ノックの後、ドアを開けてまなみが姿を見せた。
「今日のご奉仕に来たんだけど、入っていい?」
「もちろん」
まなみは部屋に入ってきて、ベッドの端にちょこんと腰かけた。もちろん全裸で、手には小さな箱……コンドームの箱がある。
やはり、そこについては触れておかなくてはならない。僕は歯切れ悪く切り出した。
「あの、昼間は、その……ごめんね。いきなり変なこと言って」
「え、何のこと?」
まなみはそう言って首を傾げた。
あれ、おかしいな。気にしてると思ったのは、僕の勘違いだったのだろうか。
「いや、買い物に行ったときのやつだよ。前振りも何もなく、いきなり『今晩セックスしよう』って誘ったのと同じことだよね。気を悪くしたかなと思って」
「え、別に」
僕としてはかなり思い切って謝ったのだが、まなみは事も無げに言う。
「それは、あんな街中でいきなりそんなことを言いだしたのには驚いたけど。結構、周りに人いたし」
「……え、そうだったっけ」
「うん。横のおばさんに聞かれてないか、冷や冷やしてた」
僕は必死に記憶をたどりながら、背中に冷や汗が伝うのを感じる。そんなにヤバい状況だったのか。
ということは、まなみはセックスのお誘いについてはそこまで気にしていないということだろうか。僕が聞くと、まなみはあっさりと頷いた。
「まあ、何も言われなくても勝手に買ってくるつもりだったし」
「え」
「それで、逃げ場をなくしてご主人様を襲おうかなって」
「……」
僕は絶句した。
嫌々ご奉仕をされるよりは、自分からやってくれる方が罪悪感は薄れる。しかし昨日から今日に至るまで、まなみが理想的な奴隷すぎて、怖さすら感じる。
僕が黙っていると、まなみは四つん這いで僕に顔を寄せてきた。
「じゃ、やろっか」
「……はい」
この状況で、頷く以外の選択肢はない。
「服は自分で脱ぐ? それとも、脱がせてあげたほうがいい?」
「自分で脱ぐ」
子どものように服を脱がせてもらうなんて、僕の自尊心が保てそうにない。
僕はシャツに手をかけようとして一瞬躊躇したが、今更恥ずかしがっている場合ではない。昨晩の時点で、下半身は晒しているのだ。
僕は手早く服を全部脱いで、裸になった。服をたたむのももどかしく、ベッドの下に投げ捨てる。
僕の股間は、当然のように勃起していた。
昨日からずっと裸のまなみがいるのだから、そろそろ慣れてもおかしくないと思うのだが……。そこは、魅力的すぎるまなみが悪いということにしておく。
僕の裸体を見て、まなみはニコリと笑う。
「じゃあ、始めるね」
まなみはそう言うと、いきなり僕の股間に手を伸ばそうとする。僕は慌てて止めた。
「ちょ、ちょっと待って」
「なんで?」
まなみは怪訝な表情をしているが、ここは僕も譲れない。僕はきっぱりと言った。
「改めて言うけど、僕って童貞なんだよね」
「うん」
「セックスはもちろん初めてなわけで」
「うん」
「だから、ちゃんとやりたいんだよね。挿入してただ出すだけじゃなくて、いろいろとさ」
「いろいろって、たとえば?」
まなみに純粋な眼差しで見つめられ、ドギマギしてしまう。僕は何とか言葉を返した。
「だから、その……き、キスとかさ……」
「ぷっ」
まなみはこらえきれずに吹き出した。僕は抗議の声を上げる。
「笑うことないだろ」
「なんか童貞丸出しって感じで、ウケる」
「しょ、しょうがないだろ」
「ごめんってば」
まなみは謝りながらも、スムーズな動きで僕に顔を近づけてきた。避ける余裕も与えてくれない。
まなみは僕の唇にそっと口づけした。突然のことに、僕の思考は停止する。
