「じゃあ京町先輩、今日も送りますよ」
「んう……わるいね」
あちこちで雑談が飛び交う中、僕は京町先輩に声をかけた。彼女はいつも通り既に酔っていて、僕の呼びかけに素直に応じて立ち上がった。
□□に動画を見せてもらった日から三ヶ月が経過していた。今日の飲み会は文化祭の打ち上げで、毎年恒例の物だった。出席率は体感で四割程度だが、そもそも幽霊部員がいることを考えると大した割合だ。
結局、京町先輩に例の動画について聞くことはできずにいた。何というか、どうにも聞きにくい雰囲気があったのだ。相手も自分もその事実を認識していながらあえて触れないときがあるように、その動画の内容は、僕にとって見て見ぬふりをせざるを得ないものだった。問いただし、真実を暴くことは簡単である。しかし、それが必ずしも正しい道であるとは限らない。つまり僕は関係性の悪化を恐れたのだ。せっかくできた尊敬できる先輩を失ってはしまわないかと、保身を優先してしまっていた。
ふらつく彼女に肩を貸し、他のメンバーに別れを告げてから二人で店を出た。酒を飲んで上がった体温が服越しに伝わってくる。力の抜けた彼女は僕にしな垂れかかってきて、並んで歩いている最中にも、女性に特有の柔らかさや優しい香りが存分に感じられた。それだけで理性など軽く飛びそうなくらいだ。
今まで、そのような感情は心の奥底に仕舞いこんでいた。京町セイカはただの先輩で、僕自身は彼女にとってただの後輩に過ぎないと、そう自分自身に言い聞かせてきた。
ただ、近頃はその考えを改めつつあった。つまり、自分の隠されたこの感情を彼女に伝えても良いのではないかと、そう思うようになったのだ。どうやら京町先輩は僕の前では普段と違った行動をとるらしかった。酒に強い自分を隠し、わざと弱い様子を演じるということを。それがなんとなく、不器用な京町先輩らしいと思ってしまった。本当のところは分からないし、向こうはただの便利な足ぐらいに考えているのかもしれない。でも、それを隠したままにしておくことはできそうもなかった。大学生にとって恋愛関係は興味の尽きない話題だ。人並みに興味はあるし、京町先輩に対して思うところもある。確かめずに終わらせることはできそうもなかった。
二人はいつものように車に乗り込み、マンションを目指した。三年間で慣れ親しんだ道は、もうナビの指示が無くても辿れるようになっていた。目的地に着くと、車を来客用駐車場に止めた。
運転席から降り、助手席の方へ回り込む。
「京町先輩、気を付けてくださいね」
彼女は危なっかしく足を下ろし、車から降りた。
「ね、後輩くん。きょうも、へやまでついてきてくれない?」
始めの頃はマンションの前までだった帰宅の付き添いは、今では京町先輩の部屋の中まで付いていくことになっていた。室内に入ったことは一度や二度ではない。時々遊びに行く機会もあったし、エントランスから彼女の部屋までは目をつぶっていてもたどり着けるくらいには慣れていた。
「わかりました。さ、行きましょ」
「やった。えへへ、うれしいな」
店から出るときと同じように肩を貸し、エレベーターに乗り込む。
いつもと違うことをしようとする覚悟で緊張し、心臓が激しく動いている。密着している彼女の方に緊張が伝わっていないかと心配になり、それで更に緊張が増す。避けられないイベントがあり、そこに向かっていかざるを得ないときの心境で彼女の部屋を目指していた。さながら試験会場に向かうときのようだ。人生をかけた勝負に挑みに行くというのに、のほほんと日常生活を送っている他人を見ると、思わず代わってくれと頼みたくなってしまう。しかしそれは不可能なのだ。僕自身で問題を解決しなければならなかった。
京町先輩の部屋は三階の一番端にあり、そこまでゆっくりと二人で歩いた。彼女はおぼつかない手つきで鍵を取り出し、部屋のドアを開けた。
玄関に一歩踏み入れると他人の家の匂いがした。どことなく落ち着く、柔らかい香りだ。
「たでーまー」
弛緩した表情で明るく挨拶をする先輩を連れ、家の中へゆっくりと足を踏み入れる。入ってすぐにキッチン、トイレ、洗面所と風呂場があり、奥にフローリングの部屋がある1LDKの家だ。明かりをつけて部屋に入ると、ごちゃついた京町先輩の部屋が照らされた。隅の方に大きな本棚が一つあって、そこには彼女の愛蔵書がぎっしりと詰まっていた。
ころんで怪我をさせないよう慎重に彼女を連れていく。部屋の奥側に配置されているベッドに坐らせると、僕の仕事は完了した。
「先輩、あの……」
「えー、かえっちゃうの? もうちょっといてもいいじゃん。いっしょにおしゃべりでもしようよ」
