人間が抱える闇を体現したかの如き漆黒のオーラ。精神を蝕まんと邪悪が漂う薄暗い拘置支所の通路を、自分は慎重な足取りで進んでいく。
後方には、フェイスマスクで素顔を隠した暴漢達が倒れていた。先程、こちらが打ち倒した者達だ。非殺傷の攻撃で気絶させたため、一命は取り留めている。
牢屋をひとつひとつ確認していく最中にも、自分はとある部屋を見つけた。それはあからさまに開錠されている個室であり、室内からは気配を感じさせる。自分は足を止めて鉄格子越しに中を眺め遣ると、まるで自宅のような生活感を思わせる整備された牢屋にて、ベッドに腰を掛けてくつろぐ全裸の女性と目が合った。
身長158cmの小柄な女だ。前髪をぱっつんにして切り揃えたヴァイオレットカラーのセミロングヘアーと、宝石のように輝く同色の大きな瞳が特徴的だ。まん丸の顔と可憐な面立ちが童顔を演出する一方で、無機質な肌質が西洋人形を彷彿とさせる。体型も非常に華奢であり、起伏の無い慎ましやかな乳房とブロッサムピンクの乳首、そして滑らかな曲線を象る腹部にパイパンの秘部という格好が、彼女に一層ものあどけない印象を与えた。
女性はこちらに対し、動揺を見せることなく平然としていた。直にも彼女は腰を上げると、全裸の姿を惜しみなく披露しながら可憐な声音で淡泊に喋り出してくる。
「どーも、侵入者さん。こんなトコに何の用ですか??」
「初めまして。君が“ラミア”という人物でいいのかな」
「そーですけど、それが何か??」
「俺の名前は“
「自己紹介どーも。それで、カンキさんはどんな御用でわざわざコチラに??」
ラミアという名の女性は、部屋の真ん中に佇んでこちらを見据えてくる。自分も開錠されていた扉を開いて牢屋の中に踏み入ると、全裸の彼女と向かい合いながら言葉を投げ掛けた。
「君の力を借りたいと思って、ここに来たんだ」
「ウチが此処に居るコトを、何処で知ったんですか??」
「政府が管理している異能力者のリストで、君のことを見つけた。俺は東京からやってきたんだ」
「わー、それは大層なご身分ですねー。ウチらのよーな異能力者を除け者にしておきながら、都合のイイ時だけ頼りにするなんて、やっぱり東京出身のヒトは一味違いますねー」
「かく言う俺も、異能力を持っている」
こちらの返答を聞き、ラミアは一瞬だけキョトンとした。
「アナタも異能力“ヴィジョン”をお持ちで??」
「あぁ、その力でここまで来た。ラミアの仲間を倒してきたことは申し訳ないと思っている。でも、命は奪っていないから安心してほしい」
「あー、別にイイですよ。カレらは仲間なんかじゃありませんから。ウチはカラダを対価に、衣食住を提供してもらっていただけです。要は、オナホでした。極上のオンナとしてモテモテでしたよー。こんな貧相なカラダにも需要があるみたいで、皆さんもれなくロリコンになっちゃいました。まー、ウチは20歳なのでそーいう年齢ではありませんけど」
自分は彼女の裸体をまじまじと眺めながら言葉を失っていく。その様子にどこか愉悦な眼差しを向けてきたラミアは、両手を後ろに回したあざとい佇まいで、上目遣いを行いながら可憐に言葉を続けてくる。
「それで、ヴィジョンをお持ちのアナタがどーして東京に残れるんですか?? 異能力者“ヴィジョンズ”は危険な存在として、廃墟と化した無法地帯“アンチコモンズ”に隔離されるハズですけど??」
「俺はヴィジョンの発覚と同時に、もう一つの特別な力が見つかったんだ」
「特別なチカラ、ですか??」
「特殊体質“パワースポット”。この力は、契りを交わしたヴィジョンズの異能力を最大限に引き出すことができる。同時に、契約したヴィジョンズを制御する力も兼ね備えている」
「パワースポットですか。ハナシには聞いていましたけど、実在するんですねー。興味深いです」
「この、『ヴィジョンズを制御できる』という性質に、政府が目をつけたんだ。『パワースポットがヴィジョンズの力を制御』できれば、『ヴィジョンズは人類にとって脅威ではなくなる』かもしれない。もう、危険だからという理由でヴィジョンズを隔離する必要が無くなるんだ」
「つまりですよ?? パワースポットであるカンキさんと契約すれば、ウチは東京に戻れるという認識でイイんでしょーか??」
「話が早くて助かるよ。それを君に伝えたかった」
ラミアは人差し指を口元にあてがい、んーっと思考を巡らせてからこちらに目を合わせてくる。
「じゃー、その契約とやらをさっさとしちゃいましょーか」
「え? いいの? 俺が言うのもなんだけど、そんな簡単に決めちゃって大丈夫?」
「逆に、拒む理由なんか無くないですか?? 合法的にこの無法地帯から出られるんですよ?? まー、ヴィジョンの発現とかいう言われも無い理不尽で追放されたコトに関しては、未だに納得いきませんけど。でも、もーこんな惨めな思いをしなくて済むなら、その方がイイに越したコトはないですから」
