※この作品はR-18です。

【R-18】掟の底食い   作:ちわわのちくわ、

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中盤の行為シーンで、主人公の名前が急に出てきますがミスです。
すみません、今夜くらいには修正しときます。
修正済みです。たぶん大丈夫。9/26


第三話 名前 R-18版

 ナミはしばらくの間その街に滞在し、彼に常識と生活を送る上での日常的な言葉を叩き込んだ。

 それと並行して、彼女が向かったのは港の酒場だ。アルコールは人の口を軽くする。

 紫煙で薄暗い喧騒の中、ナミはカウンターに深く腰掛け、わざとらしく脚を組み替えてタイトなスカートから齧りつきたくなるような太ももを覗かせた。

 

 酒の入った男たちの視線が釘付けになる。カウンターで頬杖をつけば、腕が豊かな胸のふくらみがむにゅりと形を変え、谷間が強調された。

 あれほど騒がしかった酒場が、生唾を飲み込む音が聞こえそうな程静かになった。

 男どもがちょいちょいと前髪や髭を整え、なんとか海の女神の仕留めようと躍起になる。

 

 その気配を感じながら、ナミはジンを一口やる。

(あ~~ほんと単純で助かるわ)

 

 何人もの男が撃沈し、会話が続いたある水夫は優越感とこの後のプランで頭がいっぱいだった。

 

「あ、ああ! 当然さ! 俺の腕は船長も認めてるんだ。来週出航するあのカネカ丸だって、俺が航路を任されてるようなもんでね」

「えぇ~すごぉい……私、海の上をあんなにおっきぃ船を動かす男の人って、本当に尊敬しちゃうなぁ」

 

 ふっと吐息を漏らすように甘い声を出し、男の顔を覗き込んだ。至近距離で見つめる子猫のような瞳、少し熱っぽい柔肌、手に収まらないほどのたわわな果実がゆさっと存在を主張する。

 ナミは持ち前の愛嬌と鋭い観察眼で海の男の警戒心を巧みに溶かしてみせた。

 

「そういうおっきなお船って、ナニを運んでるの? きっとあなたのような頼もしい人にしか任せられないわよね」

「そりゃそうさ。船積みの話じゃあ──」

 

 辺りを見回し、最低限ナミにだけ聞こえるように小声で囁く。

 

「──ってなわけよ。どうだい、河岸を変えて落ち着いた店でもっと詳しい海の話を……」

「とっても楽しかったわ! お酒もありがとう! お仕事頑張ってね!」

 

 用が済んだ瞬間、ナミは弾けたような満面の笑みを浮かべて席を立った。

「え? あ、おい、ねえちゃん!?」

 

 男が呆然と伸ばした手を、風がすり抜けるように躱して酒場を後にした。

 そうしてナミは、一人では到底手が出せないが能力者の彼となら確実に仕留められる、大きな標的を絞り込んだ。

 

「はぁ~、疲れた―」

 

 部屋に戻ったナミはシャワーを浴びて、バスタオル一枚でベッドの上に倒れ込んだ。ごろりと仰向けに伸びをするとぴったりとしたタオルが引っ張られ、軽く拭いただけのしっとりとした胸の膨らみがはち切れんばかりに強調される。酒場の男たちが連日声をかけても見れなかかった垂涎の光景だ。

 

 ふう、と息を吐いて、テーブルでナミの作った簡単な宿題と睨めっこする彼を一瞥した。たぶんこっちに気付いていないほど集中している。

 すでに出会った時のような瘦せこけた身体ではなく、服は古びているものの身なりは整っていた。

 食費や宿泊費は想定外の出費だったが前の仕事で稼いだ分はある。

 

(それに、こいつを手懐けられると考えれば安いものだわ)

 

 今のところ彼は従順だ。飼い主とペットに似たそれはナミにとって都合が良かった。

 金なんて能力を使えばいくらでも稼ぐ方法はある。それに──

 

(あの能力があればココヤシ村を……)

 

 おそらく救える。が、その前に実戦形式で確実に能力を扱えるか試す必要がある。

 まあ単純に能力を使ったデカい仕事をしたいというのもあった。

 ナミは頭を切り替え、ベッドから起き上がり計画書に目を通す。酒場で港湾作業員や船乗りから集めた情報が事細かにまとめてあった。どうやって手に入れたのかターゲットの一般配置図や航路計画、海流、予測される天候まで。

 あっちこっちと見比べ、計画は練られていく。

 

 よし、とナミは胸の内で呟いた。 

 とりあえず、準備として女物の服が二着必要だった。

 

 

 

 :::

 

 

 

「最後にもう一度おさらいするわよ!」

 

 青空の下、波間に揺れるナミの小舟の上で、彼女は真剣な面持ちだった。

 

