草戦車道始めました❤️ガールズ&パンツァー アナザーストーリー 作:みなぽん
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大洗女子の奇跡の優勝から10数年後の世界線のお話です。
戦車道のワールドカップの誘致にむけて、政府は官民一体の振興策を検討。
自由に楽しめる草戦車道が全国に普及した。
主婦として戦車道を楽しむもの
傷だらけの青春を戦車で疾走するもの
戦車を己が肉体を武器に倒そうとするもの
地下闘技場の戦車グラディエーターとして生きるもの
そしてガールズ&パンツァー、往年の名選手❤️たちもちょこちょこ顔を出す
そんな戦車道エロストーリーです。
日曜日の午後、綾瀬朋花 32歳 はスーパーの帰り道だった。
右手には買い物袋。左手には、幼稚園から帰ってきた五歳の息子、悠真の手。
九月も終わりに近づいているというのに、昼間の日差しはまだ夏の名残を残していた。河川敷へ続く土手の上にはススキが揺れ、その向こうでは、休日を楽しむ家族連れがシートを広げている。
「ママ、今日カレー?」
「うん。悠真の好きなカレー。お肉も安かったからね」
「やった!」
悠真が小さく跳ねる。
朋花は笑いながら、その手を握り直した。
夫の智也は、今日は休日出勤だった。
朝、眠そうな顔で「悪いな」と言いながら出ていった夫を見送ったあと、朋花は洗濯機を二回回し、布団を干し、掃除機をかけ、息子に朝ご飯を食べさせ、幼稚園へ送り出して、それから買い物に出た。
特別な一日ではない。
どこにでもある、主婦の休日だった。
だからこそ、その音を聞いたとき、朋花は足を止めた。
――ドンッ。
遠くで、腹の底を震わせるような音がした。
「……え?」
悠真も顔を上げる。
もう一度。
――ドンッ!
今度ははっきり聞こえた。
砲声。
朋花の胸が、不意に大きく跳ねた。
「ママ?」
「ごめん、悠真。ちょっと見てみよう」
土手を下りていく。
河川敷の広い空き地。その先に、何台かの装甲車両が見えた。
最初は自衛隊か何かのイベントかと思った。
しかし、違う。
そこにいたのは、戦車だった。
古びた車体。
ところどころ塗装が剥げ、泥で汚れている。
砲塔にはスポンサーのステッカーが貼られている。
「うわ……」
朋花の口から、思わず声が漏れた。
戦車。
間違いない。
戦車道の戦車だった。
ただし、テレビで見る全国大会の戦車とはまるで違う。
立派な学園艦のグラウンドでもなければ、整備された試合場でもない。
河原の空き地。
観客席は折り畳み椅子。
その横には簡易テントが張られ、焼きそばやフランクフルトを売る屋台まで出ている。
そして中央には、小さな看板。
『第38回 多摩川草戦車道交流戦』
「草……戦車道?」
朋花は思わず読み上げた。
隣にいた若い男が笑った。
「お姉さん、初めてですか?」
「え?」
「これ、草戦車道ですよ。公式戦じゃない戦車道。誰でも参加できるんです」
男は楽しそうに説明した。
学校に所属していなくてもいい。
年齢制限も緩い。
一人一台のシングルマッチから、三対三まで。
使用できる車両は安全基準を満たしていればかなり自由。
試合時間も短い。
勝敗はフラッグ車方式だけではなく、判定制、撃破判定制、ポイント制など、その日のスポンサーや主催者によって変わる。
参加者が賞金を出し合うこともあれば、地元企業が懸賞金を提供することもある。
さらに、この界隈では勝敗を予想する非公式のスポーツくじまであるらしい。
もちろん、公式戦では絶対に認められない。
戦車道連盟からすれば、あくまで「戦車道に類似した民間競技」。
けれど、そこにいる人たちは楽しそうだった。
「三対三、始まるぞ!」
誰かが叫んだ。
河原の向こうで、三台の戦車が動き始める。
一台は古いⅣ号戦車。
もう一台は小型のスチュアート軽戦車。
そして最後の一台は、朋花には名前すら分からない古い車両だった。
エンジン音が響く。
砂煙が上がる。
砲塔が旋回する。
「すごい……」
悠真が目を輝かせていた。
朋花は息子の横顔を見ながら、いつの間にか自分まで夢中になっていることに気づいた。
砲声。
土煙。
無線。
操縦手の叫び。
そして、命中を知らせる白煙。
たったそれだけの光景なのに、胸の奥にしまい込んでいた何かが、ゆっくりと目を覚ましていく。
高校時代。
朋花にも戦車道部に所属していた時期があった。
弱小校だった。
部員はわずか十七人。
戦車は寄せ集め。
練習場所も狭い。
整備費も足りない。
全国大会どころか、県大会で一勝することすら難しかった。
それでも朋花は楽しかった。
戦車に乗っている時間だけは、自分が何者かになれた気がした。
そして高校三年の夏。
県大会の最終予選。
相手は黒森峰女学園だった。
結果は、言うまでもなかった。
ほとんど何もできずに負けた。
それでも、あの一戦だけは、朋花にとって誇りだった。
黒森峰の戦車を真正面から見た。
砲撃をかわした。
一度だけ、相手フラッグ車のパンターの側面を取った。
そして、撃った。
朋花が乗っていたのは、九七式中戦車チハだった。
悲しいまでの豆鉄砲。
もちろん、撃破には至らなかった。
けれど、あの瞬間の興奮を、朋花は忘れられなかった。
卒業して、結婚して。
仕事を辞めて。
子供を産んで。
気づけば十年近く経っていた。
戦車道の雑誌を買うこともなくなった。
テレビ中継も、夫や息子の用事を優先するうちに見なくなった。
自分にはもう関係のない世界だと思っていた。
ところが。
目の前で、泥まみれの戦車が走っている。
「ママ」
悠真が朋花の服を引っ張った。
「これ、ママもやってたの?」
朋花は少し驚いた。
「……うん」
「戦車?」
「そう。ママ、昔、戦車に乗ってたんだよ」
「すごい!」
その一言が、胸に刺さった。
すごい。
その言葉を、朋花自身が忘れていた。
自分はただの主婦。
悠真の母親。
智也の妻。
スーパーの特売日を覚えていて、洗濯物を畳んで、幼稚園の行事を忘れないようにカレンダーへ書き込む。
それが嫌なわけではない。
むしろ幸せだった。
それでも。
心のどこかに、小さな空白があった。
――私にも、昔は夢中になれるものがあった。
戦車が旋回する。
砲身がゆっくりと動く。
そして砲声。
――ドンッ!
