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クイーンとなった綾瀬千早だが、その後の道行きは決して盤石なものではない。
大学入学後に入部したチアのサークルでの活動や学業に身を削られ、多忙の日々を過ごす中で千早からは心のゆとりが失せていく。クイーンの座を失うことを恐れた千早はイカサマに手を染めてしまった。
はじめは不安に思いながら始めたイカサマだが、バレる気配はない。試合を重ねるにつれ、千早の手口は大胆になっていく。
本来の実力にイカサマが合わされば千早は無敵。クイーンとしての勇名を馳せる千早は、その日も快勝を収めて会場を後にし――歩きだそうとしたところを、見知らぬ男に呼び止められた。
「綾瀬千早さんですね?」
「? はい……」
今日は行きも帰りも和装、袴の裾を揺らして立ち止まった千早は、男の顔を見て首を傾げた。
痩せぎすな男は真っ黒なスーツを纏っている。にこやかに目を細めた笑顔は一見すると友好的だが、よく見れば瞳は笑っていない。取材に来たメディア関係者かとも思ったが、そうではないと直感して千早は微かに身を引いた。
(この人、なんか……)
身を固くする千早を前に、男は気にした風もなく千早に近づく。
「突然すみませんね、私は九鬼クキと言いまして……先ほどの試合、拝見しました。いやぁ素晴らしい。女王になってからというもの負け知らずの成績、実にお見事です」
「あ、ありがとう……ございます」
白々しい褒め言葉に、千早は戸惑いながらも頭を下げる。
九鬼と名乗った男はさらに踏み込むと、そっと囁きかける。
「――イカサマでしょう? あれ」
「な……!!」
耳に言葉が届いた瞬間青ざめた千早は、取り繕うことも出来ない。
誰にも気付かれていないと思っていた不正を暴かれて、足元の地面が砕け散るような気分に陥る。途端に勝利の火照りは失せて、千早の指先は凍りついたように冷えきってしまう。
「大丈夫、誰にも話していませんよ。今はまだ……ね」
そんな千早の不安を煽るように囁く九鬼は、とあるビルへ来るよう千早に告げる。
イカサマを知られたショックに何も考えられないまま、千早は九鬼の後を追う――。
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九鬼に連れてこられた先は、雑居ビルの上階にある事務所だった。
机と椅子と応接室が揃う室内はごく普通のオフィスのようだが、部屋には木彫りの虎の置物や刀が飾られ、明らかにカタギのものではない。千早が警戒しつつも革張りのソファに腰を下ろすと、九鬼は何も言わずにテレビを点けた。
『――綾瀬選手、クイーンの座は揺るぎませんでしたね!』
「……っ……!!」
テレビからは、アナウンサーの声とともに先ほどの試合の様子が流れている。
強敵を前にも物怖じせずかるたを取り、勝利を収める千早――だが、その勝利はかりそめのものだ。
「テレビでも引っ張りだこのクイーン、大人気ですよねえ」
「……」
人気――と強調された言葉に、千早は何も言えずうつむく。
「そんなクイーンがイカサマをしたとあっちゃあ、かるた連盟は大変なことだ。かるたの人気もクイーンの人気も落ちて、みんな手のひらを返したように居なくなるだろうね」
「や……」
絞り出した千早の一音は震えていた。
「やめ、……やだ……」
敗北ひとつで、周囲がどれほど心無い声をぶつけるかは分かっている。
しかも、イカサマをしたと知られた上で負けてしまえば――これまでに見てきた何よりも苦しいことが起きると分かって、千早の震えは止まらない。
「まァ落ち着いてくださいよ。俺らだって、クイーンのこれからの活躍は見ていたいんです」
ただ、と九鬼が言葉を区切った時、事務所の奥から男たちが現れた。
顔に傷の入った者、スーツを着ていても分かるほどびっしりと入れ墨を彫った者など、彼らは堅気ではなさそうだ。袴姿の千早を見ても彼らは驚きもせず、無言で千早の周囲を取り囲む。
「っ!」
「そうは言っても、イカサマを見ちまったモンですから。落とし前は着けて貰わにゃイカンのですな」
「お……落とし前……?」
眉を寄せて尋ねる千早に、九鬼は一枚の書面を差し出す。
千早がその文書を読むより早く、九鬼は端的に告げる。
「千早さんがウチで働いてくれるなら、イカサマの件を黙っていても良いですよ」
「……!!」
遅れて書類を読み終えた千早は、弾かれたように九鬼の顔を見る。
『いかなる事由においても服従する』といった文言が躍るこの書類は、彼らに絶対服従を誓うためのもの。ここにサインすれば、千早は奴隷同然の扱いを受けることになるだろう。