「ターゲットの名前はカネカ。税金逃れに港の倉庫に資産を溜め込んでる。で、今回の航行でその資産の一部を試験的に税率の……まあここは省いて、とにかく移送してる。わたしたちは海の上でそれをいただく」

 

 彼は黙ってうなずく。

 

「表向きは運送業者だけど実態は海賊旗を隠してるだけの海賊で、わたしみたいに良いヤツじゃやないから、あんたの掟を使う掟には反さない。わたしとの約束はちゃんと覚えてる?」

「掟を立てる時はナミに聞いてから」

「そ。あんたはまだこの世でその判断がつかないから、間違った方向へ向かないようにわたしが管理してあげる。ただし命の危険がある場合は別ね」

「わかった。でもこの顔に塗ってあるやつは嫌だ」

 

「そお? 我ながら最高に似合ってると思うわよ。そのドレスもね」

 

 いたずらっぽくバッチリとウィンクして自画自賛する。

 彼の顔の傷跡を隠すため舞台用の濃い化粧を施してみたのだが、出来上がってみればそれほど違和感が無い。

 

(素材がいいから誤魔化せると思ってたけど、普通に美人に見えるのがなんかムカつくわね……)

 

 内心でそんな釈然としない小言を言っていると、後方から波を割る音が聞こえてきた。

 

「あ、来たわよ。あのごてごてに装飾された悪趣味な船」

 

 水平線の向こうから現れたのは、成金趣味を絵に描いたような中型の帆船だった。船首には悪趣味な金メッキの胸がデカい女神像が括り付けられており、船体は品のない原色で派手に塗り分けられている。風を受ける帆には、不格好な金貨のマークがこれ見よがしに描かれていた。

 

 ナミはオホンと咳払いをして、先ほどまで彼に見せていた凛とした姿とは打って変わり、いかにもな声色で船に向かって助けを叫んだ。

 

「誰か~助けて~、助けてください~~~っ!」

 

 その隣で、ドレスに身を包んだ彼が、大真面目な顔のまま白いハンカチを懸命にパタパタと振り始めた。

 

 

 

 航行中の客船が海賊に襲われ、二人は辛くも逃げ出す事に成功したが操舵できるわけでもなく、海流と風に身を任せている所をカネカ丸に救助された。

 という設定をカネカは信じた。

 

(事前に女好きの成金って事は知ってたけど、まさかここまで上手くいくとは)

 

 カネカの私室に招かれたナミは、成功した喜びと呆れ半分で部屋を観察する。

 この規模の船にしては広い個人キャビンにはアンティーク家具が並べられ、奥には無駄に大きな天蓋付きベッドが鎮座している。

 事前に愛人が一人同行している事は知っていた。ナミたちを見てもいつもの事なのか特に反応せず、乳首のところにスリットの入った素肌が透けるようなランジェリー姿のまま、シャンパンとクラッカーを楽しんでいる。

 

 恰幅の良いカネカが無遠慮に二人の身体を舐め回すように視線を這わせた。

 

「ところでウ(・)ミ(・)さんと……もう一人のお嬢さんのお名前は?」

「この子は、海賊に襲われた時のショックで記憶が曖昧になっちゃってて」

「おおーそりゃかわいそうに。後で船医に看てもらいなさい。けどまずは腹ごしらえをしなくちゃね、アルコールはイケるか? うん?」

 

 カネカはそう言うと、ナミではなく横に立つ彼の肩にそっと手を回し、テーブルへと促した。

(え? あたしじゃなくて、そっち?)

 

 彼は作り物の胸なのではだけさせるわけにもいかず、身体の傷跡と男の骨格を隠すようなボリュームのある服にし、対照的にナミは露出が大きい。

 万一、いきなり胸を触ってくるような場合に備えてナミが惹き付ける算段だったが……

 

(なんなのこの敗北感)

 

 鼻の下を伸ばしたカネカにキャビアだのなんだのと甲斐甲斐しく勧められる彼に妙な対抗心を覚えるが、今はそんなくだらない感情に付き合う必要は無い。

 アイコンタクトを送る。

 

「もし記憶が戻らなかったら、どうだね、わしが一生面倒を……あの絵が気になるかね?」

 

 壁に掛けられた絵画、その一点のみを見つめる彼にカネカは気付いた。

 

「ええ、とても」

 

 中性的な声色に、カネカはますます興味を持った。

 

「ああ、あれか。アレは西の海の故トーアの初期作でね、手に入れた当時は無名だったが今となっては家が買えるほどの価値がある。この船にはああいった美術的価値のあるものが山ほど積まれているんだ、もし興味があるなら」