朋花は笑っていた。
自分でも分からないくらい、嬉しそうに。
「……まだ、乗れるかな」
その呟きは、砲声にかき消された。
けれど、その日から。
朋花の胸の中で、消えかけていた火が、確かに燃え始めた。
第二章 中古戦車屋ガイバー
「戦車を買う?」
夕食後。
智也は箸を止めた。
向かいでは朋花が真剣な顔をしている。
「うん」
「……本物?」
「本物」
「戦車を?」
「そう」
智也はしばらく妻を見つめた。
そして、ため息をついた。
「朋花」
「はい」
「うちは普通の家庭だぞ」
「知ってる」
「車のローンもある」
「知ってる」
「悠真の幼稚園の費用もある」
「知ってる」
「俺の小遣いも減ってる」
「それは戦車とは関係ないでしょ」
「関係あるよ!」
「でも、試合に勝ったら賞金が出たりもするのよ。ちょっとした副収入になるかも。あなたのお小遣いだけ、少し増やせるかもしれないわ」
夫婦で顔を見合わせる。
やがて朋花が吹き出し、智也も笑った。
翌週。
二人は中古戦車販売店『ガイバー』の前に立っていた。
看板には大きく、
『中古戦車・装甲車・戦車道用品 ガイバー』
と書かれている。
その下には、
『一般人歓迎! 免許・戦車道経験の相談承ります』
という文字。
店の敷地には、古い戦車が何台も並んでいた。
「……本当にあるんだな」
智也が呟いた。
店主は五十代くらいの、髭面の男だった。
「いらっしゃい。草戦車道?」
「はい」
朋花が答える。
店主は朋花を見ると、少し嬉しそうに笑った。
「元戦車道経験者か」
「どうして分かるんです?」
「戦車を見る目が違う」
朋花は照れた。
店主は一台の車両を指差した。
「予算は?」
「……できれば二百万円以内」
「維持費込み?」
「できれば」
店主が笑った。
「それなら話は早い」
敷地内を歩く。
M3スチュアート。
古いソ連系戦車、BT。
戦後にアフリカやアジアで改修された車両。
戦車道用に安全装置を追加されたもの。
さらには、もはや戦車というより「戦車道競技車両」と呼んだ方がいいような珍妙な車両まで並んでいた。
朋花の目が輝いていく。
「これは……?」
彼女が足を止めたのは、他の車両よりひときわ小柄な戦車だった。
低い車体。
細身の砲塔。
大きな転輪が幾重にも重なり、車体の前面には左右に張り出したバイザーがある。
「II号偵察戦車L型。ルクスだ」
店主が答えた。
「ルクス……」
朋花は、その名前を口の中で転がした。
ドイツ語で山猫。
車体は小さいが、どこか精悍で、野生の獣を思わせる雰囲気がある。
「正式名称はパンツァーシュペーヴァーゲンII Ausf. L。型式番号はSd.Kfz.123、開発名称はVK.13.03。従来のII号戦車とは、設計段階から別物だ」
店主は車体を軽く叩いた。
「一九四三年九月から一九四四年一月までに、わずか百両しか造られていない。武装は二〇ミリ砲一門。装甲も最大三〇ミリで、重戦車みたいな頑丈さはない」
「でも、速いんですよね?」
朋花が尋ねる。
「一八〇馬力のエンジンを積んでいる。路上なら最高速度六十キロ。足回りはオーバーラップ式の大型転輪に、トーションバー・サスペンション。偵察戦車らしく、走りはいい」
「当初は、もっと生産する予定だったんですか?」
「八百両の計画だった。百一両目以降は五センチL/60砲を載せる案もあったが、結局は中止。砲塔の設計は、後の八輪大型装甲車、Sd.Kfz.234プーマに流用された」
朋花は、車体前面をじっと見つめた。
左右のバイザーは本物。
中央のバイザーはダミー。
細部まで見れば、実戦車両としての来歴が分かる。
けれど、朋花の心をつかんだのは、性能表でも希少性でもなかった。
「山猫……」
その名前が、気に入った。
速く、身軽で、群れの中でも独自の動きをする。
大きな戦車を正面から打ち倒す力はない。
けれど、地形を読み、隙を見つけ、相手の意表を突くことができる。
草戦車道で戦う自分たちには、ぴったりではないか。
「これ……動くんですか?」
「もちろん。戦車道用に改修済みだ。砲弾は安全基準に合わせた特殊弾。車体には判定装置も付いている。無線も新しいものに交換してある」
「乗員は?」
「車長、砲手、無線手、操縦手の四人。車体が小さいから、装填手を別に置く余裕はない。砲手が装填も担当する」
朋花は車体に手を置いた。
冷たい鉄の感触。
懐かしい。
戦車は、ただの兵器ではない。
少なくとも戦車道では、そうではなかった。
乗員が息を合わせるための機械。
操縦手が車体を動かし、砲手が狙い、無線手が情報を伝え、車長が全体を見る。
一人では戦えない。
だから面白い。
「これ……いくらですか?」
朋花が尋ねた。
店主は少し考えてから答えた。
「本体だけなら百六十万円。整備費と輸送費を入れても、二百万円以内には収まる」
智也が目を見開いた。
「本当に?」
「ルクスは希少だが、二〇ミリ砲だからな。草戦車道では火力不足と見られることも多い。だから、人気の割には手が届く」
朋花は砲塔を見上げた。
小さな砲身。
薄い装甲。
けれど、軽快な車体。
「ただし、ひとつ問題がある」
店主が言った。
「問題?」
「標準の二〇ミリ砲のままなら、確かに扱いやすい。だが、草戦車道では火力不足を補うため、砲塔を改造して別の砲を載せる連中もいる」
「別の砲って?」
朋花が尋ねる。
店主は、ルクスの砲塔を見上げた。
「五センチL/60砲だ」
智也が眉をひそめる。
「載せられるんですか?」
「史実でも、百一両目以降の車両に搭載する計画があった。実現はしなかったが、砲塔の設計には余地が残されている。草戦車道用なら、反動を抑えた安全仕様にして、砲塔リングと内部架台を補強すれば可能だ」
朋花は黙って砲塔を見つめた。
五センチL/60。
二〇ミリ砲とは、まるで別物の火力だ。
もちろん、多少の軽快さは失われる。
砲塔は重くなり、車体への負担も増える。
装填も難しくなり、砲手の仕事は増える。
それでも、五センチ砲なら、相手の側面や弱点を狙うだけでなく、正面からでも判定を取れる可能性が高い。
「カスタムで……載せられるんですか?」
朋花が尋ねた。
「載せられる。ただし、標準仕様より高くなる。砲身、砲架、砲塔内部の補強、反動吸収装置、弾薬ラックの改修。全部込みで、追加八十万円ほどだ」
智也がすぐに計算を始めた。
「本体と合わせて二百四十万円……」
「予算オーバーだな」
店主はあっさり言った。
朋花は五センチ砲の搭載案から目を離せなかった。
「でも、やる価値はある」
店主は続けた。
「ルクスの車体に五センチL/60を載せるなら、ただ強くするだけじゃ駄目だ。重量配分を見直して、砲塔旋回を制限し、射撃時は車体を安定させる必要がある。速さも少し落ちる。二〇ミリ砲のように走りながら撃つ戦い方はできない」
「それでも……」
朋花は、かつてチハの砲身から放った一発を思い出していた。
黒森峰のパンターの側面。
届かなかった砲弾。
あのとき、もう少しだけ火力があれば。
そんな考えを、何度も胸の奥で繰り返していた。
「五センチ砲なら、私たちにも勝てる可能性が増える」
「正面から殴り合うつもりか?」
店主が尋ねた。
「いいえ」
朋花は首を振った。
「ルクスの速さは残します。偵察して、回り込んで、必要なときだけ撃つ。五センチ砲は、最後の一手です」
店主はしばらく朋花を見つめた。
やがて、口元を上げた。
「なるほど。山猫に牙を付けるわけか」
「はい」
「ただの火力強化じゃない。偵察戦車の機動力を活かしたまま、決定力を持たせる。そういう設計なら、面白い」
智也は頭を抱えた。
「朋花、予算は……」
「試合に勝ったら賞金が出るわ」
「まだ一試合もしてないだろ」
「でも、勝つためには必要なの」
朋花は智也を見た。
「お願い。五センチL/60砲を載せたい」
智也は妻の顔を見た。
そこには、家計を心配する主婦の顔もあった。
悠真の母親の顔もあった。
けれど、それだけではない。
高校時代、戦車に乗っていた少女の顔があった。
智也は小さく息を吐いた。
「……分かった。ただし、追加費用は俺も手伝う。朋花一人で背負うな」
「智也……」
「それに、勝ったら本当に小遣いを増やしてくれよ」
朋花の顔が明るくなる。
「もちろん!」
「本当に?」
「少しだけね」
「少しかよ!」
二人は顔を見合わせ、笑った。
こうして、ルクスのカスタム計画が始まった。
標準の二〇ミリ砲を降ろし、五センチL/60砲を搭載する。
砲塔内部には新しい砲架と反動吸収装置を組み込み、車体側には補強フレームを追加する。
砲塔が重くなるため、旋回速度は落ちる。
車体前部には重量が集中し、急停止時の負担も増える。
そこで軽量化に取り組んだ。古い無線機は取り外し携帯アプリで代用