いつもならここで終わりだ。京町先輩が引き留めてきて、それを振りほどくように帰宅する。
お決まりの流れだった。
だが、今日は違う。彼女自身に聞いておきたいことがあった。それを確かめるため、改めて彼女の方に向き直る。
「その──先輩って、ほんとに酔ってますか?」
一瞬、空気が変わったような気がした。京町先輩はすぐにいつもの調子で
「んー? なにが?」と返した。
「いや、えっと……。動画、見ました。飲み比べしてるときの。□□──僕の同級生に見せられて。先輩、お酒、強いみたいですね。いつもは弱そうだったから意外でした」
京町先輩は相変わらずニコニコと微笑んでいた。しかしその笑みは、どういう訳かいつもと違って見えた。酔っぱらいが見せる無邪気な表情ではなくて、その奥に秘めたものが見え隠れしているような。獲物を見つけた肉食獣が舌なめずりをしているように、不敵な笑みを浮かべていた。
「あ、ばれちゃった? じゃ、しょうがないね」
彼女は流暢にそう言ってベッドから立ち上がった。酔って動作もおぼつかなかった先ほどまでの姿とは打って変わり、機敏でいたって普通の姿を見せた。あまりの変わりように呆気に取られていたために、彼女が意外に強い力で僕の腕を掴んでベッドに坐らせ、そのまま仰向けに押し倒され、覆い被さるところまで身を任せることしかできなかった。
京町先輩が普段使っている寝具からは彼女の匂いが強くした。正面からも同じ香りがして、まるで二人の京町先輩に挟まれているようだった。
「先輩、何を──」
咄嗟のことで状況が理解できなかった。次の一手を考えあぐねていると、京町先輩が顔を近づけてきた。何か言うのだろうか。そう考えるも、会話に適切な距離はとっくに超えている。京町先輩はそのまま距離を密着させ、唇同士を無理やり合わせるようにキスをした。
思わず身体を起こそうとするが、体重を預けるようにしてベッドに押し込まれる。声を出すこともできず、お互いに身体を動かしながら彼女は乱暴なキスを何度も繰り返した。
ようやく口を離してくれた時、二人は軽い酸欠にでもなっているかのように必死に喘いだ。荒い呼吸を繰り返すところを、熱を帯びた目がねっとり絡めとるような視線で上から睨みつける。
「だってさ、君も悪いんだよ? 毎度毎度、ふらふらになるまで酔っぱらって家の中まで付いてきてもらってるのに、何もしてくれないんだから。酔ってる女の子なんて男に何も抵抗できないんだから、手を出せばよかったんだよ。後輩君、いつも私のこと見てたよね。特に胸とかさ。酔っぱらいは記憶なんか残らないんだから、支えるふりして触ってくれても良かったのに。それとも私って、そんなに魅力ないのかな?」
言い訳がましい言葉で始まった口上は、いつの間にか滑らかに語りだされ、やがてこれまで隠していた思いを吐露するかのように紡がれた。
京町先輩に右手首を掴まれる。いったい何をするのかと思っていると、彼女は右手を自身の胸へ持っていき無遠慮に押し付けた。手のひらに柔らかい感触が触れ、一瞬で頭が真っ白になる。京町先輩、いったい何をしているんですか。思わず叫びそうなるが、本能がそれを制した。先ほどまで肩を貸しながら一緒に歩いていた先輩の胸に触れてしまっているのだ。しかも、これまで散々思いを募らせてきた人間の胸に。それは手のひらに余るほどの大きさで、自分でも気づかぬうちに指先に力を込めると、張りのある弾力感が押し返してきた。
興奮で我を忘れてしまいそうになる。手の内にある「これ」を思い切り握りつぶし、京町セイカという女を蹂躙してしまいたい。
「ねえ、後輩君。私も、無理やりはしたくないからさ」
視線が絡みつく。彼女の声しか聞こえなくなる。鼻腔いっぱいに京町先輩の匂いが満たされ、口元には先ほどのキスの味がまだ残っていた。
「続き、する?」
はい、という言葉が聞こえた気がして、よく考えるとそれは自分の口から発せられた音だった。そんなことができる理性がよく残っていたものだと感心してしまう。
返事が聞こえて京町先輩は安心したような笑顔を見せた。それからやや緊張した面持ちになり、再び顔を近づけた。
一度仕切りなおしたおかげで、今度ははっきりと知覚することができた。見慣れた京町先輩の顔が接近して、やがてある限界を超え、そのまま唇を重ね合わせた。しっとりとして弾力のある口同士が触れ合う。ついさっきまで居酒屋にいたためか、京町先輩はほのかに甘い酒の味がした。