「では、そ(・)れ(・)を(・)こ(・)の(・)部(・)屋(・)に(・)持(・)っ(・)て(・)来(・)て(・)。(・)ウ(・)ミ(・)さ(・)ん(・)が(・)同(・)行(・)し(・)て(・)選(・)ん(・)で(・)く(・)れ(・)る(・)。彼女はわたしの好みをよくわかってるみたいだから」

 

 隙あらば自慢チャンスを逃さないカネカは「よし、任せなさい」と二つ返事で立ち上がり、ナミを伴って船内倉庫へと案内を始めた。

 貴重品専用に造られたそこには複数の見張りと厳重に施錠されている。

 

 やたらとしつこく彼の趣味趣向を訪ねてくるカネカを適当に躱しながら、ナミは内心でほくそ笑んだ。

 第三者がいた場合の、不自然な命令を避ける為の会話運びも問題無い。教育の成果だ。

 掟を立てる時は可能な限り対象が一人の状況が望ましく、第三者がいる場合は会話に潜伏させる。これはナミが取り決めた原則だ。

 

 掟は一度に複数人を対象に取れないので、次の相手まで一秒程度、文言によっては数秒のタイムラグが生まれる。その場にいたもう一人が能力者や戦闘経験豊富な者なら、その僅かな隙を突かれて危機的状況に陥る可能性が発生しかねない。

 

 そんな手練れと鉢合わせる状況はそう無いと踏んでいるが、念には念を入れるべきだ。

 今頃彼はその原則を守り、一対一の状況で愛人相手に仲間になれ、と掟を立てているはず。ナミが考えたシンプルな文言で。

 

 倉庫に入ると、丁寧に梱包された大小さまざまな箱が並んでいた。その内の手ごろな一つをおもむろに開けてみる。深いワインレッドのベロア生地で覆われた重厚なジュエリーケースだった。蓋を開けると、妖しくきらめくサファイアをあしらったバングルや精緻な細工が施された銀の指輪が、薄暗い倉庫の中でも眩い輝きを放っている。

 ひと目で本物と分かる一級品だ。

 

「ねぇ、どれでも選んでいいのよね?」

「構わないが、連れのお嬢さんをあまり待たせない程度にな」

「オッケー、じゃあこれとこれと……これもね!」

 

 おそらくナミが色仕掛けをしても、カネカは願いを聞かなかっただろう。いくら美女とはいえ、出会ったばかりの人間の目の前に大事な財宝を並べるほど愚かではない。

 できれば見張りたちの手も借りて大量に運び出したかったが、盗みの鉄則として仕事に関わる人間は少ない方が良い。人間に自由意志が備わっている以上、不確定要素は可能な限り排除しなければふとした事で計画に綻びが生じるものだ。

 

 そうして持ち出された絵画はたった一点だけで、多くは貴金属の類いだった。小さく、持ち運びに困らず、それでいて価値の高い、つまりはまとめて盗み易いものばかり。なんなら札束の詰まったケースまであるが、ナミが選んだのだからカネカはそれに問題があると考えることが出来ない。

 

「ほら、カネカさんもこれ持って!」

 

 カネカにも持たせて、両手いっぱいの箱を手にキャビンに戻り、ドアの前で固まった。閉ざされた扉の向こうから、何やら熱を帯びた、いかがわしい吐息と艶めかしい声が聞こえてくる。

 まさか……と器用に脚でドアを開ける。

 

「なに盛ってんのよ!!」

 

 ナミの目に飛び込んできたのは、乱れたドレス姿の彼の上に跨がり、妖艶に、かつ激しく腰を揺らしている愛人の姿だった。

 箱を持ったまま、愛人の頭に踵を落とす。

 

「いった~~い。なにすんのよ!? 仲間相手に!」

 涙目になりながら、信じられないといった表情で反論する。

 

「こ、これはどういう……お嬢さんにご立派なアレが……」

 状況が飲み込めないカネカが箱をどさどさと落として頭を抱える。

 

 混乱するカネカに、彼は計画どおり掟を立てた。

 

「夜までおれたちを匿い、資産を持たせて逃がせ。この事は秘密にしろ」

 

「わかった……うぅ、っ……あんな美女に、しかもわしより立派なアレが生えてるなんて、わしは……わしはぁっ!?」 

 カネカは血走った目で胸のあたりをぎゅっと押さえつけた。こ、この動悸はいったい!? 