「さ、サインを――もちろん強制はしませんよ」
にこやかにペンを差し出す九鬼とは対照的に、千早を囲む若い衆は千早との距離を詰める。
ソファの両隣に座る男はシャツの袖をめくって入れ墨を見せびらかしながら、小刀の手入れを始める。テーブルにスマートフォンを置けば誰かをリンチしている映像が千早にも見えて、彼らは無言のまま千早を脅しつける。
(……やだ……)
逃げたくとも、ソファの後ろにも若手がいて身動きは取れない。
イカサマの件を伏せたいから、誰かに助けを求めることも不可能――ためらう千早だが、結局はペンを取り、その書類にサインをするしかない。
「良し、契約成立だ」
千早がサインをするや否や、九鬼はどかっとソファに座り直す。
「おう、千早。今からテメェは俺らの奴隷だ」
「……!」
先ほどまでは敬語を使っていた九鬼だが、契約成立と見るや千早を呼び捨てにする。千早に向けて顎をしゃくった九鬼は、奴隷となった哀れなクイーンに命令を下した。
「服を全部脱げ。全裸で土下座して、俺らに忠誠を誓って貰うぜ」
「っえ、……な……!?」
急な命令に、千早は目を剥いて戸惑うばかり。
ヤクザに服従するハメになったのだ、非常識な命令が下される可能性は考えていた――だとしても、一発目からそんな指示が下るとは思っていなかったから、千早は戸惑いに周囲の男を見回すばかり。
確かめるまでもなく、千早の周囲に味方はいない。男どもはニヤニヤと千早を眺め、奴隷となった彼女が服を脱ぐのを今か今かと待ち受けている。
冷や汗が伝う。
なんとかして、この場を切り抜けなければ――その糸口を探るために、千早は必死に唇を動かす。
「待って……ください。あの――」
「早くしろッ!」
「っ!!」
怒号が千早を遮った。
恐怖に竦んだ身体が、今度こそ言うことを聞かない。紙のように顔を白くしたまま動かなくなった千早に、獰猛な本性をあらわにした九鬼は改めて命じる。
「服を、全部、脱げ」
「……はい……」
命令を遂行するためならば、身体は動いた。
袴を解き、帯を外す。
帯の下でウエストを締めていた伊達締めを外せば、着物の襟元が緩む。周囲の若手たちが本能のままに千早の胸元を覗き込もうとすると千早の手は止まりかけるが、九鬼がジロリと一瞥すると、再び手は動きだす。
コーリンベルトが外れ、ハラリと着物の前がほどける――沙綾の着物がソファに落ちて、今の千早は襦袢姿。
「着物ってのはゴチャゴチャ着込むんだよな。おら、さっさと全部脱げ」
「っは……い、……」
横柄な命令によって、そこから先は早かった。
襦袢を外し、和装用のインナーが床に落ちる。ソファと足元に散らばる布は洋装よりも段違いに多く、それらは全て若い衆に回収され、千早の手元には残らない。
「イイ乳してんじゃねえか。パンツ脱いで、ケツも見せてみろよ」
とうとう、千早に残されたのはショーツ一枚だけ。
和装用ショーツは白い綿で、ヒップ全体を包むもの。年齢の割に色気の薄い下着を男たちに囃されながら、千早は最後の布も下ろしていく。
「うわっ……」
そして全裸になった千早に、軽蔑の声が向けられる。
「ケツ毛濃くね……?」
「っ……!」
後ろからの声が、千早の顔を茹で上がらせた。
千早の陰毛は濃く、髪の毛よりも濃い焦げ茶色のチリ毛が股間全体を覆っている。
かるたの訓練や大学の授業などで忙しい千早はアンダーヘアの処理をする時間もなく、自然なままの放埒な毛は端正な顔に不似合いなほど。
乳房も秘部もあらわにした千早に、九鬼は次の命令を下す。
「そこに土下座しろ」
「……はい……」
服を脱ぎ捨てた千早は無力にうなずくと、九鬼が指した床に膝をつく。
「っぁ、……は……っ……」
膝をつく正座は慣れているはずなのに、千早の裸身はうまく動かない。
やっと正座をした千早は、床に手をついて、上体ごと頭を下げる。
「……っ……」
長い髪が垂れて、床に広がる。
伏せた姿勢になれば、背中から臀部にかけてのラインの美しさが際立つ――なぞるように視線を臀部に向けた九鬼はソファから立ち上がると、千早の尻の方に回り込む。
「ふっ……すごい毛だ」
そして、千早の尻割れから覗く陰毛に失笑を漏らした。
土下座をすれば、尻毛の豊かさははっきり分かる。放埒な陰毛のせいで肛門はほとんど覆い隠されていて、視線をずらせば豊かな毛の奥に貞淑な女の割れ目がある。
「これじゃ、クイーンじゃなくてケツ毛女って呼んだ方が良さそうだな」
「ううっ……!」
嘲りの言葉に身を震わせると、ふさふさと陰毛が揺れてますます惨め。
それでも土下座の姿勢を崩さない千早に、九鬼は「おい」と呼びかける。