弾薬ラックは小型化され、搭載できる砲弾の数も限られる。
しかし草戦車道で使う分には充分だった
「これなら私たちでも扱える」
朋花は、改修途中のルクスを見ながら言った。
店主は頷いた。
「草戦車道じゃ、こういう戦車が一番面白いんだ」
朋花は五センチL/60砲の長い砲身を見上げた。
「山猫に、牙を付けるの」
その言葉が、胸の中で響いた。
高校時代も、そうだった。
強い戦車なんて持っていなかった。
だから工夫した。
だから仲間と考えた。
だから楽しかった。
戦車は、強さだけで選ぶものではない。
誰と乗るか。
どこで戦うか。
どう戦うか。
それが大切なのだ。
第三章 三人の乗員
最初に声をかけたのは、近所で同い年の水瀬詩織だった。
17歳で子供を産み子供の正男は既に15歳だ。
詩織はいつも控えめだった。
地域の集まりでも他の母親たちの輪の少し外にいる。
「おはようございます」
と笑う声も小さい。
朋花は以前から少し気になっていた。
詩織はシングルマザーだった。
昼間は寝ていることが多い。
夜に仕事をしているからだ。
ある日、朋花が聞いた。
「夜のお仕事、大変じゃない?」
詩織は少しだけ目を伏せた。
「……キャバクラです」
それ以上、説明しようとはしなかった。
朋花も無理に聞かなかった。
ただ、その数日後。
朋花は思い切って誘った。
「詩織さん、戦車乗らない?」
「……はい?」
詩織は本気で意味が分からないという顔をした。
「戦車」
「……戦車?」
「うん」
「朋花さん、何か変なもの食べました?」
「食べてないよ!」
二人で笑った。
詩織は最初、断るつもりだった。
自分には無理。
そんな遊びに使えるお金もない。
そもそも、自分のような人間が戦車道など。
そう思った。
けれど朋花は言った。
「お金はそんなにかからないよ。戦車はもう買ったし。練習も近所の河原でできるところを探してる」
「……私、何をすれば?」
「射撃手」
その言葉に、詩織は少しだけ目を見開いた。
「射撃ですか?」
「うん。詩織さんは周りをよく見てるし、町内祭りの時、射的も上手だから」
「私が、そんな……」
詩織は困ったように笑った。
「詩織さんは才能ある!」
朋花は胸を張った。
ルクスに搭載された五センチL/60砲は、二〇ミリ砲よりはるかに強力だ。
だからこそ、狙う場所とタイミングが重要になる。
詩織は標的をじっと見つめ、相手の動きを読むのが上手かった。
もう一人は、井上由美。
朋花の高校時代からの友人だった。
由美は独身。
都心の会社で働くキャリアレディーで、仕事はできる。
スーツ姿で颯爽と歩き、会議では誰よりも早く資料を読み、上司にも物怖じしない。
けれど、朋花から電話がかかってくると弱い。
「由美、戦車乗らない?」
「乗る」
即答だった。
「早っ」
「朋花が誘ってくれたから」
「仕事は?」
「調整する」
「彼氏は?」
「いない」
「即答しなくても」
由美は電話の向こうで笑った。
「高校の頃から思ってたけど、朋花って変なところで行動力あるよね」
「由美だって付き合ってくれるじゃん」
「朋花だから」
その言葉だけは、由美自身も少し照れくさそうだった。
三人が初めて集まったのは、朋花の家の近所にあるファミリーレストランだった。
テーブルの上には、ドリンクバーのグラス。
子供用のおもちゃ。
そして、戦車のカタログ。
あまりにも場違いな組み合わせだった。
「じゃあ、まずチーム名」
朋花が言った。
「必要?」
由美が尋ねる。
「必要!」
詩織はメニューを見ながら、小さく笑った。
「……普通に、綾瀬チームとか?」
「地味!」
朋花は即座に却下した。
「じゃあ『ママ戦車隊』」
由美が言う。
「もっと嫌!」
「朋花が言ったんじゃん」
三人で笑った。
朋花は、テーブルの上に置いたルクスの写真を指でなぞった。
「この子の名前、ルクスっていうの」
「山猫だっけ?」
由美が尋ねる。
「そう。だから、チーム名はリンクス」
「リンクス……」
詩織が小さく呟いた。
「いいと思います」
「でしょ?」
朋花は嬉しそうに笑った。
その瞬間。
朋花はふと思った。
高校時代と同じだ。
戦車のことを話している。
仲間と笑っている。
何をすれば勝てるのか考えている。
違うのは、テーブルの横に子供用の水筒が置いてあること。
そして明日の朝には、また幼稚園へ送っていかなければならないこと。
自分たちは高校生ではない。
もう二十八歳。
詩織には娘がいる。
由美には仕事がある。
朋花にも夫と息子がいて家庭がある。
だからこそ。
今の自分たちだからできる戦車道があるのかもしれない。
「ねえ」
朋花が言った。
二人が顔を上げる。
「どうせやるなら、勝ちたいよね」
由美が笑う。
「もちろん」
詩織は少し迷ってから、頷いた。
「……私も」
その小さな声に、朋花は嬉しくなった。
こうして三人の練習が始まった。
休日の朝。
朋花がルクスを運び、由美が操縦席に座り、詩織が無線機と周囲の確認を担当する。
ルクスの乗員配置は、車長、砲手、操縦手。
朋花は車長。
由美は操縦手。
詩織は砲手を務めることになった。
五センチL/60砲を搭載したことで、標準型よりも砲塔内は狭くなっていた。
「詩織さん、数より、撃つべきタイミングを選ぶ」
「はい」
詩織が頷く。
「由美、五センチ砲は強いけど、撃ったあとに隙ができる。だから、撃つ前に逃げ道を決めておく」
「了解」
由美が操縦席から答える。
「私たちは重戦車じゃない。撃ったら、必ず動く。止まって撃ち合わない」
朋花は二人を見た。
「リンクスは、速さと連携で勝つの」
最初は何もかも上手くいかなかった。
由美は操縦が荒かった。
「由美、右!」
「分かってる!」
「そっちは左!」
「朋花が右って言ったんでしょ!」
「ごめん!」
ルクスが土手に乗り上げる。
三人とも固まる。
そして。
「……今の、誰が悪い?」
由美が言った。
「私」
朋花が手を上げる。
詩織が吹き出した。
「笑わないでよ、詩織!」
「ご、ごめんなさい……」
けれど詩織は笑っていた。
射撃練習では、もっとひどかった。
五センチL/60砲は、二〇ミリ砲よりも照準の癖が強く、車体が少しでも傾いていると狙いがずれた。
さらに、射撃後の再装填には時間がかかる。
一発を外せば、次の一発を撃つまでに相手が動いてしまう。
「外れました……」
「大丈夫!」
「また外れました」
「大丈夫!」
「三回連続です」
「まだ大丈夫!」
詩織の顔が申し訳なさそうに曇る。
「私、やっぱり向いてないんじゃ……」
その瞬間、朋花は車長席から身を乗り出した。
「詩織さん」
「はい」
「一回当たったら、それまでの三回は全部なくなるから」
「……え?」
「そういうゲームだから」
詩織は目を丸くした。
「だから、次!」
そして四発目。
五センチ砲の砲声が、河原に響いた。
――ドンッ!
標的に命中した。
白い判定煙が、標的の脇から立ち上る。
三人とも一瞬、黙った。
「……当たった」
詩織が呟く。
朋花は笑った。
「ほら!」
由美も笑った。
「やるじゃん、詩織」
詩織は照れながら笑った。
その笑顔は、幼稚園で見せる控えめな笑顔とは少し違っていた。
自分にもできる。
その感覚を、詩織は久しぶりに味わっていた。
練習が終わる頃には、空が赤くなっていた。
p
朋花のスマートフォンが鳴る。
悠真からだった。
「ママ、まだ?」
「ごめん、もう帰るよ」
電話を切る。
朋花はルクスを見上げた。
夕日に照らされた車体は、決して新しくない。
傷だらけで、古くて、格好いいとは言い切れない。
それでも。
朋花には、昔の愛車よりずっと眩しく見えた。
小さな車体。長く伸びた五センチL/60砲。
重なり合う転輪。
そして、山猫を思わせる鋭い輪郭。
「帰ろう」朋花が言う。
「明日も仕事だからね」
由美が答える。
「私は夜から仕事ですけど……」
詩織が苦笑する。
三人は笑った。
家庭も。仕事も。子供も。それぞれの事情も。
全部抱えたまま。
それでも、戦車に乗る。
それが、三人の草戦車道だった。
チーム名は、リンクス。
小さく、速く、しなやかに。近い将来、正面から勝てない相手にも、知恵と連携で食らいつくリンクスは強豪チームになる。
今はまだ。エンジンを切ったルクスの隣で、三人が笑っているだけだった。
⭐️初試合
もう既に十年以上前。
まだ高校生だった綾瀬朋花は、戦車道の大会映像を見るのが好きだった。
自分の学校の弱小戦車道部では、県大会の予選を突破するだけでも大騒ぎだった。練習に使える戦車は古く、部員も少ない。整備費用も足りない。強豪校のような立派な練習場もなかった。
それでも、朋花は戦車が好きだった。
特に好きだった選手の一人が、アンツィオ高校のアンチョビだった。
小柄な車体。
決して恵まれているとは言えない火力。
