僕の愛したアリスを返して~ソラの幼馴染救済譚~ 作:アロンの杖
アリスが闇堕ちしてイジメっ子やその家族達に復讐して回った結果、“西方救済教会”は非常に苦しい立場に立たされた、彼等はまだ“アリスが闇に堕ちた”と言う事は掴んでいなかった、理由は至って簡単で、それに気付いた者達は
そして当然、アリス自身も“人間の世界”には戻らなかったから“オーギュスト夫妻”と共に“行方不明”扱いとなり、ここに“西方救済教会”に所属していた主だった聖職者達やシスター達の内、特に“対魔滅悪”の最前線に赴いて“闇の者共”と対峙する事が出来る存在が激減してしまったのだ。
ちなみに教会側はオーギュスト夫妻及びその娘である“アリス”が複数の“対魔滅悪戦士”として訓練されていた聖職者やシスター達から執拗な嫌がらせを受けていた事実を掴んでいた、掴んでいてしかし、彼等が
それが事態を却って悪化させ、どうにもならない状況へと追いやってしまったのだが、一方で。
ちょうどその頃、遙か東の果ての島国である“大八洲皇国”の京都府山中にある“神成家”に1人の青年が帰還した、それまで“死んだ”とか“行方不明になった”とされていた“
13歳と半年になるまで両親の元でしっかりと鍛えられ、また“少年退魔士”として各地の戦場で経験を積んでいた彼は4年前の夏休みの夜に神々によって神界へと誘われ、そこで更に厳しい修業に汗を流していたのである。
戻って来た息子からその事実を聞かされた時に両親は大層喜び、また以前からは考えられない位に立派になって落ち着いてしまった我が子の姿に思わず驚愕してしまった、筋骨は隆々としていて逞しく、細マッチョな体躯はしかしどっしりと構えられており
それだけではない、本人が抑えてはいても全身からは絶えず強烈な“光りのオーラ”が放たれておりまさに“善の善なる者”、そのものと化していたのだ。
「いやしかし。実に大したモンだな?お前の息子は・・・」
「流石に神々から直々に鍛えられただけの事はあるな・・・!!!」
実家に帰って来てからと言うもの、ソラは朝は4時に起きて水場へ行き、冷水を己にぶっ掛けてから顔を洗って歯を磨き、着替えた後に神々に挨拶をする。
それが済んだら毎日二時間はみっちりと自主練をして汗を流し、その後でシャワーを浴びてから何事かの祈りを神々に捧げる、それが午前のルーティンであり午後からは両親と共に仕事、要するに“退魔業”に出掛けていった。
その活躍ぶりは凄まじく、どんな手強い悪霊も魔物も、果ては強大な呪力を誇る鬼すらも瞬く間に1人で斬り伏せ、或いは調伏させて浄化し、元の光りに戻して成仏させてしまうのである。
当然、周囲の同僚や先達からは驚愕と賞賛の声が挙がるが彼自身はいつも“俺は神々の真似事をしているに過ぎない”、“神々の御加護があるから出来ているのさ?”とだけ話して報酬を受け取り、足早に現場を離脱していった。
そんなある日のこと。
「父さん、母さんも。僕はアリスの所に行かなくてはいけない・・・」
ソラが実家に帰って来てから3ヶ月が過ぎようとしていた、ある晩秋の夕暮れ時に夕餉の席に着いた彼が突然、両親の前でそんな事を言いだした。
「ガリア帝国で受けた酷いイジメが原因でアリスが傷付き、闇に堕ちてしまった。あの子を救ってあげなくてはならない・・・」
「・・・・・っ。そうか」
「アリスちゃんが・・・!!!」
その話を聞いた光明と真冬は少しの間、驚いたような表情を浮かべていたがすぐに全てを悟って我が子を快く送り出してやる事にしたのである。
「ソラ、これはな?万が一にもお前に何かあった時の為に備えて今まで貯めておいた
「これを持ってガリアに行きなさい、当分の生活費にはなるだろうから。身体に気を付けてね?くれぐれも無事に帰って来ておくれよ・・・?」
「父さん、母さんも。有り難う、本当に有り難う!!!」
両親の暖かさと気遣いとに礼を述べると、ソラは光明と真冬に自動車で京都駅まで送ってもらい、そのままガリア帝国へ向けて旅立っていった。