「いやッこれはこれでアリだッ! 逆にお得ッ、お嬢さあぁーん!!」

 

「おまえもどうしたぁ──!!」

 

 彼に駆け寄るカネカにナミの踵が炸裂する。

 

「で、どういうこと。一から説明しなさい」

 

 不機嫌に腕を組んだナミの前で、カネカと愛人が正座している。

 軟らかなソファに座った彼が説明した。

 

 計画通り一対一の状況で掟を立てて仲間にした後、愛人の煽情的な下着姿を見ていたらなんだかチンチンがおっきくなってしまい、それを目ざとく見つけた愛人が食った、という訳だった。

 

「別にいいじゃない」

 正座させられている愛人が、ムスッと不満げに唇を尖らせた。

「あんたの男って訳じゃ無いんでしょ?」

 

「は!? あのねぇ……」

 一蹴したいがなかなか言葉が出てこない。しかし仲間となっているだけに、説明が必要だ。

「あ、あたしたち今、仕事中なんだから! ちょっとは場所と状況を考えなさいよ!」

 

「でもおれ、あれ好きだ」

 横から悪びれなく彼が口を挟む。

 

「そりゃっ……まあ、そうでしょうけど。ていうかいい加減、その……小さくっていうか、なんとかしなさいよ!」

 ナミは顔の赤さを怒りで誤魔化す。

 

 まだいきり立つそれはスカートの下から主張していた。カネカの熱い視線が注がれている。

 愛人の膣から引き抜かれた時の男根が、まだナミの目に焼き付いて離れない。

 風呂場で一度見たはずだが、あの時は救命の為でそんな事を気にしている場合ではなかったし、勃ってなかった。髪もぼさぼさで男として認識してなかった。

 

「一発出さないと苦しいわよねぇ、かわいそー、それでも仲間なの?」

「ぐぅっ、この女……」

 

 ニヤニヤとあからさまに挑発してくる愛人に、鉄拳を食らわせようかと拳を握りしめる。

 

「ハァハァ、ではワシが」

「あんたは一生黙ってなさい!!」

「ぐぇぉっ」

 

 カネカの横っ面が鉄拳を食べた。

 

(やっぱ性教育は必要だったか。いつかはやらないとと思っていたけど、同い年か年上の男相手にそれは気まずいから先延ばしにしていたツケね)

 

 愛人にひとまずの性処理を任せる事に作戦上の問題は無い。

 ただ、ナミは別の問題を危惧していた。

 彼との関係は、たまたま拾って衣食住の面倒を見てやった事に起因する。その事に恩を感じてはいるだろうが、それだけだ。金というビジネスで繋がっているわけでもない。

 

 ペットのような主従関係に近い。そう、ペット。待遇が良ければ飼い主を変える事もありうる。というか、自分なら利益の為に裏切るという指針の下で生きているので、彼が愛人の方になびく危険性は誰よりもわかっていた。

 もし性の虜となり、主人を変え愛人の方の言う事を聞くようになったなら……多大な損失だ。

 

(悪魔の実の能力者よ? それをぽっと出の女に盗られてたまるもんですか!)

 

「わ、わたしがスるから、あんたは引っ込んでなさい」

 

「はぁ、まあエッチは諦めるけどさ。それはそれとして……」

 愛人はつまらなそうに立ち上がると、カネカが床にぶちまけた煌びやかな財宝の山を、赤いペディキュアを塗った足先でツンと指し示した。

「これを盗むんでしょ? わたしの取り分はちゃんとあるんでしょうね?」

 

「はぁ? あるわけ」

 

 無い。

 ナミは言いさし、ハッとして口元に手をやる。

 

(そうか! 仲間になったんだから当然こういう報酬の要求も発生しうる……盲点だったわ!!)

 

 ナミの望んだ、組織の為に働く仲間ではなく。仕事に対して対価を要求するという愛人にとっての仲間の認識で、食い違いが起きてしまった。

 自他の主観によって定義が違う場合、本人の主観が優先されるのだ。

 やはり実戦からしか得られない知見はある。

 

(今回は新たに掟を立てれば解決するけど、土壇場で状況に合わせた要件定義を決めるのはあいつには難しそうね。起こりうる予測よりも何よりも、まだ知らない言葉が多すぎる)

 

 逡巡していると彼が尋ねた。

 

「ナミの穴に入れていいって事?」

「言い方……いや知らないか。しばらくこの二人を船の適当な所で時間潰させて」

 

 掟を立たせ、二人きりになる。

 

「どこから説明したもんかしらね。いい? まずああいった事は、大切な人としかしないの」

「それは……本当?」

 

 彼はナミの事を賢いと思っているが、経験した現実と食い違っている。あの愛人の事は別に大切ではないし、なにより、あの島では……

 

「そう言われると、場合によるけど」

「ナミの事は大切だけど」

「ああ、まあ、いいか、もう」

(他の女になびかなように、がっつり依存させとくか)

 

 ドレスを脱ぐと、形の良い豊満な胸が零れ落ちた。

 