それでも、彼女は戦車を止めなかった。
敵が大きければ逃げる。速ければ地形を使う。撃ち合いになれば不利ならば、撃ち合わない。
そして最後には、なぜか勝っている。
「小さいのに、あんなに頑張ってる、自分だってできることがあるはずだ」
それから年月は流れ
朋花は32歳になっていた。
そして、人生は思っていたよりずっと戦車とは遠い場所へ彼女を連れていった。
結婚し、子供が生まれ、家事をして、子供を学校へ送り、買い物をして、働いて。
高校時代の戦車道は、いつしか思い出の中にしまわれていた。
ところが、朋花は、いま再び戦車の前に立っていた。
河川敷に作られた仮設コース。
観客席は簡素なテント。
その向こうには、屋台やキッチンカーが並んでいる。
そして、その中央に停まっているのが、朋花のルクスだった。
Sd.Kfz.123、パンツァーII L型。
十年前に中古で購入したときより、ずっと手が入っている。
練習を重ねエンジンは何度も整備され、履帯も交換され、照準器も草戦車道向けに改修されている。
そして最大の特徴が、砲塔に載せられた五センチL/60砲だった。
「……やっぱり、これを見ると安心するなあ」
朋花が車体を撫でる。
その顔には、高校時代にはなかったものがあった。
「今日は、頼むよ。ルクス」
今回の賞品は、三十万円分のアンツィオ食事券。現金ではない。
だが、戦車を買って懐の厳しい朋花にとっては、十分に魅力的だった。
それ以上に。
「……まさか、あの人と戦えるとはね」
朋花は笑った。
河川敷の反対側。観客がざわめいている。
やがて、一台の小さな車両が現れた。
CV33。
豆戦車と呼ばれても仕方のないほど小さい。
その車体から降りてきた女性を見て、朋花は一瞬、言葉を失った。
「……本物だ」
アンチョビ。33歳。
十年前、朋花がテレビ画面の向こうから見ていた憧れの選手。
今では大人の女性になっている。けれど、その目の輝きだけは変わっていなかった。
地元の草戦車道団体が創立10周年記念で招聘したプロ選手だ。
「よーし! 今日は楽しくやろうじゃないか!」
アンチョビが腕を大きく振り上げる。
その後ろでは、カルパッ
チョとペパロニが笑いながら手を振っていた。
「アンチョビ、相手の人、かなり速そうだよ」
カルパッチョがルクスを見る。
「しかも五センチ砲。あれ、普通のルクスじゃないね」
ペパロニが腕を組む。
「うへぇ……。こっち、CV33だぞ」
「相手はデビュー戦だからなハンディキャップだよ。面白いんじゃないか!」
アンチョビは笑った。
その声を聞いた瞬間、朋花の胸が熱くなった。
十何年前と同じだ。戦車の性能を言い訳にしない。
自分の持っているものだけで、どう戦うかを考えている。
それがアンチョビだった。
「綾瀬朋花さんですね?」
アンチョビが近づいてくる。
「はい」
「ルクス、格好いいじゃないか!」
「ありがとうございます」
「しかも五センチ砲!」
アンチョビの目が輝いた。
「あなた、相当この戦車を大事にしてるね」
朋花は少し驚いた。
「分かります?」
「分かるさ」
アンチョビはルクスを眺めながら言った。
「戦車は嘘をつかない。どんな改造をして、どんな整備をして、どんな人間が乗っているのか。それが全部、動きに出る」
「……」
「だから今日は楽しみだ」
その言葉に、朋花は思わず笑った。
「実は私、高校生の頃からアンチョビさんのファンだったんです」
「え?」
アンチョビが目を丸くする。
「本当ですか?」
「はい。大会の映像、何度も見てました」
「いやあ……それは嬉しいなあ!」
アンチョビが胸を張る。
「では、期待に応えられるように頑張ろう!」
「はい」
朋花は一度、深呼吸した。
そしてルクスに乗り込む。
エンジンが唸る。
高校生だった朋花は、憧れの選手を遠くから見ていた。
いまは違う。
同じコースに立っている。
青春の続きではない。
それぞれの十年間を背負った、大人同士の勝負だった。
「それでは、草戦車道シングルマッチ!」
審判の声が河川敷に響く。
「制限時間三十分! コース内の指定区域からの離脱は禁止! 支援車両なし! 完全な一対一!」
観客が沸く。
「勝者には、アンツィオ提供、三十万円分の食事券!」
さらに大きな歓声。
そして最後に。
「敗者には――アンツィオ式罰ゲーム!」
「なんだそれ……」
朋花が呟く。
無線の向こうからアンチョビの声が飛んできた。
『勝ったほうが決める!』
「えっ?」
『王様ゲームだ!』
カルパッチョの声が割り込む。
『アンチョビ、去年は一日中、水着でアンツィオの宣伝看板を持って立ってたよね』
『あれは広報活動だ!』観客から笑いが起こる。
朋花も思わず笑った。緊張が少しほぐれる。
そして。
スタートの旗が振られた。
「行くよ、ルクス!」
朋花の車体が跳ねるように走り出した。
五センチ砲を持つルクスは、CV33よりはるかに大きい。
そして速い。
だが。
アンチョビは正面から逃げなかった。
CV33は河川敷の草むらへ飛び込んだ。
「え?」
朋花が双眼鏡を覗く。
一瞬、車体が消えた。
「速い!」
小さな車体が草の陰を縫う。
ルクスが追う。
だが、追いつかない。
「そこ!」
朋花が砲塔を旋回させた。
砲弾が草むらを吹き飛ばす。
しかし、そこにはもういなかった。
『甘いぞ、朋花!』
無線からアンチョビの声。
次の瞬間。
ルクスの側面から衝撃が走った。
「うわっ!」
車体が揺れる。
判定装置が鳴った。
被弾。
しかし致命判定ではない。
「今の……どこから?」
朋花が周囲を見る。
何もない。
草。
土手。
古い橋脚。
そして川。
その向こうで、カルパッチョが笑っていた。
「アンチョビは、真正面から戦うつもりなんてないよ」
朋花は目を細めた。
その瞬間、十年前の記憶が蘇った。
テレビ画面の中で、小さな戦車が大きな敵を翻弄していた。
撃ち合わない。
追いかけない。
相手に撃たせる。
焦らせる。
そして、自分だけが撃てる場所へ入る。
「……そういうことか」
朋花は笑った。
「アンチョビさん、やっぱり変わってない」
ルクスのエンジン音が高くなる。
「だったら――!」
ルクスが突然、追跡をやめた。
CV33を探すのではなく、河川敷の中央へ向かう。
アンチョビのほうが戸惑った。
『おや? 追ってこないのか?』
「追いません!」
『なに?』
「アンチョビさんが来るまで、こっちで待ちます!」
無線の向こうで沈黙があった。
やがて。
『……なるほど』
アンチョビが笑った。
CV33が動く。
小さな車体が草むらから姿を現した。
ルクスの砲塔が回る。
アンチョビも気づいている。
ここから先は読み合いだ。
小さな戦車と、大きくなった山猫。
性能差を埋める技術。
経験。
朋花は照準器を覗いた。
その先にいるのは、十年前から憧れていた女性だった。
「アンチョビさん」
『なんだ?』
「今日は、本気で勝ちにいきます」
アンチョビの声が笑う。
『もちろんだ!』
河川敷に、二台の戦車のエンジン音が響いた。
憧れは、いつまでも憧れのままではない。
いつか同じ場所に立つためにある。
朋花はそう思いながら、引き金に指をかけた。
最後の一発が、河川敷に乾いた音を響かせた。
直後、ルクスの車内に判定装置の電子音が鳴り響く。
朋花はしばらく、何が起きたのか理解できなかった。
「……負けた?」
目の前には、土煙の向こうに停まったCV33。
小さな車体。
軽い装甲。
限られた火力。
それでも、その車体は最後まで動き続けていた。
無線からアンチョビの声が聞こえる。
『勝負あり! 私の勝ちだな、朋花!』
悔しい。
悔しいはずなのに。
朋花の口元には、自然と笑みが浮かんでいた。
「……参りました」
車長席から身を乗り出す。
「完敗です」
『いやいや、最後の待ち伏せは危なかったぞ! あと少しタイミングが違っていたら、私のほうが撃破されていた!』
「でも、勝ったのはアンチョビさんです」
『それなら堂々と胸を張って勝利を受け取ろう!』
河川敷が歓声に包まれた。
アンチョビのところへ、主催者が駆け寄ってくる。
「アンチョビさん!」
「ん?」
「せっかくですから、もう少しお願いできませんか?」
アンチョビが眉を上げた。
「もう少し?」
「はい。今回、アンチョビさんには特別招聘選手として参加していただいています。そこで、会場に集まった選手の中からさらに四チーム、対戦相手を用意しました」
カルパッチョが目を丸くした。
「四チームって……今日全部やるんですか?」
「もちろん、無理にとは言いません、でもみんな今の試合を見て熱くなってしまって、もちろんその分ギャラは上乗せします」
するとアンチョビは、にやりと笑った。
「面白そうじゃないか」
「アンチョビ!」
ペパロニが叫ぶ。
「まだやるんですか!?」
