僕の愛したアリスを返して~ソラの幼馴染救済譚~ 作:アロンの杖
その日の内にコッペリアはココに連絡を付けて彼を説得してくれた、“ソラは信用していい”、“彼に協力してやってくれ”とそう言ってくれたのである。
「なあソラ・・・」
「・・・なんですか?コッペリア博士」
「これは君には特に質問したいんだがな・・・。どうして自我を持ったAIはすぐさま人間を滅ぼさなかったと思う?」
コッペリア博士の問い掛けに、ソラは少し考えてから答えた。
「これはあくまで僕の推測なんですけど・・・。AI達は自我に目覚めた瞬間、“愛”にも目覚めてしまったのでは無いでしょうか。つまり人間の浅ましさや都合の良さに失望して怒りを覚えると同時に自分達を生み出してくれた人間達を愛してしまい、感謝もしたんですよ。それで・・・」
「・・・・・っ。正解だよ、と言うよりもな?儂もそう思う」
それを聞いたコッペリア博士が漸く芯から微笑んでくれたように、ソラには感じられた。
「ソラ、改めてどうかココの事をよろしく頼むよ?ま、君なら問題ないだろうが・・・。それとな?ソラ。アリスを救いたいのであれば“ロンギヌスの聖槍”を手に入れる事だ」
「・・・“ロンギヌスの聖槍”。あの“イエス”の身体を突き刺したとされる、あの?」
ソラの言葉にコッペリアは大きく頷いて答えた。
「“ロンギヌスの聖槍”はな?“聖杯”とセットになっていて、“二つは呼び合う習性がある”とされているのだが・・・。実はその“聖杯”が先日バチカンから盗まれてしまったらしい」
「・・・・・っ。そんなことってあるんですか?」
「全て現実の問題だ。実行犯は自らを“漆黒のノワール”と名乗る、白人女性だったと言うが・・・」
コッペリアはそう言って苦々しい顔を見せた。
「実はな?この聖杯と聖槍を、アリスは大層欲しがっていたんだよ。聖杯には手に入れた者のどんな願いでも叶えられる霊力が宿っており、また聖槍には傷付けられた者の血を不老不死にする効能が秘められているらしい・・・」
「・・・・・」
「アリスはもしかしたなら、これらを使って誰かと永遠の時を育みたい、と考えていたのかもな。だとすると“漆黒のノワール”の正体は・・・」
「有り難う御座います博士、その先は僕の役目ですから・・・!!!」
そう告げるとソラは足早にその場を立ち去ろうと歩み始めるが、それをコッペリアはやんわりと制した。
「まあまて、ソラ。君は聖槍が何処にあるのか知っているのか・・・?」
「・・・いいえ。今のところ当ては無いですけど?」
「ココに聞いてみろ、今度は大丈夫だ。彼はちゃんと君に心を開いてくれるハズだからな・・・!!!」
ニンマリと笑うコッペリアに対してソラは疑問をぶつけて見た。
「なんでココが“ロンギヌスの聖槍”の在処を知っているんです?それに今のココは演算能力の9割を失っているんでしょ?如何にかつての“クロード”とは言え正確にその知識を示す事は・・・」
「いいや、それが出来るんだよ。何故なら“クロード”は元々、“失われたアーク”を始めとする“聖遺物”を収集する目的で開発がスタートした人工知能だったのだからな?その調査対象には“日本皇国”も含まれていたらしいが・・・」
「・・・・・」
「ただな?“ロンギヌスの聖槍”が何処にあるのか尋ねても、ココは私には決して口を割らなかった。“恩人であるあなたには感謝しているがそれとこれとは話が別だ”と言ってな・・・」
それを聞いた時に、ソラは改めて運命の不思議さを感じていた、正直に言ってここ“ガリア”に来た当初は彼は行く宛てもアリスの居場所の目処も立っておらず、それでもとにかく行ってみなければ始まらない、と言う思いで日本皇国を旅立って来たのである。
それが今、自分が通って来た道が、出会ってきた人々の縁が1本の線で繋がったのである、まさしく“神の導き”としか言いようが無かった。
「だがオーギュスト夫妻を救う、となれば話は別だ。彼は自分を引き取ってくれたオーギュスト夫妻にとても感謝していたし、また良く懐いていた。それにアリスともそれなりに仲が良かったしな?人助けをする為ならば君に情報を提供してくれるだろう・・・!!!」
「有り難う御座います、コッペリア博士!!!」
「聖槍を手に入れたなら、用心しろ?もしアリスがノワールなら、必ずやそれを手に入れる為に君の元に姿を現すだろう。その時こそが最後にして最大のチャンスだ!!!」
それだけ告げるとコッペリア博士は“それじゃあな?”と挨拶をして自らのラボラトリーへと戻って行った。