「ラミアが良いのなら、俺としても大歓迎なんだけど……」
「そーいうワケですから、カンキさん契約しましょー。で、その契約はどーやるんです??」
「それが……」
自分が言い淀む様子に、ラミアは首を傾げて不思議そうな視線を向けてくる。こちらはこちらで若干と気まずい面持ちで視線を逸らしながら、頬をぽりぽり掻いてボソッとそれを口にした。
「……パワースポットの精力を、契約対象の体内に取り込む」
「??」
「その、あまり強要はしたくない行為なんだけど。単刀直入に言えば、俺の体液を摂取してほしい、って意味になるかな……」
「そんなコトですか。別にイイですけど」
想定外の返答を受けて自分が困惑気味に目を合わせたその瞬間、死角から出現した“異能力”がこちらの四肢に巻き付いてきた。
何もない空間から突如と現れたのは、墨のように真っ黒な繊維の束が迸る事象だった。それは物理的に接触し、まるで髪や触手のような質感を伴いながらこちらの四肢を拘束してくる。自分は成す術もなく両腕を大の字に開かれると、全裸のラミアがトコトコと歩み寄りながら喋り出してきたものだ。
「ウチのヴィジョンは、自身を中心にした広範囲の空間に発動できます。範囲内でありましたら、壁越しだろうとウチのヴィジョンが襲い掛かってきますよ??」
自分は冷や汗を流しながら無抵抗の意思を見せていくと、ラミアはその様子にニンマリと笑みを浮かべながら間近に迫ってくる。続けて姿勢を下げて膝立ちを行うと、こちらが履いているズボンのベルトを外し、そしてチャックを躊躇いもなく下ろし始めた。
灰色のボクサーパンツが現れると、ラミアはこちらの下着もずり下げた。同時にして現れたのは、彼女の全裸で興奮を覚えていた勃起ペニス。ぶるんっと顔を出した肉棒にラミアは一瞬だけ目をまん丸にすると、直ぐにも見惚れるような眼差しを向けながらペニスに鼻を擦り付けた。
彼女は男根のにおいを嗅いでいく。根本から先端に沿って息をゆっくり吸い込んでいくと、今も期待するかのように立ち上がるペニスの亀頭に唇をあてがい、こちらの表情を眺めながら咥え込んできた。
敏感な神経に迸る口内の熱に、自分は快感を覚えながらもラミアを見守る。そうして真上から注がれる視線を受けながら、彼女はこちらのペニスを味わうようにしゃぶり出した。頭部を前後に動かし、刺激を加えていく。亀頭に絡ませた舌が生温かい感触を伝えていく最中、ラミアは可憐な面立ちでこちらと目を合わせてきた。
背徳感を抱かせる童顔は、健気で幼くも
込み上げてくる快感の欲求に、自分は間もなくという様子で表情を歪ませた。その反応を察知したラミアは追い込みと言わんばかりに前後の速度を上げていくと、彼女の奉仕で絶頂を迎えると共に溜め込んだ快楽を放出した。
肉棒に巡る血管が脈打ち、ドクドクとラミアの口内へ精液を流し込む。彼女もそれを厭わずに受け止めると、しばらくして快楽を出し切ったペニスから口を離し、ラミアは暫しと口をもごもごしてから再度と目を合わせてくる。
可憐な面立ちを武器とする彼女は、その小さな口を大きく開いて中を見せてきた。精液を全て飲み込んで、空っぽとなった口内はただただ可愛らしい。
程なくして、自分は四肢の拘束から解放された。しゅるしゅると戻っていく真っ黒な繊維の束は、意思を宿すかのように蠢きながら虚空へと消えていく。ラミアはこちらのパンツやズボンのチャックを上げていくと、全裸のまま立ち上がりながら訊ね掛けてきたものだ。
「これでイイですかねー。心なしか、チカラが溢れてくるカンジがします。カンキさんに近付けば近付く程、チカラが底なしに湧いて出てくるよーな感覚です。コチラがパワースポットというモノでしょーか」
「俺も、ラミアの力とリンクしているような感覚がする。見えない輪っかで繋ぎ止められたような、不思議な感じだ……」
「というコトは、契約成立でイイんですね??」
「そうだね。ありがとう、ラミア。これからよろしく」
自分は感謝の意を込めて、手を差し出した。握手のつもりで差し伸べられたそれに対して、ラミアは意地悪をするような眼差しを向けながら両手を自身の後ろに回し、上目遣いのあざとい表情で微笑しながらその返答を行ってきたものだった。
「何と言いますか、チョロいヒトですねー。カンキさんは純粋過ぎて、アンチコモンズでは生きていけないタイプだと思います。偶然にも備わっていたパワースポットの体質に助けてもらえて、ホントに良かったですね。――完全な自由の身というワケではないコトが不満ですけど、まー、これも何かの縁です。仕方ありませんが、このラミアちゃんが仲間第一号としてカンキさんに協力してあげますよー」