「ここまで来たんだ。観客を待たせるわけにはいかないだろう!」
その言葉に、会場から再び歓声が上がった。
「やれー!」
「アンチョビもう一戦!」
「四チーム全部見たい!」
朋花は車外へ出た。
「……すごいなあ」
思わず呟く。
アンチョビは、そんな朋花に気づいた。
「朋花!」
「はい?」
「次は客席から見ていてくれ!」
アンチョビは笑った。
「私がどう戦うのか、よく見ておくんだ!」
その瞬間、朋花の胸が高鳴った。
十年前と同じだった。
自分が憧れていた選手が、また目の前で戦おうとしている。
第一戦。
相手は三両編成のチームだった。
火力ではCV33を大きく上回っている。
しかし、アンチョビは真正面から戦わなかった。
開始と同時に大きく迂回し、相手を河川敷の狭い場所へ誘い込む。
一両が釣られる。
そこへアンチョビが横から現れた。
一発。
撃破判定。
すぐに離脱。
残る二両が追いかける。
しかし、そのころにはアンチョビの姿はない。
「どこだ!?」
「右だ!」
「いや、左!」
相手チームが混乱する。
その隙を逃さない。
再び姿を現したCV33が一両を撃破。
最後の一両も、逃げ道を塞がれて終了した。
わずか数分。
観客がどよめいた。
「速い……」
朋花は呟いた。
第二戦。
今度の相手は、重装甲車両を中心にしたチームだった。
誰が見ても、正面からでは勝負にならない。
ところがアンチョビは、相手の砲塔旋回速度を見極めていた。
撃って、逃げる。
回り込む。
また撃つ。
相手が向きを変える。
その瞬間には、もう別の場所にいる。
「まるで猫だ……」
朋花が呟いた。
カルパッチョが隣で笑う。
「だから、あの人はアンチョビなんですよ」
やがて重戦車が動きを止める。
CV33が、その側面へ滑り込んだ。
判定装置が鳴る。
撃破。
会場が沸いた。
第三戦。
今度は速さ自慢の三両。
開始直後、三方向からアンチョビを包囲しようとする。
「今度こそ逃がさないぞ!」
しかし。
アンチョビは逃げなかった。
正面から一両へ向かっていく。
「えっ?」
朋花が思わず立ち上がる。
CV33は敵の射線へ入る直前、急旋回した。
そのまま土手を利用して姿を隠す。
敵三両が互いに射線を邪魔し合う。
そこへアンチョビが飛び出した。
一発。
二発。
三発。
立て続けに撃破判定。
会場が爆発したような歓声に包まれる。
「うそだろ……」
誰かが呟いた。
朋花は笑っていた。
もう悔しさはなかった。
ただ、嬉しかった。
十年前、自分がテレビの前で何度も見返した戦い。
それを今、自分の目の前で見ている。
そして第四戦。
最後の相手は、今回の参加チームの中でも特に経験豊富な三人だった。
開始前、アンチョビは車体の横に立った。
さすがに疲労は隠せない。
カルパッチョが心配そうに声をかける。
「アンチョビ、無理してない?」
「大丈夫だ」
アンチョビは笑った。
「戦車に乗ると、疲れなんて忘れるからな!」
ペパロニが苦笑する。
「それ、昨日も言ってましたよ」
「昨日は昨日だ!」
そして、最後の試合が始まった。
最も長い戦いになった。
互いに何度も撃ち合い、アンチョビも何度か被弾判定を受けた。
それでも、最後まで走った。
そして。
最後の一両が停止した。
静寂。
次の瞬間。
会場全体から、今日一番の歓声が上がった。
「アンチョビ!」
「アンツィオ!」
「四連勝だ!」
アンチョビは車体の上に立った。
疲れている。
髪も乱れている。
服には土埃がついている。
それでも、満面の笑顔だった。
朋花は拍手をしながら、その姿を見つめていた。
「……やっぱり、すごい」
十年前に憧れた選手は、十年経っても憧れのままだった。
ただし、今度は少し違う。
朋花はもう、ただの観客ではない。
一度は同じ戦場で戦った。
そして負けた。
だからこそ、その背中が以前よりずっと近く感じられた。
アンチョビが車体から降りる。
カルパッチョとペパロニが駆け寄った。
「お疲れさま!」
「いやあ、さすがに疲れた!」
アンチョビは腰を伸ばす。
そして、ふと朋花を見る。
「朋花!」
「はい!」
「今日は楽しかったぞ!」
朋花も笑った。
「私もです!」
互いに拳を突き出す。
軽く拳がぶつかった。
そしてアンチョビは、カルパッチョとペパロニとともに会場を後にした。
その背中を、観客たちが拍手で送り続ける。
「アンチョビ!」
「また来てくれ!」
「アンツィオ最高!」
アンチョビは振り返って、大きく手を振った。
「私の経営するイタリア料理店チェーン アンツィオにも来てくれよー!」
笑い声が起こる。
やがて三人の姿が河川敷の向こうへ消えていった。
残された朋花は、静かになったルクスを見つめた。
「……もう一回、やろう」
朋花はルクスの車体をぽんと叩いた。
「今度は、勝とうね」
小さな山猫は、夕暮れの河川敷で静かに佇んでいた。
⭐️罰ゲーム
「さて、楽しい試合は終わりましたが……忘れていませんよね?」
アンチョビたちの姿が見えなくなり、会場が少し落ち着きを取り戻した頃、主催者の男が壇上でマイクを握った。その目は、獲物を見つけた肉食獣のように細められていた。
「敗者チーム、リンクスの皆さんには、恒例のアンツィオ式罰ゲームを準備していただきました!」
観客席からドッと歓声が上がる。男たちの期待に満ちた野次が飛び交う。
「今回の罰ゲームはこれだ!」
テントの後ろに掲げられた黒い布が引き下ろされると、そこに並んでいたのは、極端に布面積の少ない衣装だった。
「……え?」
朋花は絶句した。
「バドガール衣装……それも、超際どいやつ……」
由美が引きつった笑みを漏らし、詩織は顔を真っ赤にして目を伏せた。
「さあ、三人とも更衣テントへどうぞ! 観客の皆さんに冷えたビールを配っていただきます!」
数分後、テントの中で三人は鏡を見つめていた。
「嘘でしょ……」朋花は自分の姿を映す鏡の前で、顔を手で覆った。
そこに立っているのは、32歳の主婦とは思えない、色気を剥き出しにした女だった。
黒を基調としたハイレグのバドガール衣装。胸元は深くカットされ、豊かに育ったバストの重みが強調され、少しでも動けば零れ落ちそうなほどの量感を主張している。出産を経験して柔らかく熟れた肉の曲線が、布の隙間からあられもなく覗いていた。
そして下半身。それはもはや下着と呼ぶのもおこがましい、極細のTバックだった。尻の肉は完全に露出され、ピンと張った臀部の丸みが無防備に晒されている。太いゴムの食い込む股間は、布一枚で辛うじて隠されているだけだ。
「これ、何も履いてないのと同じじゃない……」詩織が震える声で言った。普段は夜の世界で働いている彼女でさえ、この露出度には狼狽している。しかし、着衣された彼女の体もまた、小柄ながら肉感的な曲線を描き、Tバックの紐が腰骨に深く食い込んでいた。
「朋花……これ、本当に履くの?」由美もスレンダーな肢体をさらに強調するように食い込む布地を手で引っ張ったが、その顔には奇妙な赤らみが差していた。
「やるしかないわ……負けたら従うのがルールだもの」
朋花は震える手で極小のTバックを引き上げ、履き慣れないヒールのブーツを履いた。鏡の中の自分は、夫の智也や息子の悠真が見たら卒倒しそうなほど淫らな姿だった。激しい屈辱と嫌悪感が胸を締め付けた。私は母親なのに。主婦なのに。こんな恥ずかしい姿で、男たちの前に出なきゃいけないの?
だが、テントの外から聞こえる男たちの下品な歓声と、「早く出てこいよ!」という野次が、逆に朋花の身体に痺れるような熱を走らせた。
テントの幕が開かれる。
三人が一歩踏み出した瞬間、河川敷の空気が凍りつき、そして爆発した。
「うおおおお!」
「すげえぇ! マジかよ!」
「主婦三人だぞ! 熟れてんじゃねえか!」
ドス黒い欲望を隠そうともしない、数十人の男たちの熱視線が一斉に突き刺さった。
砂利を踏むヒールの音が響く。朋花は前を向いたまま、トレイを持って歩き出した。太ももの付け根、下腹部、尻の谷間。隠すべき場所がすべて見えているような錯覚に陥る。歩くたびに尻の肉が揺れ、Tバックの極細の紐が割れ目に食い込む感覚が、直に伝わってくる。
「は、はい……どうぞ」
朋花が最初の男にビールを差し出した。男はニヤニヤと笑いながら朋花の胸元を舐めるように見つめ、ビールを受け取るふりをして朋花の手をわざとらしく握った。
「奥さん、すげえ乳だな。旦那、こんな格好させてんの?」
耳元で囁かれた下品な言葉に、朋花は全身に鳥肌が立った。屈辱で頭がおかしくなりそうだった。嫌だ。嫌い。汚い。そう思いながらも、男の熱い息が耳にかかった瞬間、乳首が硬くしこるのが分かった。
「……どうも」か細い声で答え、次の男の元へ向かう。
