※この作品はR-18です。

ブラック・ハーレム   作:祐。

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主人と従者

 拘置支所の外に出ると、そこは退廃的な景色が広がっていた。

 

 以前までは横浜と呼ばれていた地域だが、現在では邪悪が蔓延る無法地帯と化している。異能力ヴィジョンの発見によって治安が急激に悪化した神奈川県横浜市は、いつしか異能力者ヴィジョンズの巣窟となった。深刻な社会現象に国民の不安が募り、政府は横浜をヴィジョンズの隔離地域『アンチコモンズ』に指定。以降、東京付近で発見されたヴィジョンズは横浜のアンチコモンズに追放する形式が成り立っていた。

 

 放棄された街は生気を失い、人間の闇とも言えるドス黒い空気が漂っている。異能力の発現によって強制的に追放されたヴィジョンズや、シャバで生きることができなくなったお尋ね者などが潜伏先として住み着いた結果、アンチコモンズは無秩序の魔境に変貌を遂げた。

 

 時刻は昼下がり。自分は腕時計で時間を確認しながら佇んでいると、後ろからひたひたとした足取りでラミアがついてきた。牢屋から出てきた彼女が日差しを眩しそうに手をかざしていく最中、自分はふと振り向いてその姿を目視する。

 

 ……全裸のまま外に出てきたラミアの様子に、自分は眉をひそめながら言葉を投げ掛けた。

 

「ラミア、服は着ないの……?」

 

「服ですか?? 別に必要なくないですか??」

 

「いや、でも裸のまま歩くのは……」

 

「アンチコモンズに社会のルールは存在しないので、ハダカのまま歩いてても警察に捕まりはしませんよー。まー、レイプはされるでしょーけど」

 

 眉間のしわが増えていくこちらの反応を受けて、ラミアは面倒そうに視線を仰ぎながら可憐な調子で喋り続けてくる。

 

「そもそものハナシ、服なんか持ってないです。着る必要がありませんでしたから。アンチコモンズは、そーいう世界なんですよー」

 

「俺が気にしているのは、東京に戻った時のことなんだ。アンチコモンズの外に出るわけだから、社会のルールが適用される」

 

「あー、言われてみればそーですねー。アンチコモンズに長く居たので、失念してました。まさか此処から出られる日が来るとは思いもしませんでしたから、表社会の常識は完全に忘れてましたよー。せっかくなので、久しぶりにオシャレをしてみたいです。ブティックかなんかを見つけたら、そちらに立ち寄ってみるのもアリですね」

 

「分かった。それじゃあ、ラミアが着る服を探しながら東京に向かおうか」

 

 そう言って自分が歩き出した矢先に、ラミアが後ろからその言葉を掛けてくる。

 

「カンキさんは、あとどれくらいお仲間を増やしたいと考えてます??」

 

「え? そうだな……取り敢えず三人は欲しいかな。政府の人から言われてるんだ。パワースポットの力で何人かと契約してきてほしいって」

 

「じゃー、ウチの友人もお誘いしてイイですか??」

 

「そのご友人もアンチコモンズに?」

 

「ハイ、カノジョもヴィジョンズなのでアンチコモンズに隔離されてます。ウチと違ってひとつの場所に留まらず転々としている方なので、今の住居は知りません。元々ウチとカノジョは幼馴染でもありまして、此処でもたまにお会いしていたんですけど、最近は全く音沙汰が無かったので今頃どーしているのやら」

 

「分かった。既に知り合いなら、仲間を見つける手間が省けてすごく助かるよ。じゃあ、先にラミアのご友人を探しに行こうか」

 

 

 

 二人目の仲間を探すべく、自分はラミアと共に鬱屈としたアンチコモンズの中を彷徨った。どうやらラミアの友人である女性はこの無法地帯で運び屋の仕事をしているらしく、じっとしていられない性分から余計に動き回っているとのこと。地域内を常に徘徊している彼女との遭遇は困難を極めると悟った自分は、彼女の動向を把握するべくアンチコモンズの中で情報を集めることにした。

 