右手は相変わらず彼女の胸に触れていた。先ほどまでは遠慮がちに触るだけだったが、これ以降はそんなことを気にする必要もないはずだ。今から二人が行おうとしているのは先ほどの続きなのだから。確認も何もなく、キスをしながら左手まで胸に添えた。それで京町先輩が何も言わなかったので、そのまま両の手に力をこめ、彼女の胸を先ほどよりも強く、しかし彼女が痛いと思ってしまわないよう遠慮がちに揉んだ。手の中で、京町先輩の胸がひしゃげた。それは指先や手のひらに込められた力に合わせて形を変えるが、確かな力で押し返してきた。
手を動かす度、唇をより求める度、彼女と服や肌が擦れ、女の子の良い匂いが鼻先に押し付けられる。それは京町先輩の甘い香りで、初めて自室に入ったときに感じた匂いと同じだった。なるほど、この部屋の空気を作ったのは彼女自身だったのか。なんてことを考えてながら無心で胸を触っていると、やがて京町先輩は口を離した。
「もう、そんなにおっぱい好きなの?」
彼女は笑っていた。あまりに幼稚だったかもしれないと先ほどまでの行為を恥じたが、それは杞憂だった。
「直接触ってみる?」
京町先輩は上半身を起こし、服をまくった。するすると布が擦れる音が響く。腰のあたりから服が持ち上がって、腰、おへそと順に肌が見える。やがて胸元で引っかかってしまったが「んしょっ……」と呟いて、そのまま肩までまくり上げた。ちょうど、健康診断で聴診器を当ててもらうときのような恰好だ。違うことと言えば、それをしているのが京町先輩であり、その人は女性であるということだろう。
ベッドから上体を起こし、脚の間に坐る彼女と向かい合う。
京町先輩の胸が手の届くところにあった。ピンク色のブラジャーに包まれたそれは、実際に見てみると小さめの西瓜ほどの大きさだった。これが何カップなのかはわからないが、それでも今まで見てきた女性の胸と比べても、誰よりも大きかった。無論、こうして目の前で下着姿を見たのは京町先輩が初めてだったが。
彼女は手を後ろに回し、小さな音を立ててホックを外した。ためらいながら腕を通してブラジャーを脱ぎ、横の床に置く。パサリと小さな音が響いた。
初めて京町先輩の胸を感じたのは初対面だった例の日のことだ。もたれられ、背中で潰れた胸の感触はよく覚えている。それから彼女と話し、遊び、親交を深めていく中で、胸のことは嫌でも意識させられた。普通に会話するだけでも胸元を見てしまうし、棚から物を取ろうとして、かがんだり背伸びをして張りつめた胸を見ると特にたまらなかった。また、酔ってしまった京町先輩はやたらともたれかかってきて、そのたびに胸に触れそうになり、それを必死に我慢するということを繰り返していた。身近にありはするが、決して触れてはいけない存在だったのだ。ただ悶々と、その中身を妄想することしかできなかった。
その実物が。京町先輩の生のおっぱいが。何も隠すことなく目の前に置かれていた。
こうしてみると、先ほど揉んだ物よりもずっと柔らかそうだ。支えを失った胸は彼女の胴に沿って柔らかに形を変えていたが、それでも全体としては滑らかな丸みを帯びていた。真っ赤に熟した果実のように、まさに女性としての盛りを表すシンボルだった。それから、その胸の膨らみの中心よりも少しだけ外側にずれた位置に、小さく膨らみがついていた。京町先輩の乳首は桜色で、つんと立ってその存在をよく示していた。まるで精巧に造られた芸術作品のようだ。彼女の胸以外を考えることができず、しばらく凝視し続けていた。
「えっと……後輩君? 見るだけだと、さすがに恥ずかしいといいますか……」
現状に我慢できなくなったのか、京町先輩は持ち上げた服を下ろそうとした。隠されては溜まらないと慌てて手のひらを近づける。
指が彼女の胸に触れた。そう思ってから、指や手のひらは何の抵抗も感じさせないように胸の中へ沈み込んだ。服越しに揉んだときの感触とは比べ物にならなかった。大きな水風船に手を押し付けているような感覚だ。五指に力を込める度、京町先輩は柔らかく柔軟に姿形を変えた。まるで指を悦ばせるためだけに存在しているようなものだった。
「もうちょっと強くしてもいいよ」
彼女の言葉を信じ、おっかなびっくり触るだけだった手は今や自分自身を満たすためだけに動いていた。スライムでも混ぜるように左右に押し広げたり、潰したり、引いたりして感触を味わった。これまでに感じたことのない悦楽がそこにあった。
京町先輩は始め、自分にとってありふれた存在である胸に夢中になる男を慈愛に満ちた目で見つめていた。しばらくは何も感じていないようだったが、やがて男に胸を揉まれるという未知の感覚を覚えてか、それをよく味わおうとして、目を閉じ恍惚の表情を浮かべていた。
「後輩君。その……ここ、触ってみてもいいかな」