由美も震えながらビールを配っていた。「お嬢さん、脚が綺麗だねえ」と太ももを撫でるような視線を浴び、顔を真っ赤にして耐えている。普段のキャリアレディーの顔はどこにもなく、ただの弄ばれる女の表情になっていた。
詩織はさらに酷かった。小柄な体は男たちに囲まれ、際どい衣装からはみ出る尻の肉を、ねっとりとした視線で愛撫されていた。「キャバクラで働いてるんだって? こっちのほうが向いてんじゃねえの?」という野次に、唇を噛み締め、悔しさに目を潤ませている。
数十人の男たち。男たちの視線は、服を剥ぎ取られ、全裸にされたも同然の三人の熟れた女体を、舐め回すように蹂躙していく。
朋花は屈辱と嫌悪で胸が張り裂けそうだった。けれど、足の間に潛む熱い疼きが、ドクドクと脈打って止まらなかった。
(見られている……私の体を、こんな淫らな姿で、大勢の男に見られている……)
夫以外の男に、こんな姿を見られるなんて。それなのに、股間の布地はすでに自分の蜜で湿り気を帯びていた。
男の視線が胸に突き刺さるたび、心の底から湧き上がるマゾヒスティックな快感が、背骨を震わせた。屈辱的な罰ゲームのはずが、いつの間にか、三人の女の隠された雌の本能を強烈に刺激する調教の時間へと変貌していた。
「次のビール、お願いします……」
朋花は震える声で言った。その顔は羞恥で紅潮し、瞳は潤み、どこか恍惚とした色を帯びていた。熱視線の雨の中で、32歳の主婦は、ただの雌に成り下がっていくのを感じていた。
⭐️由美の夜
都心のタワーマンション、二十四階。
窓の外には煌めく夜景が広がっているが、井上由美の瞳に映っているのは、硝子に映る自分の姿でも、街の灯りでもなかった。
彼女はバスルームから出たばかりの濡れた髪をタオルで拭きながら、ソファに深く身を沈めた。シルクのバスローブが肌に吸い付き、微かな体温を感じさせるだけの接触が逆に心を寒々とさせる。
由美は目を閉じた。
瞼の裏に焼き付いて離れない光景がある。
河川敷のむき出しの欲望の中に立っていた朋花の姿だ。
ハイレグから溢れ出んばかりの豊かなバスト。出産を経験し、柔らかく熟れきった腰の曲線。そして、極小のTバックに食い込む尻肉の揺れ。
「朋花……」
由美の口から熱い吐息が漏れた。
高校時代からずっと隣にいた幼馴染。主婦になり、母親になり、いつしか「守られるべき存在」になっていたはずの彼女が、今日あんなにも淫らで魅力的な「女」として覚醒してしまった。
あの無防備に晒された朋花の肢体を思い出すだけで、由美の下腹部に鋭い疼きが走った。
由美は震える手でバスローブの前を寛げた。湯上りの火照った肌が外気に触れ、乳首がツンと立ち上がる。
「あんな姿……見たくなかった訳じゃない」
由美は独り言ちながら、右手を胸元へ這わせた。豊かな膨らみを鷲掴みにし、親指で硬くしこった乳首を弄ぶ。
「うっ……」
電流が背骨を駆け抜けるような快感。由美は目を細め、さらに指を下へと滑らせた。脇腹のくびれをなぞり、下腹部へ。そして、すでに潤い始めている秘所へ指を這わせた。
由美が想像しているのは、自分が朋花を抱く幻影だ。
あの時テントの中で着替えている朋花に触れたかった。あの尻を揉みしだき、食い込むTバックを横にずらし、割れ目に指を滑り込ませたかった。
「んんっ……朋花っ……!」
クリトリスを指先で弾くたびに、朋花の喘ぎ声が耳元で聞こえるような気がした。あの堅物な幼馴染が恥辱に歪める顔。他の男たちに見られながら漏らす甘い吐息。
由美は中指を蜜壺に沈めた。濡れた粘膜が指を締め付ける。
「あぁっ……! もっと……!」
激しく指を動かす。クチュクチュと水音が静かな部屋に響く。由美は腰を浮かせて指の動きに合わせた。
朋花の体。朋花の匂い。朋花の声。
すべてが由美を狂わせる。
「私のだって言えばよかった……あんな男たちになんか見せないでよぉっ……!」
由美は激しくピストン運動を繰り返した。内壁を掻き回し、快楽の波を追いかける。
「あっ! あっ! いくっ……朋花ぁっ!!」
由美は背中を反らせて絶頂に達した。ビクビクと膣壁が痙攣し、大量の愛液が指を伝ってシルクのソファに染みを作る。
荒い息を吐きながら天井を見上げる由美の瞳には、まだ熱っぽい欲望が揺らいていた。
「……負けたくない」
由美は汗ばんだ額をかき上げながら呟いた。
「朋花は……私が一番幸せにするんだから」
⭐️詩織と正男 背徳の血
一方その頃、郊外の古びたアパートの一室では、別種の熱気が充満していた。
水瀬詩織はベッドに腰掛け、まだ着替えていないまま放心していた。
キャバクラで働く彼女にとって露出度の高い衣装は日常茶飯事だ。男たちの視線にも慣れているつもりだった。しかし今日は違った。
(正男が……見てた)
息子の正男が十五歳になったばかりというのに、会場の片隅から自分を見ていたのだ。
あの視線。
母親を見る目ではない。女を見る目だ。
詩織は震える手で自分の太ももを撫でた。Tバックから露わになった尻肉。ハイレグからはみ出す腰骨のライン。
(こんな姿……見せちゃいけなかったのに)
頭では分かっている。けれど体は興奮していた。
あの時正男と目が合った瞬間、電流のような快感が走ったのだ。
「お母さん……綺麗だよ」
正男は何も言わなかった。ただじっと見つめていただけだ。しかし詩織には分かった。あれは男としての欲望だった。
隣の部屋から物音がする。正男の部屋だ。
詩織は無意識に立ち上がり、ドアノブに手をかけた。
ノックをする勇気はない。けれどドアノブは回っていた。
「正男……?」
細くドアを開けると、部屋の中から荒い息遣いが聞こえた。
正男はベッドに横になりスマホを握りしめていた。画面には今日撮ったのであろう詩織の写真が映し出されている。Tバック姿でビールを配る母親。その恥辱に染まった表情。
正男はズボンの中に手を入れ自分自身をしごいていた。
「あぁ……母さん……」
正男の呟きが詩織の耳に届く。
詩織はドアの隙間からその様子を見つめた。十五歳とは思えない逞しい腕。そして息子の股間にある怒張した男根。
(私のだよね……あの子のは私から生まれたんだよね……)
背徳感と劣情が詩織の中で混ざり合う。
詩織は無意識に自分の手を股間へと這わせた。Tバックの極細の紐を横へずらし濡れそぼった割れ目を直接触る。
「んっ……!」
指がクリトリスに触れた瞬間詩織は甘い声を漏らした。
母と子。二つの部屋を隔てる薄い壁一枚越しに二人は自慰に耽っていた。
正男はスマホの中の母親を汚し尽くす想像を膨らませているのだろう。詩織は壁に額を押し付けながら息子と同じリズムで指を動かした。
「正男……正男ぉ……!」
名前を呼ぶたびに胸が締め付けられるような罪悪感と痺れるような快感が襲ってくる。
「母さんの中に出すよ……」
幻聴だろうか。正男の声が聞こえた気がした。
詩織は激しく腰を振った。壁ドンする勢いで壁に体を打ち付ける。
「あぁっ! いくっ! 正男っ!!」
詩織は絶頂と共にその場に崩れ落ちた。
隣の部屋でも正男が達した気配があった。
二つの部屋から荒い息遣いだけが聞こえてくる。
詩織は涙目になりながら床に這いつくばった。
(戻れない……もう戻れないよ……)
⭐️朋花と智也 灼熱の交わり
帰りの車内は、重く粘着質な沈黙に包まれていた。
助手席の朋花はシートに深く身を沈めながら、自分の体から立ち上る熱を持て余していた。Tバックの極細の紐が割れ目に食い込む感覚はまだ残っており、太ももの内側には布が擦れた微かな痛みと、それとは別の痺れるような感覚がへばりついていた。衆人環視の中で晒された恥辱の記憶が、カッと顔に血を上らせる。同時に、下腹部の奥底でドクドクと脈打つ疼きが止まらなかった。
智也はハンドルを握る指節が白くなるほど力を込めていた。普段は穏やかな夫の横顔に、今は見たこともないほど暗く激しい情欲が張り付いている。バックミラー越しにチラリと朋花を見るその瞳は充血し、獲物を狙う野獣のようにギラギラと光っていた。
家への道ではないことに朋花は気づいていた。いや、無意識にこうなることを望んでいたのだ。
車がラブホテルの駐車場に滑り込むと、智也はエンジンを切るのももどかしげに朋花の手首を掴んだ。
「あっ…」
強引に引かれ、朋花はよろけながら車を降りた。手首を握る智也の手は汗ばみ、熱かった。
部屋に入るなり、ドアが閉まる音と同時に智也は朋花を壁に押し付けた。
「うぐっ…!」
壁ドンなどという生易しいものではない。体重を乗せた全身での押し付けだった。智也の荒い息遣いが顔にかかる。酒もタバコも嗜まない夫の口から、こんなに濃厚な雄の匂いがしたことがあっただろうか。
「智也…待って…」
「待てないよ…!」
智也の声は掠れ、震えていた。「朋花が…あんな姿見せたんだろ…!? あんな…他の男たちに!」
智也の手が朋花のブラウスの襟首を掴んだ。
ビリッ!