 全裸のラミアが隣を歩き、自分は彼女の歩調に合わせていく。衣類を纏わない裸の女性と一緒に歩く廃墟の街中は、なんとも言い難い背徳感に苛まれた。道中では何度も荒廃したブティックを見掛けたものだったが、店内に入っても中は物色されており、もぬけの殻に等しかった。

 

 三件目に入った古着屋さんには、それなりの衣服が残されていた。だがラミアの好みに合わなかったのか、手に取ったビスケット色のボアジャケットのみを素肌の上から着込んだ。ラミアの小柄な体型からボアジャケットは彼女の下半身を隠し、最低限の服装として妥協できる見栄えにはなった。途中、ラミアはボアジャケットの前を開いて慎ましやかな裸体を見せ付けてきたため、自分は照れながらもその前を閉じて、友人探しの旅に戻るよう店を後にしたものだ。

 

 そんなこんなしていると、外は陽が暮れてきた。荒廃した街並みに沈む夕日は哀愁と悲愴を漂わせ、将来の不安や暗黒の人生を脳裏に過ぎらせた。アンチコモンズで暮らしている人々は皆、心が闇に蝕まれるだろう。訪れた人物らに様々な背景があれども、自分は彼らの境遇に同情した。

 

 無秩序と言えども、電気は通っている。街灯が点き、コンセントに繋げられた看板も鮮やかに光り出す静寂の繁華街。時折と通りすがる人間達は殺意に満ちており、今にもこちらへ襲い掛かってきそうな気迫を感じさせた。特に可憐で魅惑的なラミアという存在が、欲に飢えたオス達の食欲をそそるのだろう。

 

 自分らは一夜を安全に過ごせる場所を探していると、通りがかった道端でラブホテルを見つけた。どうやら経営されているらしく、フロントにはやつれた男が棒立ちしている。自分とラミアはここで宿泊することに決めると、二人でラブホテルに入店した。

 

 やつれた男性が、生気や希望を失った虚ろな目を向けながら形式上の受付を行っていく。先に料金を頂くということでせがまれると、自分は東京から持参してきた紙幣を多めに出した。アンチコモンズの中でも紙幣や硬貨が通貨として扱われており、受付の男性は驚いた目でこちらを見つめてくる。自分はこの金で食料も欲しいと頼むと、男は力の無い笑顔で了承してスタッフルームへと戻っていった。

 

 自分とラミアは、先に受け取っていた鍵を持って部屋に向かった。個室の中は簡素な内装になっており、最小限の電力によって薄暗くも、一泊するには十分の快適な空間になっていた。

 

 少しして受付の男がやってきて、カップ麺や非常食を差し出してくる。それにお礼を伝えながら男を見送ると、バスタブにお湯を入れている間にも食事を済ませていった。直にしてバスタブからお湯が溢れ出すと、ラミアはボアジャケットを脱いで全裸になりながら言葉を掛けてくる。

 

「カンキさん、お風呂一緒に入ります??」

 

「え……!? いや、それはさすがにモラルが無いというか……!」

 

「此処はアンチコモンズですから、社会の道徳とか一切ありませんけど??」

 

「っ……! 正直に言うと、一緒に入りたい……」

 

「ホントに、カンキさんって素直なヒトですよねー。イイですよー、アンチコモンズから出して頂けるお礼です。このラミアちゃんと一緒に入浴する許可を永遠にあげちゃいます」

 

「内心、すごく嬉しいと思っている自分が悲しいよ」

 

「イイじゃないですか。最初に思った気持ちが本音というモンですよー」

 

 そう言って、ラミアはおもむろに立ち上がって風呂場へと歩き出した。浴室はガラス張りで内部が丸見えになっており、ラミアがそこに立ち入ると、全裸のままシャワーのお湯を出して身体を洗い始めた。

 

 自分も衣服を脱いでいく。先程も既にペニスを見られていたためか、身体を晒すことにそれほどの抵抗を感じなかった。身に纏っていた全てを脱ぎ去り、長年と鍛え上げた筋肉質の全身を露出する。その姿で風呂場に入ると、振り向いてきたラミアは次にも意外そうに目を見開き、暫しとこちらの肉体に注目したものだった。

 

 その瞳は、活気の潤いに満ちて非常に艶やかだった。メスとしての本能が刺激されたのだろう、ラミアはこちらに近付くなりペタペタと全身を触りながら、可憐で淡泊に喋り出してくる。