お互いが身体に与えられた刺激を十二分に体感した後、京町先輩は目線を落としながら言った。その先にある物を確認しようとして初めて、自分の股座が固く大きくなっていることに気が付いた。改めて意識させられると、それはあまりにも力強く張りつめて痛いくらいだった。京町先輩の胸に夢中になりすぎた余り、気づいていなかったのだ。
彼女に触ってもらえるなんて夢のようだ。もう少し胸に触れていたかったが、しかし新たな未感覚を味わってもみたい。残念な気持ちで胸から手を離し、焦る気持ちを悟られないようできるだけ急いでズボンを下ろした。屹立した剛直が下着を押し上げ、そこだけ布が持ち上がってピンと引っ張られていた。
「す、すごいね。君のあそこ、こんな風になっちゃってるんだ……」
京町先輩はか細い声で、大きな丸い目をくるくるさせながら呟いた。両手は口元を隠すように添えられ、その視線は伏し目がちであった。しかし興味は十分あるようで、最後に下着を脱ごうと手をかけると、その様子を観察するようにじっと見つめた。
上から抑えるように下着をずらしていく。他人に見られてしまう気恥ずかしさと、その後に得られるであろう快楽への期待感が混ざり合う。やがて膨らみに差し掛かり、思い切って膝のあたりまで勢いよく下着を脱ぎ降ろした。
固く太い男の象徴がそこに鎮座していた。これまで散々取り扱ってきたはずのそこは、自分でも見たことのないくらい力が込められていた。
「あっ……」
京町先輩の方はもっと驚いたに違いない。三年間は顔を突き合わせてきた人間の本性を垣間見てか、彼女は小さく息をのんだ。その顔が赤いのは、さっきまで居酒屋にいただけではないだろう。直視こそしていなかったものの、興味深々といった様子で、まじまじと視線を落としていた。
そんな自分の姿に気づいてか、彼女は取り繕うように
「そ、それじゃ、触るね」と続けた。
彼女の手がゆっくりと近づく。おずおずと人差し指を伸ばし、固く張りつめた先端部をためらいがちに触れた。
指先がほんの僅かに触れただけである。それなのに、今まで味わってきた乱暴な刺激とはまるで違った。たかだか指先だけの刺激で、これから先、どんなふうにされるのかを完全に分からされてしまった。
女の子の柔らかい感触が敏感に感じ取れた。感触を確かめるように軽い力で押し込んだり、輪郭を撫でるように表面を滑らせたり。先ほどまで彼女の胸にしていたように、ただ自分の好奇心を満たすためだけにそれを行っているようだった。しかし、たとえそうだとしても、快楽を感じてしまうことに間違いはなかった。
京町先輩は、こちらの反応を伺いながら徐々に触れる指の数を増やしていった。中指、薬指が竿を撫でるように触れ、そこにある物の存在を確かなものにしようとした。やがて五本の指先が全て押し当てられ、形に沿うように、驚くほど優しく表面を流れた。根元から先の方まで、ほのかな抵抗感を感じさせながら徐々に撫で上げる。それから亀頭を覆うように人差し指と中指で擦り合わせ、そのまま裏筋に指を這わせながら下へ戻っていく。それはただ指が表面を撫でているだけにすぎず、いわゆる手コキですらなかった。しかし、彼女の手さばきや状況も相まって、途方もない快楽を生み出していた。
「後輩君もやっぱり男の子なんだね。私のおっぱいで、こんなに大きくしてくれたんだ。
前からこんなことしてみたいって思ってたの?」
普段なら酔っぱらいの戯言だと受け流し、適当な返事ができたはずだ。しかし、この状況においては、もはや駆け引きなどできそうもなかった。不用意に口を開けては聞かせたくない声が漏れそうで、彼女の方を見ながら控えめに頷くので精一杯だった。
「ふーん、そうなんだ……。それじゃあ、もっとしてあげないとね」
京町先輩は悪い笑みを見せた。いったい何を、と思った矢先、彼女のしなやかな指が剛直に巻き付いた。自分とは異なる体温にまとわりつかれ、身体がびくりと震えた。既に興奮しきったそこからは自分の体液が漏れ出していて、それが京町先輩の手のひらに擦りつけられているという感覚でゾクゾクした。彼女を汚すことが、また彼女自身がそれを厭わないことが何よりも興奮した。
彼女はそのまま手を動かそうとして、どうにもうまくいかないようで立ち止まった。いくら濡れているとはいえ、それはごく少量の液体であり、滑りを良くするまでの効果は無かったのだ。しばらく悩んでいたが、やがて何かを思いついたようで、右手の方へゆっくりと顔を近づけた。
「んえ……」
京町先輩が小さく口を開く。口内で温められた熱気を孕んだ息が先端に当たりくすぐったい。桃色の筋肉が見え隠れして、そこから滴るように唾液が落とされた。親指と人差し指で作られた輪っかに包まれていた亀頭の上に、熱い雫がどろりと垂れて広がった。
「あはは、ごめんね。ほんとはローションとかあればいいと思うんだけど」