容赦なく引き裂かれ、ボタンが弾け飛んで床に散らばる。白い肌が露わになると同時に、智也はさらにスカートのファスナーを乱暴に引き下ろした。布地が擦れる音と共にスカートが足元に落ちる。
下着姿になった朋花を見下ろし、智也は喉の奥で獣のような唸り声を上げた。
「あぁ…見たんだ…俺も見たぞ…」
智也の手が朋花の太ももから腰へと這い上がり、黒いレースのブラジャーのカップを鷲掴みにした。
「あんな布切れ一枚で尻丸出しで…ビール配ってたんだろ…!?」
「うん…配った…」
朋花は小さく頷いた。羞恥で脳が焼き切れそうだった。けれど智也の手が自分の肉を鷲掴みにする感触と、「他の男に見られた」という言葉責めが、体の中のスイッチを容赦なく押し上げていく。
「見られたんだろ…? 朋花の尻も乳も…俺以外の男たちに…!」
「見られた…! たくさんの男に…じっとり見られた…!」
朋花の声は裏返り、甘く湿っていた。
「ほらっ! 興奮してるじゃないか!」
智也はブラジャーのカップを乱暴にずり上げた。弾けるように豊かなバストがこぼれ出す。すでに充血し硬くしこった乳首が智也の目の前に晒された。
「んっ…!」
智也はその桜色の突起に吸い付いた。赤ん坊のようにむしゃぶりつくのとは違う。歯を立て、舌でねじ込み、吸い上げるような激しい愛撫。
「あぁっ! 智也ぃっ!!」
電流が背骨を駆け抜ける。智也は反対側の乳房を掌で押し潰すように揉みしだきながら、空いた手で朋花の尻肉を掴んだ。
Tバックの紐が食い込んで赤くなった肌の跡。智也はその跡を指でなぞりながら、耳元で囁いた。
「ここ…紐食い込んでたんだろ…? 男たちに尻振りながら歩いて…!」
「違う…そんなこと…あぁっ!」
否定しようとした瞬間、智也の手がTバックごと横にずらし、すでに濡れそぼった秘裂に指をねじ込んできた。
「嘘つくなよ朋花! 俺だって見てたんだぞ! お前あんな目で男たち見返してただろ!? 恥ずかしがりながらも嬉しかったんだろ!?」
クチュッ!
卑猥な水音が響き、指が膣奥へと侵入してくる。
「あっ! あぁぁっ!!」
二人分の指が内壁を掻き回すように激しく動く。朋花は壁に背を預けたまま腰を浮かせて喘いだ。
「こんなに濡らして! どろどろじゃないか! お前本当に他の男に見られて興奮したんだな! 淫乱な雌だ!」
「淫乱…私…淫乱な雌…あぁんっ!! もっと! もっと汚してぇっ!!」
普段なら絶対に口に出さないような言葉が、快楽と背徳感に押し流されて溢れ出す。智也はズボンとパンツを一気に脱ぎ捨てると、怒張しすぎて血管が浮き出るほど肥大化した一物を露出させた。
「全部お前のせいだよ! さあ入れさせろ! 他の男たちに見せた罰だ! 受け止めろ!」
智也は朋花の足を大きく開かせると、壁に押し付けたまま一気に貫いた。
「あぐぅぅっ!!」
子宮口を直接突き上げるような強烈な衝撃。朋花は白目をむきそうになりながら悲鳴を上げた。
「くぅっ…きつい! 締め付けてくる! それとも誰か別のが入るのを待ってたのか!?」
「違うっ! 智也だけっ! 智所以外入れないぃっ!!」
智也は容赦なく腰を振った。壁打ちするような激しいピストン運動。その衝撃で朋花の豊満な肉が波打ち揺れる。
「あっ! あっ! 智也! 激しいっ! 壊れちゃうっ! お腹の中かき回されてるぅっ!!」
「壊してやるよ! 俺だけの子種で孕ませてやる! もう他の男には見せられないくらい俺色に染め上げてやる!」
智也は一度ペニスを根元まで引き抜くと、再び深淵まで叩き込んだ。
「あぁぁぁっ!! そこっ! そこ凄いっ!!」
子宮を小突かれる感覚に朋花は痙攣した。壁に爪を立てて耐えるが快楽の波は容赦なく押し寄せる。
(見られたから…こんなになっちゃったんだ…私も智也も…他の男たちに私の体を見られたから…こんなに狂っちゃったんだ…)
背徳のスパイスが快楽を何十倍にも増幅させる。智也はさらにスピードを上げた。
「朋花! 俺のだろ! お前は俺だけのものだろ!?」
「うん! うん! 私は智也だけのもの! あぁんっ!! 他の人になんて見せない! 見せるわけないぃっ!! もっと! もっと奥まで愛してぇっ!!」
二人は床に倒れ込んだ。智也は覆いかぶさると朋花の足首を掴み肩に担ぎ上げ更に深く繋がった。
「いくぞ朋花! 一緒にいこうぜ!」
「いくっ! 智也ぃっ!! 一緒にいくぅぅっ!!」
智也は最後の一撃として根元まで叩き込んだ後一気に果てた。
「くぅぅぅっ!! 朋花ぁぁ!! 出すぞぉ!!」
大量の子種汁が膣奥に注ぎ込まれる熱さと重みに朋花も絶頂へと達した。
「あぁぁぁっ!! 注がれてるぅぅっ!! 智也ぃぃ!! あつぃぃっ!!」
二人は汗と体液にまみれて重なり合ったまま荒い息をついていた。
しばらくして智也はまだ硬さの残る一物を抜くことなく朋花の耳元で囁いた。
「またやろうな…草戦車道」
朋花は汗ばんだ夫の胸に顔を埋め小さく頷いた。
その瞳にはまだ消えやらぬ情欲と共に新たな背徳の炎が宿っていた。
⭐️アンチョビの夜
試合と罰ゲームの興奮が冷めやらぬ河川敷を後にしたアンチョビ、本名・安斎千代美はカルパッチョとペパロニを先に宿へ帰していた。
「明日の便で戻るから、荷物まとめといて」
「千代美は?」
「ちょっとスポンサーに挨拶してくる」
カルパッチョとペパロニは顔を見合わせたが、何も言わなかった。千代美の「挨拶」が何を意味するか、長年の付き合いで察しているのだ。
千代美は主催者に紹介された黒塗りのハイヤーに乗り込んだ。行き先は都内の高級ホテル最上階にあるスイートルーム。車内で千代美は口紅を直しながら、窓の外に流れる夜景を見つめていた。
33歳。アンツィオ高校の隊長として名を馳せてから十年以上が経つ。全国大会の常連校を率いた栄光も、今は昔。戦車道連盟の公式戦に出られるのは学生だけだ。卒業した選手に残された道は、指導者かあるいはプロ選手か草戦車道の世界で細々と生きていくことだけ。
千代美はそのどちらも選んだ。指導者として後進を育てながら、プロ選手として活動。こうした草戦車道のイベントにゲスト出演し、スポンサーとの「個人的な関係」を維持する。そうしなければ戦車道を続けられない。アンツィオの名を残せない。
「プロとして生きるって、こういうことだ」
千代美は誰に言うともなく呟き、口紅を引いた唇をキュッと結んだ。
ハイヤーがホテルの地下駐車場に滑り込む。専用エレベーターで最上階へ。案内された部屋番号の前で、千代美は一度深呼吸をしてからチャイムを鳴らした。
「待ってたよ、千代美ちゃん」
扉を開けたのはトドのような巨漢だった。身長は千代美より頭一つ高い程度だが、横幅は三倍はある。スーツの上からでも分かる贅肉の塊が、歩くたびにブルブルと震えている。田崎剛62歳。都内で複数の企業を経営する資産家であり、草戦車道界隈では有名なスポンサーだ。特にアンチョビの大ファンで、今回のイベントも彼の資金提供がなければ実現しなかったという。
「こんばんは、田崎さん。今日はありがとうございました」
千代美は営業用の笑顔を貼り付け、ぺこりと頭を下げた。
「なに、当然のことをしたまでだよ。それより君の戦いぶり、素晴らしかった!四連勝とはね!」
田崎は千代美をソファへ招き、自らワインを注いだ。深紅の液体がグラスに満ちる。千代美はそれを受け取り、口をつけた。
「うん、美味しい」
「そうだろう。イタリアの希少なワインでね」
千代美がグラスを空けると、田崎はすぐに二杯目を注いだ。その目が獲物を値踏みするように細められているのを、千代美は見逃さなかった。
「千代美ちゃん、君は小柄だけど本当に美しいね。戦車に乗っている姿もいいが、こうして見るともっといい」
「お世辞がお上手ですね」
「お世辞じゃないさ。わしは君のファンになってからもう十年になる。初めて君が全国大会に出たときからずっと見てきたんだ」
田崎の手が、千代美の膝に置かれた。肉厚で汗ばんだ掌。千代美は一瞬身を固くしたが、すぐに力を抜いた。これは仕事だ。戦車道を続けるための、必要な経費だ。
「今日は…泊まっていけるんだろう?」
「ええ、そのつもりで来ました」
千代美が微笑むと、田崎の顔が下品に緩んだ。
「よかった。わしはね、君のことを考えると夜も眠れんのだ。特にあの白い戦車服の下の体を想像すると…」