「いい? 気持ち良くなって、チンコから何か出そうになっても穴の中で出さないでよ」

 

 ナミは吹っ切るようにドレスを脱ぎ捨てた。

 あらわになった陽光を跳ね返す健やかな肌は、ほんのりとお日様の温もりを吸い込んだみかんの果実のように瑞々しい。

 荒波を乗り越え、船上を縦横無尽に駆け回るおてんばな日常はキュッと引き締まったくびれとしなやかな脚を育み、しかし対照的に子猫を思わせるような幼さ残る生意気盛りな顔に不釣り合いなデカ乳……海の上で女日照りの海賊どもの視線が釘付けになり、気を許してしまうのも無理はない。

 

 彼女が元気に動くたび弾むような快活さとともに揺れる桃尻は、鷲掴みにしてバックから思い切り突きたくなるほど美しい曲線を描いており、百人に汚された後でも構わないと言う者も多いだろう。

 最後に下着とヒールをベッドの脇に放る。幾人もの鼻息荒いオスの手をすり抜けてきた猫のようにしなやかで躍動感を秘めた肢体は、甘酸っぱい魅力を放っていた。

 最後の恥じらいで、乳首と秘部を手で隠す。

 

「……あんたも脱いでよ。女装してる男とヤる趣味ないし」

 

 ムスッとして言う通りにさせる。

 出会った頃のように瘦せ細っていない。いないが──

 

(しっかし、改めてみるとひどい……全身傷だらけ……こいつも苦労してるのね)

 

 そう思うと、案外仲間意識のようなものが芽生えてこないでもない。お互いの傷を舐め合うような暗い関係はごめんだが、金持ちのボンボンを相手するより遥かにマシだ。

 

(ま、ツラはいいのよね……割り切るかぁ、能力者を失いたくないし)

 

「いい? わたしが上になって動くから。あんたは、えーと、穴に入れたちんちんから何か出そうになったら言いなさい、絶対に外に出してよ! わかった!? 中で出したらコロス!」

 

 あらためてセックスを口にして説明するとなんだか間抜けで滑稽な気がしてナミは恥ずかしくなるが、こいつはたぶん何も知らないので仕方が無い。

 

「わかったわかった」

 

 顔を見られるのが恥ずかして、彼に背を向けて彼に跨り、いきり立つ男根を見下ろした。すでに前の女の愛液であやしく滑り輝いている。

 

(うっ……ほんとにこれ全部入るの?)

 

 とてもではないがナミの目には快楽を与えるモノには見えなかった。槍の返しのようなカリと隆起する血管はさながら拷問器具のように禍禍しく、脈打つさまは背徳的な存在だった。こんなグロテスクなもので貫かれて大丈夫なのか。

 経験は無いがなまじ性知識はあるぶん余計に抵抗がある。が、文句を言っても始まらない。

 

 おそるおそる腰を落とし、にゅちりと亀頭が陰唇にあてがわれる。粘膜が触れ合った。

 覚悟を決めて腰を落とす。

 肉竿が半分ほど飲み込まれ、キツく、じっとりとうねる初々しい膣壁に包まれる。

 

「んっ、うぁっ、っはあ」

 

 ナミが痛みに呻く。結合部からは、生々しい赤い血が滲むように流れた。

 目の端に涙を浮かべながら、それでも強がるように笑みを浮かべる。

 

「幸運に思いなさいよね、わたしみたいな美少女の初めてを奪えるなんて」

 

 そのままゆっくりとたどたどしく腰を上下させる。

 

(んっ、案外、入るものね……)

 

 性交は初めてだったが、自慰くらいは年頃の女性程度に嗜んでいる。なんとなく気持ちいい所へ先っぽを擦り付ける。にゅっこにゅっこと浅く出し入れした。

 次第に滑りが良くなってくると共に、気持ち良さが痛みを上回り出す。

 汗ばんだ柔らかな胸が触れ、乳首がツンと硬さを持ち始めた

 

「ん……っく! はっ、はぁ……んん、ふふっ、どう? あの女より、わたしの方がイイでしょ? あはぁ……はあ」

「いい、ナミの方が気持ちいい」

「んぅっ、あぁっ、わたしのいう事を聞いていれば、もっとご褒美をあげる♡ んっ、はあっ」

(んなわけないけど、いいこね~。首輪はちゃんと付けとかないと)

 

 案外、セックスも大したことない。オナニーでクリトリスを弄っている方が気持ちいい。

 そう思って一息に桃尻を彼の腰に落とす。

 

「ふきゅっ!? ……っは、っは、っは、あぁぅ、っく」

 