彼女の唾液がじわじわと指の間から漏れ出て、筋になって垂れていく。間接的に口で触れられたようで、たまらず腰が震えてしまう。
「──それとも、後輩君はこっちの方が良かったり?」
それを京町先輩は目ざとく感じとったようで、小さく笑った。
改めて握った手のひらが動かされた。彼女の唾液という潤滑油が追加されたおかげで、手のひらは剛直の表面を滑りよく動いた。先ほどまで行われていたような、彼女自身の好奇心を満たすためだけの動きとはまるで異なる感覚が全身に響いた。男に快楽を享受させるという、それ以外には何の意味も働きも持たない動作が行われていた。
彼女の指と手のひらは唾液を介して竿や亀頭をにゅるにゅると擦りつけた。皮膚の微妙なしわや突っ張りが、摩擦となって剛直を磨いていく。手は、それ自身が意思を持っているかのように、剛直にまとわりついた。まるで濡れた布が皮膚に張り付くように。先端部、根本、さらにはその中間で、それぞれに合わせて力加減や握りこむ狭さを変え、片時も離れずに動き続けた。手を上下に返すとき、追従するように手首が滑らかに曲がり、それが妙に色っぽかった。
滑りが悪くなってくると、京町先輩は同じように唾液を垂らし、手の動きでぐじゅぐじゅと塗りこんだ。彼女と自分の体液が爆ぜるような水音で混ざり合う。時折気泡が弾けて、ぱちりと小さな音をたてた。
ストロークを重ねるごとに、手の動かし方はより気持ちよくさせる方へ変わっていった。違った角度からの摩擦や微妙な力の変化によって、うめき声を漏らしたり腰を動かしたりすると、手の中にある男を弄ぶように、重点的に同じ部分をいじめた。始めこそおぼつかなかった動きは、やがて何も言う必要がないくらい的確な運動を行うようになっていった。人差し指や中指は、剛直を上から下へなぞるとき、亀頭に引っ掛けるようにして刺激した。くびれのところを通り過ぎようとするとき、特に指へ力を込め、狭い穴を無理やり押し広げるような感覚を味合わせた。親指やそのつけ根は裏筋を優しくなぞり上げた。京町先輩は、如何に目の前の男を喜ばせるかを懸命に考え、それを実行に移しているのだ。非常に健気で、愛おしささえ感じられた。
手の動きはいよいよ苛烈さを増した。始めは途切れ途切れだった摩擦音は、今では京町先輩の自室の中でリズミカルに響いていた。二人の体液がにちにちと擦り合わされる音の他には、うめき声や熱っぽいため息が落ちる音が時折聞こえてくるだけで、もはや二人とも何も言わなくなっていた。ただ、自分が感じている新たな感覚を処理するのに必死だった。
やがて、京町先輩の手のひらがひと際強く触り、それがきっかけとなって彼女の手の中へ吐精した。
ふつふつと沸き上がるように、鈴口のあたりから白っぽい粘液が放たれた。それは彼女が垂らした唾液のように、艶やかな指を汚しながら下へ下へと垂れ落ちていった。
「あっ、ティッシュティッシュ」
京町先輩は右手を添えたまま、慌てて周囲からティッシュを探した。ちょうど後ろに置かれていた箱のティッシュを見つけ、左手で器用に回収する。何枚か引き出し、右手の上からかぶせるようにしてかけた。彼女の手のひらや剛直は、唾液や精液でべたべただった。彼女はベッドにそれが垂れてしまわないよう、また痛みを感じさせぬよう慎重にそれらを拭った。性器には快楽の余韻がまだ残っていて、薄いティッシュが当たるだけでも思わず身をよじってしまうほどだった。
「後輩君、やっぱり手だけじゃ満足できないよね」
一度出したというのに、剛直は未だに固く張りつめていた。彼女の手の中で痛いくらいに反り返っている。彼女の方もそれを面白がって、手で弱く握ったり、ふっと息を吹きかけたりして、こちらの反応を見てからかっていた。
「大丈夫だよ。心配しなくても、後輩君は寝てていいからね。天井のシミを何とやらっていうでしょ」
京町先輩に促され、下着やズボンを完全に脱ぎ去ってしまう。それから身体をベッドの上に預けた。下半身が裸の状態で、いつも先輩が寝ている寝具に寝転がっていた。ぼんやりと天井を見つめて、同じ景色を見ているのだろうかと考えてしまう。彼女は立ち上がって足元の方に移動した。これまでも何度か見たことのあるスカートに手をやり、金属音を立てながらファスナーを下ろした。それから指を入れ込み、するすると足から降ろそうと──。
「後輩く~ん? 女の子の脱ぐところ、そんなにじっと見ちゃだめだよ?」
慌てて視線を逸らす。くすくす聞こえてきたので本気ではないだろうが、彼女に幻滅されることは避けたかった。
