※この作品はR-18です。

TS剛膣娘と硬い盾役   作:笑石

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十四話 『ブレイド』

 

 

 強いな。

 ミスカとレンは、モンスターの攻撃を冷静に対処しながら考えた。しかも、長引く程にどんどん動きが洗練されていく。

 レンの剣に両手の爪で拮抗し、ミスカのハンマーには半ばで千切れた尻尾で対応する。

 

 モンスターの瞳が鋭く光った。偶然にもレンとミスカの攻撃が止んだ一瞬、鱗が逆立ち炎を帯びた。

 

 だが、左目に刺さった矢の『呪い』が魔力の流れを阻害して、帯びた炎は霧散する。瞬間、レンの剣が、ミスカのハンマーが、モンスターを強襲した。

 逆立った鱗を剥ぐ様に入れられたレンの剣は深々と腹を切り裂き、顔面に振るわれたミスカのハンマーは咄嗟に防御したモンスターの両腕を鱗ごとへし折る。

 

「手応えはあったが」

「このままやれたら良いですけどね。あれ素体は赤鱗(レッド)のドラゴンだし……」

 

 ミスカの懸念通り、転がったモンスターはむくりと立ち上がり、斬られた腹と折れた両腕は徐々に再生していく。乱雑に左目に刺さった矢を引き抜き、怒りを露わに握り砕く。

 その様子を見つめながら、レンとミスカはモンスターの向こうにアルとケイトを発見した。二人で目を見合わせ、まずはレンが走る。ミスカはエリック達の前に立ち、モンスターの動向を見張った。

 

 モンスターは鱗を『閉じた』。境目すら曖昧になる程ぴっちりと。そして、赤い鱗は空気の揺らぎと共に赤熱していく。

 レンが剣を振るう。それを、モンスターは大きく避けた。避けると同時にレンの後ろに回り込み爪を振るう、レンは剣で滑らせる様に回避し、直後に振るわれた逆の爪も流れる様に刃で滑らせた。

 しかし内心、レンは驚愕している。

 

(───速い!?)

 

 モンスターの動きは、今までとは隔絶したものとなっている。しかも凄まじい熱を放っており、近くにいるだけでジリジリと焼く様な熱さが皮膚を襲う。

 

「あれは、上級冒険者パーティーがやられた時のやつだ……」

 

 冒険者の一人からそんな声が出た。ミスカはそれを聞き、考える。とりあえずみんなに共有した。

 

「上級はこれにやられたらしい!」

 

 レンはアルとケイトを守る様に位置していた。攻撃はついでだ。ミスカの言葉を聞き、頷いているのが見える。

 

(とはいえ、今まで使ってなかったのは舐めプってわけでもないだろう)

 

 見るからに魔力消費が多そうだ。エリック達が無事だったのも、もしかすれば消耗した魔力や体力を温存、回復していた途中だったからなのかもしれない。ミスカは考える。

 

 モンスターの輪郭がブレる。

 残像が残るほどの高速移動で、モンスターがまず向かったのは……ミスカの、エリックの後ろにいる、怪我をした冒険者達。

 だがそれをミスカが許すわけがない。モンスターの動線に割り込むが───モンスターはギラリとミスカに標的を変えた。稲妻の様に進路を変えたモンスターにミスカは守る為に飛び出した体勢を戻しきれず、なんとか首に迫る爪をハンマーの柄で防ぐが、もう片方の爪で腹を貫かれた。

 

「〜〜っぐぅッ!」

 

 ボタボタとミスカの口から血が溢れ出す。モンスターがまるで人間の様に口角を上げた様な気がした。

 

「結構、知能が高いですねッ」

 

 もとより狙いはミスカだったのだろう。レンがミスカから離れた時点で、レンほどの反射と速度がミスカにはないと見たモンスターは彼女が守っている人間を狙うことでこの状況を生み出した。

 だがそれは、ミスカからすれば好都合としか言えなかった。

 

 モンスターの赤熱した鱗は高熱を放ち、ミスカの貫かれた腹は煙を上げて今も焼かれている。しかしミスカはその痛みにも動じず、首元の防いだ爪をまず掴み抑える。

 次にハンマーを落とし、空いた手でモンスターの首をつねるように握り込む。首元の鱗が軋み、ゆっくりと歪んでいく……その自身の肉体の様子に、生理的な恐怖を感じたモンスターはジタバタと暴れ、ミスカの腹に刺した爪を抜こうとするが……ミチミチと音を立てて、爪に抉られ焼かれた側から再生する肉に阻まれ、抜くことができない。

 もう片方の首を狙った爪も、まるでびくともしない。凄まじい力で縫い止められていた。メキメキと、掴まれた首元の鱗が歪み、わずかに剥がれた。

 

「ガァァァァッ!」

 

 ならばと、モンスターは口を大きく開き喉元に炎を蓄えるが───

 

「遅いよ」

 

 ケイトの《付与(エンチャント)》によって『貫通力』を強化された矢が後ろからその炎を貫いた。

 鏃に込められた『呪い』は魔力を乱す。だがこれは念の為だ。この時にはすでに、レンの『強化』された剣がモンスターの身体をバラバラに切り裂いていた。

 

 ぼとぼと、と肉塊と成り果てたモンスターを見て、ミスカは腹から爪を引き抜く。もちろん普通に痛いので「ぐぅぅっ」と呻いている。

 その姿に『ブレイド』以外のメンバーは顔を引き攣らせているが、慣れているとはいえ『ブレイド』のメンバーも平気なわけではない。

 

「やれやれ、ミスカでなければ死んでいる。リーダーとして、失格だな」

「……ギルドの意向を無視したのは、オレですし。結果が伴ったから、良しとしましょう」

 

 ギルドで集めていた他パーティーとの救援連合隊、それらを無視して勝手に自分達で来たのだ。むしろミスカからすれば、それを望んだ自身が傷つくだけで終わって良かったと思っている。

 モンスターを掴んでいたせいで火傷した両手と、穴の空いた腹を治癒しながらミスカはチラリとエリックを見た。

 

 ───生きてて良かった。

 

 心の底からそう思った。

 ついこないだまでなら、他のパーティーに所属している人間が迷宮で死んだところで"仕方ない"と、どこか冷めた感想を持っていただろう。

 仲良ければやはりそれなりに悲しいが、冒険者稼業はあまりにも死が近い。昨日、笑顔で共に酒を飲んだ人が、明日には見かけないなんてことが日常茶飯事だ。

 

 でも、と。ミスカは微笑んだ。

 

 ───間に合って良かった。

 

 きっと、仕方ないなんて思えない。

 何度か肌を重ねただけで、よくぞこうもなるものだとミスカは自嘲した。

 

 アルとケイトは、エリックの方へ微笑むミスカを見て、二人顔を見合わせ「もうあれどう見ても確定だよね」と頷き合った。

 

 

 

 

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