの中に、静まったハォの一物がぽろりと横たわった。
「殿下、こちらの胤はいかが致しましょうか?ハォ殿下のお口にでもお返ししますか」
「うーむ、それも面白いな」リェはちょっと考えを巡らすそぶりをする。「──いや、予定外に妖気を吸い尽くしちまってウェイに悪いことしたしな。ちょいと滋養をつけさせてやろうぜ、朝餉がわりだ」
「御意」
パンはスウの頸をぐっと反らせ、口中の精を強引に飲み込ませた。
「ウェイ殿、いかがですかな本日のハォ殿下の御下賜のお味は?」
「いやパン殿、ウェイ殿は既に目を回しておられますよ」
言われてよくよく確かめれば、なるほどスウは吞み込みきれなかった白濁を口から垂らし、意識を失っていた。「おう、これはいつの間に」
「えも云われぬ味わいであられた・・・という事ですね」「ははは、それは言いえて妙だな」
「バカ言ってねえで、そろそろ帰るぞ。じゃあなハォ、いいもん見せてもらったわ。ざまあみろ」文字通り精も根も尽き果てて眠るハォの頬を最後にぴしゃりと叩き、リェは腰を上げた。
「あっ・・・、置いて行かないでください殿下」
ふざけ合っていた近習たちも、慌てて後に続いた。深く眠り込んでいるとはいえ、やはりハォのねぐらに置き去りにされるのは何となく怖いのだ。
「ではハォ殿下、ごゆっくりとお休みなさいませ。ウェイ殿はお借りいたしますぞ・・・どのような姿にしてお返しするかは保証出来かねますがね」動かなくなったスウをひょいと抱え、パンもそそくさと後に続く。
「ところで殿下、先ほどのお話ですが・・・この者への一番槍、それがしが頂戴しても」
リェを追いながら、パンが上目遣いに釘をさした。
「ああいいぜ、お前らも異存はねえな?」
リェに念を押された近習たちは、それぞれ「うんうん」と頷く。
「生娘なら別だが、既にハォ殿下が使い込まれた品でしょうからなあ」
「むしろ先陣を切られるからには、ぜひ模範を示して頂きたいものですな」
「いやあ、それにしてもハォ殿下はあのように気をお遣りになられるのですねえ」
「意外にかわいいご様子でしたね。良いものを拝見できました」
日頃から気位の高い弟王子とその生意気な側近の恥ずかしい姿をとっくりと見物し、まずはいくらか鬱憤が晴れたらしい一行は、楽し気に感想を述べ合いつつ寝所を後にした。
〇
洞を一歩出た瞬間、湿った風がリェのおくれ毛をなぶった。
松の木々を透かし西の空を仰げば、墨を流したような雲がどろどろと低く不気味に迫ってきている。
「よしよし、降るな。予定通りだ」リェはほくそ笑んだ。「ハォめ、これで痕跡を追えまい。せいぜい目を覚まして悔しがれ」
衣に織り込まれた蜘蛛の巣を翻し、手下を従えてリェは去った。
性悪な兄の玩具にされた挙句、足元を護っているはずの寵臣が拉致されたとは夢にも知らず、ハォは洞の奥で重く深く眠りに沈んだままでいる。