まなみは椅子から立ち上がり、上着のボタンを外していく。僕は動転して、まなみに待ったをかけた。
「い、い、今? ここで?」
分かりやすく慌てだした僕を見て、まなみは不思議そうに首を傾げた。
「だって、家の中で服を着てはいけないんだから、今の私は絶賛ルール違反中でしょ?」
「う……」
まなみの言う通りだ。言う通りなのだけど、僕は見てはいけないものを見ている気分だった。自分で決めたルールだというのに、情けないことこの上ない。
「まなみは、恥ずかしくないの?」
僕の間抜けな発言に、まなみは呆れたように僕を見た。
「恥ずかしいに決まってるでしょ。でも、ご主人様の命令だから」
そう言ってまなみはブレザーの上着を脱いだ。椅子の背に掛けて、今度はスカートに手をかける。しかし、今度はなかなか動き出さない。まなみは顔を上げて、恥ずかしそうに頬を染めた。
「……そんなに見られると、脱ぎづらいんだけど」
「ご、ごめん」
僕は慌てて目を逸らすと、さらに呆れた様子の声が追いかけてきた。
「あのさ、ご主人様に見られるために脱いでるのに、ちょっと言われたら目を逸らしちゃうのはどうなの?」
「お、おっしゃる通りです」
僕は急いで視線をまなみへと戻した。まなみはスカートのホックを外し、ストンと床に落とした。
Yシャツの裾に隠れて、薄いブルーのパンツがチラ見えする。まなみはそれを隠すようにYシャツを下に引っ張りながら、床のスカートを拾い上げた。丁寧にたたんで、椅子の上に置く。
まなみはYシャツのすそを掴んでいじいじしていたが、僕の視線に気づいて手を離し、今度はYシャツのボタンに手を掛けた。
プチン、プチンと一つずつボタンが外されていく。僕が息を呑んで見つめる中、すべてのボタンが外され、まなみはYシャツを広げて腕から抜く。
Yシャツをたたんでいるまなみは、いまやキャミソールにパンツ姿だ。先ほどは半分ほど隠れていたパンツがはっきりと見え、そこから伸びる綺麗な太ももはやはり美しい。
「うわぁ」
思わず声に出してしまった。その声に反応し、まなみは僕を恨めしそうに見た。
「なに?」
「いや、やっぱりスタイルいいなと思って」
「このタイミングでそれ言う? 恥ずいんだけど」
そう言いながら自らの身体を抱くまなみは本当にかわいらしい。しかし、本番はこれからだ。
「じゃあ……続きをお願い」
「……わざわざ言わなくても、分かってるから」
まなみはぶつくさ言いながら、今度は一気にキャミソールを脱ぎ去った。
パンツと同じ、薄いブルーのブラジャーが僕の眼前に現れた。制服の上からの想像通り、その胸のふくらみが確かな谷間を作っていた。
しかし、と僕は思った。まなみは身長の低さもあいまって、触れたら壊れてしまいそうなくらい華奢だった。さすがに骨が浮き出るほどではないが、それにしたって細すぎて心配になってしまう。
とはいえ、余計な口を挟むわけにもいかない。僕は静かに眺めて続けたが、まなみの動きが急に鈍った。いくら覚悟を決めたところで、やはり恥ずかしいのだろう。
まなみは、思い出したように靴下を脱いだ。これまた丁寧にたたんで椅子の上に置くが、大した時間はかからない。残りはブラジャーとパンツのみ。これ以上まなみに逃げ場はない。
まなみは観念したように大きく息を吐くと、背中に手を回した。緊張しているのか、なかなかホックが外れない。
その時、プチンという音が響き、肩ひもが緩くなった。ホックが外れたのだろう。まなみは右手でブラジャーを押さえながら、肩ひもを外した。まなみは真っ赤な顔で、チラリと僕の方を見た。目が合う。
そして、まなみはゆっくりとブラジャーを下におろす。まなみの胸が、露わになった。
僕は食い入るようにその胸を見つめた。ブラジャーの跡が残るその胸は、決して大きくはない。しかし、手のひらにすっぽりと収まりそうなそれは、男好きのするサイズだった。小さめの乳輪に、ぷっくりとした乳首がツンと上を向いている。
「しょぼい、って思った?」
まなみは俯きながら問いかけてくる。僕は全力で首を横に振った。
「全然! めちゃくちゃエロいと思う」
「やめてよ、そんなんじゃないから」
まなみは恥ずかしそうに手で胸を隠しかけたが、その手は迷ったように途中で止まり、そして下ろされた。こんな状況でも隠すべきではない、と考えた自主性には頭が下がる。
「……」
「……」
お互いに無言になってしまう。その間にも、僕はまなみの胸に釘付けだった。鼻息荒く、その美乳を眺め続ける。だから、まなみが言いにくそうに口を開いたことにもすぐには気づかなかった。
「……分かってるって。下も脱げって言うんでしょ?」
まなみの言葉に我を返り、僕はようやく胸から視線を外した。まなみは震える手でパンツに手を伸ばす。
僕はここまでやらせておいて何を言うかと思われるかもしれないが、急に申し訳ない気持ちが込み上げてきた。僕は遠慮がちに声をかけた。
「……つらいなら、今日はやめといてもいいけど」
しかし、まなみはそれを聞いて怒ったように言った。
「そんなことないから! 変に気をつかわないで」
言い終わるやいなや、まなみはすぐにパンツに手をかけると、一気に下におろした。両足を抜いて、椅子の上に勢いよく投げ捨てる。
まなみが、一糸まとわぬ姿で僕の前に立っていた。
僕は早速露わになったまなみの下半身に視線を注ぐ。パンツ姿でも分かっていたが、まなみの腰、そして尻はやはり細い。腰が細すぎるからくびれはあるのだが、安産型とは対極の体型だ。
そして、その股間には……毛が一切ない。綺麗な一本スジが、惜しげもなくむき出しになっている。
僕の視線に気づいて、まなみが遠慮がちに声を上げた。
「ご主人様はこういうのは嫌い……?」
「いや! すごく好き! めちゃくちゃエロい!」
僕は半ば食い気味に否定した。まなみは顔を真っ赤に染めながら恥ずかしそうに笑う。
「……じゃあ、これからも剃るようにするね」
「お願いします」
思わず敬語になってしまったが、そんなことを指摘する者は誰もいない。
僕は改めてまなみの裸体を上から下まで観察した。女の子らしいというよりは、芸術品のような美しい裸体だ。
いや、正確には一個だけ、まなみがまだ身に着けているものがある。首輪だ。僕の所有物であることを示す証が、まなみの首元で光っている。
「……やっぱり、五個目のルールを作って正解だった」
「え?」
考えていたことが、思わず口に出てしまっていたようだ。まなみに聞き返され、自分で自分の口を塞ぐ。しかし、言ってしまったものは取り返しがつかない。僕は観念してまなみに説明した。
「この綺麗な身体を、他の誰にも見せたくない。見るのは僕だけでいい」
「……何それ」
まなみは苦笑するが、僕の言葉に嘘はない。まなみは、僕だけのものだ。誰にも渡さない。僕はそう決意を固めた。