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夢主を伴った高明は、自室の扉を閉めるとゆっくりと、しかし確かな緊張感を孕んで振り返った。整然と並べられた書物、磨き上げられた机、そこは先ほどのリビングの雰囲気とは異なった空間だ。
目をわずかに細めた高明が婚約者である夢主を見据える。夢主の瞳には少しの揺らぎもなく、ただ真っ直ぐに喜びをたたえて見つめ返してくる。…まだ自分の置かれている状況を真の意味では理解していないのであろうその態度に、高明は微かな苛立ちを感じていた。
「さぁ……私の脳内について知りたいと?…いえ…勉強がしたいのでしたね?……では私が責任もってじっくり講義させていただきます。その無防備で不埒な口から余裕のある言葉が消えるまで……存分に…理解を深めて貰いましょう……」
好かれている自信はあった。ずっと好きだと言われ続け、追いかけられてきた身である。だが同時に、普段の奔放な言動の根源は性に対する現実感の無さと、自分に対する甘えを含んだ歪な信頼によるものであると高明は分析していた。
夢主の言う『好き』とはそんな綿菓子のような恋の延長線の、ある種のファンタジーであり、いざ実際に肉体関係を迫られたら……夢主はきっと慌てふためき戸惑うのでは無いか。そんな予感が高明には常に付き纏っていた。
(そうだったとして……もはやどうでもいい…彼女はもう自分の言動や選択の責任を取るべき年齢だ)
夢主からしてみれば、それは手酷い裏切りに感じられるかもしれない事は高明も理解していた。だがそれでも、どこかで取り返しの付かない間違いを起こす前に、その無知の代償として『恥』という概念を、『恥じらい』や『羞恥心』そのものを言葉では無く身体で教え込むつもりだった。
しかし
「脱ぎまーす」
「…………は?」
「え?…だって…脱がなきゃ?ビデオでもまず脱いでましたし…実地ですよね?」
不思議そうに言葉を重ねながらも夢主は手を止めない。シャツに手をかけリボンの結び目が緩められ、ボタンが一つ、また一つと流れるように外されていく。彼女自身にとってそれはまるで当たり前の着替えと何ら変わらないかのようにあまりに自然な動作でそこになんのためらいも見えない。
「夢主さん……待ちなさい……」
布地が擦れる音が、静まり返った部屋にやけに鮮明に響く。制止の言葉が届くより先にシャツの隙間から、まず鎖骨のラインが覗き、そのまま肩から胸にかける曲線が惜しげも無く露わになった。
シャツが床に落ち続いてスカートに手をかけると、かがみ込んで滑るように現れた丸みを帯びた白い肌が、部屋の照明を反射する。その華奢な肢体はまるで内側から艶やかに発光するかのように浮き上がり、高明の視界を問答無用で引き寄せた。
「じゃーん!どうですか?ちゃんと勝負下着です!あ、避妊具の用意はあります?」
「………あります」
「良かったぁ!準備してくれてたんですね?」
「……………………はい」
「いつ買ったんですか?」
「…………………夢主さん…そういったことは…」
キラキラとした目を向けられ言葉に詰まる。
「ちなみにどんな種類の物か見せて貰う事って……あ、でも使いかけだったらちょっとショックだから見ない方が良いかなぁ?うーん………怖いから見ない!用意が済むまで目つぶってますね?」
そう言ってぱっと両手で目を覆った夢主が「もーいーかい?」と場にそぐわない声を上げる。
それを半目で見ながら、引き出しから取り出したパッケージをチェストの上に置いた。
「もういいですよ…………そもそも、買ってそのままの物なので……要らない懸念です」
「へぇ~…全部繋がってるんですね?保健体育で配られたのは一個ずつだったのに」
「…………」
「やっぱり実地って発見がありますねぇ……ね?高明お兄ちゃん」
興味深げにきゃっきゃとはしゃいでいる夢主になんとも言えず、黙って眺めているとふと目が合った。
瞬間、にこっと好奇心に満ち満ちた目を向けられ、ぞくりと背筋になんとも言えない感覚が走った。
「こういう時ってなんて言うんだろ?いただきます?」
「夢主さん……それは………………」
「じゃあ早速…いただきます!…………………高明お兄ちゃん、チュウしよう?」
夢主はひょい、と背伸びをして、高明の唇に自分のそれを重ねようと顔を近づける。 至近距離で見つめる混じりけのない瞳。柔らかな吐息…………高明は咄嗟に彼女の両肩を掴んで、その前進を阻んだ。 その瞳にはかつてないほどの激しい葛藤が渦巻いている。