それでも、目の前で京町先輩が服を脱いでいるという事実は十分に刺激的で、極力彼女に咎められないように目線を向ける。彼女も気づいてはいただろうが、それ以上言及することもなく、そのままスカート生地と脚が擦れる音を聞かせてくれた。パサリと軽い布切れが床に落ちる。ブラもなく、スカートもなくなった彼女はどうしようもなく無力に見えた。床の方から始まった一本のラインが、途中で途切れることなく腰のあたりまでずっと伸びていた。すらりと長い脚の付け根にはやはりピンク色のショーツが見え隠れして、滑らかで丸い腰元を守るという役目を果たしていた。やがてショーツにも手がかけられ、内股になり、お尻を後ろへ突き出すようにしてするすると下へ降ろされた。
「よっと」
膝を曲げながら右足を上げ、片足で器用に穴を通す。それから左足でも同じことをして、完全に身体から離れてしまったそれをスカートの上に落とした。
京町先輩は下半身に何も身に着けていなかった。いつも活発で、明るく、元気なあの京町先輩が、滑らかで白っぽい素足を丸出しにして立ち尽くしていた。脚の付け根は黒く陰っていて、陰毛が生えているらしかった。そのあたりをじっくりと観察したかったが、恥ずかしそうに手で隠してしまったので、それ以上見ることは叶わなかった。
彼女はベッドに膝をつけた。そのまま両手を下ろし、身体をまたぐようにして四つん這いで近づいてくる。二人分の体重が載って、抗議でもするようにベッドが軋んだ。膝のあたりで腰を降ろされ、素肌にお尻が触る。彼女の体温が直に伝わってきた。
「最後までするなら、これはつけとかないとね」
いつの間に取り出したのか、彼女は指に四角いパッケージを挟んでひらひらさせている。男性用の避妊具──コンドームだ。封を破り、薄い膜状のそれを男性器に被せようとした。彼女の指先やゴムが触れ、先ほどの快楽を思いだして思わず身震いしてしまう。一度目のそれは手元がおぼつかず失敗したようで、彼女は最後には丸めて脇へ投げ捨てた。「あれ、おかしいな」と呟きながら、パッケージについてきたであろう説明書を読み始める。それから二回目の試みが行われ、今度はうまくいったようで少しの抵抗の後、そこにコンドームが被せられた。
「ちょっとかわいいかも」
京町先輩はコンドームをつけられた剛直を指でつついた。相変わらずそこは硬いままで、指が擦れてくすぐったい。溜まらずに腰をよじると
「あっ、ごめんね。すぐ、してあげるから」と言って、脚の上に坐ったまま、身体をずらすようにして腰のあたりまで移動した。
ここまでくると、彼女の脚の付け根がさっきよりもがはっきりと見えた。ゴム越しに彼女の陰毛と触れて、そこから見え隠れする割れ目に擦りつけられている。そこだけ妙に熱っぽくて、ぬるぬると湿っていた。
京町先輩は右膝を立て、左膝で体重を支えるような体勢をとった。剝き出しの胸やお腹といった柔らかそうな身体が目の前で揺れている。それから手を剛直に添え、自身の真下へ来るようにして支えた。
彼女はゆっくりと腰を落とし始めた。男性器が京町先輩のあそこに触れる。ゴム越しとはいえ、初めて触れた女性器はずっと柔らかく、熱を帯びていた。剛直がほんのわずかに擦れ、手でしてもらったときよりもずっと良いものだと感じた。しかし腰の動きはそこで止まらず、割れ目の奥に滑り込ませるようにして彼女は男性器を自分の中へ挿入した。
京町セイカという女は男を飲み込んでいった。始めはぬるぬると滑って狙いを外していたが、何度も辛抱強く腰を押し付けるようにして中へ導き入れた。手で握られたときとは異なる、筋肉の締め付けが剛直を包み込んだ。先端部が滑り込んだそこは驚くほどに熱っぽくて、馳走を前にしてか唾液をよく分泌していた。柔らかく狭苦しい肉をかき分けるようにして、熱くて湿っぽい膣の中を徐々に進んでいく。やがて彼女が腰を落としきると、ぐちゅりと淫靡な水音を響かせながら、先ほどまで腹の上にあった剛直が完全に挿入されてしまった。
彼女自身の体内で温められた温度を強く感じる。興奮、緊張、それから多少の不安。そんなものが入り混じった感情が繋がったことで密着している彼女から感じ取れた。彼女は剛直をよく締め付けていた。ときおり中が収縮して、その緩急が既に快楽を生み出していた。上から乗られているおかげで、剛直はその根元まで中に隠れていて、彼女の最奥を突いていた。
「ん……あはっ。後輩君の、私の中に入っちゃった。」
京町先輩は胸元に置いた手のひらで身体を支えていた。中に入っているものの形や存在を確かめるように腰をぐりぐりと前後左右へ動かし、それに伴って剛直を咥えている肉がそれを離すまいと懸命に締め付ける。身体が傾くたびに力の入る部分が変わり、慣れることのできない不規則な刺激を与えてきた。
