僕の愛したアリスを返して~ソラの幼馴染救済譚~ 作:アロンの杖
「ソラ、ソラよ・・・」
「う、うん・・・」
アリスを救い出して落ち着かせ、半年ぶりに自宅で眠りに就かせた夜。
“聖天復力呪文”で傷と体力とを完璧に癒し、着替えて再びシャワーを浴びた後に自身もやっと就寝する事が出来たソラの夢の中に、懐かしい日本の神々が現れた。
「・・・・・っ。神様っ、ここは?もしかして人間界に来られたのですか?」
「・・・ソラ、よくやった。お前とあの女子の運命も宿命も、全て丸ごと書き換わったわ」
「実はな?生まれ落ちた時の宿命ではお前は今日、あの娘と戦って命を落とし。そして娘もまた死ぬ、そう言う定めだったのじゃ・・・」
「じゃがお前は両親と、この神界での修業により進化して宿命の殻を破り。自身と共にあの女子の命運も救ったのじゃよ・・・」
眠りの世界に意識を揺蕩せていたソラの疑念には一切答えず、神々は彼の精神に直接語り掛けて来た。
「お前は単に強くなっただけでは無い。お主らの言葉で言うところの“凄いヤツ”になったんじゃよ・・・?」
「単に敵を打ち倒すだけでなく、その闇を祓い清めて救うてやる事が出来るようになったのは誠に重畳である。褒めてつかわす・・・」
「・・・は、はあ。まあ、あの。どうも有り難う御座います?」
神々は基本的にとでも優しいが、非常に厳しく適当や紛い物を絶対に認めない、そんな神々から事実上べた褒めされてソラは若干、照れ臭さを感じてどうしてよいのか解らなくなってしまった。
「あの女子は、もう大丈夫じゃ。取り憑いていた悪しき者共も全て消え失せたし、罪穢れも根刮ぎ洗い流された。・・・お主の内なる光りによってな?」
「元々あの娘は魂の芯からお主の事を一途に好いておったからのぅ・・・。その純粋さが精神の奥底にまだ残されておったのじゃな、要するに“魂までは汚されずに済んでいた”と言うわけじゃ」
「お前はギリギリで間に合ったのじゃよ、何しろあの女子はもう少しで“魔の者共”に魅入られてしまう所であったのじゃからな・・・」
「ちなみにあの娘の心も身体もまだ乙女の潔癖の内にある。精進せいよ?ソラ・・・」
代わる代わるそう告げると神々は呵々大笑しながら姿を消して行き、代わって・・・。
「・・・ラ、ソラ。起きて?」
「・・・ん、うん?」
高貴なバラの花糖蜜を思わせるような“甘い香り”が鼻先をくすぐり、優しいソプラノボイスが耳奥にまで響いて来た、それらに誘われるようにしてソラが目を覚ますと世界はとっくに明るくなっており、目の前では着替えを済ませた幼馴染の少女が心配そうな面持ちでこちらを覗き込んでいる。
「ソラ起きて、もう日が高いわ・・・?」
「・・・う、う~ん。アリスおはよう、今何時なんだ?」
「もうすぐ9時よ?私もさっき起きたばかりだから、人の事は言えないけれど・・・」
長いプラチナブロンドをツインテールで纏めた彼女が、まだ寝ぼけている青年に優しい口調で語り掛けて来るモノの、それを受けて。
ソラはゆっくりと起き上がり、パジャマ姿のままで洗面台へと向かった、どうやらココもまだ寝ている様子であり、階下から生活音は一切して来ない。
「・・・ねえソラ?顔を洗いながら聞いてちょうだい。まずは助けてくれて有り難う、あのまま行っていたら私。きっと取り返しの付かない事になっちゃっていたと思うから」
「・・・・・っ。ああうん、そうだね」
「正直ね?あなたに助けてもらえるまでの私は悲しみと苦しみと、そして憎しみでいっぱいだった。私は本当は人殺しなんかしたくなかったのに、強くて清いままで居たかったのに・・・。それをアイツらが、そして“世界”が許さなかった。その事が憎くて憎くて堪らなかったの・・・!!!」
「・・・・・」
まるで“懺悔の告解”のように自身の気持ちを正直に述べ立てて来る幼馴染の少女の話を歯を磨きながら聞いていたソラは顔を洗って身嗜みを整えた後で改めて彼女に向き直る。
「・・・ねえアリス、君はね?魂までは汚されずに済んでいたんだって。つまり精神の根っこの部分ではまだ僕への思いが生きていた、それが“共鳴現象”を引き起こした結果として奇跡が起きて君は“真っ当な”人間に戻れた。つまりは君の闇が晴れたんだよ?・・・まあ確かに神々が力を貸してくれて、“ロンギヌスの聖槍”の霊力を発揮させてくれたから、と言う要因もあるにはあるけどね?」
「そんなこと・・・っ。だってあれはあなたが直々に私にたくさんの光をくれたし、それに凄いいっぱい愛してくれて。それで私を助けてくれたし・・・!!!」
「でも確かにね?元から“絶対悪”だったり。はたまた芯から“悪”に零落してしまった者を助ける事は出来ないんだよ、何故ならそう言った連中ってのは“魔”に魅入られて“歪み”となってしまうから。つまり“存在”では無くなってしまうんだな、君にはまだ魂の芯の部分に光が残されていたんだよ?だから罪穢れが浄化されても君自身は消え去らなかっただろ・・・」
「・・・・・」
「君はね?最後はちゃんと自分で自分を救ったんだよ。僕はその“切っ掛け”を与えたに過ぎない・・・」
己が身支度を調えながら、何の気なしに淡々と語り続ける青年に対してアリスが食い付いて来た。
「だけど、でも・・・。あなたに“光”を分け与えてもらった瞬間、あなたの気持ちが一気に流れ込んで来て・・・。その瞬間に私は見てしまったの。あなたが私の為に祈ったり、
「・・・それはまあ、ね?君だって別に、好きで嫌がらせを受け続けたり。闇堕ちしたりしたわけじゃ無かったんだからさ!!!」
「うん、それはそうなんだけど・・・。私、凄く嬉しかった。あなたがこんなにも私の事を思ってくれていたなんて、ずっと愛してくれていたなんて!!!」
そう告げるとアリスは、着替えを終えたソラの背中からギュッと強く抱き着いて来た。
「私はね?今やっと“自分が真に愛すべき人が誰なのか”が解ったの、そして“自分が共に歩むべき人が誰なのか”と言うことも。ううん、違うわ?本当はね、ずっと前から解ってたんだ。だって私はいつかあなたが私を迎えに来てくれて・・・、“この世界から連れ出してくれる”って信じてたんだから!!!」
「・・・あはは、アリス。それは」
「だから、あのね?その、あの・・・っ//////////こ、これからもっ。よろしくお願いします・・・っっっ❤❤❤❤❤」
“オーバーだな”と思いながらも何事かを言い掛けたソラであったが、まるでそれを制するようにしどろもどろになりながらも本心を吐露してくれたアリスに対して改めて向き直り、そして告げた。
「ああ、こちらこそよろしくね?アリス・・・」
「ーーーーーーーっっっ!!!!?う、うんっ。よろしくねっ、ソラ・・・ッッッ❤❤❤❤❤❤❤」
そう答えてアリスは今度は真正面から再びソラに抱き着くと、その逞しい胸板の中に顔を埋めた。