 自身を貫く異物感。今まで触れた事の無い奥の奥まで容易に達する肉竿に、一瞬、目を白黒させる。身震いが走った。

 ぷにぷにの子宮口を亀頭が押し上げる。そのまま子宮からじんわりとした快楽が滲み出るようだった。

 また、キツキツの処女マンコにぬるぬるの粘膜で絞られる感覚は、彼にとっても初めてだった。

 ナミは恐る恐る、震える脚腰でチンポをある程度まで引き抜き、再び奥まで咥え込む。何度か繰り返すうちに、ヘコヘコと頼りないが形にはなってきた。

 

 ぺちっ、ぺちっ、と可愛らしく腰を打ち付ける。

 

「はっ、はぁ……んん、おおっんおっ♡ あっあっ、ああぁあん」

(なに、この感覚……)

 

 体験した事の無い感覚がヒリつく。試しに再び浅いところでピストンしてみると、先ほどよりも気持ち良かった。

 あの程度、だと思っていたのは結局、まだ若い女性器はセックスに対して未成熟だったに過ぎず、ようやく快楽の受け取り方を学び始めてきたのだ。

 

 べちっ、べちっ、ばちゅ。

 

 次第に愛液と本気汁が粘質な音を立てた。

 

「あっ、んおぉっ、なにこれっ♡ これっイイ! んひぃいん、あっあっ、ああぁあん♡ っくあぁ、あっ、うぅん♡」

 

 とんっ、とんっ、と小さな子宮口を打ちつけるたび、響くような快楽が脳に直撃する。

 陰茎は引き締まった狭い膣内でプリプリのヒダにシゴかれ、亀頭にはクニクニとした弾力のある感触で何度も口づけされる。

 彼はおもむろに、腰がフラれる度にぷるん♡ ぷるっ♡ と揺れる尻を鷲掴みにした。確かめるように揉み込む。しっとりとした汗ばんだ柔肌は、その見た目通りずっしりとした重さを感じさせた。

 

 ナミは熱い吐息を吐いて甘い刺激に短く震える。

 

「ひゃあっ、おっ♡ んくぁ、ぁあん……っは。お尻、急に触っちゃ、ぁあんっ♡ もうっ、だめぇっ♡」

 

 ダメと言われても、揉むたびに膣が卑猥にうねり、チンポが気持ちいい。

 

「ナミはこれ嫌?」

「嫌っ……じゃ、ないけどぉ……ひああっ、あっあっ、っくぅぅう」

 歯を食いしばる。

 適当にヤって、彼を依存させるつもりがこんなはずではなかった。

 

(なのにっ、腰っ、止まんないッ)

 

 それに、まだこの快楽は育まれている途中な気がした。もっと経験を積めば、もっと気持ちよくなれる予感に満ちていた。

 オナニーも、最初に比べれば今の方が断然じぶんの好みのやり方がるのだから、セックスについてもそうに決まっている。

 

 どちゅっ! どちゅっ! どちゅっ! 

 

 ナミの毛先から汗が滴り落ちる。涎が情けなく糸を作って垂れて来た。結合部からはむわりと性臭が漂い、ベッドが軋む。

 

「んひっ、ひっ、おああっ、わ、わたしもっ、気持ちいッ!! んん、んおっ、おおっヤバっ、硬いのっあっ! 奥っまでぇえ」

「もう、出そう」

「はぁっ、あああんッッ! さ、さっきからイイのが止まらないのぉぉ、だからっ、だからぁあん♡ いま出されたらっ♡ 絶対デキる♡ 待って、もうちょっと、っで、一番気持ちいの来そうなのッッ!!」

 

 言葉とは裏腹に肉ヒダが脈打ち、射精を促す。外出しを許さないかのごとく、膣口がぎゅっと力強く締め付けた。

 

「おっ、おっ、おっ♡ セックス、気持ちいい♡ ああんッ、なんか来るぅ♡ 来ちゃうぅぅうう!」

(ダメよ、絶対に中出しなんかさせたら♡ それだけは絶対に、孕んだらダメなのに♡ 気持ちいいの我慢できない)

 

 バチュ! バチュ! バチュ! ずりゅっんッ! 

 

 本能が膣内射精を望んでいたが、それでもナミの理性は最後の最後で男根を引き抜く。

 カリが膣壁をこそぐように抜き出ると同時に蜜壺と子宮から、留められていた快楽が決壊した。

 

「おんっ、んおぉっ♡ イクっ、っんあぁぁあん! いっぐ、んぁっ! ……っはあっはあぁあ~♡」

 

 初めての潮吹き絶頂に、狂おしいほどの悦楽が心身に深く刻み込まれる。

 

 彼は下腹部に力を込めて限界まで押さえつけていた滾りを放つ。濃厚な精子の群れが太い尿道をせり上がる。

 

 ビュルビュルビュルッッ! 