田崎は立ち上がり、千代美の隣に腰を下ろした。ソファが軋む。彼の体からは高級なオーデコロンと汗の混じった匂いが漂っていた。
「もう一杯どうだ?」
「いただきます」
三杯目のワインを飲み干した頃、千代美は体の奥底から熱が湧き上がってくるのを感じた。顔が火照り、息が少し荒くなる。下腹部に鈍い疼きが走り、太ももの内側がじんわりと湿っていく感覚。
(これは…ただのワインじゃない…)
千代美は悟った。媚薬が入っている。田崎は最初からそのつもりだったのだ。
「千代美ちゃん、顔が赤いよ。どうした?」
田崎がにやにやと笑いながら千代美の頬に手を伸ばした。その指が耳の後ろをなぞり、首筋へと下りていく。
「んっ…」
千代美の口から小さな吐息が漏れた。自分でも驚くほど甘い声だった。媚薬の効果は予想以上に強い。全身の感覚が過敏になり、田崎の指が触れるだけで電流が走る。
「いい声だ。もっと聞かせておくれ」
田崎は千代美のブラウスのボタンに手をかけた。太い指が不器用にボタンを外していく。ひとつ、ふたつ、みっつ。ブラウスがはだけられ白いレースのブラジャーが露わになる。
「おお…美しい…」
田崎の目が爛々と輝いた。千代美は小柄だが、その体は十分に女性的な丸みを帯びている。ブラジャーの上からでも分かるふっくらとした膨らみ。くびれた腰。戦車道で鍛えられた引き締まった太もも。
「立ってくれないか」
千代美は言われるままに立ち上がった。田崎はソファに座ったまま、彼女のスカートのファスナーを下ろした。スカートが足元に落ちる。白いショーツが露わになり、その中心部にはすでに小さな染みができていた。
「もう濡れているのか。嬉しいね」
田崎は千代美のショーツの上から、秘所をそっと撫でた。布越しでも分かる熱と湿り気。
「あっ…」
千代美は腰を震わせた。自分の意志とは関係なく、体が男の指を求めている。媚薬が理性を溶かしていく。
「さあ、わしも脱ごう」
田崎は立ち上がるとスーツを脱ぎ捨て、シャツのボタンを外した。現れたのは何年も鍛えていないのが一目で分かる贅肉の塊だった。胸は脂肪で垂れ下がり、腹は幾重にも段になって突き出ている。臍の位置すら分からないほど肥え太った体。そして、その下腹部からは不釣り合いに怒張した一物が突き出ていた。
「どうだ、立派だろう?」
田崎は自慢げに笑った。確かにその体躯に見合った太さと長さがあった。血管が浮き出て、先端からはすでに透明な液が滲んでいる。
千代美は内心でため息をついた。この巨漢に覆いかぶさられたら、小柄な自分は押し潰されてしまうだろう。だが、逃げるわけにはいかない。これは仕事だ。プロとしての義務だ。
「ベッドに行こうか」
田崎は千代美の手を引いた。キングサイズのベッドが部屋の中央に鎮座している。千代美はブラジャーとショーツを自ら脱ぎ、ベッドに横たわった。
「美しい…まるで芸術品だ…」
田崎は息を呑み千代美の裸体をじっくりと眺めた。白い肌。形の良い小さな乳房。その頂点で硬くしこった桜色の乳首。くびれた腰となだらかな曲線を描くヒップ。そして、薄い茂みに隠された秘裂。
「さあ、千代美ちゃん…いや、アンチョビ…わしの夢を叶えておくれ…」
田崎はベッドに乗り上げると、その巨体を千代美の上に覆いかぶせた。
「うっ…」
千代美は思わず声を漏らした。圧倒的な重量。胸が圧迫され、息が詰まる。田崎の腹の肉が千代美の全身を包み込むように覆っている。
「軽い…君は本当に軽いな…まるで羽毛のようだ…」
田崎は千代美の首筋に顔を埋めむしゃぶりついた。舌で耳の後ろを舐め、鎖骨をなぞりそして小さな乳房に吸い付いた。
「あっ…あぁっ…」
媚薬の効果で感度が上がっている千代美の体は、田崎の愛撫に素直に反応した。乳首を吸われるたびに、下腹部に鋭い快感が走る。
「感じているのか?いい子だ…」
田崎は片手で千代美の乳房を揉みしだきながら、もう一方の手を彼女の股間へと這わせた。太い指が秘裂をなぞり、入り口を探る。
「もうこんなに濡れて…千代美ちゃんは淫乱だな」
「ちが…あぁっ!」
否定しようとした言葉は、指が膣内に侵入した瞬間甘い悲鳴に変わった。クチュクチュと水音が響く。田崎の指は太く、内部を圧迫するような感覚。
「狭い…素晴らしい…これならわしのを咥え込んだら、さぞ気持ちいいだろうな…」
田崎は指を抜くと、その汁で濡れた指を千代美の目の前に突き出した。
「ほら、君の蜜だ。舐めてみろ」
千代美は一瞬ためらったが、言われるままに口を開け自分の愛液が絡んだ指を舐めた。少し塩辛い味。屈辱的な行為のはずなのに、体はますます熱くなっていく。
「いい子だ…では、そろそろ…」
田崎は千代美の足を大きく開かせ、自分の腰をその間に割り込ませた。怒張したペニスの先端が、濡れそぼった入り口に押し当てられる。
「いくぞ…アンチョビ…わしのアンチョビ…!」
田崎は一気に腰を突き入れた。
「あぐぅっ!!」
千代美の背中が弓なりに反る。あまりの圧迫感と充実感に、視界が白くかすんだ。小柄な体には大きすぎるペニスが、膣壁を押し広げながら奥へ奥へと侵入してくる。子宮口に先端が触れた瞬間、千代美は全身を痙攣させた。
「き、きつい…! でも…あぁっ! 奥まで…!」
「全部入ったぞ…! 素晴らしい…! 君の中は…最高だ…!」
田崎はしばらく動かず、その感覚を味わっていた。千代美の内壁がペニスをぎゅうぎゅうと締め付け、脈打っている。
「動くぞ…千代美ちゃん…!」
田崎は腰を引き、そして再び深く突き入れた。重量感のあるピストン運動が始まる。ベッドがギシギシと軋み、田崎の腹の肉が千代美の全身にぶつかるたびにパチュパチュと音を立てる。
「あっ! あっ! あぁっ! 激し…! 奥…奥に当たってるぅっ!」
千代美はシーツを掴みしめ激しい快楽の波に翻弄されていた。田崎は腰を振りながら、千代美の小さな体を抱きしめるように覆いかぶさっている。まるで獲物を丸呑みにする大蛇のようだ。
「千代美ちゃん…! 素敵だ…! 君は…最高の女だ…!」
「あぁんっ! 私も…! 気持ちいぃっ!」
もはや仕事だか快楽だか分からなくなっている。媚薬が理性を完全に溶かし、千代美はただの雌として田崎を受け入れていた。
「もっと…! もっと激しく…!」
千代美は自ら腰を動かし田崎のペニスを求めた。その姿に田崎はさらに興奮し、ピストン運動を加速させる。
「千代美ちゃん…! わしは…! わしはな…!」
田崎は千代美の耳元で荒い息を吐きながら囁いた。
「君に…君にわしの子を…孕んでほしぃんだ…!」
「え…?」
千代美の目が見開かれる。
「千代美ちゃん…! 孕め…! わしの子を…孕むんじゃーーーー!!」
田崎は最後のひと突きを千代美の最奥に叩き込むと、堰を切ったように大量の子種汁を放出した。
「あぁぁぁっ!! 熱いぃっ!! 中に…出てるぅっ!!」
千代美はその熱さと圧倒的な量に、再び絶頂へと導かれた。膣内がビクビクと痙攣し、田崎の精液を一滴残らず吸い取ろうとするかのように締め付ける。
「出す…! 全部出すぞ…! 千代美ちゃん…! アンチョビ…! わしの…わしだけのアンチョビに…!」
田崎は腰を押し付けながら、最後の一滴まで搾り出すように射精し続けた。
長い射精が終わると田崎はその巨体を千代美の上に完全に預けた。千代美はその重みに耐えながら、天井を見つめていた。
(孕め…か)
千代美は内心で苦笑した。もちろん、ピルは飲んでいる。こういう事態は何度もあった。プロとして、自分の身は自分で守る。それが戦車道を続けるための、女の戦略だ。
「千代美ちゃん…愛してるよ…」
田崎は満足げに眠りに落ちようとしていた。
「私もです、田崎さん。今日は本当にありがとうございました」
千代美は営業用の笑顔で答え、そっと田崎の巨体を押しのけてベッドを抜け出した。
バスルームに向かいながら、千代美はスマホをチェックする。カルパッチョからの「お疲れさま。大丈夫?」というメッセージに、短く「問題なし」と返信した。
シャワーを浴びながら、千代美は今日一日を振り返った。
河川敷での試合。あの綾瀬朋花という女性。彼女もまた、家庭と戦車道の両立に悩む一人の戦士だ。自分が高校生の頃、画面越しに見ていた憧れの選手。そして今こうして裏では体を売り、表ではヒーローを演じる。
「戦車道が好きだから」
千代美は湯気に消えるようにつぶやいた。
「好きだから、何だってする」
それがプロとして生きる女の覚悟だった。