店を出ると、先輩はさっさと帰ってしまった。店の前に、僕と藍さんが残される。
僕は藍さんに視線を送るが、藍さんは僕を見て微笑むばかりだ。僕の方から何か言い出さないことには始まらないようだ。
「で、では、僕の家に行きましょうか……?」
「はい」
藍さんは素直に頷いた。
僕の家までは歩いて10分ほどの距離だった。僕と藍さんは、夜の道を二人並んで歩く。
藍さんは黙って僕についてくる。何か話さないと、気まずくて仕方がない。僕は必死で話題を探した。
「藍さんは――」
「ご主人様」
やっとの思いで切り出したが、藍さんにすぐさま止められた。
「私は、ご主人様の奴隷です。さん付けは不要です」
「えっと……」
僕は困惑した。そんなこと言われても困ってしまう。藍さんはおそらく僕より年上だし、僕は先輩から藍さんを貸してもらっているだけの立場だ。そんなに偉そうにはできない。
そんなことを考えていたら、藍さんが助け舟を出してくれた。
「ご主人様の好きなようにお呼びください。ゴミでも、ブタでも、肉便器でも」
「ちょ、ちょっと待って」
全然助け舟じゃなかった。僕は慌てて話を遮った。
そこまで大きい声で話していたわけではなかったけれど、街中で言っていい単語じゃない。僕は悩みに悩んだ末、何とか言葉を絞り出した。
「じゃあ、藍、でいいかな」
「はい」
藍はニコリと笑い、そして頷いた。
さっき話しかけようと思った内容は、もう忘れてしまった。それに、深く考えずに話しかけたら、また怪しい方向に脱線しかねない。
僕は結局、無言のまま歩き続けることにした。
自宅へと到着した。扉を開き、藍を中へと迎え入れる。
「ど、どうぞ……」
「お邪魔します」
僕は先に靴を脱いで、中に上がった。ひとまず、リビングに案内すればいいか。そう思って玄関の方に振り返る。
「じゃあ藍、とりあえずこちらに……」
そこまで言いかけて、僕は固まった。藍は玄関で靴も脱がずに、Tシャツを脱いでいた。
ピンクのブラジャーがむき出しになっている。そして、その中に包まれる胸は、びっくりするほど大きい。と、そんなことを気にしている場合ではなかった。
「な、なにやってるの!?」
「え?」
藍は本気で何を言っているのか分からないというように、目を丸くした。
「家の中では、服を着てはいけないというルールですので」
「な……」
なんだそれ。僕は心の中で頭を抱えた。先輩、なんてルールを作っているんだ。
脳内で先輩に抗議しつつも、僕の目は藍の身体に吸い寄せられていた。帰宅途中にも思ったが、やはり藍はスタイルがいい。そして、僕の前でブラジャーを晒しても、恥ずかしがる様子はまったくない。
というか、これで終わりじゃないんだよな。僕は藍の言葉を思い起こす。服を着てはいけないということは、そのブラジャーすらも身に着けてはならないということで……。
僕の中の天使と悪魔が闘っている。今日出会ったばかりの女の子に服を脱げだなんて、そんなことが許されるはずはない。常識的に考えれば、ここは遠慮するのが大人の対応だ。
だけど、先輩はなんでも命令していいと言っていたし、藍もこの通りやる気満々だ。こんなチャンス、僕の人生で二度と訪れないかもしれない。
……結局、僕は誘惑には勝てなかった。
「じゃあ、脱いでもらおうかな」
「はい、分かりました」
僕はたっぷり悩んでなんとか口に出せたというのに、藍はすぐに頷き、ホットパンツに手をかける。
躊躇することなくスルスルとホットパンツを足元に下ろす。靴が邪魔なので、藍は靴を脱いでそのまま靴の上に立った。服を脱ぐまで家には上がらないという、強い意志を感じる。
藍はホットパンツを脱ぎ去り、続けて靴下も脱いだ。もうブラジャーとパンティーしか身に着けていない。思わず息を呑んだ次の瞬間には、藍はブラジャーのホックを外していた。
目の前の光景をゆっくり楽しむ暇も与えてくれない。藍は一切の恥じらいもなくブラジャーを外した。立派な巨乳がはじけるように飛び出してきた。
藍は前かがみになり、パンティーを一気に下ろす。重力に負けてプルンと垂れ下がった胸の奥に、黒い茂みが顔を覗かせる。
藍はパンティーを足から抜くと、来ていた服を小さくたたんで靴の上に置く。そして、藍はその身一つで家に上がった。
「お邪魔します」
あっという間の早業だった。藍は、生まれたままの姿で僕の目の前に立っていた。
僕は、何と言ったらいいのか分からなかった。目の前に裸の女性が立っているのだから、感想の一つくらいはあるはずなのだが、あまりの出来事に頭が混乱している。
「えーと、僕の部屋に行こうか……」
頭が回らないまま、僕は藍を二階の自分の部屋へと案内することにした。