 

「カンキさん、イイカラダしてますねー。普段から鍛えていらっしゃるんですか??」

 

「そうだね。ヴィジョンが発現する前から、趣味で格闘技に打ち込んでいたよ。まぁ、独学だったから本格的なものじゃなかったけどね」

 

「へー、そーですかー。それにしても、イイカラダですねー。カンキさんのカラダを見た瞬間、ウチの子宮が疼きましたよ。こんなオトコに抱かれたら、きっと幸せなんでしょーねー」

 

「えっと、お風呂に入らない……? 濡れた身体で立っていたら、風邪ひいちゃうから」

 

「イイですよー。是非、一緒に入りましょー」

 

 ラミアは一気に期待を込めた視線を向け、こちらの手を取りながらバスタブへと歩き出した。彼女に連れられるまま自分も歩を進めると、まずは自分から、湯が溢れ出す浴槽へと浸かったものだ。

 

 ざっぱーんと湯が流れ出す爽快な音を聞きながら、リラックスした気持ちで深々と座り込む。そうして極楽を感じながら天井を仰いでいると、続けてラミアがあられもない裸体で浴槽に足を入れ、腰を下ろすなりこちらに寄り掛かってきた。

 

 自身よりも大きな男に背を預け、完全に密着しながらくつろぎ始めたラミア。このシチュエーションに自分は高揚感を覚えていくと、今も身体の前面に伝わるラミアの背中に異様な興奮が巡り出して……。

 

「カンキさん」

 

「な、なに?」

 

「おちんちん、ウチの背中に当たってますけど??」

 

「それはもう、こんなにくっ付かれたらそうなっちゃうと思うけど……」

 

「どんどんおっきくなってませんか?? そんなにウチで興奮しちゃってます??」

 

「この状況で興奮しない男はいないよ。何よりも、ラミアが魅力的なんだ」

 

「そーいうセリフも、別に狙ってクチにしてるワケじゃないのがカンキさんなんですよねー。ホントに正直なヒトといいますか、あまりにも純粋といいますか」

 

 ラミアは一層と寄り掛かり、こちらを見上げながらあざとい声音で言葉を続けてくる。

 

「おちんちん、ラミアちゃんの背中に擦り付けてもイイですよ?? ラミアちゃんはオレのモノだって、マーキングしてくれて構いませんから。だって、ウチはカンキさんと契約した従者ですからねー」

 

 自分はもう、今にも爆発しそうな本能を我慢することができなかった。

 

 ラミアの華奢な身体に両腕を回し、抱え込む。それから自身の腰を持ち上げると、勃起したペニスをラミアの背中に思い切り擦り付けた。あまりにも必死な行為にラミアは思惑通りとも言うべき表情を浮かべながら、こちらのマーキングに愉悦を覚えていたことだろう。

 

 浴槽の湯は波打ち、ざぶんざぶんと零れ落ちる。水中ということもあり動作はゆっくりで、勃起したペニスとキンタマをラミアの背中に存分と擦り付けた。本音を言えば、眼前の小柄な美女をもっと愛でたい気持ちにも苛まれる。しかし、自分は己を律するように深呼吸を行うと、ラミアへのマーキングを済ませてから、高揚した頬で誤魔化すように視線を逸らしつつ彼女に言葉を投げ掛けた。

 

「こんなことをしておいて説得力は無いかもしれないけれど、俺はラミアと対等でありたいと考えているんだ。なんか、従者って言い方は契約してくれた相手を見下しているように聞こえてしまうから……」

 

「カンキさんは真面目ですねー。だからこそ、ご自身の欲求にも素直です。変に気取って逆張りするヒトよりも好感持てますよ??」

 

「ありがとう。そんなこと言われちゃうと、余計にラミアの事を意識しちゃうな」

 

「おやおや?? もしかしてラミアちゃんのコト、スキになっちゃいました??」

 

「……うん」

 

 こちらの返答を耳にしたラミアは、一瞬だけ面食らった表情を見せた。直後にも彼女は魔性の笑みを浮かべ、期待通りとも言える満足気な様子でこちらに寄り掛かってきたものだ。

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