「……貴方は…前のめりが過ぎます!…何故そうも甚だしく情緒を欠いた言動を………」
「……ごめんなさい……高明お兄ちゃんの好みじゃ無い?」
途端にシュンとしおれる夢主を前に、思わず口をつぐむ。流石にこの状況で相手を否定する言葉を重ねることが出来なかった。
「……そう…は……言っていません…」
好みでないはずがない。 むしろ、目の前の光景は、あまりにも好ましく、あまりにも愛おしく、そしてあまりにも……自分を狂わせる。
高明はゆっくりと、しかし確かな意志を持って、夢主の腰を引き寄せた。
「……好みかどうかなど、今さら問う必要もありません。いいですか、夢主さん。……貴方が、どれほど私の理性を嬲っているか。……それを今から、嫌というほど思い知ってください」
高明の手が夢主の肩をそっと滑り、しなやかな身体をなぞる。 彼は指先に意識を集中させ、そこにある柔らかな温度を感じさせる肌に、ゆるやかな刺激を刻む。
「……触られてる……っ。んん……ふふっ…ゾクゾクします」
夢主が身を捩り、微かな声を溢した。その無防備な反応を逃さず、高明は唇を寄せる。
「………………嫌ですか?」
「だいじょうぶ………嬉しい…」
高明の唇が、待ち焦がれる夢主の柔らかな熱に重なった。
最初は触れるだけの、深い慈しみを含んだ軽いキスだったものが夢主の甘い吐息に煽られ何度も角度を変え、深く、執拗に、彼女の口内のすべてを支配するかのような激しいものに変化する。
高明は傍らのベッドにそっと倒れ込むように夢主を押し込み、唇を離した。
「ちゅう……きもちいい……やっと出来ました。……頭がチカチカする……」
夢主が嬉しそうにそう呟く。高明は密着した身体から伝わる鼓動の速さに、自身の欲がさらに加速するのを感じた。
「…痛みがあれば言ってください…いいですか、夢主さん」
指先が腿をなぞって足を割り、下着の際を優しく探るように触れる。
「あ、待ってください。お風呂借りたいです」
「……………………」
「私、ちゃんと教科書は隅々まで読んだんですよ?エッチの前には清潔にするんですよね?順番こに入りましょう」
「……………………はい」
高明の端整な顔は、沸騰せんばかりに赤く染まっていた
ーーーーー
ーーー
コンコンと小さなノック音の後
ひょいと満面の笑顔で夢主が顔を覗かせる
「お待たせしましたー!シャワーの後に下着を着けるべきか迷って…結局タオルだけにしたんですけど、正解?」
「……………そうですか…タオルだけ……」
「さぁやっとエッチできますねぇ!何からしますか?」
「……………」
(……備わるを…一人に求むる事無かれ…とは…言いますが…)
もはや高明は何を返せばいいのか分からなかった。彼女に対し、少なからず情緒というものを自分が求めていたという事実が滑稽だった。
ベッドに座る高明の横に、夢主はそっと座ると身を寄せ抱きついてくる。
「高明お兄ちゃん…ふふふっ……準備万端です!」
「…………こちらへ……口を開けて……」
「んっ……」
口づけ、巻いていたバスタオルを取り払い、床に落とすとその肌を抱き寄せシーツに沈めた。
どこもかしこも柔らかで、その弾力が触れる手の動きを甘やかに押し返し包み込む。
「触って…それからどんなふうにするんですか? ビデオでは肝心なところにモザイクがかかってるので、具体的にどうなるのか分からなくて……」
この期に及んでなお、純粋な探究心を持って問いかけてくる彼女に、高明はしっとりとした皮膚の熱に呑み込まれていく感覚に眩暈を覚えながら、掠れた声で答えた。
「……あのような不完全な映像資料は忘れてしまいなさい………貴方の…ここを、少しずつ広げていきます。」
高明の長い指が、秘められたひだを分け入り、ゆっくりと粘膜をなぞり始める。
「……あ、っ……」
夢主の喉から、先ほどまでの快活な声音とは違う、熱を帯びた吐息が漏れた。高明はその反応を一つも逃さず、指先の動きにさらなる意図を込めていく。それはゆっくりと、彼女の反応の閾値を測るように繰り返された。静まり返った寝室に、それまでにはなかった卑猥な響きが混じり始める。
「……っ。ん……ふ、ぁ……」
指が浅く、深く、内側をなぞるたびに蜜が溢れ出す
ぬちゅ、ぐちゅ……