目を白黒させて固まる僕を尻目に、まなみの責めは続く。まなみの舌が唇へと押しつけられ、そのまま口の中へと侵入してきた。
僕の舌に、まなみの舌がからみついてくる。
「ん……ちゅっ……」
ひとしきり僕の口内を蹂躙した後、まなみは唇を離した。至近距離で、まなみの息づかいが伝わってくる。
「どう?」
「すごくいいです」
つい敬語になってしまった僕に、まなみはクスリと笑う。
「じゃ、今度は私に触れてみて」
そう言われて、僕は今度こそ固まった。今までのご奉仕では、すべてがまなみ主導だった。自分からまなみの身体に触れるなんて、どこをどう触ったらいいのか分からない。
そんな僕を見て、まなみはじっとりとした目で僕を見た。
「女の子の身体に触れてみたくないの?」
「……触りたいです」
「だったら、好きなように触ればいいじゃん」
そんなことを言われてしまっては、拒否できるはずもない。僕はぎこちない手つきで、まずはまなみの腕に手を伸ばした。
初めて触れたまなみの腕は、やはり細い。そして、肌は信じられないくらいスベスベだ。いつまででも触れていたくなる。
僕はそっとまなみの背中に手を回した。しかし、抱きしめる勇気はない。身体が接触しないように気をつけながら、まなみの背中を撫でる。やはり、つるりとした感触は自分の肌とは大違いだ。
「おお……」
「あのさ、そんなにおそるおそる触られても、くすぐったいだけなんだけど」
まなみの不満げな声に、僕はドキリとして手を引いてしまった。
「ご、ごめん」
「それにさ」
まなみはそう言いながら、両手を胸に当て、下から持ち上げてみせた。
「おっぱい、触りたくないの?」
「……触りたいです」
「なら、遠慮しないで触ればいいのに」
その言葉は、勇気の出ない僕の背中を押すには十分だった。僕は導かれるままに、まなみの胸に手を伸ばした。
まなみの胸は、さほど大きくはない。だから、僕の両手でガッチリと鷲掴みにすることができた。指先に、ぷにっとしたやわらかい弾力が伝わってくる。
「うわぁ……」
僕はあまりの心地よさに声を上げていた。気分が高揚してきて、何度も揉む。やはり、いい。何回揉んでも飽きない。
好き放題揉まれているまなみはというと、僕の手の動きにも無反応だった。僕は気になって尋ねてみた。
「おっぱいって、揉まれても気持ちよくないの?」
「そんなには。だって、ただの脂肪だし」
うーん、僕はまなみにも気持ちよくなってほしいんだけど。
そう思った僕は、今度はまなみの乳首を指でつまんでみた。
「んっ……」
今度は反応があった。僕はそのまま乳首をいじり回す。
まなみの乳首はおそらく標準より少し大きめで、ポチリと膨らんだピンク色の乳首は、触るたびに少しずつ硬さを増していった。
「乳首は気持ちいいの?」
「多少はね」
まなみは口調こそ冷静だったが、頬をわずかに赤らめたその姿は、先ほどまでとは明らかに様子が違う。
僕が乳首責めを再開しようとしたところで、まなみは半ば強引に僕に抱きついて、唇を合わせてきた。
まなみの唇を感じながら、僕も今度こそ素直にまなみの背中に手を回して、まなみを抱いた。今度は僕も舌を出して、お互いの舌を絡め合う。
唾液の交換が終わると、僕はまなみを抱き寄せて身体を密着させた。
まなみの身体は華奢で、強く抱きしめると壊れてしまいそうだった。僕はまなみの背中で腕を交差させ、優しく抱いた。まなみの鼓動が、身体を通じて伝わる。
「まなみは、僕のものだからね」
「うん」
「離さないからね」
「……うん」
僕の胸の中で、まなみは素直に頷いた。抱き合ったまま、静かな時が流れていく。