今年に入ってもう何度目かの真夏の日。今日は午前8時の段階で30度に近づいている。天気予報のによると、この調子でいけば、真夏日最多記録更新は堅いらしい。そりゃそうだ。
日木国から季節がなくなって、もう100年。朝っぱらから真夏日だと知ってしまうと、なんだか引きこもりたくなってしまう。ただでさえ今日は転校初日なのに……
僕ちんこと、本名滝太郎(氏 滝 名 太郎)は、箱満学園の校門前で立ち止まり、首を回した。燦々とした輝きが目を刺す。泣きてぇ……いや!何事も初めが肝心!太陽に祝福された最高の転校日和だぜ!父親の都合で、この街に越してきた。転校は何度も経験してきたが、この新鮮な気持ちは嫌いじゃないぜ。
「やったるぜ!」
ガッツポーズで太陽を見上げた時、何かの影が横切った。あれはなんだ?鳥か?飛行機か?いいや、スーパーマンだ!
雲一つない青空を背に、校舎へ向かって飛んでいく。太郎は口をあんぐりとあけ、その影を目で追いかけた。人影に見えたけど、そんなわけがない。それでも、心臓だけはバクバク音を鳴らしていた。
新しいクラスは2-A。
自己紹介を済ませ、教師に指示された席に着くと、隣の席の男子生徒が話しかけてきた。爽やかな笑顔のグッドルッキングガイだ。
「こんちゃー、オレは村野小茶。よろでーす」
「よろー、スーパーマンを見た男。滝太郎でーす」
「ラッキーだね、しゃっぱなに見たんだ」
村野は幸運を讃えるように、勢いよくサムズアップをかました。
「見たんだって、なんか知ってんの?」
「知ってるよん。超戦士だよ」
村野はなんでもないことのように答えた。
「この学園には、地球のために活躍する。超美人の超能力戦士がいんのよ。オレは取材するために捜してんだけど、結果はお察しで……」
勝手に落ち込んでいる村野はほっとくとして、太郎は今朝の出来事に思い耽る。スーパーウーマンだったのか!あのとき、ドキがムネムネしたのは、雄の健全な本能?はしたないあのシルエットは(よく見えなかったけど)ボンキュッボン姉貴?太郎はくだらない妄想に口元が緩みそうになる。
「太郎さんや、放課後ひま?」
「ああ、荷ほどきぐらいだな、やることっつっても」
「わりっ、そりゃそうだな。んじゃあ、また今度遊ぼうぜん」
村野は愛想笑いを浮かべて提案を引き下げた。
別に良かったんだけどな、引っ越しに離れてるし。
この時点では、自分がその超戦士と、深く関わっていくとは、思いもよらなかったのだが……