初めての感覚に我慢できず、思わずうめき声をあげる。それから腰をずらして快感から逃れようとしたが、上から押さえつけられているためそれは叶わなかった。それどころか
「君はこういうのが好きなのかな」と腰をより大きく動かされ、刺激的な感覚に脳が融けそうになった。
胸に置かれている手に力が入る。背中が緩く曲がり、女性らしい柔らかな曲線を背面に作るようにして腰を押し出される。それからまた体勢を戻すように後ろへ下がり、それが交互に繰り返された。太もも同士が擦れる。彼女の中が剛直をねっとりと舐るように前側へ擦り上げ、それからまた奥へ押し込むように内壁で摩擦を与えた。それが幾度となく繰り返され、体験したことの無い至上の快楽を生み出していた。
かと思えば、剛直を飲み込むように深いところへ突き立て、そのまま左右に動かれることもあった。「うりうり」といたずらっ子の笑みで、上半身を揺らすようにして腰をその揺れに追従させる。先ほどまで手の中にあった大きな胸が目の前でふるふると震えていた。奥までぐっぽりと飲み込まれた剛直は熱と愛液でとろとろにほぐれた彼女の中にくるまれて、左右からかわりばんこに肉のやすりで磨かれた。前後にスライドするような動きの時は長いストロークでじわじわと味わうような気持ちよさだったが、こちらはリズミカルで細かな刺激が快感を蓄積させていた。中の肉壁が側面をぞりぞりと動き、着衣の上から自らの性器を刺激するようなもどかしい感覚が何度も何度も与えられた。
「あっ、あはは。どうっ、かな。気持ちいい?」
揺れる身体に合わせて短く切れたセリフを聞かされる。この行為によって悶えるような快楽を抱いているのは京町先輩も同じようで、その言葉にはどこか上ずった音が含まれていた。日常生活では決して見ることのできなかった京町先輩の女の部分を覗いてしまって、悪いことをしているという背徳感と、この痴態を独り占めにしたいという独占欲が同時に襲ってきた。特に、ふとした拍子に「あっ」とか「んっ」のような、口から洩れそうになる甘い声を必死に押し殺したような音が聞こえてきて、それが堪らなかった。そんな声を聞かせてくれているという状況そのものがどうしようもなく興奮させた。
京町先輩はそのようにして、しばらく自分の下で悶えている男の様子を観察していた。しかし、自分でも気づかないうちに気持ちよくなってきていたようで、もはや自分の感情を抑えきれなくなっていた。その目は微醺を帯びているかの如くとろんと開かれ、その口元はだらしなく半開きになり、端から唾液を垂らしてまで夢中で腰を動かしていた。剛直が彼女の中を鋭くえぐる度、緩んだ口元から隠されなくなった喘ぎ声が小さく聞こえてきた。
「あっ、ご、ごめん。ちょっと動くね」
唐突にそう告げられて、胸元に置かれていた手が少し下側に置きなおされる。まるで我慢の限界が来たかのようで、彼女は互いに密着させていた腰を上げ、両足を広げるように膝を立てた。彼女の陰毛の奥で性器同士が繋がっているのが見えて、そこは体液でぐずぐずに汚れていた。彼女はそのまま腕と脚に力を込め、始めとは逆に腰を上げていく。柔らかい肉から剛直がずりずりと引き出されるような感覚が伝わってくる。もう終わりなのかと思ってしまったが、それから京町先輩は不意に腰を落とした。狭窄した肉を無理やりかき分けるように剛直が再び奥まで導かれる。奥の方へ力づくで潜り込むような刺激に彼女は「んっ!」と高い声を出した。
それから京町先輩は再び腰を上げ、それから降ろすという動作を繰り返し始めた。先ほどまでの優しい刺激とは違い、自分の中にある男性器に射精を促すための動きは、男を的確に気持ちよくさせる快感を生み出した。
「……んっ。あっ、ああ。はあっ」
腰が上に持ち上げられると、この中にいる剛直を離すまいと彼女自身が必死にそれを締め付けた。それでも身体を持ち上げるので、剛直は搾り取られるような刺激を受けつつ、下へと動いていった。膣全体がキュッと纏わりついてきて、そこから離れるように動くので、ぞりぞりと刺激された。
それから剛直が抜けない程度まで腰を上げると、男をまた迎え入れようと彼女は身体全体を落とし、再びそれを奥まで入れ込もうとした。始めの内は不慣れだったそこも、今ではこの男を迎え入れる準備がすっかりできていて、何の障害もなくぬるりと肉を割って奥への侵入を許した。
「これ、いいっ、あっ。き、君の、すごいっ。んっ」
京町先輩が腰を降ろす度、二人の肌がぶつかって乾いた音が部屋に響いた。それから愛液が泡立てられる水音と、彼女の可愛らしい声が聞こえるだけだった。腰の動きに合わせて剛直が激しく擦り責められ、膣内の肉が柔らかく男性器全体を磨き上げていた。腰を上にあげられたとき、せつなげに剛直を握るような刺激が感じられる。逆に腰を降ろされれば、一気に奥の方まで貫くとき、肉で性器を擦る乱暴な刺激が襲った。
