BLEACH世界転生者のサルベージ 作:レインボー
「――――ほぅ、どうやら目が覚めたようじゃの」
明瞭になってくる意識の最中、聞いた事のある声が耳に響いた。
自分はこの声の主を知っている。
面識は無い、自分が一方的に知っているだけ。と、いうのもつい最近この声の持ち主が出ている作品を見たばっかりだった。
瞳を開けて声の主の顔を見る。
禿げた頭に黒い髭、そして黒い着物の上に白い羽織を着た男が巨大な筆を持って立っていた。
間違いなく『BLEACH』の登場人物である兵主部一兵衛だ。
何故、この和尚が自分の前に居るのか?
そもそも、この真っ暗で鏡が散りばめられたかのような世界は一体全体なんだというのか?
「これ、返事をせんか」
「あ、はい。すみません」
叱られた事により口から声が勝手に出て来る。
自分の意思で出たものなのか、それとも反射的に出たものなのか、もしくはこの和尚によって無理矢理口を開かされて出したものなのか。
いずれにせよそんな事実が気にならなくなるくらい、自分の声に違和感があった。
そもそもこれが自分の身体である事に少し違和感を感じる。
まるで自分の身体の大部分を何かと取り替えたかのような、奇妙な感覚だ。
「ふむ、どうやら自分の身体の状態に気が付いているようだの」
「あの、これは…………いや、そもそもここは?」
「まあ待て。おんしの身に起こった事情を説明する前に、先ずはこの世界について説明しよう」
そう言うと和尚は空を見上げながら話し始める?
「おんしが知ってるかは知らんがこの世界は現世、
和尚の口から語られるのは自分が知っている『BLEACH』という作品の世界観の根幹となる設定だった。
ただ残骸、成れの果てとはどういうことだろう?
「ついこの間までユーハバッハという男が三界を滅ぼし、原初の世界を作ろうとしておった。それを止める為、新たな霊王である黒崎一護が戦っておったのじゃ」
さらりと一護の事を霊王呼ばわりしましたよこいつ。
まあ和尚はユーハバッハに負けた一護を新たな霊王にする気満々だったし、一護の方も霊王になる覚悟はあったみたいだから何も言わないでおく。
「ただユーハバッハが先代の霊王様を手にかけた事によって安定していた世界が不安定になってしまってのう。そこに他の世界からあるものが落ちて来たせいで三界は滅んでしまった。そしてその落ちて来たものがおんしじゃよ」
「えぇ…………?」
「ついでに付け加えるとおんしが落ちて来た衝撃でユーハバッハを含めたこの世界の住人は全て滅んだ。ここに居るわしももう少しで消滅する力の残滓に過ぎん」
どうやら自分がこの世界をこうした元凶だったらしい。
いや、全ての元凶はユーハバッハだから僕は被害者だが。
「おんしからしたら巻き込まれただけとはいうだろうがこの世界を滅ぼした一因である事には変わらない。だからおんしには世界を救ってもらう」
「とは言うけど自分にそんな力があるとは思えないんですが」
「おんしがこっちの世界に落ちて来た際、大分身体が欠損しておってのう。
「なんて事をしてくれたんだ」
この腹黒和尚、僕をジェネリック霊王にしやがった。
しかも一護よりも一つ因子が多い。
「何故そういった事が出来たのかというとおんしが持っている力じゃな。どうやら時間を越える能力の素養を持っておるらしくてな。その力の影響もあっておんしは最初から六つの力を内包した存在として産まれた事になった。もし世界が滅びる前ならおんしを霊王にしてやっても良かったんじゃが」
「嫌過ぎる」
「まあそう言うでない。さて、わしもそろそろ限界なので消えるとする。わしが知りうる限りの情報は今からお前の頭の中に流してからな」
「ちょっ、まっ――――」
僕が制止する前に和尚は言葉通り僕の頭の中に全ての情報を流しやがった。
許容量を大きく超えた情報の渦に自分はそのまま倒れ突っ伏し、そしてそれを見届けた和尚は黒い液体となってこの世界から消失した。
そして全ての情報を把握して約一時間後、僕は怒りのまま怒鳴り声を上げた。
「あの腹黒禿げぇ!! 僕の時計を勝手に改造しやがった!!」
祖父から受け継いだ懐中時計。
僕の宝物でもあるそれは今や見る影も無く、時計の長針と短針を模した2本の両手剣になっていた。
姿形が変わっていても分かる。これは自分の懐中時計なのだと。
「殺してやるぞ…………ユーハバッハァ!!」
心の内から湧き上がる怒りのままに誰も居ないひび割れた世界で叫ぶしかなかった。
※
さて、一頻り怒りを発散した事で冷静に…………なれたかどうかは不明だし、まだあのハゲに対する怒りが収まってないがなんとか状況を分析出来たので改めて纏める事にする。
先ず、自分の身に起こった変化から。
どうやら自分の身体はあのハゲのせいでこの世界の人間、死神、滅却師、虚、完現術者という五つの要素が外付けで加えられた。そして僕個人の能力が上手い具合に作用した結果、僕は産まれた時からその五つの素養を持って産まれた存在という事になった。
要するに僕は転生者、人間、死神、滅却師、虚、完現術という六つの素養を持っている、素養だけを見るなら一護超えの存在と言う事であるらしい。ただ一護と違って他の五つの力はかなり弱い。
虚の力に関しては一護がホワイトという複数の死神を使って作った虚と違ってただの虚だ。まあ因子がある分、鍛えれば強くなるのかもしれないが。
どうしてこんなことになってるのかというのも、自分の元々持っていた能力、時間を越える能力の影響があるらしい。
そのおかげで五つの力は生まれる前から持っていた事になった。ついでにこの世界に落ちて来た際、能力の影響で過去も未来も滅茶苦茶になってしまったという。
ふぁっきん。
「自分の斬魄刀や聖文字《シュリフト》があれば、本当に時間関係の能力になりそうだな」
斬魄刀や聖文字、完現術は本人の持っている能力を映し取ったものだ。
実際、自分のこの武器は斬魄刀と完現術によって武器になった懐中時計と代行証と
時間操作、といっても時間停止ができるわけじゃない。
卍解まで至れば出来るのかもしれないが今出来るのは自分の時間を少しだけ加速させる事と対象の時間を巻き戻す事、そして世界に起こった事の再現と時間移動だ。
連発は出来ないし負担も大きいし使い勝手は正直言って悪い。が、間違いなく強い能力だ。
そしてあのハゲはこの力を使って世界を補修しろとのこと。
完全に元通りにする必要は無い。が、三界にまで戻ればそれで良いのだと。
「…………まるでFGOだな」
自分が落ちて来たせいで過去も未来もぐちゃぐちゃになり、繋がらなくなってしまった世界。
形容するのが難しいがFGOの特異点や異聞帯が一番近いだろう。
そんな状況で一人でやるしかない。
いや、本当に冗談じゃない。
「僕にも責任の一端はあるらしいからやるにはやるけどさ、僕だって好きにやるぞ」
無理矢理仕事を押し付けられて不満が無いと言うことは絶対に無い。
だから僕も好き勝手に動いて、僕のやり方で修復してやる。
ハーレムを作ったって別に構いやしないだろ。
「それじゃあ早速仕事に取り掛かる――――前に鍛えなくちゃな」
自分の力を把握しないで動くとか怖過ぎるからね。