「来週からは中間試験が始まります」
朝のホームルームで、担任が言った。
三年になったのがつい最近だと思っていたら、いつの間にかもう五月の半ばだ。時が経つのは早いものだ。
普通の高校なら三年生ともなれば受験シーズンであり、ピリピリとした空気が流れるところだ。
しかし、僕らの学校は付属高校だった。偏差値はそれほど高くはないが、内部進学組が多いのでそこまでのピリピリ感はない。
かくいう僕も内部進学を希望していた。これまでの成績的には、大きなヘマさえしなければ問題ない。
とはいえ、油断も禁物だ。三年になって、授業のレベルは明らかに上がっていた。中間試験で赤点でも取ろうものなら、さすがに危なくなってくる。
僕は配布された試験日程のプリントを見た。
教科の組み合わせによって、重い日、軽い日というものがある。重い日に照準を合わせて、試験勉強の計画を立てる必要がある。
そんなことを考えながら眺めた試験日程の最終日に、見慣れない文字を見つけた。
奴隷学。
今まで聞いたことも見たこともない。僕がプリントから顔を上げると、丁度よく質問の声が上がった。
「先生、この最終日の『奴隷学』ってのは何ですか?」
当然の質問に思えたが、先生はあぁそんなことか、と言わんばかりに平然と答えた。
「三年になってから、皆さん奴隷を手にしたでしょう? それについての抜き打ちテストです」
教室内がざわついた。
「どんな内容ですか?」
「テキストはありますか?」
「何を対策しておけばいいんですか?」
あちこちから質問が飛ぶ。しかし、先生はあっさりと言う。
「抜き打ちテストだと言ったでしょう。内容は言えませんが、いきなり無理難題を押し付けたりはしないのでご安心を」
先生はそれだけ言うと、さっさとホームルームを切り上げて教室を出て行ってしまった。
ざわめく教室で、僕は再びプリントに目を落とした。
奴隷学……一体、どんなテストをするのか。
正直、自分には主人としてのスキルは全然足りていないと思っている。それが、テストによって可視化されるとしたら……想像するのも恐ろしい。
もはや、ほかの教科のことなんて頭になかった。僕の頭は、奴隷学のことで一杯だった。
そしてやってきた、中間試験最終日。
これまでの試験は、おそらく平均より少し上くらいだと思われる。そして、そんなことなど些細な問題だ。
「これから、奴隷学の試験を始める。呼ばれた者から順番についてくるように」
担任は五十音順で先頭から五人を指名して、移動を開始した。僕は六番目だったので、そのまま教室に待機する。
十分ほど待つと、今度は別の先生が呼びに来た。僕を含めた、出席番号六番から十番が席を立つ。もちろん、それぞれの奴隷も一緒だ。
先生に連れられて、僕たちは教室のある本棟から別棟の教室へと移動した。
移動先の教室は、机が片付けられていて広々としていた。床には、体育で使うようなマットが五枚、並べられている。
教室に入ると、担任が待っていた。担任は僕ら五組の主人と奴隷にそれぞれ、一枚ずつのマットを割り当てた。
これから何が行われるのか。僕は固唾を飲んで担任の言葉を待った。
すると、担任はあくまで事務的に言い放った。
「これから、皆さんにはセックスをしてもらいます」
僕たちは思わず沈黙した。衝撃的すぎて、リアクションができない。
担任はそんなことを気にする様子もなく、説明を続けた。
「制限時間は20分、途中退室ありです。マットの横にあるコンドームは使ってもいいし、使わなくても構いません」
「ちょ、ちょっ……」
僕は頭が整理できないままに必死に割り込もうとしたが、担任は聞こえなかったかのように無視し、そして宣言した。
「では、開始してください」