 

 淫液にまみれた男根はびくびくと震えながら、ナミの白くて丸い火照った尻に特濃の精液がぶっかけた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「んっ♡熱いのが、お尻に……」

(危なかった、こんなの中に出されてたら)

 

 見なくても肌でわかる。ぼたぼたと落ちてくる、重いとさえ感じる精液量。半面、中出しされればどうなってしまうのだろうという危うい誘惑もあった。

 不意にくらりときて彼の胸板に仰向けに倒れる。ぎゅっと抱きしめられるとなんだか心地よい。

 

「わ、わかった? あんたにはわたひがいるんだから、だから、えーと」

 

 まあいいか。とナミはまどろみに身を任せる事にした。

 今はただ、身体の芯から響く快楽と疲労感が心地よいい。

 

 

 

 シャワーを浴び、あとは消化試合といったところ。一般配置図で確認済みだが、この個人キャビンの窓からでもわかる通り、側面には脱出艇が備え付けられている。部屋から直接乗り込めるようになっており、有事の際は一人だけでもいち早く逃げる為のカネカの自己保身的象徴。

 

 だが、その保身の結晶を、今回はナミと彼の二人がそっくりいただくことになる。

 脱出艇とはいえ航海中も快適に過ごせるよう内装はしっかりと設えており、ちょっとした小型船と言ってもいい。

 後はお宝を積み込み、逃走するのに適した海流のある海域までカネカ丸が航行するのを待つだけ。当然、その時の天気も有利に働く。

 

「ナミは先の天気がわかるのか?」

 ふと、ソファに腰掛けた彼が不思議そうに尋ねてきた。

「そ。だいたい肌に触れる空気の湿気や風のうねりで、これから起こる気候の変化が感じ取れるのよ。あとは、これまで積み重ねてきた経験と勘ね。あたしの天気予報は百発百中よ」

 

 ナミは冷蔵庫からスパークリングを取り出し、グラスを二つ用意した。

 

「だから、それまで適当に前祝でもして時間を潰しましょ」

 

 もちろん、逃げる時は飲食料を忘れずに。

 

 

 

 :::

 

 

 

 暗い夜の海を滑るように進む脱出艇の中で、ナミは完全に有頂天になっていた。

 信じられないほどの財宝に札束。一度の仕事での儲けとしては、これまでの人生の最高記録を大幅に更新していた。

 眩しいほどの大きな宝石が台座に収まるジュエリーの数々を両手の指、腕、首、とにかく着けれるだけ着飾り、鏡の前でポーズをとったり彼に見せつける。

 

「どーお? この輝き、いったいいいくらになるのかしら」

「光ってる」

「こういう時は見たままじゃなくて、似合ってるとか、美しいとか、わたしを褒めるもんよ」

 

 呆れながらも笑みをこぼし、ナミは棚から開けたワインをグラスに注ぎ、一気に煽って祝杯を挙げた。

 

「ナミ、掟を使う掟について考えてみた」

「ん、言ってみて」

 

 ワインを喉に流し込むナミに、彼がぽつりと言った。

 

「ナミの事を仲間だと思ってるから使いたくなかったのかも」

「気が合うわね~わたしもあんたの事、大事な仲間だと思ってるわよ」

 

 機嫌よくグラスを呷り、しかし内心その言葉を鼻で笑った

(仲間、ね。勝手にそう思ってくれてるのなら、こっちとしては便利に使えて助かるけど)

 

 今まで何人もの仲間を裏切って来た彼女にとって、その言葉自体は身に染みて薄氷に過ぎた。

「てめえ裏切りやがったな」だとか。「信じたおれがバカだった」だとか。「仲間を置いて逃げやがって」だとか。酒のアテにもならない。

 そんな事より、と満足そうに舌なめずりして五指を広げて嵌められた指輪を眺める。ワインが進む。

 

 ナミは、育った村をアーロン海賊団という魚人たちに支配されているが、一億ベリーと引き換えに解放を約束していたのだ。

 目標金額まであと何回か仕事をしなければならないと思っていたが、今回の分でおつりが出るだろう。それもたっぷりと。

 

(これでココヤシ村を買い戻せる)

 

 いやそれどころか。とグラスを掲げ、彼をその曲面越しに見る。おそらく初めてのアルコールに顔を赤くしてソファでダウンしていた。

 

(……なにもアーロンにバカ正直に一億ベリーなんて大金を払って村を買い取る必要、ないんじゃない?)

 

 いつもの利己的な思考がアルコールで加速する。

 

(こいつを使ってアーロンを消せば、今まで血の滲むような思いをして集めてきたお金は全部わたしのモノに出来る!)

