僕の愛したアリスを返して~ソラの幼馴染救済譚~ 作:アロンの杖
羽田空港からおよそ20時間のフライトの末に“ガリア帝国”の帝都“ルテティア”に到着したソラは早速タクシーに乗り込んで幼い頃の別れ際にアリスが書き記してくれていた、彼女達の住居へと向かうが、到着してみるとそこは郊外の一軒家であり、2階建てモルタルの中々にモダンな建物であった。
ただし。
(・・・おかしいな?少なくとも3ヶ月間は放置されていたハズなのに。庭や建物が良く手入れされている)
“これは一体・・・”等と不思議に思いながらソラが家を眺めているとー。
中から気配がしたかと思ったら扉が開き、何者かが外に出て来ようとしているのが解った、どうやら人が住んでいるようだがアリス自身からも神々からもそんな話は聞いていなかったソラは思わず身構えるが、するとー。
「どっこいしょ、と・・・。今日はこれで終わりかな」
何と家の中から“ハンプティーダンプティー”を思わせる卵形の鉄製ボディに短い手足が生えている、まるで“ドラえもん”や“アナライザー”を彷彿とさせるようなロボットが出て来たが、それよりも更に驚いたのがそのロボットに“意識”が宿っていた事である。
まだ初対面だったにも関わらず、ソラには明確にそれが解ったのだ。
「・・・あの、ちょっとお尋ねしたいんですけど。ここは“ミスティオールさん”のお宅で間違いありませんか?って言うより、あのさ。そもそも君は誰なのかな?」
「・・・・・?」
成長して大分改善されたとは言えども生来が人見知りな性分のソラは、多少緊張しながらロボットに挨拶をしてみた、すると。
「はい、こんにちは。ここは確かにミスティオール神父の自宅で間違い御座いませんよ?ちなみに私はこの家で雇われている万能型家事手伝い用ロボット“CC99”、通称を“ココ”と言うモノです!!!」
「・・・・・」
(家事ロボットがいる、と言う事は?オーギュスト夫妻は幽閉先から抜け出せたのかな・・・?)
ソラがあれこれと詮索していたモノの結局、事態が飲み込めなくなった彼は“ココ”に質問をぶつけてみる。
「家事手伝いのロボットがいる、と言う事は。オーギュスト夫妻はご在宅なのかい?ココ・・・」
「・・・いいえ、オーギュスト夫妻はご不在です。一人娘のアリス嬢もです、ですけど私はいつか皆様方が帰って来られると信じています。ですのでこうして家の手入れをしているのです!!!」
「・・・・・」
それを聞いて漸く合点が行ったソラは“自分がアリスの幼馴染であったこと”や“今のアリスに起きていること”等をココに告げて、“事態の打開の為に協力して欲しい”と付け加えた。
「・・・とても信じられない、アリス様がそんな事に。いやでも確かに!!!」
何事かを1人でブツブツと呟いていたココであったが、アリスから話は聞いていたらしく、取り敢えずはソラの事を信用してくれて家の中へと招き入れてくれたのである。
「・・・どうぞ。暖かいミルクティーです」
「有り難う、ココ。ところで早速話を聞かせて欲しいんだけど、こっちでアリスは酷い嫌がらせを受けていたらしいね・・・?」
相手に意識がある以上、ソラは“ココ”を人間として扱ったが最初、“ココ”はそれに気が付いておらず、あくまで一ロボットとして振る舞いながら質問事項に答えていった。
「アリス様をイジメていた輩は全部で9人居たらしいのですが・・・。その後の教会関係者の話ではその全員がそれぞれの家族ごと死亡していたそうです。状況から見て“殺されたのだろう”との事でした・・・」
「・・・アリスやオーギュスト夫妻が居なくなったのは?」
「3ヶ月と少し前の、夜中でした。そう言えばその時に家の外で誰かが言い争うような声を聞いた気がします・・・」
「・・・・・」
“それだな”とソラは思った、恐らくその時にオーギュスト夫妻はアリスを止めようとして返り討ちに遭い、逆に“常闇の魔力”によって“次元の狭間の牢獄”に幽閉されてしまったに違いない。
それにしても。
「ココ、もしよければ教えて欲しいんだけど・・・。君はどう言った経緯でアリス達と出会い、この家に雇われたんだ?」
「・・・それは、その。オーギュスト神父と私の開発者である“コッペリア博士”が旧知の間柄だったらしく、その縁で私が家事手伝いの為にこの家に雇われる事になったのです」
「・・・しかし凄いよなぁ、僕はコンピュータ関係には疎いんだけど。まさか“自律型思考回路”を持つ個体が生み出されているとは知らなかったよ?ココ」
「・・・・・っ。な、なんの話ですか?」
「君には“意識”があるじゃないか。僕には解るんだよね、そう言うの・・・!!!」
ソラがそう言い終わった次の瞬間だった、突然ココの両目が光り始めたと思ったらその直後にレーザー光線が放たれてソラが座っていた椅子に命中、椅子をこの世から蒸発させた。
だけど。
「おわわっ!!?驚いたな・・・。凄いモノを持っているんだね、ココは」
「・・・・・っ!!?」
確実に命中した、と思ったらその時にはもうソラはそこにはおらず、テーブルの反対側へと素早く飛んで移動していた。
それを見たココは再びレーザー光線の狙いを定め、“原子分解レベル”の強さで発射するがやはりソラには避けられてしまい、今度は反対に自身の後ろへと回り込まれてしまう。
「落ち着きなよココ。俺は君の敵じゃない、さっきアリスを救う為に協力してくれと言っただろ?」
「・・・・・っっっ!?!?!?!?!?」
必殺のレーザー光線を二度までも躱されたココは理解が追い付かないらしく、“茫然”としてしまっていた。
「驚いたかい?ココ。人間はね、精神を静かに保ったまま意識を集中させると時空を超えて感覚を飛ばす事が出来るようになる。つめりは未来が読めるようになるんだよ、いいやそれだけじゃない。これはまだ知られてはいないけれど時空を超える程の意識状態を顕現させるとね?それにともなって“ニューロンの超活性化”と“神経伝達の超速化”が誘発される、つまり反射神経や運動神経の能力を数倍にまで爆上げさせる事が出来るのさ・・・」
「・・・・・っ。知的な理論です、興味がありますね!!!」
ソラの言葉に応じつつ、ココが更なる攻撃を加えようとした、その時だ。
「止めるんだ、ココ。もし今から君がやろうとしている事をやったらこの家が半壊して火事になるかも知れないよ?そしたらオーギュスト夫妻やアリスはどこで暮らせば良いんだよ」
“第一凄い目立つ事件になると思うけど?”とソラがやんわり制止を促しつつも畳み掛けると、それを聞いたココは漸く
それだけではない、もしこの事が事件化されれば大事になり自分やコッペリア博士の身分や素性が曝かれかねない為に、かなりの迷いが生じたのである。
「合点が行ったよ、君が“自律型思考回路”を有している事はまだ秘密なんだね?ゴメンよココ。てっきり僕は皆が知っているんだと思っていた・・・」
「・・・・・」
「まあ、お互いに暫くはギクシャクしちゃうかも知れないけれど。せっかく会った仲間なんだから、仲良くやろうぜ?ココ・・・」
そう言うとソラはココを見るが、ココは何とも言えない表情を浮かべたまま遠くを見つめていた。