TS剛膣娘と硬い盾役 作:笑石
「あいつ、最近イケてるんだよ」
同じパーティーの弓使いが、打ち上げの最中そう言った。視線の先には、オレ達と同じく打ち上げの途中なのだろう女三人と男一人のパーティーがあった。そしておそらく、黒一点である男のことについて言っている。
「えー? 急になんの話……えぇ? エリックのこと?」
同じくパーティー仲間の魔法使いが、酒を煽りながら弓使いの視線を追った。そして、首を傾げる。
エリック。
女三人彼一人のハーレムパーティーで、みんなからよく羨まし……がられていない。
女三人とも、見た目も良くて実力も高いが……性格も相応に強く、はたから見ても尻に敷かれている……いやそれ以下の便利なこま遣いされているのが明白だからだ。
筋肉のたくさんついた大きな体。他のパーティーメンバーが全員後衛職なこともあり、一人前衛でパーティーの盾となっている男。
しかしどこかうだつが上がらず、身体がデカいのに一回り小さく見えるくらい気が弱い。
同じメンバーの荷物はたくさん持たされるわ、雑用はたくさんやらされてるわ、と周囲からもどこか不憫な視線を送られていた。
パーティー全体のレベルとしては高く評価もいいのが、まぁアレはアレでいい関係なんだろう。『エリック総受けマゾ(被虐性癖)パーティー』なんて揶揄う奴もいる。
「エリックか。彼はもともと、イイ男だ」
「お前の言い方、相変わらずちょっと嫌なんだよ」
我らがパーティーリーダーの剣士が腕を組み頷いている。まぁ、エリックの事をここまではっきりと評価しているのはウチの剣士くらいじゃないだろうか。彼は審美眼がある。
オレもそうだが、エリックの実力は低いわけじゃない。だが女三人に尻に敷かれまくっている様は、評価を下げる要因となる。前衛職はパーティーの壁にもなる存在、最も身体を張る立場、だからこそ軽んじられることは決して褒められた事ではないのだ。
冒険者稼業は、死と隣り合わせなのだから。
ところでエリックはよく周りから揶揄される。というかバカにされる。まぁそれは……アイツが『童貞』で有名だからだ。
それを言いふらしたのはこの弓使いだが……ほんとノンデリだよ。冒険者稼業は正直、お行儀のいい世界ではない。だから普通に、男は女を抱いてこそ! みたいな価値観がある。
冒険者が多く集まる街には、娼館が下手な都会よりも多いくらいだ。まぁ……命をかけた戦いの後は『滾る』のが、男女問わず多いせいだが。
「俺、確信があるんだけどよ。多分エリック、アイツ……童貞捨てたぞ」
ブッ! と、オレは飲んでいた酒を噴き出した。弓使いがひらりとそれを避け、魔法使いがプリプリ怒る。
「ほらー! ミスカに下品な話題を振るから、驚いちゃったじゃん!」
「かーっ! ミスカおめぇ、ウブすぎるぜ!?」
「そうか、エリックがな……。確かに、そう言われると、男を上げたように見える」
「……いや、オレも冒険者の端くれ、童貞だのなんだの、その程度のシモの話に今更動揺しませんよ」
オレも随分と冒険者として長い。こんな世界にいれば、経験がなくとも耳年増になれるくらいは見るし聞こえる。
そもそも、俺は前世で今の世界とは違う世界で生きていた記憶がある。その時は、『今の女の身体』とは違い男だってし、生きていたのは男女交配の映像や写真が腐るほど見れる世界だった。
だから、ハッキリ言って並のシモ話で動揺するようなタマではないのだ。しかし魔法使いがオレに対してしてきたように、あまりにもオレ自身に浮いた話がないものだから『ウブな女』扱いをされている。
「まぁ、とにかくエリックのやつアイツぜってぇ童貞捨てたぞ。ほら見てみろ。今もあの爆乳魔法使いに近付かれても、前とは反応が違うんだよ」
「なんで、『魔法使い』ってワードの時に私の胸見たわけ?」
弓使いの事を強く睨む魔法使い(どことは言わないが普通に大きい)。しかしすぐに、オレと剣士に続いてエリックの方へ目を向けた。
……。いや、普通に胸から目を露骨に逸らして、頬も紅いし、ちょっと股間を引いているんだが。
「……そんな変わった?」
魔法使いが訝しげな目で見る。
しかし、弓使いは確信を持って言う。
「ああ、間違いない。俺の目は誤魔化せない。アイツは……色を知った」
……。すごいなコイツ。
オレは素直にそう思った。
オレは、元男で、今は女だ。
平静を装いながら、ちびりと酒を飲む。
「アレは非童貞の顔だ。くそっ……今度相手を聞かないとッ!」
オレなんだよな。
また酒をちびりと飲みながら、ぼんやりそう思った。一度目を瞑り、あの夜を思い出す。
エリックの童貞、喰ったのオレなんだよな……。
容姿
・ミスカ
肩くらいの薄く淡い緑髪、濃い翠のエメラルドを思わせる大きな瞳。低めの身長に不釣り合いな胸部。
・エリック
灰茶髪。短髪。切れ長の瞳。筋肉隆々。