※この作品はR-18です。

先輩の奴隷を貸してもらった   作:dddddddd

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01.藍さん

 先輩から連絡があったのは、高校二年のゴールデンウィークが明けた頃のことだった。

 

 先輩は去年まで僕と同じ高校に通っていた。僕が一年の時、先輩が三年。同じサッカー部の先輩後輩の関係だった。

 

 先輩は普段は無口で近寄りがたい雰囲気を醸し出していたから、後輩たちと仲良くしている姿を見かけたことはない。同学年の部員と話したときも、「あの先輩、何か怖いんだよな」、「そうそう、分かる」。そんな意見ばかりだった。

 

 だけど、僕はいつもそんな話を聞くたびに不思議に思っていた。先輩は話しかければ普通に返してくれたし、熱心に技術指導もしてくれた。何となく馬が合ったのだろう。

 

 先輩も同じように感じてくれていたようで、何かにつけて僕の面倒を見てくれた。一年の秋に僕がメンバー入りしたのも、先輩の口添えがあったとかなかったとか。

 

 そんな先輩だったが、卒業後は連絡を取る機会もなく、疎遠になったと思っていた。そんな時に来た、食事の誘い。僕は迷わず快諾した。

 

 

 

 

 

 夜の19時、約束の時間に僕は約束の居酒屋に到着した。学生が待ち合わせに使うにしてはやや高そうな店に見えたが、先輩の指定なら仕方がない。店員に案内されて、個室へと足を踏み入れる。

 

 個室の中は意外に広い、畳の和室だった。正面に座っていた先輩が僕を見て笑顔で手を振っている。

 

「よう、小森。久しぶりだな」

「お久しぶりです、先輩」

 

 そう言いながら、僕はテーブルを挟んで向かい側の座布団に腰を下ろした。

 

「どうだ、最近のサッカー部は」

「ぼちぼちですね。メンバーに入って、少しずつですけど試合にも出れるようになりました」

「おう、そりゃよかった」

 

 先輩は嬉しそうに手元の飲み物をあおった。色的にウーロン茶だと思う。……多分。

 

 先輩はまだ大学一年生でまだ二十歳にはなっていない。その顔は少しだけ赤い気もしたが、店の照明のせいだと思いたい。

 

 先輩はメニュー表を僕の方に差し出してきた。

 

「何飲む? 食事は適当に頼もうと思うけど」

「そうですね……」

 

 僕はメニュー表に目を落としながらも、気が気でなかった。

 

 なぜなら、個室にいたのは僕と先輩の二人だけじゃなかったからだ。

 

 その女性は、先輩の隣に正座で座っていた。歳は先輩と同じくらい……だと思う。女性の年齢にはあまり自信がない。

 

 とにかく、とびきり美人だ。黒髪ショートカットで、パッチリとした二重まぶた。半袖Tシャツにホットパンツというラフな格好で、むき出しの手足が眩しい。

 

 そして何より、その胸だ。Tシャツを押し上げるそのふくらみは、今までに見たことがない大きさだ。コミュ障のせいで顔を直視できないことも相まって、自然と視線が落ちて、その巨乳へと吸い込まれてしまう。

 

 どう切り出すべきか迷っていた僕を助けるように、ちょうど店員が注文を取りにやってきた。

 

「いかがいたしますか?」

「えっと……ウーロン茶で」

 

 店員が下がっていく。

 

 僕はついに覚悟を決めて先輩に向き直った。いつまでも目をそらし続けるわけにはいかない。目をそらした先には巨乳があるのだから、なおさらだ。

 

「先輩、そちらの方は……?」

「ああ、こいつのことは気にしなくていいぞ」

 

 先輩はそう言うが、それで納得できるほど僕は単純ではない。

 

「気にしなくていいって言われても、気になっちゃいますよ」

「それもそうか。まあ、後でちゃんと説明するよ」

 

 そのタイミングで、料理がやってきた。僕たちは一時会話を中断する。

 

 先輩が頼んでくれた料理はかなりの品数だった。鶏のから揚げにポテトフライ、焼き鳥に餃子。高校生男子が好きなもののオンパレードだ。

 

「今日は俺のおごりだ。好きなだけ食べてくれ」

「ありがとうございます!」

 

 運動部の上下関係を経験済みの僕は、こういうときは素直に甘えたほうがいいことをよく知っていた。今日は速めに切り上げてきたとはいえサッカー部の練習後だ。腹はバッチリ空いている。

 

 僕は目の前のごちそうにがっついた。

 

 

 

 

 

 

 僕と先輩は、他愛もない話をしながら食事を楽しんだ。

 

 やがてテーブルの上の皿のほとんどが空になり、店員が皿を下げていく。テーブルの上が綺麗に片付き、二人分のウーロン茶のグラスだけが残された。

 

 先輩はテーブルに肘をつき、僕を見てニヤリと笑った。

 

「じゃあ、こいつ――藍について、知りたいんだったな?」

 

 先輩はそう言いながら、藍と呼ばれた女性を指で示した。

 

「は、はい」

 

 僕は緊張の面持ちで頷いた。

 

 食事中、藍さんは甲斐甲斐しく動いていた。皿が空になると率先してテーブルの脇に片付け、僕のグラスが空になる直前には必ず、「お飲み物はどうしますか」と聞いてくれる。常に笑顔で、僕と先輩の会話を楽しそうに聞いていた。