「はっ、はっ、はあっ。ね、手、繋いでくれる?」
求められ、半ば無意識に腕を彼女の方へ近づける。腹のあたりに置かれていた手のひらが持ち上がって、京町先輩と指を絡めるようにして手を繋いだ。初めて握った彼女の手は不安になるくらい小さくてか弱かった。快楽に耐えようとしてか、ぎゅっと握ってきたそれを負けじと握り返す。より力を込めやすくなったのか、京町先輩は腰の動きを更に激しくした。上げて降ろすまでの速度が上がり、剛直に絶え間なく刺激が伝わってくる。愛液がぐちゅぐちゅといやらしい音を立ててかき混ぜられていた。
「後輩君も、気持ち、いいよねっ? んっ、はあっ。……よかった、あっ。一緒に、気持ちよく、なろうねっ」
いつも朗らかで明るく、笑顔を絶やすことの無かった京町先輩。初めて会ったあの日から今まで、いつも目にかけてくれていた。彼女と話すことが楽しくて、酔ってしまってもずっと傍で話を聞き続けた。
そんな京町先輩が。今や男にまたがって自分から腰を振り下ろしていた。お酒を飲む場で、いつももたれかかってきていた女性らしい肉体は、目の前で淫らに揺れている。豊満な胸も、細くくびれた胴も、ぱっつりと張りつめた腰回りも。それらは行為のためかしっとりと火照っていて、思わず撫でたくなるような質感になっていた。普段は知的なことも言い、酔ったときには他愛もない話をする口は、いまや内に張りつめた快楽を逃がすためだけに機能していた。運動のために荒い息を吐いていて、始めはためらいがちだった甘えた声も、今では自然と零れるようになっていた。普段の彼女からは想像もできないような高くて可愛い声を聞くたび、思わず反応してしまう。それが京町先輩の中をえぐって、彼女をびくりと跳ねさせた。
「ねえ、後輩君、んっ。はあっ、い、いいよ。出しても、あっ。我慢、しなくていいよっ。はあっ、はあっ、ああっ」
京町先輩は性的な欲求を満たすためだけに動きを速めた。いよいよ粘膜が擦れる音が大きくなり、それと同時に快楽も大きくなっていった。やがて彼女が剛直を奥まで飲み込んで、そこで味わうかのようにぐりぐりと腰を押し付けた。亀頭に鈍い快楽が響き、膣がぎゅっと全体を包み込む。
それで限界が来て、彼女の中へ、京町セイカを所有物にしてしまいたいという思いで射精した。
彼女の方も果てたらしく、握った手のひらに強く力がこめられ、その身体をびくりと震えさせた。震える足で剛直を抜こうとして、最後にそこから抜き出されたとき、未だ絶頂の余韻が残っていた二人は剝き身になった神経を撫でられているような鋭い快楽を受けた。
京町先輩がこちらに倒れこんできた。彼女の胸がむにゅんと潰れる。恐る恐る背中に手を回し、そっと抱擁した。彼女もこちらへぎゅっと抱き着いてきて、二人はしばらく荒い息を整えた。
「後輩君、どうだった?」
京町先輩はニヤニヤしながら聞いてきた。その頃には激しかった拍動も収まってきていて、二人はベッドの上で静かに寝転んでいた。面と向かって答えるのはどうにも気が引ける質問だが、この調子の京町先輩はただでは引き下がらないのを知っている。
「その、えっと……気持ちよかったです」
それを聞いて、彼女は満足げに頷き身体をこちらへ寄せた。肌が触れる面積が大きくなる。
「あの、京町先輩。一ついいですか」
「なあに?」
「どうして、お酒に弱いふりなんてしてたんですか?」
京町先輩は少しだけ怒ったような口調で答えた。
「もう、後輩君。そんなことまで女の子に言わせるの? 意外と意地悪なんだね」
それから小さくため息をついたので、慌てて「すいません。変なこと聞いちゃいました」と付け足した。
「ううん、大丈夫だから。
えっとね、始めはほんとに酔ってたんだよ? 初めて会った日は悪酔いしちゃってたし、歓迎会の時は君が来る前に沢山飲んでたから。それにほら。私が酔ってたら君も家まで付いてきてくれるでしょ。だから、その……。
──ああ、もう。ね、後輩君はさ、私のこと好き?」
「……はい、京町先輩。好き、です」
京町先輩はにこりと笑った。
「私もだよ、後輩君」
それから、どちらともなくキスをした。今度のそれは、行為前のキスに比べてみれば随分と自然なものだった。
初めて京町先輩と出会ったときから先ほどの飲み会まで、『京町セイカは酒に弱い』というのが彼女に対する結論だった。しかし今夜の出来事を鑑みるに、この認識は考え直さなければならないだろう。だから改めて結論を出そう。
京町セイカは、僕の前では酒に弱い。