高明の指が彼女の熱をかき混ぜる粘り気のある水音が、二人の間に生々しく響き渡る。それは、高明の頭の隅にあったはずの静寂を、容赦なく汚していく音だった。
「ん……あっ……気持ちいい……」
夢主はとろんとした瞳で、快楽に蕩けた声を上げた。 高明の背中の筋がピクリと跳ねる。
自身の理性が、後どの程度残っているのか判別がつかなかった。
「高明お兄ちゃん? お腹の中、入れないの?」
「…………まだ、です」
高明は、歯を食いしばり、低く掠れた声で答える。 彼女は、自分がどれほど無防備な姿で、どれほど恐ろしい誘い文句を口にしているのか、微塵も理解していない。その瞳に見つめられながら、自らの指が彼女の奥底を捉え、彼女の熱い蜜に浸り、水音を立ててその内側をかき乱している事実に、頭が痺れるような感覚がする。
「…んっ……どうしたら……いいですか……?」
夢主は、落ち着かない様子で腰を揺らし、助けを求めるように高明のシャツの袖をぎゅっと掴んだ。 その頬は上気し、潤んだ瞳は焦点が定まらないほどに蕩けている。
「今は……貴女の身体が、私のすべてを迎え入れるための準備をしています」
高明は、彼女の耳元に唇を寄せ、熱い吐息と共に囁く。
「……ただ受け入れてください。私という存在を……」
「あ……ん、っ……。たかあ…き…お兄ちゃ………」
「いっそ、その真っ直ぐな思考ごと、快楽の渦に呑み込まれてしまいなさい。……私がすべてを繋ぎ止めますから」
高明の指の動きが、滑らかに粘度を増していく。
「……………夢主さん」
「あっ………だめ……やぁ…!あっぁああ!」
彼女の内側がひときわ強く指を押し返し、小刻みに震え始めるのを指先で克明に感じ取った。 肉の脈動がグッと大きなうねりとなって高明の指を締め付ける。
「あ……っ、あぁ……っ!」
夢主の背中が弓なりに反り、視線が宙を泳いだ。 彼女の身体がその意味を理解する間もなく快楽の濁流に呑み込まれていく様子を、高明は至近距離で、一瞬たりとも見逃さぬよう凝視していた。
やがて、激しい痙攣がゆっくりと収まり、彼女はシーツの上に力なく沈み込む。荒い呼吸、上気した肌、そして焦点の合わない瞳がゆっくりと高明を捉える
「今……の……?……あっ……すごく、気持ちよかった……」
初めて触れた快楽の余韻に彼女の身体はまだ微かに震え、しかしその声は充足感に満ちていた。
「…………」
高明は、指を抜くと自身の限界まで熱を孕んだその存在を夢主に押し当てた。 丁寧に時間をかけ、先ほど彼女が自ら達したことで、柔らかく彼を迎え入れるための準備を整えたそこへ。
高明は彼女の両手をベッドに縫い付けるように固定し、ゆっくりと、しかし確かな質量を持って、その深淵へと沈む。
「っ……!」
初めて踏み入れる彼女の最奥。あまりの狭さと、吸い付くような熱に、高明の喉からくぐもった呻きが漏れる。
「あ、ぁ……いっ…つ…は…ぁ…高明……お兄ちゃん……」
夢主は目を見開き、自身の身体を貫く異物感と、それを上回る圧倒的な充満感に、身を震わせる。痛みに眉をひそめながらも、彼女の瞳には、言葉にできないほどの喜びが宿っていた。
「あっ……うれしい……私……高明お兄ちゃんと、エッチしてる……」
その、あまりにも直接的で、混じりけのない喜びの言葉。 それが、高明の理性の残滓を最後の一片まで焼き尽くす。
「……ええ。そう……です。貴女を今、この手で、この身体で、内側から完全に支配しているのは……他ならぬ私です」
高明は、自身の鼓動が彼女の胎に直接響くのを感じた。ゆっくりと深く繋がった場所から、粘り気のある音が断続的に響き、静まり返った寝室の空気を卑猥に塗り替えていく。
「っ、ふ、あ……っ! ……中…あつ…い…っ」
「……逃がしません。貴女の、その支離滅裂な…思考の隅々までもが……私で染まりきるまで……っこの熱を、貴女に刻み込んで差し上げます」
夢主の震える声が、高明の名を呼ぶ。
「ん……あっ……高明お兄…ちゃん………きもちいい?」
「…………夢主さん……えぇ…とても………いいです……っ」
されるがままになっていた夢主が
ふわりと柔らかく笑った
「私の中でっ…私で…気持ちよくなってくれて…ん…嬉しい…ありがとぉ.....…大好き……」
「……っ!……貴方は……本当に………」
教え導くはずだった「高明の脳内の勉強」は、夢主の甘く溶けるような微笑みと暴力的なまでの受容の前に散り散りになって消え失せ
狂おしいまでの執着と背筋を駆け抜ける甘美な痺れによって塗りつぶされた。