※この作品はR-18です。

通っていた学校が奴隷養成所だった   作:dddddddd

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23.奴隷学の勉強会

 僕は勉強会の教室で立ち尽くしていた。皆が、僕を尊敬の眼差しで見つめている。

 

 僕は急いで江川君に抗議した。

 

「ちょっと、聞いてないんだけど!」

「そうだね、ごめん」

 

 江川君は悪びれもせずに答えた。

 

「でも、みんな知りたがってるよ。小森君がどうやって学年一位を取ったのかって」

 

 見渡すと、何人もの男子たちがうんうんと頷いている。

 

 僕はため息をついた。

 

「……学年一位だなんて、言った覚えはないけど」

「あれ、違った?」

 

 江川君に無邪気に問い返されて、僕は黙ってしまう。しかし、この場面での沈黙は肯定に等しい。僕は再びため息をついた。

 

「教えられることなんて、何もないけどなぁ」

「そう、そこなんだよね」

 

 江川君は熱心に身を乗り出してきた。

 

「言い方が悪いかもしれないんだけど、小森君って本当に特別なことを何もしてなさそうなんだよね」

「……」

「だからこそ、そんな小森君の話を聞くことで僕らにとって参考になることがあるんじゃないかと思ったんだ」

 

 僕は改めて教室内を見渡した。男子たちも女子たちも、僕を期待のこもった目で見ている。これは、どう見たって逃げ出せるような雰囲気ではない。

 

 僕は三度、ため息をついた。

 

「……今回だけだよ?」

「ありがとう、小森君!」

 

 江川君は嬉しそうに僕に向かって握手を求める。僕はその手を力なく握った。

 

 

 

 

 

 僕はやむなく江川君の提案を受け入れて、教壇に立った。皆の視線が集中するのを感じて、足が震えてしまう。

 

 ここに集まっている生徒は、少なくともこの中間試験を奴隷没収無しで乗り切っている。つまり、主人と奴隷として最低限の関係性を築けている……つまり、良い人たちだ。その純粋な目が、僕の全身に突き刺さる。

 

 しかし、僕が話さないことにはこの状況は進まない。僕は覚悟を決めて話し始めた。

 

「えー、ご紹介に預かりました、三年四組の小森です。前回の中間試験では、学年一位でした……一応」

 

 おぉー、と感嘆の声が上がる。そんなに、眩しいものを見る目で見ないで欲しい。

 

「それで、今日は僕がこれまでにしたことを簡単に話そうと思います。あまり、参考にならないかもしれないですけど……」

 

 僕の話し方はだいぶ卑屈だったと思うが、皆は拍手で返してくれる。くすぐったくってたまらない。

 

 僕は、まなみとの出会いから順番に話していくことにした。

 

「正直、最初はぎこちなかったです。なんて話したらいいのか分からなくて無言が続いて。でも、彼女、その……まなみが」

 

 僕は横のまなみを指し示した。まなみは僕が話し始めた時から横にぴったりとくっついて僕を支えてくれていた。心強いが、皆に見られている前だとさすがに恥ずかしさが勝つ。

 

 僕はまなみがどれだけの覚悟を持って僕と向き合ってくれたか、僕の背中を押してくれたかを熱弁した。僕には何もないから、まなみを褒めたたえるくらいしかできない。

 

 皆は頷いたりメモを取ったりしながら、真剣に僕の話を聞いていた。そんな中で話しづらいが、そういう話もしないわけにはいかない。

 

「結果的に、家の中では結構……そういうことはしてる、と思います。たとえば……家の中では服を脱いでもらったり。あとは、夜のご奉仕も毎日……」

 

 小さく歓声が上がる。意外そうに僕を見る者もいれば、顔を赤らめて目を逸らす者もいた。ここにいる誰もが、そういうことには慣れていないことがありありと伝わってくる。

 

 みんな、そういうことを意識してないわけがない。そんな中で、お互いに言い出せないだけなんだ。

 

 そう考えると、僕の気持ちも少し楽になってきた。僕の口もスムーズに回り出す。

 

「だから、大事なのはきちんとお互い本音で話すことだと思います。信頼関係を築いて……」

 

 そこまで言ったところで、僕は担任の言葉を思い出していた。

 

 評価基準の話がどれだけ生徒間に出回っているのかは分からない。重要な情報だとは思うので、これを話せばみんなの成績は多少なりとも上がると思う。

 

 僕の学年一位の座は危うくなるわけだが、その時はその時だ。僕としても一位に固執する理由は何もない。

 

「ちなみに、進路相談の時に先生に聞いた話だと、学校側の評価基準は『奴隷と信頼関係を築けているかどうか』だそうです。参考にしてみるといいかもしれません」

 

 僕の話を、全員が真剣な表情で聞いていた。やはり、皆にとっては初めて聞く情報だったらしい。

 

「……ということで、僕からの話はこれで終わりです」

 

 僕がそう締めると、一斉に拍手が巻き起こった。なかなか鳴りやむ気配がない。

 

 僕は急に恥ずかしさがこみあげてきて、急いで教壇を降りた。江川君の元に駆け寄り、小声で言う。

 

「こういうのは、今回限りにしてほしいんだけど」

「もちろん。そんな毎回、無理は言わないよ」

 

 江川君はそう言うと、みんなに向かって呼びかけた。

 

「今日はこれで終わりにします。この話を各自で持ち帰った上で、次回はその成果を話し合うディスカッションをしたいと思います。毎回小森君に頼るわけにはいかないので、みんなで協力して、頑張っていきましょう!」

 

 こうして、勉強会は解散となった。皆が帰っていき教室内の人影もまばらになった頃、江川君が申し訳なさそうに僕に向かって頭を下げた。

 

「ごめん、小森君。だまし討ちみたいなことして」

「いや、いい……わけはないけど、みんなの参考になったのならよかったよ」

 

 僕としてもかなり恥ずかしくはあったが、ちやほやされるのは悪い気はしない。そう伝えると、江川君はホッとした表情だった。

 

「参加は強制じゃないから。次回以降は、気が向いたときに参加してくれればいいよ」

「了解。当然、次は講師役じゃないよね?」

「それは絶対にないと誓うよ。軽くおしゃべりするくらいの感じで来てくれて構わないから」

 

 江川君の言葉に、僕は頷いた。

 

 今日は僕が話すばかりだったが、他の奴隷所有者の話を聞くのは参考になることもあると思う。たまに情報交換しにくるのは悪くないかもしれない。

 

 僕は肩の荷が下りて、晴れやかな気分で教室を後にした。

 

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