 

 どんな方法が考えられるだろう。なるべく安全で高い効果が期待でき、失敗してもじぶんには火の粉が掛からない案。

 

 彼とアーロンを対面させて掟で殺させるのは安直だ。

 仲間になれと命じても、アーロンの主観で人間の仲間を魚人と対等に扱うとは思えないし、仲間だから絶対に裏切らないという観念の持ち主ではない可能性もある。

 それにアーロンの周りには常に仲間がいる。自死を命じてその通りになる事が起きれば、その場で全員を一度に始末しない限り、彼を引き合わせた自分が裏切り者として殺されるかも。

 

 となると海軍を使うのが妥当に思える。失敗してもリスクが無い。

 コノミ諸島という僻地ゆえなかなか海軍が来ないが、彼を使えば容易に動かせるだろう。

 

 ただ、アーロンを倒せるほどの戦力を動かさなければ意味が無いので、どこか大きな街で警邏中の下っ端に命令し、上司に引き合わせる。そしてそのまた上司に、といった具合である程度の役職に辿り着き、最後にアーロン討伐を命じさせればよい。

 

(アイツ一人にやらせれば私の安全も担保されるし、仮に海軍が失敗した時は一億ベリーを払えばいい)

 

 ただ、この計画には一つ問題がある。

 いきなり僻地に大軍を動かした不自然さは軍内部で疑問に思う者も出るだろう。命令は必ず遂行されるので問題無いが、事後の調査で彼が不自然な軍事的判断の介入人物として挙げられるに違いない。

 水に漬ければ能力者とすぐにバレるだろうし、海軍高官に能力を使ったとあれば犯罪者として重く処罰されるだろう。

 

(悪事に使ったわけじゃないし、死罪は無いだろうけど)

 

 彼は海賊ではないし、悪人でもない。これまで同じように、裏切ってしかるべき相手ではなかった。

 

(わたしには夢がある……ココヤシ村を救って、自分の目で見た世界の海図を描く。このお金があればその為の資金として……)

 

 拳を握りしめる。硬く冷たい金属の感触が皮膚に突き刺さる。

 ナミにとって仲間とは海賊から財宝を盗むために偽る関係性の事で、常に裏切りで終わらせてきた。

 しかし初めて彼という海賊ではない存在から仲間と呼ばれた事に、どう終わらせてよいかわからないでいた。

 相手が海賊だから裏切る。では海賊ではない相手に対しては? 

 

 グラスの残りを一気に干して、小さく息を吐いて呟いた。

 

「ねえ……あんたに夢はある?」

 

 彼にそんなものは無いだろうという事は、わかりきっていた。せいぜい毎日の食事ていどだろう。

 それは免罪符だった。自分には夢を叶える大義があり、その為に犠牲を払うのだという。程度の低い夢なら、踏み台になってよ、という。

 

 今までだって何人も裏切って来た。それと何が違う? 案外、牢屋の生活は彼にとって幸せなのではないか? 

 食事が出て、適度に清潔で、出会った時のように痩せこける事も無い。

 

 手に入れた大金は、人を惑わせるのに十分過ぎる金額だった。

 

 ウトウトした彼が、うっすらを目を開けてナミを眺める。

 

「なんでそんな事聞くんだ?」

 

 胸の内を見透かされた気がして、ナミは固唾を飲んだ。

 

「夢って、寝てる時によく見る苦しいやつだろ? 好きじゃない」

 

 彼には悪夢しかない。

 言葉が出なかった。いや、なんとか捻り出す。

 

「違うわ。生きてる先で、なにかしたい事とか、頑張りたい事とか、願いとかよ。願いってわかる?」

 

「願いはわからないけど、したい事ならわかる、もう終わった。ナミと会えて、違う場所に行けた。外が違うってわかった……けど」

「けど?」

「今はもっといろんな場所に行きたい、もっといろんな人間に会ってみたい。これって新しい夢?」

 

 少しだけ期待を込めるように、ナミを見つめた。

 ナミは黙って頷いた。しばらくして、急に興味が薄れたように指輪を外していく。それはもはや、人を惑わす妖しい輝きを失っていた。

 

「モア」

「?」

「あんたの名前。考えといてって言ってたでしょ? もっと多くの、って意味。モアがもっといろんな場所に行けて、もっと色んな人に会えますようにって」

「ありがとう。いいと思う」

 

「嫌って言ったら一億ベリーになってたから」

「意味がわからない」

 

 ナミは、彼をココヤシ村の問題に関わらせるのはやめた。

 これはじぶん一人でケリを付けるべきで、わざわざ新しく夢を見つけたばかりの無関係な男を、そんな危険に晒す必要は無いから。

 外していった宝飾品を静かに箱へ戻しながら、ナミは心の中で、誰にともなくそう強く誓っていた。

 

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