僕は、これからまなみにエッチな命令をする。そう覚悟を決めたからには、これまで通りではダメだ。僕は立ち上がって、まなみを見下ろした。
「そろそろ、僕も覚悟を決めるよ。今から僕は君のご主人様となる。となれば、ある程度ルールは決めておかないといけない」
「ルール?」
「そう。普通に一緒に暮らすときだって、ある程度の線引きはないと喧嘩になるでしょ? 主人と奴隷の間でだって、何かないと安心して過ごせないと思う」
僕の言葉に、まなみは納得したように頷いた。僕はまなみに向かって、まずは一本指を立てた。
「まず、これまで沢北さんって呼んでたけど、それは正しくない。これからは、まなみって呼ばせてもらうね」
「うん。それはもちろん」
よく考えると結構ひどい話なのだが、まなみは素直に同意した。僕は二本目の指を立てる。
「僕の方の呼び方は……そうだな……」
僕は少し迷った。下の名前で様付けで呼ばせるのは、周りの目を考えたときに恥ずかしすぎる。だったら……。
「僕のことはご主人様と呼んでほしい」
「分かった、ご主人様」
まなみの返事に僕は頷き、三本目の指を立てた。
「次に、敬語は禁止。なぜなら、いちいち話すのに緊張したくないから」
「まあ、分かる。じゃあ、今まで通りタメ口で話すね、ご主人様」
まなみはサラッと言ったが、タメ口とご主人様という呼び方がアンバランスで、どこかゾクゾクする。しかし、そんなことでいちいち話の腰を折っていられない。僕は四本目の指を立てた。
「四つ目は、僕の欲望を満たすための、エッチな命令なんだけど」
「うん」
まなみが緊張したように姿勢を正した。僕も緊張するが、ここで曲げるわけにはいかない。思い切って、言葉を発する。
「この家の中では、一切の衣服を身に着けることを禁じる」
「……」
まなみは無言で、無表情だった。僕は慌てて五本目の指を立てた。
「最後に、学校や外ではエッチなことはしない。僕が恥ずかしいから。……って感じの五つのルールを考えたんだけど、ダメかな?」
僕はどうしても気恥ずかしさを我慢できず、最後の言葉を付け加えた。まったく、主人らしくない。僕はドキドキしながらまなみの反応を見た。まなみは、クスリと小さく笑っている。
「なにそれ。ご主人様なんだから、堂々と命令すればいいのに」
「ご、ごめん」
シュンとする僕を見て、まなみはニコリと笑みを浮かべながら、そして言った。
「まあ、いいよ。それくらいなら」
「え……」
受け入れられると思っていなかった僕は、思わず固まった。そんな僕を見て、まなみは楽しそうに笑う。
「別に、考えていたうちの最悪ではないかな。外で何もしないっていうのは助かるし」
「……ちなみに、想定してた最悪なのって、どんなの?」
「法律違反にならないギリギリで、ずっと裸で連れ回されて、ところ構わず犯される、とか?」
「……」
「家畜同然の扱いで、犬小屋に住まわされるとか?」
そんなこと……いや、やってくれるなら一度くらいやってみたいけど、そんな大それたことを命令する度胸は僕にはない。
「そんなこと、命令できないよ」
「だから、まあよかったって感じ。どんなご主人様か、当たりか外れかドキドキしてたけどね」
「へ、へぇ……」
僕は言葉を濁した。僕も考えていたようなことを、やっぱり女子たちも考えていたんだ。でも、だとしたらまなみは僕のことをどう思っているのだろうか。口ぶりから考えるとそんなに悪い評価ではないようだが、それでも聞くのは怖い。
しかし、ここで聞いておかないともう聞けない気がして、僕は思い切って尋ねた。
「そ、それで、まなみにとっての僕は、当たり? それとも、外れ?」
「うーん、そうだなぁ」
まなみは、上を向いて考え込む。
「当たりの部類ではあるかな。エッチな命令は家の中で完結してるし、自分の部屋も用意されてるし。いや、そう考えるとかなり当たりかも」
「そ、そう。それはよかった」
「あ、でも、何もない平常時に告られたら、それは断るかもだから、大当たりではない」
「……それは言わなくていいじゃん」
「あはは」
僕の反応を見て笑うまなみは、ずいぶんとリラックスした様子だった。話している内容はひどいが、まなみが少しでも安心できたのならよかった。僕はホッと胸をなでおろす。
まなみは、そのままのリラックスした口調で、何でもないことのように言った。
「じゃあ早速、服を脱がないといけないってことね」
まなみはそう言いながら制服のボタンに手を掛けた。
油断していた僕の心臓が、またしても大きく跳ねた。