 

 お陰で僕は食事と先輩との会話に集中できたわけだが、藍さんは一口も食事に手を付けない。僕は気になって食事を勧めてみたのだが、きっぱりと固辞されてしまった。先輩にも「余計なことは言わなくていい」と怒られてしまった。

 

 僕は若干の居心地の悪さを感じつつ、すぐに別の話に切り替えて食事に集中したのだった。

 

 おそらくは、大学に入ってからできた彼女さんなのだろう。しかし、そうだとして僕との食事に連れてきた意味は? このぞんざいな扱いは? 疑問は尽きない。

 

 先輩は困った表情の僕を見て、笑みを浮かべながら言った。

 

「こいつは、俺の奴隷なんだ」

 

 僕は、先輩の言っている意味が分からなかった。聞き間違いかと思って聞き直す。

 

「彼女さんじゃなくて、ですか?」

「ああ、奴隷。分かるか? ご主人様の言うことならなんでも聞く、あの奴隷だ」

 

 僕は信じられない想いで藍さんに視線を送った。藍さんは、変わらず微笑んでいる。どう見ても、無理やり言うことを聞かされているといった様子はない。

 

 正直に言って、高校時代の先輩には女っ気は一切なかった。実際、彼女はいなかったはずだ。それが急にこんな美人を連れてきて、奴隷だなんて。

 

 僕はどうにか自分を納得させようと頭を回した。

 

 そうだ、先輩は奴隷と言っているが、召使いとかそういう類なんだろう。どうりで、これまで細々した雑用みたいなことをやっているわけだ。

 

 僕は先輩に尋ねた。

 

「奴隷と言っても、あれですよね。召使いとか、そういう細かいことをやるお手伝いさんみたいな」

「いや? お前が想像しているような奴隷だよ。こいつ、ここで服を脱げって言ったら脱ぐぜ」

 

 僕は絶句した。先輩は何を言っているんだ。そんな物言いをしては、さすがに藍さんも怒るはずだ。

 

 そう思って藍さんを見ると、藍さんはTシャツをたくし上げようとしていた。キュッとしまったお腹とおへそが丸見えだ。

 

「ちょ、ちょっと待った」

 

 僕は慌てて藍さんを止めた。藍さんは不思議そうな表情で僕を見ている。

 

 それを見て、先輩はガハハと豪快に笑った。

 

「確かに、人様の店でストリップはまずいよな!」

「そういう問題ではなくてですね……」

 

 僕は冷や汗をかきながら先輩をなだめつつ、再び藍さんに視線を送った。

 

 藍さんは、間違いなく僕が人生で出会った中で一番の美人だ。クラスメートはもちろん、テレビで見た芸能人にも、こんな美人はいなかった。

 

 それに、ものすごく気が利く上に余計な言動も一切ない。きっと頭もすごく良いのだと思う。

 

 さらに、びっくりするほどの巨乳だ。それでいてウエストは細い。今までずっと座ったままだけど、立ち上がったらものすごくスタイルも良いはずだ。

 

 そんな美女が先輩の奴隷とは、にわかには信じがたい。こう言っては何だが、先輩は決してイケメンではない。ブサイクでもないが、サッカーが上手いフツメンである。

 

 困り果てた表情の僕を見て、先輩は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

「まだ疑ってるな。だったら……」

 

 先輩はそう言いながら、藍さんのことをまっすぐに指差した。

 

「こいつのこと、今日一晩貸してやるよ」

「え……」

 

 さらなる爆弾発言に、僕はまたしても絶句した。そんな僕に構わず、先輩はどんどん話を進めていく。

 

「藍、今日は小森の家に行け。その間は、小森をご主人様だと思って接するんだ」

「はい、承知しました」

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

 僕は何とか言葉を絞り出した。分かりやすく頭を抱えている僕を見て、先輩は首をかしげた。

 

「なんだ、嫌なのか?」

 

 そう問われると困ってしまう。

 

「い……やじゃ、ないですけど……」

「だったら、いいじゃねえか」

 

 先輩は軽く笑い飛ばす。でも、ここで簡単に受け入れたらなにか、バチが当たりそうな気がする。

 

「いきなりそんなこと言われても、僕は実家暮らしですよ? 急に誰かを呼ぶなんて」

「そうか。難しいか?」

 

 そう聞かれて僕は、思い出したくない事実を思い出さないわけにはいかなかった。

 

「た、たまたま、両親は二人とも海外出張中で、明後日まで帰ってこないですけど」

 

 僕の両親は、どちらもバリバリの仕事人間だった。国内・海外問わず全国を飛び回る毎日で、家を空けることも少なくない。そんな両親が揃ってアメリカに出発したのが、ちょうど昨日のことだった。

 

「なら、むしろ今日しかないってことか。運がよかったな!」

「そ、そうなんですかね……?」

 

 僕は、逃げ場がなくなっていくのをひしひしと感じていた。先輩は嬉しそうに僕の肩を叩き、藍さんは僕に向かって丁寧に三つ指をつき、頭を下げている。

 

「じゃあ今日一日、藍のことをよろしくな! 好きなように命令して構わないからな」

「は、はい……」

 

 僕はもう苦い表情で頷くしかなかった。

 

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